それでも

   21世紀は日本の世紀!


 戦後日本の繁栄を支え、「ジャパン アズ No.1」をもたらした日本株式会社の政官財体制はバブルの崩壊とともに完全に化けの皮がはがれた。1997年の末から毎日毎日ひどいニュースが続いている。

 政治は日本が危機に瀕しているに関わらず相変わらず政争に明け暮れ、政治家と特定の利害のために動いている。
 官僚は護送船団方式が崩壊し、絶対につぶさない筈の銀行や証券会社の破綻、その救済のための税金の使用と低金利政策による国民負担の増大、それにもかかわらず権益を保持しようとする態度、更には収賄やたかりなど犯罪まで続出し完全に信頼感を失った。

 「政治は三流だが経営は一流」と豪語した財界も、財テクの失敗や社員の不正で膨大な赤字を計上する企業が続出している。
 しかもそれらの企業の経営者は株主の財産である株式含み益で補填して涼しい顔をしている。
 株価の下落でそれが出来なくなった金融界は、リストラもせず、預金者保護を理由に税金を使って危機を逃れようとしつつ、貸し渋りや貸出金利のアップで永年の顧客の切り捨てをしようとしている。
 政治家や官僚の汚職も元は経済界がその利益のために金を出しているのである。

 今や、国際的にも日本経済に対する信頼感はなくなり、円は暴落し、日本の株式は売られ、日本の銀行の借り入れ利率のプレミアムは拡大するとともに、日本の「一流」銀行の信用状が拒否されるまでになった。

 これに対し、一般国民はリストラにより生活の基盤を失い、消費税率の引き上げで生活は苦しくなり、銀行を救うための低金利政策の継続、年金制度の破綻、預金や保険の将来性の不安などで老後の生活がどうなるか、不安は尽きない。

 しかしこの時期になっても、政官財のための政治経済は自己の利益のために動き、国民は無視されている。他の国にあれば暴動、革命が起こっても不思議ではない。
 「寄らしむべし」で、「おかみ頼み」に慣れた国民は、どうしようもない無力感を持つだけで動こうとしない。

 このままでは日本という国は崩壊するという議論が多い。
 しかし、それらの評論家や経済学者も、それぞれの事象を取り上げ甲論乙駁するだけで、なんの解決策も出さない。

それでも、「21世紀は日本の世紀」である。

 いや、その条件が揃っていると言うのが正しい。それを実現するのは非常に容易であり、同時に非常に難しい。

 容易というのは、それを実現するのに革命は不要であるという意味である。

 難しいというのは、そのためには何世紀にもわたる日本人の意識を変えることが必要だという意味である。

 日本人一人一人の意識を変えさえすれば可能であり、それをしなければ日本の復興はありえず、逆にこのままでは世界経済を混乱させ、世界の爪弾きとなろう。

 

以下にその理由を述べる。→ 


付記

作家の村上龍氏が 電子メールでJapan Mail Media を主宰し、経済問題を専門家と議論すると同時に読者からの意見も求めています。『失われた10年』 の第4回目の質問は以下のものでした。

====質問:村上龍============================================================
Q:L004
 世界一の金持ちである日本人がどうしてウサギ小屋と呼ばれる狭い住宅に住んでいるのですか? と外国人に聞かれたとき、みなさんはどう答えますか?


これはまさに私の本論文のテーマです。本論をまとめて、以下のとおり投書したところ、掲載されました。同氏の出版された NHKスペシャル「失われた10年を問う」(NHK出版)にも掲載されています。

本論文の要旨として一読願えれば幸甚です。なお同時に掲載された多くの投稿が、日本人は金持ちではないとか、狭いながらも楽しい我が家、土地が狭いから仕方ない・・・ とかとなっているのは問題です。洗脳が行き届いているということでしょうか。


私の投稿

 これこそ日本の経済が停滞している原因であり、ひいては米国の貿易赤字にもつながる問題であり、同時に、この問題を解決すれば21世紀を日本の世紀としうる要素で もあります。

 究極の原因は日本国民の「おかみ頼り」の姿勢ですが、直接の原因は、これを利用 した政官財による特定利害集団のための国民からの搾取システムです。第一のシステムは、日本は土地が少ない、だから土地が高いという虚構をつくったことです。地価を上げて稼ぐのは政治家の土地転がしや最近の金融界の地価アップ期待に見られます。

 もう一つは規制です。いろいろの規制で特定利益集団の保護をしています。実際には田舎は過疎化し、都心でも土地は有効利用されていません。日本は土地が少ないというのは虚構です。日照権や高さ制限、建築基準法や消防法での建築材料・建築方法の規制、輸入規制や業者の指定、外人労働者雇用問題など、いろんな面で本当に多くの規制があり、これらが土地や住宅建設費を高くしています。これらを見直せば、いまの遠く・狭く・高い住宅を近く・広く・安い住宅に変えることは簡単です。

 住宅費が安くなれば老後のことを心配せずにすみ、生活を楽しむことが出来ます。この問題は世界経済に影響を与えています。日本人は勤勉で世界中に輸出をし、ドルを稼いでいますが、それに見合う輸入をしていません。衣食住のうち、「衣」「食」(若い女性の場合は更に海外旅行)では贅沢ですが、限度があります。「住」で金を
使えないため、貿易黒字がたまりますが、実はこれは外国への失業の輸出と言えます。
 米国人は稼ぐ以上に使い、貿易赤字を出していますが、一面では日本が輸入をしないために稼ぎが減っているという点もあります。
 逆に、日本人は稼いだ金を貯金をしますが、これは住宅が高くて使えないためと、同じ理由で老後が心配なためです。好きこのんで貯金をしている訳ではありません。
 政治家や官僚は公共投資で景気回復をといっていますが、実は国民に金を使わさずに、自分たちの思い通りにその金を使っている訳です。

 そもそもの原因は国民にあります。何が起こっても(本来は個人の責任分野であっても)政府の責任にする。これはマスコミも同様です。この結果、ドンドン規制が行われ、政官財の立場を強化しています。

 解決策は自己責任体制の確立と国民の政治参加です。本当の自分たちの代表を選び、自分たちの主張を生かすことです。 そして官僚支配を排除し、議員が議員立法で法律を作るという本来のあり方を取り戻すことです。
 東京でも土地は(上空も含めると)無限にあります。これを生かすと需給関係から地代はタダ同然となる筈です。あらゆる規制を外せば、住宅の建設費も大幅に下がります。(高い土地をやっと買ったのにという人の不満を聞いてはいけません。規制で不利益になる業者も同様です。自己責任の原則をあらゆる面で確立する必要があります。例外は弱者救済だけにすべきです)

 これをすれば、「世界一の金持ちである日本人」が世界の水準で考えての「普通の生活」が出来るようになるとともに、輸入拡大で米国の貿易赤字を解消し、アジアの開発途上国の経済発展にも役立ち、世界経済の安定にも寄与します。膨大な内需の拡大で税収入も増え、財政赤字も簡単に解消できるでしょう。
 その結果、「21世紀は日本の世紀」となります。逆にそれをしなければ、日本という国は世界中から排斥されることになるでしょう。