人民網日本 Jul 12 2011

5年間赤字続くも循環型農業に挑む日系企業 

 山東省煙台市の県級市・莱陽市で農業に取り組む日系企業の山東朝日緑源農業高新技術有限公司は、設立から5年が経つものの赤字続きで、現地の農民の笑い者になっているという。「新京報」が伝えた。

  同公司は2006年、日本のアサヒビール、住友化学、伊藤忠商事により合弁設立された。この3社はいずれも世界企業上位500社に入る大企業だが、農業生 産を手がけるのは初めてのことだった。当時、同公司は莱陽市で1500ムー(100ヘクタール)の土地を借りて、酪農を始め、トウモロコシや小麦やイチゴ などを植えた。土地の借用期間は20年間だった。

 同市大明村の村民はこの日系企業を快く思っておらず、「あの人たちは土地の扱い方を知 らない」と話す。過去5年間の同公司の栽培方法は現地の人々からもったいないと思われている。化学肥料を使わず、農薬を使わず、除草をしないこともあり、 1ムー(約0.06ヘクタール)の土地の収穫量は現地の農民の半分ほどに過ぎなかったのだ。

 日本人が土地を借用する動機に疑問を抱く人も出てきた。ある農民は日系企業は鉱物資源の探査のために土地を借りたと言い、別の人は日本人は自国のために穀物生産拠点を作り、土地を占領して勢力範囲を拡大するつもりだと話す。

▽栽培と酪農の循環を目指す

 現地の農民の疑問に対し、同公司の前島啓二副総経理(副社長)は言葉を選びながら次のように回答した。

 メディアの中にはこれまで、同公司が日本向けに穀物を生産していると誤解するものもあった。

 現在、企業は利益を挙げていないが、プロジェクトを開始する前にしっかり準備をしている。利益を上げることが目的なのではなく、
農業モデルプロジェクトを実施して、高水準の農産品を提供することが狙いだ。

 同公司は初めて
循環型の生態環境に配慮した農業を行っている。まだ実験段階にあり、過去5年間に一連の問題が生じるのは免れなかったが、徐々に改善しているところだ。とはいえ、同公司も自分たちの栽培理念が現地の農民とまったく違うことは自覚している。

  日本には昔から、
作物を植えるにはまず土作りをし、土作りを行うにはまず人作りをする、という教訓がある。最も重視するのは土壌の質だ。莱陽市の土地は肥沃だが、化学肥料や農薬をたくさん使ったために土地が退化しており、そこで初めの数年間は土壌の回復に大きな力を注ぐことにしたのだ。

 現地人々は各年のムーあたり収穫量をなお重視する。土地は化学肥料を絶えず追肥しなければ収穫量を保てず、このようにして生産された農作物には化学品が残留していることが多い。

前島副総経理はこののように話した。

 同市小 店村の趙炳輝さんは前島副総経理の話す内容をよく理解したという。同公司で働いて2年になる趙さんは、これまで農業に数十年間従事してきたが、同公司です るように土地に手を入れるのは初めてだという。化学肥料は散布せず、すべて牛の堆肥を使用する。除草剤を使わず、手やスキで雑草を引き抜く、農薬は極めて 少量しか使わず、使う場合には専門家の指導を仰ぐ。土壌の定時チェックを行い、養分が均等になるようにする、といった具合だ。

 同公司の正面ドアを入ると、循環型農業の模式図が目に入る。乳牛は堆肥を生じ、堆肥は地中で土質を改善し、安全な無公害の高価格農作物を育てる。農作物の茎は乳牛の飼料となり、高品質の牛乳を作り出す。

 前島副総経理によると、同公司が
栽培するトウモロコシと小麦はすべて乳牛の飼料用で、高品質の牛乳を作るため、化学肥料と農薬の使用は認めていないと言う。

 同公司の牛乳は1リットルが定価22元で、国内の牛乳価格の1.5倍に当たる。同公司のイチゴは1キログラムあたり定価120元で、5年前に上海市場に登場した時にはイチゴの価格記録を塗り替えた。

 莱陽市は中国の対日輸出農産品を最も多く生産する県級市で、前々から日本の裏庭などと呼ばれてきた。だが
同公司が照準を当てるのは日本市場ではなく中国市場だ。

前島副総経理によると、同社は設立されてすぐに販売先を中国に 絞るとの方針を定め、契約書にも関連の約款を設けた。設立当時の調査によると、中国では、特に大・中都市では、食生活に関して「安全」「安心」「高品質」 を求める消費者がますます増えていることがわかった。同公司の目標は中国のハイエンド消費層だ。

 ある統計によると、中国のハイエンド消費層が人口全体に占める割合は3-5%で、5千万から6千万人をカバーする大市場だといえる。

 前島副総経理によると、中国人の生活レベル向上に伴い、同公司の製品を購入する人は今後ますます増えるとみられる。現在、同公司の牛乳は北京、上海、山東の3市場でしか売られていないが、販売量は毎月20%のペースで急速に増加している。

  統計データによると、07年にメラミン事件が発生すると、国産牛乳が敬遠されるようになり、輸入乳製品が再び市場の主導権を奪い返した。中商流通生産力促 進センターの分析によると、同事件以後、輸入ブランドが一線都市と二線都市で80%のシェアを占めるようになったという。こうした背景の下で、同公司のよ うな外資系企業は国産牛乳が「譲渡」した市場のパイの分割をスタートさせている。

 外資系企業が中国で栽培をすることについて、専門家の中には懸念を表する人もおり、外資系企業の土地借用をめぐる政策の改善を待つ人もいる。

 山東社会科学院省情総合研究センターの秦慶武主任(元山東社会科学院農村経済研究所所長)によると、多国籍企業は「販売業者」から「農場主」に変わり、今後は中国農業の伝統的栽培モデルや組織モデルに強い衝撃を与えることが予想されるという。

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朝日緑源は、2006年5月、山東省莱陽市にアサヒビール(株)、住友化学(株)、伊藤忠商事(株)の3社共同で、野菜・果物・牛乳等の高付加価値農産物の生産・加工・販売を目的として設立されました。
 朝日緑源は、日本の先端的な農業技術を導入し、「循環型農法」「省エネルギー設備」「IT」を活用する約100haの農場を拠点として、農作物の栽培か ら物流・販売まで一貫したフードシステムを構築するとともに、徹底した品質管理を実践し、安全・安心でおいしい高付加価値の農作物を中国国内に供給してい きます。
 当事業は2003年、ビール・飲料事業を山東省で展開していたアサヒビール(株)に対して、山東省政府から中国の農業問題解決に対する協力依頼を受けて 事業化が進められました。朝日緑源は、これからも山東省との協力体制のもとで、中国の食生活向上に貢献する新たな農業モデルの提案と、次世代の農業指導 者・技術者の育成に取り組み、中国農業の課題解決の一助となることをめざします。

http://www.asahigreensource.com/

 

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平成18年8月24日 アサヒビール/住友化学/伊藤忠商事

中国の食生活向上に貢献する新たな農業経営モデルを提案する『山東朝日緑源農業高新技術有限公司』を設立
〜安全・安心で美味しい付加価値の高い農作物の生産・出荷を開始〜

 アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 荻田伍)、住友化学株式会社(本社 東京、社長 米倉弘昌)、伊藤忠商事株式会社(本社 東京、社長 小林栄三)の3社は共同で、本年5月に日本独資による農業法人『山東朝日緑源農業高新技術有限公司』を山東省莱陽市に設立し、山東省との協力体制のもとで、大規模な農業経営を展開します。
 山東朝日緑源農業高新技術有限公司は、トレサビリティーの確保や循環型農法などの先進技術を導入し、中国都市部で高まる安全・安心で美味しいというニーズに応えた農作物を生産し、徹底した品質管理のもとで中国国内に供給していきます。こうした農作物の栽培から物流・販売まで一貫したフードシステムを構築することによって、中国における食生活の向上に貢献する新たな農業経営モデルを示していきます。また、次世代の農業技術者の育成や、中国他省への事業を展開することによって、中国農業の課題解決の一助となることを目指します。

 山東朝日緑源農業高新技術有限公司は、中国の消費者のニーズに基づいた高付加価値で差別性のある農作物を選択し、山東省莱陽市にある約100ヘクタールの農地で、レタスやスイートコーンなどの野菜栽培(露地栽培)、イチゴなどの果実栽培(温室栽培)に加えて、搾乳牛で将来的には1000頭規模の酪農を行っていきます。すでに耕地やビニルハウスの設置を進めながら一部の農作物の生産を始めており、本年8月に山東省の大都市の消費者に向けてレタスの出荷を開始しました。
 その他の農作物については、スイートコーンは本年9月、イチゴは来年1月より出荷を予定しており、酪農については12月に豪州より乳牛約200頭を輸入し、牛乳の出荷も引き続き開始します。初年度の出荷数量は、本年内にレタス約20トン、スイートコーン約80トン、イチゴは来年に約35トンを計画しており、鮮度物流機能をもつ物流業者を通じて、山東省内の大都市および北京市にある日系や外資系スーパーを中心に直販し、安全・安心で美味しい農作物として、中・高価格帯での普及を目指します。
 さらに、農地全体の整備と各施設が完了する来年以降は農作物の出荷数量を順次拡大し、7年後を目途に、野菜が年間で約2000トン、果実が年間で約700トン、牛乳は年間で約7000トンの出荷を予定しています。また、生産・出荷ならびに販路の拡大を図り、5年後の2011年には農業法人として単年度黒字化を目指します。

 山東朝日緑源農業高新技術有限公司は、国際協力事業団青年海外協力隊でケニア、パナマ、ネパールなどでの指導経験がある農業技術者、獣医師を中心に事業を運営しており、近代農業を志す現地雇用者とともに、中国における新たな農業経営モデルを実践します。 山東朝日緑源農業高新技術有限公司の特徴は「環境」「省エネ」「IT活用」の3点です。
(1)「環境」については、酪農から生じる牛糞を用いた堆肥を野菜や果実の畑に散布し、化学肥料などに頼らず地力を維持する循環型農法を実践します。
(2)「省エネ」については、風力や太陽光発電の積極的な導入によって省エネルギー対策を講じた農園とします。
(3)「IT活用」については、各種センサーによる栽培管理を施したビニルハウスの導入や、農作物の生産履歴管理やICタグによる乳牛の個体管理などトレサビリティーの充実を図ります。さらに、温度管理を徹底した鮮度物流システムの構築など、最先端のITを駆使した農場経営を行います。

 中国では急速な経済成長と国民の生活水準の向上にともない、都市部を中心に食生活における「安全・安心」「高品質」を求める層が増えており、2008年の北京オリンピックや、2010年の上海万博に向けて、こうした需要はさらに高まることが予想されます。
 アサヒビール(株)は、山東朝日緑源農業高新技術有限公司を通じて、中国の食生活向上に貢献することは、これまでの酒類や飲料水分野での事業に加えて、中国におけるプレゼンス拡大に繋がるものと考えています。
 また、共同出資者となる住友化学(株)は、中国の農業経営の新たなモデルを目指す山東朝日緑源農業高新技術有限公司への農業資材、農薬等の供給を通して、中国事業をさらに強化することを目指します。伊藤忠商事(株)は、同農業法人への出資を通して、農業資材の供給、物流、既存の販売チャネルを利用した高付加価値農産品の販売などにより、中国におけるSIS(戦略的統合システム)戦略の拡充、加速を進めます。


【新会社の概要】
社名 山東朝日緑源農業高新技術有限公司
英文名称 SHANGDONG ASAHI GREEN SOURCE HIGH-TECH FARM CO.,LTD
所在地 中華人民共和国山東省莱陽市
代表者 董事長 山崎史雄
設立 2006年5月
資本金 15億円
出資比率 アサヒビール(株)73%、住友化学(株)17%、伊藤忠商事(株)10%
事業概要 野菜、果物、牛乳等の高付加価値農作物の生産・加工・販売

 

事業コンセプト

先端農業技術

朝日緑源は日本の先端農業技術を導入した大規模農業経営を展開しています。先端技術の一部をご紹介いたします。

循環型農法

農薬・肥料の過剰使用で疲弊した土壌を改良して、持続的に使用可能な土作りを行います。

IT活用

温室での各種センサーによる栽培管理や農作物の生産履歴管理、ICタグによる乳牛の個体管理などITを駆使してトレーサビリティの充実を図っています。また、温度管理を徹底した鮮度物流システムの構築を進めています。

 

省エネルギー設備

風力発電や太陽光発電設備を導入するほか、堆肥工場を建設し、堆肥が発酵するときに出る熱を利用してビニルハウスを温めることで農場でのエネルギー使用量の削減を進めています。

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2008年05月01日

新会社『山東朝日緑源乳業有限公司』の設立について

<取組み内容>
・アサヒビール、伊藤忠商事の2社は共同で、2008年4月に新会社『山東朝日緑源乳業有限公司』を設立しました。そして新たに建設する工場にてアサヒ(朝日緑源)ブランドの牛乳を製造し、上海・北京・青島の市場にむけて販売を開始します。
・新工場では、貯蔵期間の長期化が可能となる日本の品質管理技術(ESL)を導入し、日本の酪農技術で管理した単一農場の原料牛乳を使用することで製造可 能となる成分無調整の牛乳を、250ml・500ml・1Lの3種類の紙パック(産地パック)に詰めたチルド牛乳として製造します。
・『山東朝日緑源農業高新技術有限公司』にて産出した高品質の原料牛乳から、1日1〜3tを新たに建設する牛乳製造工場にて日本の最新技術で加工し、伊藤 忠商事のチルド物流機能を活用して販売します。北京・青島・上海の富裕層に向けて販売を実施する予定で、初年度は1日1tの販売量を目標とし、その後順次 販路の拡大を目指していきます。

<目的>
・アサヒビールは『山東朝日緑源農業高新技術有限公司』を通じた野菜・果物の生産・販売に続き、今回アサヒ(朝日緑源)ブランドで高品質の牛乳を製造
・販売することで、中国におけるアサヒビールグループのプレゼンスの向上を図ります。また、共同出資者となる伊藤忠商事は、今回の『山東朝日緑源乳業有限 公司』を通じて資材の供給の他、中国における既存の販売チャネルに加えた新たな販路を開拓し、戦略の拡充、加速を進めていきます。

<背景ご説明>
・中国国内では都市部を中心に食の安全・安心に対する関心が高まっており、有機栽培の野菜など高品質の食品に対する需要が増加しています。本年開催の北京オリンピックや、2010年開催の上海万博に向けて、こうした需要はさらに高まることが予想されます。
・そこでアサヒビールは伊藤忠商事などと共同で、2006年5月に日本独資による農業法人『山東朝日緑源農業高新技術有限公司』を山東省莱陽市に設立し、 トレーサビリティの確保や循環型農法などの先進技術による徹底した品質管理のもとで、安全・安心で美味しいというニーズに応えた農作物を生産・販売してい ます。約100ヘクタールの農地では、スイートコーンなどの露地栽培、ミニトマトやイチゴなどの温室栽培に加えて、2007年7月からは酪農により山東省 の乳業会社へ原料牛乳の出荷を開始しています。
・また、近年の中国国内ではとりわけ牛乳に対するニーズも高まっており、特に今回製造に取り組むプレミアム牛乳は、普及価格帯の1.5倍から2倍前後の高価格であるにもかかわらず、月ごとの前月に対する販売増加率は15%前後と大きく伸長しています。

【新会社の概要】
社名 山東朝日緑源乳業有限公司
英文名称 SHANDONG ASAHI GREEN SOURCE MILK PRODUCTS CO.,LTD
所在地 中華人民共和国山東省莱陽市沐浴店鎮 山東朝日緑源農業園内
代表者 董事長 山崎史雄
設立 2008年4月
資本金 8.4億円
出資比率 アサヒビール(株)90%、伊藤忠商事(株)10%
事業概要 牛乳・乳製品の製造・加工・販売