馬鹿野郎解散

衆院 予算委員会 - 31号 1953(昭和28)年02月28日

西村(榮一)委員 
   過日総理大臣が国際情勢は今楽観すべき状態にあるという施政演説をなさつたのであります。私はこの政治感覚をほんとうに日本の施政の上に適用されるかどうかということを考えますと、これは明確にしておかなければならぬと思うのでありますが、総理大臣が過日の施政演説で述べられました国際情勢は楽観すべきであるという根拠は一体どこにお求めになりましたか。
   
吉田茂国務大臣 
   私は国際情勢は楽観すべしと述べたのではなくして、戦争の危険が遠ざかりつつあるということをイギリスの総理大臣、あるいはアイゼンハウアー大統領自身も言われたと思いますが、英米の首脳者が言われておるから、私もそう信じたのであります。これは最も戦争か平和かという衝に当つておる当局者の言うことであつて、相当な根拠があつて言つておることであろうと考えましたがゆえに、戦争の危険は遠のきつつある。こう私は信ずる。こう申し上げたのであります。
   
西村(榮)委員 
   私は日本国総理大臣に国際情勢の見通しを承つておる。イギリス総理大臣の翻訳を承つておるのではない。あなたの国際情勢を楽観すべきであるという根拠は、イギリス総理大臣チャーチルの演説においてとられたというのであります。アイゼンハウアー元帥は就任以来楽観説を言つておりません。同時にアイゼンハウアー元帥が大統領に就任いたしまして以来、公式声明は国際情勢の緊迫を力説しておるのであります。同時にアイゼンハウアー元帥が当選して就任いたしまして以来、チャーチルの言動はかわつて参りました。チャーチルはアイゼンハウアーが大統領に就任いたしまして以来、国際関係は楽観すべきであるということはどこにも言つておりません。同時に私はここに問題になるのは、なるぼどヨーロツパの情勢は楽観すべく、一応の危機は緩和したかもしれません。しかしながらその危機の険悪な焦点は朝鮮に移つて来て、世界の危機は朝鮮にその焦点がしぼられて来ておる。そこで私は大臣にお尋ねしたいのであります。イギリスの総理大臣の楽観論あるいは外国の総理大臣の楽観論ではなしに、ヨーロッパは緩和したが、朝鮮の問題を中心にいたしまして、風雲は極東に移りつつあるということをすなおに考えて、これに対して日本国家としては一体どうするのであるかということを、一九五三年の初頭に際して、日本の総理大臣に日本国民は問わんとしておるのであります。私は現国際情勢というものをすなおにごらんになつて、しかもわが隣国朝鮮に国際危機の焦点が移つておる、その中に立つて一体われわれはどうするのだということを、日本の総理大臣に国民が問おうとしておるのでありますから、私はこれに対して、やはり日本の総理大臣としての国際情勢の見通しとその対策をお述べになることが当然ではないか、こう思うのであります。
     朝鮮戦争 1950年6月25日勃発
            1953年7月休戦協定が成立
   
吉田国務大臣
   ただいまの私の答弁は、日本の総理大臣として御答弁いたしたのであります。私は確信するのであります。
   
西村(榮)委員
   総理大臣は興奮しない方がよろしい。別に興奮する必要はないじやないか。
  (吉田国務大臣「馬鹿なことを言うな」と呼ぶ)
   何が馬鹿だ。
  (吉田国務大臣「馬鹿じやないか」と呼ぶ)
   質問しているのに何が馬鹿だ。君の言うことが馬鹿だ。国際情勢の見通しについて、イギリス、チャーチルの言説を引用しないで、翻訳した言葉を述べずに、日本の総理大臣として答弁しなさいということが何が馬鹿だ。答弁できないのか、君は……。
  (吉田国務大臣「馬鹿野郎」と呼ぶ)
   何が馬鹿野郎だ。馬鹿野郎とは何事だ。これを取消さない限りは、私はお聞きしない。議員をつかまえて、国民の代表をつかまえて、馬鹿野郎とは何事だ。取消しなさい。私はきようは静かに言説を聞いている。何を私の言うことに興奮する必要がある。
   
吉田国務大臣
   ……私の言葉は不穏当でありましたから、はつきり取消します。
   
西村(榮)委員
   年七十過ぎて、一国の総理大臣たるものが取消された上からは、私は追究しません。しかしながら意見が対立したからというて、議員を 馬鹿野郎とか、馬鹿だとか議員の発言に対して馬鹿だとか馬鹿野郎とかと言うことは、東條内閣以上のフアツシヨ的思想があるからだ。静かに答弁しなさい。
   
吉田国務大臣 
   日本は国際連合に協力するということを誓つておるのであります。初めからして中立の態度はとつておりません。
   
西村(榮)委員 
   日本は従来中立でなかつたということは、それはイデオロギーの上において自由民主主義の陣営に参画するというので、思想的な中立の放棄であつたのであります。しかしながら政治的に中立を放棄するということが、軍事的に中立を放棄することに発展するということは力学的にわれわれは考えておかなければならないのであります。政治的に中立を放棄するという上からは、それに対する備えがなければならない。私はそこであなたにお尋ねするのだが、それならば一体日本が一方の陣営に参画して一方の陣営を敵とするがごとき、政治的中立放棄の政策をとつた上からは、一体日本の安全保障をどこから求めて来るのか、あるいはまた政治的中立放棄から軍事的発展にまで来た場合において、日本における安全保障、同時に経済的あるいは国民の生活上の問題というものは、どこに備えがあつてあなたは中立放棄を承認されておるのであるか、この点を承りたい。
   
吉田国務大臣 
   戦争放棄は憲法の条章に明らかであります。また日本の安全は日米安全保障によつて保障されておるのであります。これをもつて日本の安全は保護できると私は確信いたします。
   
  (中略)
   
中村(高一)委員 
   議事進行につきまして発言を求めたいのでありますが、先ほど西村委員の質問中、総理大臣が馬鹿という暴言を吐きまして、すぐに取消しはいたしましたけれども、これはきわめて重要な問題でありまして、ただちにわれわれは委員会の審議の停止を要求いたそうと思つておつたのでありますが、ただいままで進行いたして参りました。われわれは目下この問題について協議中であります。いやしくも総理大臣が、この国会において―というような発言をいたしたことはいまだかつてないのであります。この国会で、しかも予算委員会の審議中に、こういう発言をせられたということが一般にわかりましたならば、おそらく大きな批判を受けることは事実でありまして、国会の名誉のためにも。かくのごとき言葉を放たれましたことに対しては、われわれも捨てておくわけには参りませんので、ただちに休憩をせられまして、休憩後にこの問題について、われわれは予算委員会において起りました問題でありますから、まず予算委員会におきまして取り上げて、その問題を協議いたしたいと思います。これからわれわれは協議の必要がありますので、この程度でひとつ休憩をせられたいと思うのであります。
   
尾崎(末吉)委員長代理 
   中村君に一言申しますが、議事進行に関する動議の御趣意はよくわかりました。ただ私の承知いたしておりますところは、先ほど総理大臣が馬鹿とか馬鹿とかなんとかお述べになつたのは、委員長の正式の発言の許可を受けてやられたのではなくて、いすの上に腰かけておられて、私的に述べられたように思います。
(「なお悪いじやないか」と呼び、その他発言する者多し)
その点はいずれ話し合うとわかりますから、私はその点聞えておりましたがと、一言私が申し述べておきますだけのことで、それらの可否は、先ほど申したように、よく皆さんと御相談をいたすことにいたします。

 

衆院 予算委員会 - 32号 昭和28年03月01日

福田(赳夫)委員 
   まず最初に、昨日の本委員会におきまして、総理大臣が失言をされた。すぐ率直にこれを取消されたわけでありまするが、これは取消すというのも実はおかしいと思う。というのは、正式の発言の内容をなしておらぬ事態に対しまして、私はこれを率直に取消しますというのも、おかしいことだと思います。しかしながら、事態は取消しの発言によつて治まらないで、なかなか混乱を呈して来ております。本予算が一日も早く成立することは、われわれの最も熱望するところでありまするが、その審議を順調に進捗せしめるために、総理大臣は適当な機会をとらえまして、ほんとうに腹の底から釈明をされた方がいいと思うが、さようなお心構えがありますかどうか、伺いたい。
   
吉田国務大臣 
   昨日私は言葉が不適当なりと考えて、ただちに取消しました。
   
福田(赳夫)委員 
   昨日の話ではないのです。昨日のあの取消しの発言で事が治まれば、それで私はいいと思つたのですが、これがなかなか発展して行く様相を呈しておる。そこで総理におかれましては、国民もみなこのことに関心を持つておるのでありますから、適当な機会をとらえて釈明をされるお考えがありますか、承りたいと思います。
   
吉田国務大臣 
   私の釈明は、昨日の取消しをもつて尽きておると考えております。
   
福田(赳)委員 
   総理大臣が釈明される、あるいは取消されるということは、これは本審議とは実は別個の問題だろうと思うのです。私率直に申しまして、あの発言は穏当でない、これは何らかの機会において、総理大臣として何とか釈明された方が適当であろうという意見だけを申し上げまして、予算の審議を急ぎまするから、質問に移ります。
 

衆院本会議 - 41号 昭和28年03月14日

副議長(岩本信行)
   御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。吉田内閣不信任決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。北村徳太郎君。
   
北村徳太郎
   私は、ただいま上程せられました、野党共同提案になりまする吉田内閣不信任決議案につきまして、その提案趣旨の弁明をいたしたいと思うのでございます。(拍手)
 終戦八年、今や独立一年の今日、日本国民が、そのみずからの自由なる意思において内閣をかえ、新しい歴史を創造しようといたしておりますことは、きわめて意義深いことでございます。(拍手)本日ここにこの不信任案を提出いたしますることの重大なる意義もまたここに存するのでございます。(拍手)
 吉田内閣の長年月にわたる施政につきましては、これをおよそ二期にわけて考察する必要があると思うのでございます。すなわち、それは、昭和二十七年四月二十七日までの占領中と、その以後の時期、すなわち日本独立後とでございます。
 占領期間中の吉田内閣の治績については、占領軍の絶対的権力と敗戦日本国民の間に立つて、相当の苦心の存したことは、私どももこれを認めるに決してやぶさかではないのであります。吉田首相は、おそらく渉外関係の首脳者としては最高クラスの一人であつたと申してよろしいと思うのであります。また、日本の民主主義的改革、特に農地や労働の改革につきましては、実はその意に反したこともあつたかもわかりませんが、それはしばらく別問題といたしまして、結果的に見まして、空前の一大改革であり、これまた成功であつたことは疑いをいれないところであります。しかし、他方において、占領軍の権力に便乗し、とらの威をかつて、日本民主主義の純正な発展を妨げたこともまた事実であります。(拍手)独立意欲の喪失、現代の思想の混迷、虚無的思想の横行等々の原因は、ここに発しておるのであります。たとえば、電力九分割問題しかり、街娼の跋扈、風紀上おもしろからざる出版物の氾濫、はなはだしい道義頽廃の風潮、みなしかりであります。特に、官僚勢力を溺愛する吉田氏の性格的偏執は、占領軍に結びつく一大官僚勢力をつくり上げ、現在まことにはかり知られぬ被害を国民に及ぼしているのであります。(拍手)占領下にあつた吉田首相は、世間に伝えられているところに反して、最も占領軍の勢力を利用した人でありましよう。それだけに、日本の代表的人物のだれよりも吉田氏はイエス・マンであつたと言うことができると思うのであります。(拍手)
 占領から独立にかけて、歴史的な平和条約、安保条約は吉田首相によつて締結されました。この点に吉田内閣の功罪の中心が論ぜられねばなりません。日本が自由国家群の一員として再生したことは、その功績でありました。しかし、そのことは、さらに重大なる歴史の汚点を残しました。現実的には、それは吉田政権下における一衛星国の誕生であり、半独立的不平等条約の締結でありました。(拍手)特に、領土の問題、戦犯の問題、裁判権の問題に至つては、日本の歴史と、また私どもの子孫に対する重大な汚辱となつたのであります。(拍手)その後、吉田首相の秘密独善外交のもたらした結果が、いかに不利、不明朗なものであつたかは、多弁を要せずして明らかであります。(拍手)日米通商航海条約、安保条約行政協定の改訂、国連軍協定、東南アジア諸国との賠償問題等々、いずれも停頓遅延し、また日本経済にとつて最重大関係にあるアジア地域との国交調整も、今もつて何らの成果を見ません。(拍手)まさに外交政策における無政府状態を現出していることは、まことに遺憾にたえないところであります。(拍手、(「決議案を読んでください」と呼ぶ者あり)
 吉田首相は平和条約成立ととも当然引退すべきであり、国民もまたこれを当然として期待していたのであります。この重大なる時期における進退の誤りが、日本歴史を曲げ、今日の悲劇の原因となつたことは、おおうべくもありません。
(発言する者多し)
 また、平和条約成立とともに国民が期待したのは、まず首相の雄大なる独立国宰相としての日本再建の気魄と構想でありました。しかるに、これなくして、結果は政治も経済も依然たる占領下の下請機関的惰性の連続でありました。(拍手)アジア大陸にあつては……。
    〔発言する者多く、議場騒然〕
  事の善悪の批判はしばらく別としまして……。
(「案文を読め」と呼ぶ者あり)
案文はあとで読む。
(発言する者多く、議場騒然)
ここにありますが、簡単ですから――簡単ですから……。
(「案文を読め」と呼び、その他発言する者多し)
 衆議院は、吉田内閣を信任せず。
 アジア大陸にあつては、事の善悪の批判はしばらく別として……(発言する者多く、聴取不能)革新が行われているときに、日本列島におけるありさまはどうであつたか。今日の政治、経済、社会の弛緩の一切の責任は、かかつて最高責任者たる吉田茂翁に存することは明白であります。(拍手)外交に自主性なく、また、みずから祖国を守る気魄も国民に示さず、説かず、自衛については功利的かけひきに終始し……(発言する者多く、聴取不能)詭弁を弄して国民欺瞞し、ために、結果としては、国費は濫費されておることも周知の通りであります。……(発言する者多く、聴取不能)漁船拿捕すら、いまだかつて何ら措置し得ない現状は、これでも独立国と言い得るでありましようか。国民の憤激また当然と申さなければなりません。(拍手、「案文を読め」と呼び、その他発言する者多し)
 案文は先に言つたけれども、重ねて言う。
 衆議院は、吉田内閣を信任せず、
 衆議院は、吉田内閣を信任せず。
    〔発言する者多く、離席する者多く、議場騒然〕
   憲法政治に忠実でないことも、吉田内閣の特徴の一つであります。但し、首相がただ一度憲法に忠実であつたことは、片山内閣成立のときに、第一党に投票して、いさぎよく野に下つたことであります。その他は、常に多数という力、それは利益の観念の合計された力が、倫理性も人間的愛情も喪失して、みだりに政治の力として横行したことの足跡だけが、あざやかに残つておるのであります。(拍手)かくして、政権はいまや吉田一党の私有財産と化した感さえあり、権力の追求は、自己保存と自己優越性の保持の欲望であつて、一切の人間悪の源泉であるとアランは申しておりますが、まことにしかりであります。只見川問題、四日市燃料廠、炭住金利払いもどし等々、スキャンダルの続出したことは、うなずかれる次第であります。
 恐るべきは、わが国経済が今や日本資本主義の過去の宿命的わだちを踏まんとしておることであります。すなわち、昭和四、五年のコースに入りつつ、しかも、日本経済の宿命的矛盾と対決すべき何ものも持つていない。(拍手)これは官僚独占資本主義もしくは側近独占資本主義と申すべきものの出現であります。これはまた、要するに官僚的国家財政偏重政策の所産であります。結果として、地方財政を赤字に苦しましめ、一般経済活動を萎縮させ、農民、勤労者をいよいよ窮地に追い込み、そのことはまた国内市場の狭隘化を来しまして、中小企業に苦悩を与えつつあることは、周知の通りであります。特に、ニユー・デイール政策実施以来の米国経済を初め、英国あるいは西ドイツ等々、いずれも資本主義の内包する矛盾を克服して、思い切つた革新政策を断行し、いわゆるハイ・ウエージ、ロー・コストで世界経済に活躍しておるのに、日本の吉田内閣は旧態依然たる古典的資本主義を墨守している。(拍手)世界経済とその基礎理念を異にし、国際経済と波長が合つていないのであります。
 かくのごとくでありまして、吉田内閣の施政の全般を通観いたしますると、その特徴は、まず目標と基準が一切欠如していることであります。日本の再建のための国民の努力の目標も、安定すべき生活の基準もなく、さらに、越えてはならない道義の最低線を踏みはずして、平然としてなおかつ台閣に列している者さえあるに至つては、まさに民主主義の恥辱と言うのほかはありません。(拍手)
 しかもまた、その政治は、明治以来空前の独裁政治の出現となつたのであります。戦前の憲法には、内閣の連帯責任が規定されております。すなわち、今や世界各国は、生産の飛躍的増大をはかりつつ、しかも貧富両者の福祉の差異をいかにして緩和するかに真剣であり、生活落差の幅をどうして縮めるかについて、不断の努力を払つているのであります。しかるに、吉田内閣は、およそこれとは逆コースをたどり、(拍手)特に労働及び社会保障政策の貧困は、歴然としておおうべくもないのであります。(拍手)今日のごとき世相にありましては、政治のヘツド・ライトは、悩める者、貧しき者、悲しめる者、力乏しき大衆に向けられなければならないのであります。(拍手)しかるに、この政策の貧困から来る社会不安を権力をもつて圧服せんとするものが、今回の警察法であります。しかし、今やそれもなく、首相は閣僚の罷免権を握り、保安隊を握り、警察を握り、しかも解散をもつて国憲の最高機関たる国会を洞喝しているのであります。(拍手)もし、この特別国会において政府が信任に破れ、その結果解散の暴挙をあえてするがごときことが万一ありといたしますならば、これこそまさに政治的クーデターであります。(拍手)また、これこそ説得と叡知と輿論と礼譲を重んずる民主主義の破壊であります。おそらく、かかる事態に立ち至らば、全国民は、押えがたい憤りをもつて、このような未曽有の独裁者と、民主主義を守るために闘い抜くでありましよう。独裁者、それは、人間の悲しみを知らず、人類的悲願の何ものをも持たない、ただ権力に執着する、あさましい人間の姿にほかならないのであります。(拍手)戦争の悲劇から何ものをも学ばず、何ものをも失わずの態度は、日本のためにまことに遺憾にたえないのであります。歴史の権威のためにも、おごそかに戒心しなければならない点であります。(拍手)
 歴史の舞台は、幕をおろさねばならぬ段階に来ております。明治維新にも比すべきこの偉大な時代の潮が、吉田翁の目には見えないのである。この時代の大波のとどろきは、吉田翁の耳には聞えないのである。(拍手)よし、わが吉田茂翁に明日がなくとも、日本歴史には明日がなければなりません。(拍手)新しい時代の清新はつらつたる民族興隆の舞台を開くために、吉田氏の幕はおりなければならない。(拍手)すでに古稀のよわいを越された吉田翁は、私人としては、おそらく話上手の好々爺でありましよう。しかし、公人としては、党内においてすら公々然たる反逆者が出るに至つた。私は、この際、吉田首相の堂々たる、しかもあざやかな、いさぎよい最後の桂冠を要求するとともに、翁の自重自愛を祈るものであります。
 以上が、私の、衆議院は吉田内閣を信任せずの決議案に対する説明であります。

 衆議院は、吉田内閣を信任せず。
 右決議する。
 これに対して、満場の諸君の御賛同を願います。(拍手)
   
  (中略)
   
議長(大野伴睦)
   これにて討論は終局いたしました。
 本決議案の採決は記名投票をもつて行います。北村徳太郎君外十五名提出、吉田内閣不信任決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
   
議長(大野伴睦)
   投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長朗読〕
 投票総数 四百四十七
  可とする者(白票)  二百二十九
    〔拍手〕
  否とする者(青票)   二百十八
    〔拍手〕
   
議長(大野伴睦)
   右の結果、北村徳太郎君外十五名提出、吉田内閣不信任決議案は可決されました。
    〔拍手、「万歳」「万歳」ど呼ぶ者あり〕
   
議長(大野伴睦)
   ただいま内閣総理大臣から詔書が発せられた旨伝えられましたから、これを朗読いたします。
    〔拍手〕
 別紙詔書が発せられましたからお伝えいたします。
  昭和二十八年三月十四日
    内閣総理大臣 吉田  茂
   衆議院議長大野伴睦殿
    〔別紙〕
  日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。
 御名 御璽
  昭和二十八年三月十四日
    内閣総理大臣 吉田  茂
    〔拍手、「万歳」「万歳」と呼ぶ者あり〕