日本経済新聞 2003/1/15

米で医薬研究強化、エーザイ 販売担当者も倍増

 エーザイは2006年までに米マサチューセッツ州に、あらゆる基礎研究業務に対応できる研究棟を約6500万ドル(約77億円)を投資して新設する。米国の販売担当者も来年末までに倍増する。日本の医薬品市場が低迷する中、世界最大市場の米国に積極投資し、研究開発から販売までの一貫体制を強化する。
 研究棟は米研究子会社がボストン近郊のアンドーバーに確保している約9万平方メートルの敷地に来年春着工する。延べ床面積は約1万平方メートル。
 米国ではこれまで新薬候補物質となる化合物の合成のみを手掛けていた。新棟では発酵や培養などバイオ技術を使った新薬候補探索、動物を使った化合物の安全性や有効性の試験まで広く手掛ける。米国では新薬を探し出すための研究要員を160−170人に倍増し、日本の筑波研究所(茨城県つくば市)と並ぶ二大研究拠点とする。
 新棟の近隣にある工業化研究所では、臨床試験に使う原薬の生産設備を1ラインから2ラインに増やすための拡張工事に着手した。完成予定は今秋で、投資額は約900万ドル(約11億円)。
 ニュージャージー州の製造販売子会社には医薬情報を医師に伝える医薬情報担当者(MR)が約250人おり、これを5月までに約400人、来年中に500人超に増やす。ノースカロライナ州の医薬品工場についても、10月までに7割拡張する工事を進行中だ。
 製薬業界では薬価(薬の公定価格)引き下げや淘外企業の攻勢に伴い、米国市場の開拓が重要な課題。エ−ザイは米国で痴ほう治療薬と抗かいよう剤の売り上げが好調だが、米国の研究・販売体制は日本に比べると格段に弱かった。

 


日本経済新聞 2003/2/6

医薬品 受託生産を拡大 ニプロ ライン増設に130億円

 医療器具大手のニプロは医薬品の受託生産事業を拡充する。年内に約130億円を投じて子会社の菱山製薬(大阪市、生地義明会長)が抗生物質などの生産ラインを増設する。昨年成立した改正薬事法で医薬品の委託製造が急増する見通しのため、生産設備を増強する。
 設備増強を決めたのは注射剤の受託生産拠点として、昨年4月にしゅん工した大館工場(秋田県大館市)。現在は点滴タイプ注射剤の人工透析補充液とペニシリン系抗生物質の2本の生産ラインが稼働しており、5月までにセフェム系抗生物質の生産ラインも追加導入する。
 注射器にあらかじめ薬剤を充てんするタイプの製品の生産にも乗り出す。年内に2本の生産ラインを新造する予定で、合計5本の生産ラインが稼働する。
 ニプロと菱山製薬は2004年以降も受託契約をにらみながら、順次、大館工場の生産能力を増強する方針。中期計画の累計投資額は今回の120億円も含めて約200億円に達し、生産ラインは計8本、生産能力は現在の4倍程度に高まる見込みだ。
 菱山製薬は1993年から注射剤の製造過程の一部を受託してきたが、薬事法の改正で今後は全面受託が可能になる。委託側の大手医薬品メーカーは相次ぎ製造部門の分社や工場の一部閉鎖を決めており、製造受託の需要が高まる見通しになっている。


日本経済新聞 2003/7/23

三菱ウェル、事業譲渡を発表
 苦戦の大衆薬 各社重荷に 業界再編促す可能性も

 製薬各社の大衆薬事業が苦戦している。病院で処方される医療用医薬品に比べ収益率が低いためで、22日には三菱ウェルファーマが佐藤製薬への全面的な事業譲渡を決めた。薬局・薬店で購入できる大衆薬は製薬会社の広告塔としての役割を担ってきたが、三菱ウェルの撤退が刺激となり、業界再編が進む可能性も出てきた。
 三菱ウェルは外用鎮痛消炎薬「サロメチール」や胃腸薬「ハイウルソ」など、約60品目の販売を11月から来年2月にかけて佐藤製薬に譲渡する。事業規模は年商約10億円で、譲渡額は数億円程度とみられる。
 2002年度の大衆薬市場は小売りべースで約5%減の1兆円。市場は飽和に達しているとの見方が多く、2002年度はトップの大正製薬を除く大半が減収だった。
 大衆薬は医療用医薬品と異なりテレビCMなどの広告宣伝を認められている。企業の知名度を高める効果が高いが、その分コスト負担も大きい。これまでも医療用医薬品が主体のメーカーの間で、大衆薬部門を分離して合体させる“大衆薬連合”の構想が幾度となく浮上している。