平成17 年3月16 日 カネボウ                 日経記事   樹脂除外

繊維素材事業の再編についてのお知らせ
http://www.kanebo.co.jp/contents/fram/f_08rel.html

 当社とセーレン株式会社は、カネボウ繊維株式会社が行なっている綿事業、及びカネボウ合繊株式会社が行なっている合繊・樹脂事業を、セーレン株式会社が51%、当社が49%出資する新会社に営業譲渡することについて、本日(3 月16 日)、基本合意に達しましたので、下記のとおりお知らせいたします。
 新会社は、綿、ベルセイムなどの合繊、シルク素材を扱う長浜工場の高い染色加工技術と、北陸合繊工場の高品質ポリマー改質や複合・接合・細繊度紡糸など特徴あるカネボウの技術に加え、自動車用繊維資材や衣料用繊維・資材などの幅広い分野でセーレン株式会社が有する高分子技術と染色加工技術を基盤に、高付加価値繊維メーカーとして運営されます。
 また、当社が保有する49%の新会社株式について、平成17 年10 月1 日〜平成18 年9 月30 日において両社間にオプション権が付与されており、この期間に権利が行使された場合は、新会社はセーレン株式会社が100%出資する会社になります。
 当社は、ホームプロダクツ、薬品、フーズの消費財3事業を中心とした事業ポートフォリオの構築を目指しており、コア事業に経営資源を集中して、再生を加速化していく所存です。

1.営業譲渡の理由
 平成16 年5 月31 日に発表いたしました「事業再生計画」のなかで、当社は、抜本的な事業ポートフォリオの再編を進めていくことを明らかにいたしました。その後、第4 分類に区分された事業につき、それぞれの譲渡先を選定してまいりましたが、このたび、綿事業の譲渡に関し、その方針を決定した次第です。また、北陸合繊工場で製造する製品を中心とする合繊・樹脂事業については、第2 分類に区分されておりましたが、事業の強化のためには、綿事業の長浜工場との連携と、各種繊維製品の企画・製造・販売を効率的に行うビジネスモデルを有するセーレン株式会社との協力関係が必要と判断し、合繊事業の譲渡に関し、その方針を決定いたしました。

2.営業譲渡の内容
(1)綿事業
 1)事業の内容
 当社子会社のカネボウ繊維株式会社で行なわれている綿事業は、綿、合繊、シルク素材を加工する長浜工場を擁し、独自の染色加工技術を基盤に綿を中心とした各種繊維素材を製造・販売しております。
 2)事業の概要
  主たる事業の運営場所:滋賀県長浜市(製造)
                  大阪府大阪市、東京都港区(販売)
  売上高:120 億円

(2)合繊・樹脂事業
 1)事業の内容
 当社子会社のカネボウ合繊株式会社で行なわれている合繊・樹脂事業は、北陸合繊工場を擁し、ポリエステル長繊維及び樹脂製品などの各種製品を製造・販売しております。なお、防府合繊工場で製造しておりますベルトロン、エスパンシオーネ、シデリア、マソニックの機能性繊維、及び機能性樹脂、Aペットシートの樹脂製品については、その設備を北陸合繊工場に移設し製造・販売を継続いたします。
 2)事業の概要
  主たる事業の運営場所:福井県鯖江市(製造)
                 :東京都港区、大阪府大阪市(販売)
  売上高:245 億円

3.営業譲渡先の概要
 譲渡先新会社(未定)
  <新会社への出資比率>
     セーレン株式会社51%、カネボウ株式会社49%
4.日程
 平成17 年7月1日(予定) 営業譲渡期日
5.営業譲渡に伴う損益影響について
 新会社への営業譲渡に際しては、約250 億円の営業譲渡損失を見込んでいます。
 なお、綿事業については「事業再生計画」に一部織り込み済であります。
 当該損益影響につきましては、詳細確定後、情報開示を行います。
 なお、当社の当期業績につきましては、計画に織り込んでいた固定資産の減損処理が一部不要となったこと、及び構造改善に伴う損失が減少したこと等から、上記営業譲渡損失とほぼ同額の改善額の確保が可能と考えております。

<参考>
1.カネボウ繊維株式会社の概要
 主な事業内容 綿、シルク、合繊の加工、繊維加工製品及び繊維衣料製品の製造、販売
 設立年月日   平成9 年4 月1 日
 本社所在地   大阪府大阪市北区梅田1-2-2
 代表者      代表取締役社長平林司
 資本の額    18,734 百万円(カネボウ株式会社100%出資)
2.カネボウ合繊株式会社の概要
 主な事業内容 合成繊維、樹脂製品の製造、販売
 設立年月日   平成8 年10 月1 日
 本社所在地   大阪市北区梅田1-2-2
 代表者      代表取締役社長清末健太郎
 資本の額    21,055 百万円(カネボウ株式会社100%出資)


日本経済新聞 2005/3/17            発表

カネボウ 繊維事業撤退 創業の柱、118年歴史に幕
 相乗効果狙えず思い入れ断つ セーレンに営業譲渡

 産業再生機構の支援下で経営再建中のカネボウは16日午後、染色大手のセーレンと共同出資会社を設立し、綿と合繊事業を譲渡すると発表した。新会社は来年9月末までにセーレンが全額出資子会社とする方針。カネボウは家庭用品など3事業に経営資源を集中する。1887年に東京綿商社として創業して以来、主力だった繊維事業は118年の歴史に幕を下ろす。
 カネボウは長浜工場(滋賀県長浜市)の綿事業、北陸合繊工場(福井県鯖江市)のポリエステル繊維・プラスチック、防府工場(山口県防府市)の一部で行っているナイロン繊維事業を新会社に譲渡する。譲渡額は数十億円とみられる。各拠点の従業員は原則、新会社が引き受ける予定だ。

 再生機構が昨年5月に作成した再生計画は化粧品事業を分社化した後のカネボウの事業を4つに分けた。中核になる可能性が高い第一分類、事業性はあるが中核になるか見極めが必要な第二分類、早急に事業性を調べ継続か撤退を判断する第三分類、早期に売却・清算する第四分類だ。
 これに沿って羊毛やカップめんなど国内18、海外2の事業の売却・清算を決めた。従来は不採算事業が対象だったが、今回譲渡するポリエステルやナイロンは「事業性がある」第二分類。だが、家庭用品や食品、薬品を中核事業とする再建計画では、相乗効果を期待しにくいのが実情。「日本の産業を担ってきた人材と技術、ノウハウなどの継承を図る」(中嶋章義会長)ために、セーレンヘの譲渡を決断せざるを得なかった。
 再生機構の片山龍太郎執行役員は「消費財中心に再生を進めるのが基本」としており、第二分類の事業も含めた売却が今後加速する公算が大きい。日本の経済成長をけん引して一時代を画した繊維事業。真の消費財メーカーとして再生をめざすうえで「個別の事業に思い入れを持つ時期ではない」と中嶋会長は創業事業との別れを宣言した。

 

 

 

 

 


平成17年6月1日 セーレン株式会社

繊維素材事業の営業譲受け契約書締結のお知らせ
http://www.seiren.com/news/news2005/kanebow_seiren.pdf

 当社とカネボウ株式会社は、カネボウ株式会社の100%子会社であるカネボウ繊維株式会社が行っている綿事業、及び同様のカネボウ合繊株式会社が行っている合繊事業を当社が51%、カネボウ株式会社が49%出資する受け皿会社、KBセーレン株式会社で営業譲受けすることについて、本日(6月1日)、最終合意に達しましたのでお知らせいたします。
 当社とカネボウ株式会社は、去る3月16日に綿事業並びに合繊・樹脂事業を合弁会社で営業譲受けすることで基本合意書を締結し、同日発表いたしておりましたがカネボウ株式会社との協議で
樹脂事業(機能性及びAペットシート)を譲受けの対象から除外することにいたしました。
 なお、KBセーレン株式会社は、
繊維事業に特化した運営を行ってまいります。

1.営業譲受けの理由
 当社は、産業再生機構のもと平成16年6月より事業再生中のカネボウ株式会社の繊維事業に関して、本年3月16日カネボウ株式会社と基本合意書を締結しました。それ以後、協議を重ねた結果、同社の合繊事業における合成繊維の製造機能及び高分子合成研究・素材開発の機能、更には綿事業における高付加価値加工技術が、当社の持つ繊維製品の一貫製造機能と融合することで、付加価値の高い各種繊維製品の企画・原糸製造・染色・販売を効率的に行うビジネスモデル構築が可能となり、カネボウ株式会社の繊維事業が再生できると判断し、同事業の譲受けを決定いたしました。

2.譲受けの内容
(1)営業譲受の内容
 @カネボウ合繊株式会社のポリエステル事業、ナイロン事業等
   売上高191億円/年(平成17年3月期)
 Aカネボウ繊維株式会社の綿事業
   売上高120億円/年(平成17年3月期)
(2)譲受けの形態
 @営業譲受を目的としたKBセーレン株式会社(受皿会社:平成17年5月2日設立)は、カネボウ株式会社より上記事業を借入債務と共に譲受し、同時にこの借入債務を現物出資として、セーレン株式会社51%カネボウ株式会社49%の合弁会社としてスタートいたします。
 A平成17年10月1日から平成18年9月30日において、セーレン株式会社とカネボウ株式会社の両社間にオプション権が付与されており、この期間に権利が行使された場合、KBセーレン株式会社はセーレン株式会社が100%出資する会社となります。
(3)譲受け先の概要
 @ 商号 KBセーレン株式会社
 A所在地 福井県鯖江市下河端町第6号1番地1
 B設立 平成17年5月2日
 C代表者 島田亮一(セーレン株式会社専務取締役)
 D事業規模 311億円(平成17年3月期譲受事業売上高)
 E生産拠点 北陸合繊工場(福井県鯖江市下河端町第6号1番地1)
         長浜工場(滋賀県長浜市鐘紡町1番地11号)
 F営業拠点 東京、大阪、福井、小松の国内主要4営業拠点及びUSA・EU等の海外拠点
3.日程
 平成17年6月1日営業譲受け契約書締結
 平成17年7月1日営業譲受け期日(予定)
4.営業譲受けに伴う当社への影響及び業績見通し
 平成18年3月期の業績に与える影響については営業譲受後、詳細が固まり次第必要な情報開示を行ってまいります。

【参考】
セーレン株式会社の概要
 @ 創業 1889年(明治22年)
 A資本金 153億62百万円
 B年間 売上高715億円(連結)
 C従業員数 3,508人(同)
 D本社所在地 福井本社:福井県福井市毛矢1−10−1
           東京本社:東京都港区南青山1−1−1
 E事業内容 繊維製品の企画製造販売
 F事業領域 オートモーティブ自動車内装材・エアバック
         ハイファッションアパレル・SPA事業
         エレクトロニクス電磁波シールド材・PDPスクリーン
         ハウジングオフィスインテリア資材・ハウスラップ材
         メディカルセリシン・浄水器
 G 関連企業 (国内)12社、(海外)7社


平成17年4月27日 カネボウ

事業ポートフォリオ再編に関するお知らせ エルビー・埼玉
http://www.kanebo.co.jp/contents/fram/f_08rel.html

 当社は、当社及び当社子会社の株式会社エルビー・名古屋が保有する株式会社エルビー・埼玉の全株式(発行済株式の67.85%に相当)をアサヒビール株式会社に譲渡することを決定しましたので、下記のとおりお知らせいたします。

1.株式譲渡の理由
 平成16 年5 月31 日に発表した「事業再生計画」のなかで、当社は、抜本的な事業ポートフォリオの再編を進めていく方針を明らかにいたしました。潟Gルビー・埼玉の営むチルド飲料事業は、第2 分類(事業性はあるが、今後、コア事業としての可否の見極めが必要な事業)に区分されておりました。しかし一連の事業ポートフォリオ再編の中で関連する缶飲料事業から既に撤退し、当社グループ外で運営されることによって、同事業の成長がより見込めると判断し、このたび、アサヒビール鰍ノ対する株式譲渡を決定いたしました。
2.株式譲渡の内容
 当社が保有する487,528 株(潟Gルビー・埼玉の発行済み株式の50.00%)及び潟Gルビー・名古屋が保有する174,068 株(同17.85%)の合計661,596 株(同67.85%)を譲渡いたします。

<潟Gルビー・埼玉の概要>
1)設立昭和31 年12 月22 日
2)本店所在地埼玉県蓮田市大字黒浜字桜ヶ丘3469 番1
3)代表者代表取締役社長河原明
4)資本金487.5 百万円
   (カネボウ50.00%、エルビー名古屋17.85%、CBC32.15%出資)
5)事業内容清涼飲料、乳酸菌飲料などのチルド飲料の製造、販売
6)売上高113 億円(H16 年3 月期)
7)従業員数143人(H17 年3 月末)

3.譲渡先会社の概要
@名称アサヒビール株式会社
A主な事業内容酒類の製造、販売
B設立年月日昭和24 年9 月1 日
C本店所在地東京都中央区京橋3−7−1
D代表者代表取締役社長池田弘一
E資本の額182,531 百万円
F従業員数3,700 名(平成16 年12 月31 日現在)

4.日程
平成17 年4 月27 日株式譲渡契約書締結
平成17 年5 月11 日株式譲渡期日(予定)

5.当社の業績に与える影響について詳細確定後、必要な情報開示を行ってまいります。


日本経済新聞 2005/6/7

カネボウ、一体再生へ 
 化粧品頼みの再建回帰 再生機構方針 株上場廃止も影響

 産業再生機構の支援下で経営再建中のカネボウは6日、カネボウ化粧品を引受先とする第三者割当増資により、資本・業務両面で連携を強めると発表した。昨年5月、両社の別途支援を決めていた再生機構だが、わずか1年で「一体再生」へ方針転換。カネボウ再生が化粧品事業抜きでは難しい上、カネボウ株の上場廃止が追い打ちをかけたことが背景にある。
 
 同日、カネボウの中嶋章義会長とカネボウ化粧品の知識賢治社長が会見。化粧品は7月下旬をめどに
200億円の増資を引き受け、カネボウの議決権の37.9%を持つ。再生機構を抜いて筆頭株主となり、化粧品の知識社長はカネボウ取締役に就任する予定だ。
 同日、都内で会見した産業再生機構の片山龍太郎執行役員も、機構が保有する両社株式を「同時期に、同一スポンサーに売却することが最善」と表明。両社一体で支援する企業を求める考えを示した。
 しかし、1年前は「分離再生が最良の選択だった」(片山氏)。昨年2月にカネボウが化粧品事業の支援要請を打ち出し、その1カ月後に、繊維や日用品など他の事業の支援を要請してきたからだ。
 最大の収益力を持つ化粧品事業の価値をいかに棄損させず、高めるか。機構が選んだのが、化粧品の切り出しだった。分離したカネボウ化粧品ではブランドや営業体制の再構築を進める一方、カネボウ本体は繊維やカップめんなど不採算事業の売却を進めるーー。機構はこの1年、こんな再生計画を進めてきた。
 計画の進ちょくとともに、問題も見えてきた。例えば、国内で22の事業の売却・清算を決めたカネボウの2005年3月期決算は、売上高は前の期比41%減の2685億円。「事業売却を進めた結果、売上高に対して間接部門の人員が多い」(機構幹部)。縮小均衡の中、事業売却や人員削減など、今後のリストラ費用の捻出が必要だった。
 一方、カネボウ化粧品もサプリメントや漢方の技術を生かした化粧品開発などで、両社間で特許などが分散し、利用しにくくなっていた。最近はカネボウも化粧品事業を独自ブランドで展開し始めている。
 これにカネボウ株の上場廃止が追い打ちをかけた。もともと、「競争が激しい日用品・食品・薬品が中核のカネボウのスポンサーは見つけにくい」(外資系投資ファンド)と指摘されており、機構には「両社セットの方が再生計画が早まる」との読みもあったようだ。
 カネボウ化粧品による増資引き受け発表を受け、6日の東京株式市場でのカネボウ株の終値は前週末比21円(7%)高の311円と大幅に値上がりした。ただ、化粧品が他の事業を支えるようでは、機構による支援以前のカネボウと同じ構図に逆戻りすることになる。


2005/06/15 カネボウ

事業ポートフォリオ再編に関するお知らせ
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=103007&lindID=4

 当社は、当社子会社のカネボウ合繊株式会社が防府合繊工場で製造する高分子PET樹脂に係わる事業(以下、「高分子防府PET樹脂事業」という)を営業譲渡することについて、大和製罐株式会社と合意に達しましたので、下記のとおりお知らせいたします。

1.譲渡の理由

 平成16年5月31日に発表いたしました「事業再生計画」のなかで、当社は、抜本的な事業ポートフォリオの再編を進めていく方針を明らかにいたしました。その後、「第4分類」に区分された事業につき、それぞれの売却先を選定してまいりましたが、このたびカネボウ合繊株式会社が行う「高分子防府PET樹脂事業」の営業譲渡に関し、大和製罐株式会社と合意に達した次第です。

2.営業譲渡の内容

1)高分子防府PET樹脂事業の内容
 当社の子会社であるカネボウ合繊株式会社の防府合繊工場において、ボトル用、射出成型用、異型押出用、光学レンズ用(O−PET)等のPET樹脂製品を製造し、同製品を販売しております。
 なお、Aペットシート、機能性樹脂及び北陸で製造されているPET樹脂製品に係る事業は含まれておりません。

2)高分子防府PET樹脂事業の概要
 主たる事業の運営場所:山口県防府市(製造)
                大阪府大阪市、東京都港区(販売)
 売上高(平成16年度):50億円

3.営業譲渡先の概要

名 称:日本リサイクリング株式会社(大和製罐株式会社の100%子会社)

〈大和製罐株式会社の概要〉

 (1)主な事業内容:
    各種缶詰用空缶の製造販売、化粧品・食品用プラスチック容器及び金属容器・キャップ類などの各種容器の製造販売
    容器製造システム及びプラントの研究・開発・設計

 (2)設立年月日:昭和14年5月20日

 (3)本店所在地:東京都中央区日本橋2−1−10

 (4)代表者:山口 久一

 (5)資本の額:2,400百万円

4.日程
 平成17年 6月15日  営業譲渡契約書締結
 平成17年10月 1日  譲渡期日(予定)

5.営業譲渡に伴なう損益影響について
 今般の営業譲渡については「事業再生計画」の方針に則したものであり、当社の業績に与える影響は軽微であると思われますが、詳細確定後、必要な情報開示を行ってまいります。


日本経済新聞 2005/8/31

カネボウ、飲料撤退 子会社エルビー アサヒビールに売却

 産業再生機構下で経営再建中のカネボウは子会社の清涼飲料メーカー、エルビー(愛知県東海市、中野達雄社長)をアサヒビールに売却する。売却金額は百億円弱とみられる。これによりカネボウは飲料事業から完全撤退する。年内のカネボウ化粧品を含むグループ一体売却をにらみ、有望事業に絞り込むことで支援企業(スポンサー)獲得を円滑にする考え。
 カネボウとアサヒビールは31日に株式売買契約を交わす。カネボウはエルビーに99%出資しており、保有株式の大半をアサヒに売却する。
 エルビーは1950年に乳酸菌飲料メーカーとして設立。工場から低温状態で運ぶ「チルド飲料」を、全国の牛乳販売店を通じた宅配向けに製造・販売している。東海地方での知名度は高い。2005年3月期の売上高は約63億円。純利益は約11億円。
 カネボウは今年5月、今回とは別の子会社でチルド飲料を製造・販売するエルビー・埼玉(埼玉県蓮田市)をアサヒビールに売却。昨年には缶入り飲料子会社も清算している。
 カネボウは昨年5月に事業ごとに採算性を精査。食品の一部と薬品、日用品の3事業を「中核」事業と位置づけた。エルビーも食品事業の一角を占めていたが、将来性を見極めた結果、最終的に売却を決めた。
 アサヒはエルビー買収で、チルド飲料の売上高を年間約150億円から200億円超に拡大する。消費者のアルコール離れ
などで酒類需要は伸び悩んでおり、全体の15%を占める飲料事業の強化が急務になっていた。


日本経済新聞 2005/9/23

カネボウ ファッション撤退 
 仏ロレアル・米モルガン 2次入札へ企業連合

 経営再建中のカネボウは海外衣料ブランド「フィラ」「ランバン」のライセンス販売などファッション事業から撤退する方針を固めた。産業再生機構は同社とカネボウ化粧品の支援企業を年内に選ぶ。27日に実施するグループ売却に向けた二次入札を前に、不採算事業の整理が必要と判断した。
 同入札には仏化粧品大手ロレアルと米金融大手モルガン・スタンレーが共同で応札する方針を決めた。
 カネボウは伊スポーツブランドの「フィラ」製品や仏「ランバン」の婦人衣料などをライセンス販売している。再生機構は昨年5月の支援決定時、同事業を日用品や薬品、食品の3事業と並ぶ中核事業と位置付けた。だが同機構は8月に実施したカネボウグループの支援候補を決める一次入札で化粧品や日用品などの事業に比べ、支援候補企業のファッション事業への関心が低かったことを受けて事業存続は困難と判断したもようだ。撤退に必要となるライセンス契約終結などの具体的な処理を今後詰める。
 同時に昨年から進めている本社のスリム化も加速。来年3月までに経営企画や経理など間接部門の社員を現在の約140人から60人程度に半減する計画だ。
 再生機構が実施する二次入札には、一次入札で単独応札したとみられるロレアルがモルガン・スタンレーと企業連合を組んで参加することが明らかになった。


日本経済新聞 2005/12/13

花王悲願、先行きは多難 カネボウ売却先に内定 再生機構
 分割再生 カネボウ不信感

 産業再生機構は12日、政策決定機関である産業再生委員会を開き、支援下で経営再建を進めているカネボウとカネボウ化粧品の売却先を花王と国内3ファンドの4社連合に事実上内定した。週内の正式決定を目指す。2年前にカネボウとの化粧品事業統合を白紙撤回せざるを得なかった花王にとっては悲願成就。だが、カネボウ側の花王への不信感は強く、組織を融合させ相乗効果を出すのは容易ではない。

 再生機構は同日、花王などの連合を売却先に選定するための最終調整を実施。事業の運営方針のほか、2003年に花王とカネボウが化粧品部門の統合で合意しながら労働組合の反対で破談になった経緯をふまえ、カネボウ従業員の雇用条件への配慮についても再度確認したとみられる。
 再生機構は2、3日中に経済産業省、厚生労働省などカネボウと再生機構の所管官庁から意見を聞く手続きを終え、週後半にも再び再生委を開催。機構が保有する株式と債権を花王陣営に売却することを正式に決める。
 花王はMKSパートナーズ、アドバンテッジパートナーズ、ユニゾン・キャピタルの国内3ファンドと1日に締め切った最終入札に参加。化粧品を花王、それ以外の事業はファンドが受け持つ「分割再生方式」を提案したとみられる。
 三度の入札を通じ「最有力」とされた花王の提案は機構側には好条件に映った。買収価格は各陣営の中で実質最高額となる4400億円程度を提示したうえ、花王は最終入札段階では唯一の事業会社。いずれは事業を売り払うフアンド勢より事業再生への期待も高まった。花王はカネボウ化粧品を傘下に収め、これまで
なかった専門店流通網を確保する。カネボウのブランド力を活用し、資生堂に大きく出遅れた中国などアジアを中心とした国際展開にも乗り出す。
 だが、花王はコスト意識の強い堅実経営で知られ、カネボウは伝統やブランドを重んじるといわれる。2年前の統合合意撤回にも影響した社風の違いは残っており、カネボウの組織が花王流になじめるかは不透明だ。再生手法もカネボウ側が一体再生を望んだのに対し、花王は事業再生についてはカネボウ化粧品だけを対象にする見通し。
 最終入札後も機構が花王側に求めた「雇用」問題の解決が急務となる。花王は雇用維持などを約束したもようだが、本社組織に労組のない花王がカネボウ労組をどう処遇するかなど課題は多い。
 3年越しの買収が花王にとってプラスかマイナスかーー。両社の「融合」度合いがそれを測る尺度になりそうだ。

国民負担回避を優先 再生機構 一体再生こだわらず

 カネボウ支援では化粧品とその他事業の分割再生か、一体再生かで産業再生機構の方針は揺れた。最終的には国民負担を避けることを優先し、当初方針の一体再生にはこだわらなかった。大型案件の支援終了は大京に次いで2社目。ダイエー、三井鉱山など後に控える大型案件の「出口」に向けた再生機構の取り組みが本格化する。
 支援企業の入札で再生機構が何よりも重視したのが、国民負担の回避。機構の出資額は2560億円と全案件中で最大。融資などを合わせれば4100億円強を投入しているだけに「金額が最大の焦点」(関係者)との見方は当初から強かった。
 このため再生方針も揺れた。再生機構の立場は「カネボウ本体と化粧品にはシナジー(相乗)効果がある」とする一体再生。それでも花王陣営が分割方式を軸に実質的な最高額で応札すると、「売却が一体ならばよい。企業価値を高められるなら(再生後の姿が)一体か分割かにはこだわらない」(幹部)と柔軟な対応を見せた。
 これで機構が支援する売上高1千億円超の大企業5社のうち2社の支援が終了。今後の焦点は残る三井鉱山、ダイエー、ミサワホームホールディングスの再生に移る。
 注目はダイエー。スポンサーの信用力をバックに業績を回復している他の企業に比べ、苦戦が続く。カネボウ化粧品のような絶対的な優良部門を持たないダイエーをスポンサーとともにいかに再生し、出口に導くか。再生機構はこれから正念場を迎える。


日本経済新聞 2005/12/17

カネボウ売却先 花王陣営に決定 再生機構 譲渡額4400億円程度

 産業再生機構は16日、経営再建を支援していたカネボウとカネボウ化粧品を、花王と国内投資フアンド3社の連合に売却すると正式発表した。入札に参加した陣営で最も高い4400億円程度の応札額を示したことや今後の事業計画の確実性を評価した。再生機構の支援案件の中で最大となる4100億円超の公的資金を注いだカネボウ支援が終了する。
 来年1月末に機構が保有する株式と債権を花王側に譲渡する。再生機構は投入した資金を回収し、200億円前後の利益を得る計算になる。
 カネボウ化粧品とカネボウの出資関係は解消し、分離して事業価値を高める。花王はカネボウ化粧品を約4100億円で取得。完全子会社として自らの化粧品事業との相乗効果を狙う。カネボウはアドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズ、ユニゾン・キャピタルの3ファンドが出資する新会社が取得し、再上場も視野に再生を進める。「カネボウ」ブランドはカネボウ化粧品だけが使えるようにするが、2年間はカネボウにも使用を認める。
 個人投資家らが保有するカネボウ株式(議決権比率で約30%)はファンド連合がTOB(公開買い付け)を実施する。

花王陣営へのグループ売却手法

<カネボウ化粧品>
・花王が現金・現金同等物を除き約4100億円で買収
・花王がカネボウ化粧品の株式のうち再生機構が保有する86%と本体保有分の14%を2790億円で取得
・花王がカネボウ化粧品からブランドなど知的財産権を1480億円で取得

<カネボウ本体>
・アドバンテッジパートナーズなど国内3ファンドが共同出資会社「トリニティ・インベストメント」を通じ、カネボウ本体株のうち再生機構が保有する32.11%を取得
・カネボウ化粧品が保有する本体株も花王から譲渡を受け、持ち株比率を70.25%にする
・3ファンドは本体株の約29.8%を保有する一般株主に対しTOB(公開買い付け)を実施



日本経済新聞 2008/11/24

旧カネボウ少数株主 東京高裁、賠償請求認める 
  M&Aの現場に戸惑い 「TOB必要」に懸念の声
  
 旧カネボウ株を巡り、東京高裁が今年7月に下した判決がM&A(合併・買収)の現場に波紋を広げている。投資ファンド側が産業再生機構などから相対取引で株を取得した経緯について、同高裁が「TOB(株式公開買い付け)を行うべきだった」と認定、少数株主に対する損害賠償を命じたからだ。「取引の実態を踏まえた妥当な判断」との評価がある一方、「TOBが必要になるM&Aが増えてしまう」など戸惑いの声も上がっている。

 訴えていたのは旧カネボウの普通株1500株を保有していた男性。投資ファンド側が2006年に産業再生機構などから旧カネボウ株の3分の2以上を相対取引で買い取った際、「大量の株式を買い付けるのにTOBをしなかったのは違法」と主張。「TOBに応じて株を売却する機会を逸した」などとして損害賠償を求めていた。
 これに対し、投資ファンド側は「大量買い付けでも株の所有者が25人未満で、全員が同意していればTOBをしなくてよい」という例外規定を指摘。「買い付け対象は普通株と異なる種類株で、所有者は産業再生機構とカネボウ化粧品の2社のみ。いずれもTOBをしない売却に同意していた」と反論した。
 一審・東京地裁は昨年5月、「例外規定の対象」と認定、男性の訴えを棄却した。ところが東京高裁は今年7月、例外規定の対象となる同意が必要なのは「買い付け対象外を含めたすべての株所有者」と解釈し、多数の一般株主を含めると、例外規定の対象とならないと判断。そのうえで投資ファンド側が産業再生機構から購入した際の価格(1株201円)を基に損害賠償を命じた。

「全実務家に衝撃」
 「わが国のM&Aに携わるすべての実務家にとって衝撃的な内容」ーー。10月下旬、この東京高裁を批判する匿名のコラムが企業法務の専門誌に掲載された。特に産業再生機構から買い付けた価格を基に損害賠償まで命じた点について、「実務を震撼させた」と強調した。
 具体的にはどのような影響があるだろうか。
 例えば今月7日にパナソニックが発表した三洋電機の買収。三洋はゴールドマン・サックスグループ、大和証券SMBCグループ、三井住友銀行に種類株(優先株)を発行、すべて普通株に転換すると、議決権の割合は約7割に達する。だが仮にパナソニックが3社の同意を得て優先株だけを相対取引で取得した場合、今回の東京高裁判決に基づけば、種類株だけでなく、全株対象にTOBすべきだったとして"違法"とされる可能性がある。
 M&Aに詳しい中川秀宣弁護士は「同じ企業の株でも種類が異なれば価格やプレミアも異なり、買い付けは種類株ごとで考えるのはM&Aの実務では常識」という。金融庁も例外規定の解釈について「異なる種類の株券がある場合には、種類ごとに25人未満であればよいか」という質問に原則として「株券の種類ごとに適用を受ける」としている。今回の取引でも投資ファンド側の弁護士は「事前に金融庁に文書で確認したのに……」と戸惑う。
 「上場会社では全種類の株主数が25人未満ということは想定できず、例外規定が適用できなくなってしまう」。今月中旬、東京駅近くで開かれた企業の法務担当者向けのセミナーで、金融商品取引法に詳しい小島義博弁護士が「この高裁判決がある限り、リスクがあると考えたらTOBを検討せざるを得ない」と解説した。
 特に12月からTOB規制違反に対し、課徴金が導入される。違反すると、課徴金額は買い付け額の25%。小島弁護士は「1千億円の買収だと、課徴金は250億円になる。自社株買いのインサイダー取引違反は数千万円程度だが、TOB規制違反は重い」と注意喚起する。

妥当との指摘も
 一方で、「取引の実態を判断した妥当な判決」という指摘もある。高裁判決では「特定の種類株を対象にした買い付けでも会社支配権に影響を及ぼすならば、対象外の一般株主にも大きな影響を与える。透明性、公正性を確保するため、全株を対象としたTOBを強制する必要がある」とする。早稲田大の上村達男教授は「今回のケースは投資ファンド側が支配権を得て少数株主を排除するための取引。TOB制度の趣旨から考え、少数株主を救済した高裁の判断は妥当」と評価する。
 さらに上村教授は買い付け対象になった種類株の内容にも注目する。旧カネボウの種類株は約8カ月後には普通株に転換でき、会社が解散した時の財産分配権がないだけの内容だった。上村教授は「形式的に種類株であることを利用して、例外規定を利用するのはTOB制度を骨抜きにするだけ」と指摘する。
 解散時の財産分配権は「会社法で定める配当権、議決権と並ぶ株式の権利の三本柱。分配権がなければ違う種類の株といえる」(会社法に詳しい弁護士)という見解もある。しかし、金融庁も「株券の種類をどのようにとらえるかは関係法令と照らして個別事案ごとに判断される」と解釈に含みを残している。
 M&Aに詳しい複数の弁護士は「今回の判決が種類株と普通株を同一と判断し、TOBが必要とするならば理解できるし、実務への影響も少ない」と口をそろえる。最近の東京高裁の判断には、M&Aの実情にあまりにも理解が薄いのではないか」という批判もある中、TOB規制を巡る最高裁の判断が注目される。

投資ファンド側は上告 最高裁の対応に注目

 旧カネボウ株を巡っては少数株主から複数の裁判が起こされている。
 今回注目されているのは、個人株主が単独で2006年7月に損害賠償を求めて提訴した裁判。一審・東東地裁は請求を棄却したが、東京高裁は今年7月、「TOBをしなかったのは違法」として逆転判決を言い渡した。投資ファンド側は上告と上告受理の申し立てを行っており、最高裁が審理している。
 これとは別に、投資ファンド側が06年2月に旧カネボウ株の普通株を1株162円でTOBした後、旧カネボウが少数株主の株を買い取るために提示した価格(T0B価格と同額)を不服とする複数の株主が旧商法に基づいて申し立てた裁判がある。東京地裁は今年3月、「1株360円が妥当」と決定、会社側は抗告している。

カネボウ株を巡る主な動き

年月 出来事
2004年9月 産業再生機構に種類株約5260万株を第三者割当増資(1株380円)
2005年4月 粉飾決算の事実を公表
     6月 上場廃止、終値は1株360円
     7月 カネボウ化粧品に種類株6250万株を第三者割当増資(1株320円)
2006年1月 投資ファンド側、産業再生機構から種類株購入(1株201円)
     2月 投資ファンド側、カネボウ化粧品から種類株購入
  投資ファンド側、旧カネボウ普通株をTOB実施(1株162円)
2007年5月 東京地裁、「産業再生機構などからの買い付けは適法」と判決
     6月 カネボウ、株主総会で解散を決議
2008年3月 東京地裁、少数株主からの買い取り価格を1株360円と決定 ※旧カネボウが抗告中
     7月 東京高裁、「産業再生機構などからの買い付けはTOBにすべきだった」」と判決(1株201円)
※投資ファンド側が上告中