2002/12/5 日本経済新聞夕刊 

豊田通商とトーメン 経営統合を検討 トヨタが資金支援

 トヨタ自動車グループの豊田通商とトーメンが経営統合の検討に入ったことが5日明らかになった。共同持ち株会社を設立し、両社を傘下に収める方式などを軸に調整する。トヨタも出資などを検討する。主要行のUFJ銀行など金融機関とも金融面での支援を含め協議に入る見通し。総合商社の経営統合は1977年の伊藤忠商事による安宅産業の救済合併以来。
 トーメンは経営再建の遅れから株価が低迷。2002年9月末の連結株主資本は49億円にとどまっており、トヨタグループは抜本的な再建策が必要と判断したもようだ。豊田通商はトーメンに11.5%を出資する筆頭株主。経営統合は実質的に、トヨタグループによるトーメンの救済になる。
 トーメンは今後、不採算事業の整理・撤退など大規模なリストラを実施。化学品や情報技術(IT)など競争力が比較的高い分野を中心に、トヨタグループの一員として生き残りを模索する。豊田通商は経営統合により、非自動車分野の事業を強化する狙いがあるとみられる。
 トーメンは2000年、バブル期に実施した不動産投資などの処理のため、旧東海銀行(現UFJ銀行)など主力取引金融機関に2190億円の債務免除を要請。豊田通商の資本参加を受け、経営再建を進めてきた。
 豊田通商には鉄鋼、非鉄、繊維機械などの事業を譲渡、約200社の関係会社を統廃合するなどリストラに着手。だが景気低迷による収益力回復の遅れや株式市況低迷による保有株式の含み損拡大などで、9月末の連結株主資本は49億円(株主資本比率0.4%)にとどまっている。
 連結有利子負債は8599億円と株主資本に対して過剰で、「過剰債務企業」に対する市場の見方が厳しさを増す中、株価も一時50円を割る水準まで落ち込んでいた。

トーメン
 1920年に三井物産の棉花部門を母体に「東洋棉花」として発足、70年に現社名に変更した。化学品、食料、電力などが主力部門で、連結売上高は総合商社7位。2000年に豊田通商を筆頭株主として迎え入れ、経営再建中。
 2002年3月期の連結売上高は2兆3848億円、最終利益は47億円。単体従業員数は約1200人、連結株主資本は49億円(9月末)

豊田通商
 トヨタ自動車系商社として1948年に発足、56年に現社名に変更した。金属、機械、車両、食料が中核で、2000年に中堅商社の加商と合併するとともに、トーメンと資本・業務提携した。。2002年3月期の連結売上高は2兆2556億円、最終利益は87億円。単体従業員数は約2千人、連結株主資本は1508億円(9月末)


日本経済新聞 2002/12/26

トヨタ、トーメンを傘下に グループ出資3割超す 2005年めど豊田通商と統合

 トヨタ自動車グループは25日、経営再建中の総合商社卜ーメンヘ100億円を出資し、傘下に収める方針を固めた。トーメンはトヨタグループから35%前後の出資と、役員の派遣を受け入れる意向で、2005年をめどに豊田通商と経営統合する。主力行のUFJ銀行などに1500億−2000億円の金融支援を要請、人員の3割削減など大規模なリストラも進める。トーメンの田代守彦社長は経営責任を取り辞任する。
 トーメンは来年、減増資を実施する。増資後資本金は未定だが、現在、11・5%をトヨタグル−プの商社、豊田通商が出資しており、これを最終的に20%程度まで引き上げる。トヨタ本体も出資してトーメンの信用力を高める。
 経営統合の形態は、トーメンの中核事業を絞り込んだうえで豊田通商と合併する案や、共同持ち株会社を設立する案などが浮かんでいる。
 トーメンヘの金融支援は2000年に続き二度目。債権放棄と債務の株式化を組み合わせて実施する。田代社長は辞任する。今後、不動産や機械部門など不採算事業を大幅に縮小、9千人いる連結従業員数を約3割削減する方針だ。
 トーメンは経営再建の遅れから株価が低迷。2002年9月末の連結株主資本は49億円にとどまり、筆頭株主である豊田通商などに経営支援を要請していた。
 トーメンは今後、化学品や情報技術(IT)、繊維など競争力のある分野を核に再建を図る。豊田通商は経営統合により非自動車分野を強化。ト−メンとの海外拠点の統廃合なども進め、トヨタグループの総合商社として競争力を向上させる。
 トーメンはバブル期に手掛けた不動産投資などの処理に伴い、2000年に旧東海銀行(現UFJ銀行)など主力取引金融機関に2190億円の債務免除を要請。豊田通商から11.5%の出資を受け入れ経営再建を進めてきた。
 だが、収益回復の遅れや、株式市況低迷による保有株式の含み損拡大のため、9月末時点の連結株主資本比率は0.4%まで低下していた。
 一方、連結純有利子負債は8599億円と株主資本に対して過剰で、「過剰債務企業」に対する市場の見方が厳しさを増すなか、株価も一時50円を割り込む水準まで落ち込んでいた。

▼トーメン
 1920年に三井物産の綿花部門を母体に「東洋棉花」として発足、70年に現社名に変更。化学品、食料、電力などが主力部門で、連結売上高は総合商社7位。2000年に豊田通商を筆頭株主として迎え入れ、経営再建中。2002年3月期の連結売上高は2兆3848億円、最終利益は47億円。単体従業員数は約1200人、連結株主資本は49億円(9月末)

▼豊田通商
 トヨタ自動車系商社として1948年に発足、56年に現社名に変更した。金属、機械、車両、食料が中核で、2000年に中堅商社の加商と合併するとともに、トーメンと資本・業務提携した。2002年3月期の連結売上高は2兆2556億円、最終利益は87億円。単体従業員数は約2千人、連結株主資本は1508億円(9月末)。

トヨタ、卜ーメンを傘下に 「駆け込み寺」の側面も

 トヨタ自動車グループがトーメン支援策を固めた背景には、政府が経営不振企業の整理を促すなかで「駆け込み寺」的な役割を担わされた側面がある。
 11月にトーメンから経営支援の要請を受けて以降、トヨタ首脳の発言が実質的にトーメンの株価を支えてきた面もあり、最終的に引くに引けない立場に立たされた格好といえる。
 それだけにトヨタ側は「支援するかどうかは大規模なリストラと金融支援が条件」(トヨタ首脳)との強い姿勢を終始崩さなかった。特に豊田通商は持ち分法適用会社となる20%以上の出資には抵抗を示したもようで、グループ全体での支援策の合意は難航した。
 トーメンとトヨタ側の温度差は小さくない。トーメンは多くの支援を引き出したい一方、トヨタ側は経営権を握る形となるとトヨタの株価や格付けなどにも影響しかねないとの懸念もあった。
 ただ、トヨタとトーメンには歴史的関係もある。
トーメンの前身である三井物産・棉花部を独立させた児玉一造氏がトヨタ自動車の初代社長である豊田利三郎氏の実兄で、豊田佐吉氏の創業を支援した経緯がある。そうした“恩義”と経営の合理性の兼ね合いで、ギリギリの譲歩を迫られた。


2002/12/27 豊田通商                         解説

株式会社トーメンとの資本・業務提携に関するお知らせ

 豊田通商株式会社は株式会社トーメンと2000年3月28日に締結した資本・業務提携に基づき自動車分野をコアビジネスとしながらも当社2010年ビジョンにおける注力分野(特に情報、生活関連)など非自動車分野の拡大をはかるべくその実行に注力してまいりました。また、最近の急速な海外展開のために、人材・機能の強化が重要な課題となっていますが、今後の更なる飛躍を目指し下記の通り株式会社トーメンと基本合意いたしましたのでお知らせいたします。

【合意内容】
(1) 株式会社トーメンは、以下を行う。

  a. 新中期計画の具体的着手を早急に行うこと。
  b. 株式会社ユーエフジェイ銀行ほか金融機関から、平成15年3月31日までに所定の金融支援を受けること。

(2) 豊田通商株式会社は、トヨタグループと共同して、以下を行う。

 a.トヨタグループとして第3者割当増資の引き受け。
 b.余剰人材のグループとしての再就職支援。



日本経済新聞 2002/12/28


トーメン、豊田通商と統合発表
  「トヨタ商社」で生き残り リストラ徹底条件

 トーメンは27日、経営統合を目指す豊田通商などトヨタ自動車グループを引受先とする100億円の第三者割当増資、UFJ銀行などへの1700億円の金融支援要請を柱とする経営再建策(新中期経営計画)を正式に発表した。二度目の金融支援に際し「トヨタ」の後ろ盾が必要なトーメンと、経済合理性を主張し続けたトヨタ側。発表直前までUFJ銀を交えたぎりぎりの調整が続いた。

■頼みの綱
 「5年前から考えていたことだから」。27日朝、都内の自宅を車で出発した田代守彦・トーメン社長はこんな打ち明け話をしてみせた。
 「当社が生き残る道はトヨタと組むこと」。アジア通賃危機に揺れた1997年、実際にトーメン社内でこんな話が交わされている。
 両社の創業者が縁せき関係にあるから、最後の“駆け込み先”はトヨタ、という意識だ。事実、トーメンは2000年に豊通を筆頭株主に迎え入れた。
 ただ当時の千輪博・豊通社長は「合併はあり得ない」と明言している。業績や株価の低迷で、やむなくトヨタグループに駆け込んだのが実情だ。

■資産半減
 24日、名古屋駅前の豊通本社。田代・トーメン社長、古川晶章・豊通社長、岡崎和美・UFJ銀副頭取がひそかに会い、トーメンの経営再建策で最後の詰めの協議を行った。
 この席でトーメンは人員の4割削減、資産半減という、組織解体とも言える抜本的な合理化を約束させられる。UFJ銀は二回目の金融支援を正式に提示。豊通はリストラの着実な実施を条件に、追加出資に応じる姿勢を見せた。
 トーメン、UFJ銀にとっては、まさにぎりぎりの交渉だった。「金融支援を受けるのは二度目。再生を確実にする枠組みを作らないと、市場から抹殺される」。ここでトヨタ傘下入りし信用力を高めないと再建はままならぬとの強い危機感が、田代社長にはあった。
 UFJ銀については、「藤和不動産への二度目の債権放棄で(株主などの)集中砲火にあったから、藤和の二の舞いだけは避けたかったのではないか」と関係者は指摘する。トヨタ傘下入りとセットでの金融支援であれば、二度目でも批判をかわせるとの見方だ。

■温度差も
 一方、トヨタグループで交渉窓口となった豊通は、「当社の事業にとってプラスになるのなら話に乗る。ただそれだけだ」という淡々とした態度。まず統合ありきでなく、トヨタグループが納得できるリストラ案を示すのが先というのが、一貫した立場だった。
 「我々にできることはただ頑張るだけ」
 27日朝の取締役会を控えた、あるトーメン役員の発言だ。社内で聞かれた「企業規模を一気に縮小すると収益力も細る」といった意見はなりをを静め、取締役会は淡々と進んだ。トーメンは名実ともに「トヨタ系商社」として生き残りを模索することになる。
 もっとも豊通は、27日は増資引き受けと余剰人員の再就職支援を約束しただけ。経営統合に言及していない。交渉の過程では「これまでの出資金はドブに捨てたようなもの」と、幹部がトーメンの再建姿勢に不信感をあらわにする場面もあった。トーメンは新経営再建策の着実な実行が求められている。

トーメンの経営再建策の骨子

・豊田通商との経営統合で合意
・トヨタグループヘの第三者割当増資100億円を実施
 (2003年8−9月、豊田通商の持ち分法適用会社に)
・90%減資(2003年8月)
・UFJ銀など主取引金融機関に1700億円の金融支援を要請
 (債務免除1100億円・優先株引き受け600億円)
・連結べ一スで約9000人の社員数を4000人削減
・連結ベースで約120億円の経費削減
・海外拠点の削減(駐在員28%減・現地社員15%減)
・不動産事業からの撤退
・1兆4483億円の連結資産を3年間で7350億円に圧縮
・1兆1120億円の有利子負債を3年間で4630億円に
・田代社長は来年6月末で引責辞任
・役員の降格、役員報酬の追加カット(平均10%)、役員数の削減

環境・IT相乗効果 トヨタの新規事業を補完

 「3年間でトーメンのぜい肉をそぎ落とし、最終的には豊田通商が吸収合併する」ーー。こんな観測が流れるなか、2005年にも発足する予定の統合新会社は、トヨタ自助車グループの一員として出発する異色の“総合商社”になる。
 「豊田通商との統合により、エレクトロニクスや環境などの分野でトヨタグループに貢献できる」。トーメンの田代守彦社長が強調する相乗効果は、トヨタ自助車グループが描く成長戦略とも合致する。
 「自動車産業のすそ野は今後も広がり、総合技術産業になる」(トヨタ自動車の張富士夫社長)。統合会社の最大の強みは、トヨタ自動車の世界戦略に合わせた拡大シナリオを描けることだ。
 トヨタは国内自動車需要の頭打ちを受け、海外展開を加速。2002年の海外生産台数見通しは216万台で、10年前に比べ2.8倍に拡大した。しかし、「急速な海外展開に人材の育成が追い付いていない」(張社長)。豊田通商に加え、卜ーメンを傘下に収め、「自動車部品をはじめとする国際的な資材調達分野などで商社の果たす機能は大きい」(奥田碩トヨタ会長)と期待する。
 トヨタは自動車周辺の新規事業として、情報技術(IT)、環境などに力を注ぐ。これは豊田通商が今後の収益分野に位置づける領域とほぼ合致する。
 子会社に東証一部上場のトーメンエレクトロニクスを抱え、風力発電事業などに強みを持つトーメンは、「トヨタグループにとっては使い勝手がいい商社」(関係者)ともいえる。
 だが、商社をめぐる事業環境は急激に変わっている。規模で統合会社を上回る三菱商事や三井物産なども、資源・エネルギーなど収益性の高い分野やITなど新規分野への投資を積極化。一方で、旧財閥系の枠を超えた事業提携を加速し、三菱商事がトヨタと病院支援ビジネスで共同出資会社を設立するなど、案件ごとに最適なパートナーを見つける動きが広がっている。「トヨタ系商社という看板だけでは生き残れない」(大手商社幹部)のも確かだ。


日本経済新聞 2002/12/6

大手商社による主な事業譲渡(カッコ内は譲渡の時期)

日商岩井 宝石・貴金属の小売り→内原グループ(2002/5)
ニチメン 液化石油ガス→シナネン(2001/9)
鉄鋼原料→日商岩井(2002/3)
ダイハツ工業関連の自動車事業→豊田通商(2002/11)
鉄鋼製品→住友商事(2003/7予定)
トーメン 鉄鋼製品→豊田通商(2000/11)
非鉄金属→豊田通商(2002/6)
繊維機械輸出→豊田通商(2002/10)

日本経済新聞 2002/12/16