2025/1/6 日本経済新聞

合成メタン 北米で量産 東邦ガス、脱炭素ヘプラント

東邦ガスは北米で次世代の脱炭素ガスとされる合成メタン(eメタン)の量産に乗り出す。米ルイジアナ州の液化天然ガス(LNG)基地周辺に数百億円を投じて製造プラントを設ける。二酸化炭素(CO2)を原料とするeメタンを日本に輸入する。同社が供給する都市ガスの1%に相当する3万トン弱を2030年までに確保する。

eメタンは再生可能エネルギーなどの電力で水を電気分解してつくった水素と、発電所や工場から回収したCO2を合成してつくる。都市ガスの主成分メタンとほぼ同じ組成となる。燃焼で発生するCO2と相殺し、排出を実質ゼロとみなせる。

米LNG基地「キャメロン」で東京ガスや三菱商事と検討してきた事業化(下記資料1)に向けて投資する方針を固めた。基地内のパイプラインを通じて水素とCO2を調達し、東邦ガスのプラントでeメタンを製造。液化したうえで愛知県に海上輸送する。29年度までの操業開始を見込む。

詳細な投資規模は25年春までに詰める。資金調達は新規借り入れや社債の発行などを想定する。東京ガスも25年度中の投資決定を目指す。

eメタンは価格がLNGの約5倍と割高な点がネックとされる。東邦ガスは製造コストを抑える技術開発も進める。愛知県知多市の主力拠点で、LNGが気化する際の膨張力で電気を生み出して水素をつくる実証実験(下記資料2)を手掛ける.。ガス管などの設備をそのまま使える利点も生かしコストを下げる。

政府は30年に国内のガス需要の1%をeメタンでまかない、50年にはこれを9割に高める目標を掲げる。他地域でも都市がス大手の計画が相次ぐ。大阪ガスは米ネブラスカ州かワイオミング州にeメタンの製造プラントを建設する。1000億円以上を投じ、30年に国内全体の導入目課の最大6割超にあたるeメタンを確保する考えだ。

オーストラリアでは東京ガスと豪エネルギー企業のサントスベンチャーズ、大阪ガス子会社、東邦ガスの4社が合成メタンの製造を換討している。

 

資料1


2023年8月30日 

米国キャメロンLNG基地を活用した日本へのe-methane導入に関する詳細検討への センプラ・インフラストラクチャー社の参画について


東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事、Sempra Infrastructure Partners LPは、このたび、合成メタン(「e-methane」)を米国メキシコ湾岸で製造・液化し、国際的に輸送するサプライチェーン確立に向けた共同検討に関する基本合意書を締結しました。

本プロジェクトでは、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの年間都市ガス需要の1%に相当する年間13万トンのe-methaneを製造、ルイジアナ州南西部の三菱商事が液化能力を有するキャメロンLNG基地にて液化し、日本に輸出することを目指します。

日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」実現には、熱需要に対応するガス体エネルギーの脱炭素化が重要です。その手段の1つとして、既存のLNG出荷・受入基地やパイプラインなどの都市ガスインフラや消費機器が活用でき、カーボンニュートラルへのスムーズな移行と追加的な社会コスト抑制の両立が可能なe-methaneの導入が期待されています。

また、米国エネルギー省と日本の経済産業省は「CCUS/炭素転換・カーボンリサイクル、二酸化炭素除去分野における協力に関する協力覚書」を締結しています。本プロジェクトはこの覚書の目的に適う取り組みであり、5社はカーボンニュートラルに資する燃料であるe-methaneをお届けできるよう、引き続き取り組んでいきます。

東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事は2022年より本プロジェクトの実現可能性に関する詳細検討を行ってきました。このたび参画したセンプラ・インフラストラクチャー社を含め、今後5社は既存の都市ガスインフラとLNGサプライチェーンを活用したe-methaneの導入・普及を牽引し、スムーズなエネルギートランジションの実現に貢献してまいります。
2022年11月29日

米国キャメロンLNG基地を活用した日本への合成メタン(e-methane)導入に関する詳細検討の実施について
〜東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・三菱商事4社で推進〜

東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事は、米国テキサス州・ルイジアナ州における合成メタン(e-methane)の製造、キャメロンLNG基地およびLNG船・受入基地などの既存LNGサプライチェーンを活用した合成メタンの液化・輸送、ならびに2030年の日本への合成メタン導入開始に向けた共同での詳細検討実施に合意し、このたび、検討に着手しました。2030年に13万トン/年の合成メタンを製造し、日本へ輸出することを目指します。

<本詳細検討の候補地>

 

 Cameron計画


 

 

資料2

2024年5月9日  東邦ガス

知多市と連携した「バイオガス由来のCO2を活用したe-メタン製造実証」の開始について
〜製造したe-メタンを国内で初めて都市ガス原料として利用〜

東邦ガスは、知多市と連携し、バイオガス由来のCO2を活用した e-methane(e-メタン)製造実証を開始しました。本実証で製造するe-メタンは、国内で初めて都市ガス原料として利用します。

本実証は、知多市南部浄化センターで発生するバイオガス由来のCO2と、冷熱発電による電力を活用した水素を原料としてe-メタンを製造するもので、既に都市ガス原料として受け入れを行っているバイオガスに加えて、新たにCO2を地域資源として活用する環境性の高い取り組みです。当社は、本実証で製造するe-メタンを原料とした都市ガスの供給に関して、株式会社アイシンと合意しました。

 e-メタンは、都市ガス導管やガス消費機器などの既存のインフラ・設備を有効活用できるため、社会コストを抑制しながら、カーボンニュートラルの実現に寄与します。
 当社は、将来的なe-メタンの本格導入に向けて、本実証で得られる成果や都市ガス原料としての利用を通じて、製造設備の大規模化や低コスト化などの技術課題の解決に繋げるとともに、普及拡大に必要な仕組みづくりにも貢献してまいります。

 
e-methane : グリーン水素などの非化石エネルギー源を原料として製造された合成メタン。本実証によって製造されたメタンの利用(燃焼)によって排出されるCO2と、本実証の原料として回収されるCO2が相殺されることから、大気中のCO2が増加しないため、カーボンニュートラル実現に貢献するもの。当社は、2050年にお客さま先を含めたカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、その主軸としてe-メタンを据えており、2030年までに1%以上のe-メタン導入を目指しています。
冷熱発電:LNG(液化天然ガス)の持つ冷熱を活用した発電方式。


<e-メタン製造実証の概要>
(1)場所:知多LNG共同基地敷地内
(2)期間:2024年度〜2026年度(予定)
(3)役割
 知多市 :バイオガス由来のCO2の提供
 東邦ガス:e-メタン製造設備の運用およびメンテナンス、システム全体での効率評価 など


<実証イメージ>

 

<知多LNG共同基地の実証設備の外観と仕様>