2009/8/19 住友金属鉱山

フィリピン最大手ニッケル鉱山会社の株式の取得について

 住友金属鉱山株式会社(本社:東京都港区 社長:家守伸正)は、このたびフィリピン最大手のニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション社(会長:マニュエル・B・サモラ・Jr、以下「ナック社」という)への資本参加を決定し、同社株式の16.5%を、約39 百万米ドルにて取得いたしました。
 ナック社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社です。2006 年2月に、それまで個別に経営されていたZamora グループ傘下のニッケル鉱山会社の資本を統合し、経営資源を集中させることにより、経営の一層の効率化を実現するために設立されました。
 ナック社傘下には、当社がフィリピンで操業するコーラルベイ・ニッケル社への鉱石供給を行うリオツバ・ニッケル・マイニング社もあり、当社とナック社はこれまでも事業上緊密な関係を有しております。また、現在、当社がフィージビリティスタディを実施中のタガニートHPAL(高圧硫酸浸出)プロジェクトでも、ナック社傘下のタガニート・マイニング社が鉱石を供給することを計画しています。
 当社はこのような将来にわたる重要な戦略的パートナーとしてのナック社との関係を一層強化するために、今回の資本参加を決定いたしました。
 当社は“
非鉄メジャークラス入り”を戦略的な目標としております。ニッケル事業では、フィリピン・コーラルベイでHPAL 法によるニッケル製錬を世界に先駆けて商業的に成功させ、世界最高水準のニッケル製造技術を実証いたしました。これを足がかりに計画中のタガニートHPAL プロジェクトの推進および新居浜ニッケル工場拡張など、積極的な事業展開を行い、非鉄メジャークラス入りを引き続き力強くめざしてまいります。

NICKEL ASIA CORPORATION

主要株主 M.B. Zamora Jr 37%
      P.T. Ang 19%
      L.J.L. Virata 18%

傘下鉱山(すべてニッケル鉱山)
 
Rio Tuba(リオツバ)鉱山
 
Taganito(タガニート)鉱山
 
Cagdianao(カグジャナオ)鉱山
 
Taganaan(タガナアン)鉱山
 
South Dinagat(サウスディナガット)鉱山 ほか

住友金属鉱山株式会社(本社:東京都港区 社長:福島 孝一)とフィリピン国Taganito Mining Corporation(タガニートマイニング社 本社:マニラ 社長:Salvador B. Zamora II)とは、フィリピン・ミンダナオ島北東部タガニート地区におけるニッケル製錬プロジェクトの実施可能性につき共同で検討することに合意し、2007年3月29日、フィージビリティー・スタディー契約に調印しました。

タガニート・プロジェクトは、現在世界で注目を集めている「HPAL法」(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸硫酸浸出法)を用いた大型ニッケル製錬プロジェクトです。フィージビリティー・スタディーの結果が良好であれば、2008年には共同 で合弁会社を設立してタガニート鉱山隣接地にHPALプラントを建設します。主に同鉱山にて産出する低品位ニッケル酸化鉱を原料としてニッケル・コバルト 混合硫化物(Nickel/Cobalt Mixed Sulfide、ニッケル品位約57%)を年産3万トン(ニッケル量換算)生産する予定です。プロジェクト全体の投資総額は10億ドル以上が想定されてお り、操業開始は2012年、操業期間は約30年間を見込んでいます。

HPAL法は、これまで有価金属の回収が困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルやコバル トを回収する技術で、住友金属鉱山はフィリピン・コーラルベイニッケルプロジェクトでの成功により、この技術分野において現在世界のトップランナーとなっ ています。コーラルベイニッケルプロジェクトでは年産約1万トン(ニッケル量換算)の生産を行うとともに、2009年春の完成を目指して現在年産約2万ト ン(同)規模への拡張工事を行っています。これらに加えて、このたびの新プロジェクト検討開始は、貴重なニッケル資源の一層の拡大につながるとともに、当 社が目指しているニッケル年産10万トン体制を実現し、さらに「非鉄メジャークラス」にまた一歩近づくものであると考えています。

コーラルベイニッケル沿革
1969:Rio Tuba Nickel Mining Co.の設立   パラワン島最南端 Rio Tuba村
1977: 高品位鉱石の大平洋金属八戸への輸出
2000: 住友金属鉱山が低品位鉱石処理BFS作成
2002/4:Coral Bay Nickel Corporationの設立
2005/4:商業生産開始

採掘済貯蔵低品位鉱石(Ni=1.26%)が原料
HPAL法(高圧硫酸浸出)によるMSの生産(NiS+ CoS)Ni=52.7%,Co=3.9%
新居浜でのMS(Nickel/Cobalt Mixed Sulfide)処理
E-Ni: 10,000 t/A
E-Co: 720 t/A
投資: 180 M$
生産開始: 2005年4月

CBNCは同鉱山でHigh Pressure Acid Leach技術を使って、平均1.26%とされる低品位ニッケル鉱石を年間1,600万t消費してニッケル Sulphidesを生産、これを住友金属鉱山・新居浜製錬所に出荷し、電気ニッケル、コバルトを生産している。

年間約26万tの硫酸を消費するため、住友金属鉱山東予工場(愛媛県西条市)の銅生産能力増強に伴い生産される硫酸の安定的なユーザーとしても期待されている。

現在CBNCはニッケル量で約10,000トン/年、コバルト量で約700トン/年のニッケル・コバルト混合硫化物 (Nickel/Cobalt Mixed Sulfide。ニッケル品位約55%)を生産していますが、これと同規模の第2工場を建設します。
(見直しで)第1工場と第2工場をあわせた年間生産能力は約10%の増加が見込まれます。(生産能力:ニッケル量で22,000t/年のニッケル・コバルト硫化混合物(Nickel/Cobalt Mixed Sulfideニッケル品位約55%))

ニッケルは、ステンレスをはじめとして電子・電池材料や航空宇宙産業などにも用いられ、先端産業を支えるメタルです。住友金属鉱山は戦前からニッケルの製造に取り組み、戦後は1951年から製造を再開、現在は我が国唯一の電気ニッケルメーカーとして、湿式製錬法であるMCLE法(マット塩素浸出電解採取法)により世界最高水準の品質を誇る電気ニッケルを提供しています。また、2005年4月からは、HPAL法(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸浸出法)という新技術を導入し、従来は処理できなかった低品位酸化鉱石を用いたニッケルの商業生産をフィリピン南西部のパラワン島で開始しました。これがコーラルベイ・プロジェクトです。このコーラルベイ・プロジェクトは住友金属鉱山が権益54%を保有する当社主導のニッケル製錬プロジェクトで、ニッケル製錬の中間品であるニッケル・コバルト混合硫化物を生産しています。

HPAL法(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸浸出法)で低品位酸化鉱石から資源を取り出す
このHPAL法はこれまで回収が難しいとされてきた低品位酸化鉱石からニッケル・コバルトを回収する画期的な方法です。それまでニッケル製錬は比較的品位の高い鉱石を原料としており、ニッケル分1.5%以下のラテライト鉱は原料に適さないとされてきましたが、多くの場合このラテライト鉱の下に高品位の鉱石が存在するため、ラテライト鉱を掘り起こす必要があり、コーラルベイ・プロジェクトの地、リオツバでも約20年間にわたり積み立てられたままになっていました。2006年度の生産量は1万トン(ニッケル量換算)であり、さらに既存の工場に併設する形で新たに同規模の第2工場を建設し、2009年度には2倍の生産規模へと拡張する予定です。