2011/2/3 新日鉄・住友金属 合併に向けた検討開始の発表

  世界の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量(万トン)

    2009 2010
1 Arcelor Mittal 7,320 9,050
2  新日鉄・住友金属  3,842  4,920
  河北鋼鉄集団 4,024  
3 宝鋼集団 3,887 4,450
  武漢鋼鉄 3,034  
6 ポスコ 2,953 3,370
5 新日本製鉄 2,761 3,610
7 JFEスティール 2,628 3,270
10 タタ製鉄 2,190 2,350
25 住友金属工業 1,081 1,310
  神戸製鋼所 592  

 


2011/9/23 日本経済新聞         発表

「新日鉄住金」概要を発表
  統合効果は年1500億円、粗鋼生産2〜4割増

 2012年10月の合併を計画する新日本製鉄と住友金属工業は22日、合併後3年をめどに年1500億円規模の収益改善を目指すと発表した。海外での高炉建設などで粗鋼生産量を現在と比べて2〜4割多い年6千万〜7千万トンに引き上げるほか、資金や人材など両社の経営資源を有効活用して新興国を中心としたグローバル競争に備える。合併後は拡大する企業規模に見合う収益力をどう確保するかが課題となりそうだ。

比率1対0.735

 両社は同日、経営統合に関する基本契約を締結し、新日鉄の宗岡正二社長と住金の友野宏社長が都内で記者会見を開いた。新日鉄を存続会社とする合併新会社の名称を「新日鉄住金」とすることや、合併比率を新日鉄1に対して住金0.735にすることも発表した。

新日鐵住金株式会社 (英文名:Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation

 2月3日の合併交渉入り発表後、東日本大震災や円高進行で経営環境は厳しくなっている。宗岡社長は会見で「(環境悪化に)先行して判断できた。きちんと統合しなければならない」と合併の意義を強調した。
 1500億円と見込む収益改善策はコスト削減を中心に進める。製鉄所同士で品質向上や経費削減などに関する取り組みを共有。新日鉄・君津製鉄所(千葉県君津市)と住金・鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)など近隣地区での原料輸送・保管や製品出荷の効率化も図る。財務面では「売上高経常利益率10%超を目指す(友野社長)方針だ。

収益改善額1500億円の内訳

  海外展開の加速、海外拠点の再編      300億円程度
  技術の融合、研究開発の効率化        400億円程度
  一貫生産や製鉄所間の連携          400億円程度
  原料調達・輸送の効率化、設備仕様共通化 400億円程度

海外で製鉄所

 合併後の目標とする6千万〜7千万トン体制の実現時期は明言しなかったが、「海外で伸びる需要を捕捉する」(友野社長)ため、アジアや米州で一貫製鉄所の新設や強化を狙う。中国や東南アジア、インドなどで両社が持つ拠点の再編と拡充を目指すほか、世界的に需要が拡大する資源エネルギー分野に使う鋼材の生産能力の強化などにも取り組む。
 国内では一部ラインの統廃合などを進める見通し。ただ友野社長は「現時点で製鉄所の閉鎖は考えていない」「雇用を守る大原則は踏み外さない」とし、大規模な人員削減については否定した。
 合併によってグローバルに戦える体制が整う。新日鉄と住金の時価総額は単純合算で2兆3244億円。世界の鉄鋼大手の時価総額(円換算ベース)では首位となる。アルセロール・ミタル(ルクセンブルク)株が急落しているのに加え、円高の影響も大きい。粗鋼生産量でも世界2位グループに躍進する。
 ただ、肝心の収益力ではまだライバルに大きく見劣りする。10年度の純利益を見ると新日鉄と住金を合計しても860億内で、ミタル(約220億円)や韓国ポスコ(約2700億円)に及ばない。中国宝山鋼鉄やインドのタタ製鉄も1千億円台の利益を稼ぎ出しており、新会社にとって収益力の強化が最大の課題となりそうだ。
 22日の新日鉄株の終値は前日比9円(4%)安の225円、住金株は4円(2%)安の165円。終値を比較すると取引終了後に発表された合併比率(1対0.735)とほぼ同じ1対O.733となる。合併比率は「ほぼ想定通り」との見方が多い。

ユーザー、同業他社 反対の声聞かれず

 統合基本契約の締結にこぎ着けた両社は今後、国内外の競争当局による審査への対応を急ぐ。
 公正取引委員会は6月末で1次審査を終え、7月から2次審査に入った。両社は現在、審査に必要な資料を順次提出しており、公取委は資料が出そろった段階から90日で判断を下す。
 公取委は合併で特にシェアが上昇する無方向性電磁鋼板や鋼矢板、チタンなどに着目しているとみられ、ユーザーにも調査を実施した。今のところユーザーからは目立たった反対の声は聞かれない。JFEスチールなど他社からも調達できるらだ。
 JFEの林田英治社長も「脅威だが、日本の鉄鋼業にとっていいこと」と、合併によるシェア上昇を問題視していない。「新会社への依存度の高まりを警戒する企業からの引き合いが増えている」(東京製鉄幹部)との見方もある。
 1970年の新日鉄発足時は公取委によりレールやブリキなどの他社への譲渡を迫られたが、「市場は完全にグローバル化し、40年前とは市場環境は全く異なる」(新日鉄の宗岡正二社長)。
 むしろ懸念は海外かもしれない。新日鉄幹部は中国の競争当局の対応を懸念している。頭をよぎるのは三洋電機買収時に一部の電池事業の売却を迫られたパナソニックだ。この時期に新会社の概要を固めたのも、来年10月の合併までに中国からの承認を得るためのぎりぎりのタイミングと考えたためだ。国内外の競争当局の判断が合併の成否を左右する。

両社長 一問一答

新日本製鉄の宗岡正二社長と住友金属工業の友野宏社長が22日に都内で開いた記者会見の主なやりとりは以下の通り。

ー 生産目標6千万〜7千万トンの達成時期と国内外の比率は。

宗岡社長 「具体的に決めていない。近い将来。現在は両社で5千万トン。伸ばすのは海外で」

ー l統合新会社が目標とする収益率は。

友野社長 「実現しなくてはいけないのは売上高経常利益率で10%だ」

ー 新会杜の名称の狙いは。

宗岡社長 「両社の歴史と企業文化を継承するにはお客様や地元に親しまれている略称でつけるのがよろしかろうと。
        既につくった合弁会社にも同じ名前がついている」

ー 国内製鉄所の整理や人員削減はあるか。

友野社長 「製鉄所は止めない。設備の効率化は図るが、雇用をしっかり守っていく大原則は踏み外さない」

ー 新会社は住友グループに入るのか。白水会に加盟するのか。

友野社長 「新しい統合会社はいずれのグループにも属さない。白水会には新しい運営の仕方を考えるためにも出席する。
       白水会のメンバーからもそうしようと。ただ、住友グループとは一線を画す」

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発表 

(1)経営統合の目的

 両社は経営統合により、それぞれが培ってきた優れた経営資源の結集と得意領域の融合などによる相乗効果を徹底的に追求することに加え、国内生産基盤の効率化と海外事業の拡大などの事業構造改革も加速します。これらを早期に実現することで、スケール・コスト・テクノロジー・カスタマーサービス等すべての面で競争力を向上させ、「総合力世界No.1 の鉄鋼メーカー」を目指します。
 統合会社は、世界一の技術とものづくりの力により、鉄鋼製品という産業基礎素材の可能性を極限まで追求することで、内外のお客様の発展に貢献するとともに、日本および世界経済の成長と豊かな社会の創造に寄与してまいります。

(2)経営統合の趣旨
 両社は、平成14年のアライアンス契約開始以降、競争力強化策を協同して推進し大きな成果をあげてまいりました。しかしながら、最近の鉄鋼事業を取り巻く環境には、以下のように大きな変化が生じています。

 @新興国を中心とする世界的な鉄鋼需要の増大
 Aエネルギー・環境分野等における高級鋼ニーズの高まり
 B中国、韓国等での新鋭製鉄所の稼働に伴う競争の激化
 Cお客様の生産・販売のグローバル展開の加速
 D原料の高騰および価格決定サイクルの短期化

 こうした事業環境の変化に対応するため、両社は、本年2月、経営統合に向けた共同検討を開始いたしましたが、その後も大幅な円高が進行するなど、鉄鋼経営環境の変化は想定以上のスピードで現実化しております。従いまして、両社は、今回の統合基本契約の締結を契機に、統合施策の具体的検討をこれまで以上にスピードアップし、統合効果を早期に発揮できるように取り組んでまいります。