ロシア軍、欧州最大級の原発に砲撃・火災 ウクライナ

ウクライナ南部ザポロジエにある原子力発電所で3月4日、ロシア軍の攻撃を受けて火災が発生した。敷地外の研修施設としている。
原子炉6基がある同原発は欧州最大級の発電能力を持つ。国際原子力機関(IAEA)は「同原発の放射線量に変化はないとウクライナ当局から報告を受けた」とツイッターに投稿した。

                                                                                                                  1000MW=100万kW


https://globe.asahi.com/article/14333242

 

 


 

 

 

 

 

 

ウクライナ問題発端

2014年の「マイダン」のクーデターで、ロシアと対立する資産家ポロシェンコが、大統領ヤヌコヴィッチをロシアに追放し、親米政権を創る。

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ソ連崩壊後、ウクライナは数年間は汚職や経営管理の誤り、経済成長の停滞、フリヴニャの平価切り下げや公的市場からの資金調達という様々な問題を抱えていた。

2000年代には欧州連合(EU)との良好関係を築こうと模索し、実際にEUと連合協定を結ぶ協議を行なっていた。当初、ヤヌコーヴィチ大統領はこの協定に署名する意思を示したが、最終的には署名を拒否した。この背景には前述の経済難があり、EU統合はひとまず先送りして、目先の「冬を越す」ために、やむをえずロシアとの接近を図った格好だった。しかしこれがユーロマイダン(“欧州広場”という意味)に繋がる反政府デモを引き起こした(このデモの間、ヤヌコーヴィチ大統領はロシアと数十億ドルに及ぶ融資・協定について締結している)。

ウクライナの治安部隊はデモ活動の鎮圧に努めたが、デモ活動は高まるばかりでキエフの通りで激しい衝突が起こった。221日にヤヌコーヴィチ大統領と野党リーダーらが危機回避の文書に署名し、政権側は憲法改正、大統領選の早期実施などの譲歩を行った。しかし身の危険を感じたのか、ヤヌコーヴィチ大統領は首都キエフを離れて、東ウクライナに脱出、憲法改正法への署名を拒否した。

最高会議はこれを職務放棄と見なして大統領の失職を宣言した。代わりに議会議長のトゥルチノフ氏が、大統領代行を兼務することになった。大統領選は525日に投票が行われることが決まった。新たに発足した暫定政権はEU協定の署名と国の司法制度・政治・財政・経済政策の改革に合意し、国際通貨基金は前述の改革の実行を条件に180億ドル以上の融資を約束した。

一方で暫定政権の発足に否定的であったロシアは、ヤヌコーヴィチ政権の崩壊をクーデターによるものと位置付け、ウクライナへの軍事介入を行なった。

アメリカ合衆国連邦政府のヌーランド国務次官補とパイエト駐ウクライナ・アメリカ特命全権大使が、ヤヌコーヴィチ政権崩壊後の新政権人事の協議をしていたとする2014128日の電話会談が暴露され、ウクライナの反政府デモを主導したのはアメリカ合衆国であったとの指摘もある。

 



 

ウクライナのNATO問題

Putin claims that Baker, in a discussion on 9 February 1990 with the Soviet leader, Mikhail Gorbachev, made the promise that Nato would not expand to the east if Russia accepted Germany’s unification.

The following day Chancellor Helmut Kohl, ambiguous about Germany remaining in Nato after unification, also told Gorbachev “naturally Nato could not expand its territory to the current territory of the GDR”. The promise was repeated in a speech by the Nato secretary general on 17 May, a promise cited by Putin in his Munich speech. In his memoirs, Gorbachev described these assurances as the moment that cleared the way for compromise on Germany.

 

Address by Secretary General, Manfred Wörner to the Bremer Tabaks Collegium

Our strategy and our Alliance are exclusively defensive. They threaten no-one, neither today nor tomorrow. We will never be the first to use our weapons. We are prepared for radical disarmament, right down to the minimum level that we must retain to guarantee our security.
This will also be true of a united Germany in NATO. The very fact that we are ready not to deploy NATO troops beyond the territory of the Federal Republic gives the Soviet Union firm security guarantees.


Were these promises ever written down in a treaty?

No, largely because Bush felt Baker and Kohl had gone too far, or in Baker’s words he had “got a little forward on his skis”.

The final agreement signed by Russia and the west in September 1990 applied only to Germany. It allowed foreign-stationed Nato troops to cross the old cold war line marked by East Germany at the discretion of the German government. The agreement was contained in a signed addendum. Nato’s commitment to protect, enshrined in article 5, had for the first time moved east into former Russian-held territory.

 

Did Russia see the implications of the 1990 agreement for Warsaw Pact countries?

Yes, many Russian policymakers opposed the concessions being made at the time by Gorbachev in part because of the implications for eastern Europe. Russia was given verbal assurances about the limits of Nato’s expansion, but no written guarantees. In March 1991 John Major, for instance, was asked by the Soviet defence minister, Marshal Dmitry Yazov, about eastern Europe’s interest in joining Nato. Major, according to the diaries of the British ambassador to Moscow, Rodric Braithwaite, assured him “nothing of that sort will ever happen”.

https://www.theguardian.com/world/2022/jan/12/russias-belief-in-nato-betrayal-and-why-it-matters-today

  ウクライナ最高会議は19907月に「主権宣言」を採択したが、「対外安全保障」の項は次の通り。
将来において恒久的に中立国家となり、軍事ブロックに加わらず、非核三原則
――核兵器を受け入れず、使用せず、保持しないという自らの意向を厳に宣言する」。

20192月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUNATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決した。

 

 


毎日夕刊 2014/9/20


「ウクライナ: NATO前事務総長、加盟「空約束」 08年の首脳会議合意、ロシアの反発招く」

 

NATOのデホープスヘッフェル前事務総長が、「ウクライナとグルジアを将来NATOに加盟させる」と決めた2008年のNATO首脳会議の合意について、「絶対に実現不可能だ」と述べた。首脳会議は前事務総長が議長を務めたが、特にウクライナについて「実際に加盟させるとなると、加盟国が全会一致で合意できない。その状況は当時から現在も変わらない」と語り、当初から「空約束」だったことを明らかにした。

 

 ロシアのプーチン大統領は、このNATOの合意を根拠に今年3月のクリミア半島編入や東部の親ロシア派支援などウクライナへの介入を進めてきた。だが、実体のないNATOの決定にロシアが反発し、ウクライナ危機が深まったのが実態といえそうだ。

 

 NATO首脳会議は08年4月、ルーマニアの首都ブカレストで開かれた。前事務総長によると、ウクライナとグルジアの加盟を強く推すブッシュ米大統領(当時)と、ロシアへの刺激を避けたいサルコジ仏大統領(同)、メルケル独首相らが対立した。協議は行き詰まり、随行の官僚や家族を退席させ、首脳だけでひざ詰めの話し合いを続けたという。しかし結局、合意できず、加盟目標の期日を特定しない「将来、加盟させる」との「ブカレスト宣言」を採択した。


前事務総長はこの宣言がNATOの基本方針であることは現在も変わりないとしながらも、「悲しい結論」で「妥協」だったと述べた。

 

 グルジアとウクライナでは03年以降、「バラ革命」、「オレンジ革命」と呼ばれた民主革命が相次ぎ、親欧米派政権がそれぞれできた。これがロシアの反感を招いたが、08年当時はさらに米国が欧州で進めていたミサイル防衛(MD)計画にロシアが猛反発し、欧米側との対立が深まった。

 

 前事務総長はブカレスト宣言採択当時、「ウクライナとグルジアの加盟に一片の疑いもない」と記者会見などで説明していたが、ロシアに対する欧米の結束をアピールする狙いがあったとみられる。だが、実際には加盟の実現性はないと当時から判断していた。

 

 前事務総長は「正直に言えば、ウクライナは常にロシアの影響圏と西側の影響圏の緩衝国であり続ける。地政学的な現実は否定できない」とし「(NATOは)ウクライナのために戦争はしない。加盟問題を再検討するのは賢明でも知的でもない」とウクライナを突き放した。

 

 前事務総長はオランダ外相を経て、04年から09年までNATO事務総長を務め、01年の米同時多発テロ後のNATOのアフガニスタン介入などを主導した。

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NATOブカレスト首脳会議:宣言の内容、背景、意義

1、2008/4月2日―4日、NATO首脳会議がルーマニアのブカレストで開催された。主要な議題はアフガンへの増派、NATOの拡大、ヨーロッパにおけるミサイル防衛であった。
 4月3日発表された首脳会議宣言はコソボやイラクやアフリカの問題など50項目に及び、NATOが関与する国際問題の幅広さを示している。この会議には国連事務総長、EU委員長、アフガンのカルザイなどに加え、ロシアのプーチン、ウクライナのユーシェンコもNATO・ロシア理事会、NATO・ウクライナ委員会のために出席した。
 NATOの存在意義について、疑問を呈する向きもあるが、NATOとその首脳会議が国際政治の動向に与える影響は大きいことを改めて明らかにした。もちろんG8以上である。

2、首脳会議宣言の諸項目中、注目すべきものは次のとおり。(・・は省略部分)
(アフガン情勢について)
第6項:欧・大西洋の安全保障、より広い国際安全保障は、人権を尊重しテロの脅威より開放された平和的、民主的なアフガンの将来と密接に関連する。それゆえに、国連のマンデートに基づく国際治安支援部隊(ISAF)の任務は・・我々の最優先事項である。アフガン人と協力しつつ、我々は意味ある進展を成したが、残されている挑戦は追加的努力を要求している。我々もアフガンのパートナーも過激派やテロリストにアフガニスタンの支配を再確立することや・・テロの基地として使うことを許せない。・・我々はアフガンについての声明を出すが、そこでは4つの原則に基づく明確なビジョンを示す。4つの原則とは、堅固で分担された長期的なコミットメント、強化されたアフガン人の指導と責任への支持、文民・軍の努力を一緒にする国際社会による包括的アプローチ、アフガンの隣国、特にパキスタンとの協力・関与の増大である。・・我々は同盟国とパートナーによる新規兵力派遣その他の支援の発表を我々の決意を示すものとして歓迎する。我々は追加的貢献を期待する。
(NATO拡大について)
第18項:NATOの進行中の拡大プロセスは、安定と協力を前進させ、平和、民主主義、共通の価値で団結した無傷で自由なヨーロッパと言う共通の目標に我々を近づける歴史的な成功であった。NATOの扉はワシントン条約10条に従い加盟国の責任と義務を引き受ける意思と能力のあるヨーロッパの民主主義国に開かれ続ける。我々は拡大に関する決定はNATO自身が行うものであることを繰り返し述べる。
第19項:我々の同盟に参加するための加盟交渉を始めるようにとのアルバニアとクロアチアへの招請は西バルカンでの新しい章の始まりになり、・・この地域が欧州・大西洋の制度に完全に統合され、国際安全保障に主要な貢献をする能力を持つ未来への道を示す。
第20項:我々はNATOの価値と同盟の作戦に旧ユーゴ・マケドニア共和国が示した困難な作業・・を認める。・・我々は旧ユーゴ・マケドニア共和国にその名称問題について相互に受け入れ可能な解決がなされ次第、招請を行うと合意した。・・
第22項:(アルバニアとクロアチアについては)我々は2008年7月末までに加盟議定書を署名し、遅滞なく批准過程を完了するとの目的を持って直ちに交渉を開始する。・・
第23項:NATOはNATO加盟についてのウクライナとグルジアの欧・大西洋への抱負を歓迎する。 我々はこれらの国がNATO加盟国になることに今日同意する。両国とも同盟の作戦に価値ある貢献をした。我々はウクライナとグルジアでの民主的改革を歓迎し、5月のグルジアにおける自由で公正な議会選挙を楽しみにしている。「加盟行動計画」(以下MAP)はウクライナとグルジアにとり加盟への直接の道で次の一歩になる。今日、我々はMAPへのこれらの国の申請を支持することを明らかにする。従って我々はMAPにかかわる残された問題を取り扱うために両国と高い政治的レベルで集中的な話し合いを開始する。我々は外相に2008年12月会合で進展状況の最初の評価を行うように要請する。外相はウクライナとグルジアのMAP申請につき決定する権限を有する。
(ミサイル防衛について)
第37項:弾道ミサイル拡散は同盟の部隊、領土、人口に増大する脅威を与える。ミサイル防衛(以下MD)はこの脅威に対する幅広い対応の一部をなす。我々は欧州への米のMD手段の計画されている配備が長距離弾道ミサイルから同盟国を守るために実質的な貢献をすることを認める。我々は、この能力をNATO地域をカバーする将来的なMD構造の不可分の一部とすることを確保するために、この能力を現存するNATOのMD努力と連結する方法を探究する。・・
第38項:我々はNATO・ロシアのMD協力を強化するためにすでに行われている作業を賞賛する。我々は諸懸念を鎮めるため最大の透明性と相互的な信頼醸成措置にコミットしている。我々はロシアが米のMD協力提案を利用するように勧める。我々は適切な時期に米、NATO、ロシアのMDシステムを連結する可能性を探求する用意がある。
(核を含む軍縮・軍備管理について)
第40項:同盟は冷戦時代のレベルから通常兵力を相当減らすとともに、NATOに割り当てられている核兵器を90%以上削減した。・・仏は核兵器システムを二つに減らし、核運搬手段を半分以下に減らし、核弾頭の数を300以下に減らす(作戦用在庫にはそれ以外の兵器はない)と声明した。英は一つのシステムに削減し、その核在庫の爆発力を75%削減し、作戦的に利用可能な核弾頭の数を160以下に削減した。米は冷戦期の最盛期から核兵器の在庫を25%以下に削減し、NATOに割り当てられた戦術核兵器を約90%減らした。
第42項:・・我々は欧州通常兵器条約(以下CFE)体制に・・最高の価値を付与し、欧州・大西洋安保の要石としてのCFE条約の戦略的重要性を・・強調する。ロシアがCFE条約の法的義務を一方的に「停止」していることを深く懸念する。・・NATOが条約を実施し、ロシアがしないとの現状は無期限に続けられない。我々はNATO同盟国による適合CFE条約の批准とロシアによるグルジアとモルドバに関する約束の履行を含め、主要問題について平行的な行動をとるとの建設的で前向きな提案を行った。我々はこれらの提案がロシアの表明された懸念に答えていると信じる。我々はこの画期的な体制の利益を一緒に保持するため、平行行動パッケージに基づき合意を達成するようにロシア当局が我々と他の関係あるCFE締約国と協力的に作業することを勧奨する。
(次回会議について)
第50項:・・我々はNATOの60周年を祝うため来年ストラスブルグとケルンで会合する。・・

3、この宣言作成過程とその背景についての若干のコメント、次のとおり。
(1)もっとも揉めたのは、ウクライナ、グルジア加盟を容認するかどうかであった。ブッシュ大統領はこの会議前にウクライナを訪問、ウクライナとグルジアの加盟を推進すると述べ、ブカレストでもそう主張した。ただ独・仏が対ロ配慮その他の理由から反対した。4月2日の晩餐会は予定を2時間も越えて続けられた。4月3日付ワシントン・ポスト紙は「同盟はクロアチアとアルバニアを招請。ブッシュは旧ソ連諸国の支持で拒絶される」と報じ、4月3日付ニュー・ヨーク・タイムズ紙は「NATO同盟国はグルジアとウクライナについてブッシュに反対」と報じている。
しかし宣言を注意深く読むと、ブッシュ提案がつぶされたとは読めない。ロシアがこの件について拒否権を持たないことも間接的に明らかにされている。何故こうなったのか。
ブッシュ提案には仏、独、伊、ハンガリー、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグが反対したが、エストニア、ラトビア、ルーマニアその他の東欧諸国がブッシュ提案を支持した模様である。それで主として欧州のメンバー間で激論になり、文言も宣言のようになったということである。
 ロシアはグルジア、ウクライナの加盟阻止を重視し、加盟した場合にウクライナに核ミサイルの照準を当てるとまで言ってきた。今回、ウクライナ、グルジアの加盟が決まらなかったことを歓迎しているが、内心では宣言に懸念を持っているのではないか。
なおウクライナではNATO加盟支持は世論調査では過半数を得ていない。
(2)ブッシュが欧におけるMDについての支持を得たことは週末の米ロ交渉での米の立場を強化するのに役立つだろう。ロシア内では、米がチェコ、ポーランドのMDシステムのロシアによる監視と稼動時期の後ろ倒しを提案したことを評価し、それを受け入れるべしとの意見と反対を貫くべしとの意見がある。プーチンがどちらの意見を採用するのか、注目される。
(3)アフガンについては、仏が千名近い増派を、ポーランドが400名の増派を約束し、ルーマニアも兵力増派を表明した。英も増派予定である。仏部隊は東部アフガンで米軍の肩代わりをする方向で、米軍はより治安の悪い南部に振り向けられる予定である。加は増援がなければ南部から引き上げるとしていたが、これで加の引き上げはなくなった。