2012/6/26 日本経済新聞
大王、創業家の顔立て「和解」 北越紀州が仲介
北越紀州製紙と大王製紙は26日、北越紀州が大王の創業家から発行済み株式の約2割を取得、大王の筆頭株主になることで合意した。北越紀州は創業家が持つ大王のグループ会社株も取得し、大王に売却する。創業家出身者の借り入れ事件発覚以降、対立を深めていた大王と創業家側は、北越紀州を介すことでいびつな体制を解消する。
北越紀州が大王を持ち分法適用会社とし、同社に来年役員を派遣する。同時にグループ会社18社の株式を取得して大王に売却、大王は子会社化する。8月に取引が完了する見込み。大王株は100億円強、グループ会社株は400億円強で取引されるもようだ。
業界4位の大王と5位の北越紀州連合の2012年3月期の連結売上高は単純合算で6395億円。王子製紙、日本製紙グループ本社に次ぐ3位に浮上する。
昨年9月に創業家出身の井川意高前会長による巨額借り入れ事件が発覚して以降、大王と創業家は対立を深めた。大王は創業家が実質的に支配するグループ会社18社の買い取りを申し出たが、創業家側は拒否、3月下旬に交渉を打ち切った。
対立解消の仲介役を担ったのが北越紀州だった。王子が06年、北越紀州の前身である北越製紙に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛け、その際に大王は北越株を取得して買収防衛に一役買っている。交渉決裂前後に、双方はそれぞれ北越紀州に協力を求めた。
北越紀州が提示した解決策が今回のスキーム。創業家はグループ18社の株式を大王に売却することは拒否したが、北越紀州への売却なら意思を曲げたことにはならない。
残ったのは「創業家の大王からの名誉ある撤退」(北越紀州の岸本晢夫社長)。意高前会長の実父で大王の「中興の祖」とされる井川高雄氏の顧問復帰という花道を用意し、大王と創業家の対立は終止符を打った。
平成24年6月26日 北越紀州製紙
大王製紙及び大王製紙関連会社等の株式の取得及び譲渡に関するお知らせ
当社は、本日開催された取締役会において、井川雄氏、井川彌榮子氏、井川意高氏及び井川高博氏の4名(「創業家」)との間で、創業家が保有する大王製紙株式会社及び大王製紙関連会社等の株式1を当社が取得する契約を締結すること、並びに大王製紙との間で、当社が創業家から取得する大王製紙関連会社等の株式の一部を除く全てを大王製紙に譲渡する契約を締結することを決議しましたので、お知らせいたします。
当社が創業家から取得する大王製紙関連会社等の株式は、
大王製紙パッケージ、大王製紙デザインパッケージ、東海大王製紙パッケージ、中国大王製紙パッケージ、阪神大王製紙パッケージ、中部大王製紙パッケージ、関西大王製紙パッケージ、近江大王製紙パッケージ、コンピュータ印刷、エリエール印刷、スエヒログラフィックアーツ、いわき大王製紙、丸菱ペーパーテック、ダイオーペーパーテック、大王紙運輸、名古屋紙運輸、大王製紙パッケージ運輸、中部大王製紙パッケージ運輸、いわき大王紙運輸、ダイオーエンジニアリング、ダイオーメンテナンス、大阪紙販売、四国紙販売、中京紙パルプ販売、中国紙販売、大建紙販売、三和倉庫作業、セカンドリーファイバー、ダイオーパッキングシステム、いわきエコ・パルプ、大日製紙、大津板紙、エリエールライフ、京都商工、赤平製紙、エリエールペーパーテック、大宮製紙、大成製紙、ダイオーペーパーコンバーティング、エリエールテクセル、大王商工、エリエール総業及びエリエール産業の各株式となります。
1.契約締結に至る経緯
1)背景
当社と大王製紙は、我が国の紙パルプ産業の健全な発展を目指すとの共通認識の下、平成18年以来技術提携関係にあり、期間延長も含めこれまで5年以上にわたり同提携が両社の国際競争力及び企業価値の向上にとって非常に有意義なものであるとの認識を共有し、その内容を深化させてまいりました。また、その間、当社は大王製紙の株式の2.86%を、大王製紙は当社の株式の2.05%を、それぞれ保有するという資本関係を継続し、両社の提携関係をより強固なものとしております。当社は、これらの提携関係を通じて、大王製紙の有する高い技術力や効率的な生産体制等を高く評価すると同時に、長年にわたりこれらを築き上げてきた大王製紙経営陣に対して敬意を表するものです。従って、今後大王製紙との提携関係をより一層深化させることは、両社にとって非常に意義のあることと考えております。
2)経過
昨年来の大王製紙をめぐる一連の出来事と状況に関し当社はコメントする立場にありませんが、我が国の紙パルプ産業の健全な発展の妨げになるおそれがあると懸念しておりました。このような状況の中、当社は、大王製紙より要請を受け、創業家の同意の下、大王製紙と創業家の関係を改善することで、同社と関連会社との間に存在する問題を解消することを支援し、当社と大王製紙の提携関係を更に強化すべく、関係者にとって最善の形を目指し、本日の決定に至りました。
2.株式の取得及び譲渡の概要等
1)概要
本件における株式の取得及び譲渡の概要は以下のとおりです。
@ 創業家が保有する大王製紙株式、及び大王製紙関連会社等の株式を当社が取得します。創業家から取得する株式には大王製紙株式3,641,885株が含まれます。
A 大王製紙関連会社等4社が保有する大王製紙株式を当社が取得します。大王製紙関連会社等4社から取得する大王製紙株式は合計で8,410,539株です。
エリエール総業株式会社、エリエール産業株式会社、大宮製紙株式会社及びダイオーエンジニアリング株式会社を指します。
また、大王製紙関連会社等2社が保有する大王商工株式会社の株式を当社が取得します。大王製紙関連会社等2社から取得する大王商工株式は合計で25,200株です。
エリエール総業株式会社及びエリエール産業株式会社を指します。
B 当社が取得した大王製紙関連会社等の株式の内、大王商工株式を除く全ての株式を、当社が創業家から取得した金額と同額で、大王製紙へ譲渡します。なお、@からBの取引は全て同日に実施される予定です。
大王商工は、大王製紙株式9,542,384株8.4%(総株主の議決権の数に対する割合)を保有し、当社の子会社(連結の範囲に含めるか否かは未定です。)となります。
C 当社は大王製紙の株式の22.12%(総株主の議決権の数に対する割合:所有割合は19.60%)を保有する筆頭株主となり、大王製紙は当社の持分法適用会社となります。
北越紀州販売株式会社及び大王商工保有分を含みます。
なお、本件に際しては、当社は独立した第三者算定機関であるクレディ・スイス証券株式会社(以下、「クレディ・スイス証券」という。)に株式価値の分析を依頼しました。クレディ・スイス証券は、市場株価法、DCF法、株価倍率法の3つの手法を用いた分析を実施しております。当社は、その分析結果をもとに取得価格の検討、交渉を行い、最終的に取得価格を合意いたしました。また、本件の前提条件として取得価格は非公開とされており、両社の企業価値を高めるために本件は重要であることから取得価格の非公開に合意いたしました。
2) 技術提携の拡大・深化・発展
本件を通じて当社と大王製紙は従来からの技術提携関係をより一層強固なものとし、対象業務範囲の拡大や内容の深化、発展的な課題への取組みなどを共同して進め、両社が共に発展して企業価値を向上させることを目指します。本件の一連の取引が完了した後、その提携関係の具体的な内容について、両社で議論・検討する予定です。
井川 意高 (いかわ もとたか、1964年 7月28日 - )は、日本の実業家。大王製紙の前会長。大王製紙創業家3代目で、同社創業者・井川伊勢吉の孫。
井川は、大王製紙の子会社7社から、2010年度に約23億5,000万円、翌2011年4月からの半年間に約60億円を個人的に借り入れた。これら融資の多くは、子会社各社での取締役会の決議や貸借契約書の作成などが行われないまま実施されるなど杜撰なものであったが、融資先である井川による使途も不明なまま、約50億円が未返済となっていた。無担保での借り入れは、借入先が8社以上の連結子会社で、2010年4月から翌年9月までの総額で105億円に上るともされた。
これらの事実は2011年9月に発覚、井川は同月、同年6月に就任していた代表権のある会長職を辞任した。事件が公になった後、大王製紙は井川を刑事告発する準備をすすめ、翌10月には東京地方検察庁が特別背任容疑での捜査に着手することが報じられた。
同年11月21日、大王製紙は井川が子会社7社から合計85億8,000万円を不正に借り入れたとして告発、井川は翌22日、会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕された。同日、東京都渋谷区広尾にある井川の豪邸や、四国中央市の実家などが家宅捜索を受けた。