2011/4/13 日本経済新聞

EU、炭素税13年に義務化 温暖化対策の柱に

欧州連合(EU)の欧州委員会は炭素税(環境税)導入案を13日に発表する。ガソリン、軽油などに二酸化炭素(CO2)排出量1トンあたり20ユーロ(約2500円)を課税する最低基準を設定、2013年から加盟国に導入を義務づける。排出量取引制度と並ぶ域内共通の地球温暖化対策の柱としたい考え。ただ、導入には加盟国の全会一致による承認が条件で、実現までには曲折も予想される。

 EUは20年までに温暖化ガスを1990年比で少なくとも20%削減、主要排出国が相応の努力をすることを条件に最大30%削減する目標を掲げる。炭素税は既にフィンランド、デンマークなど北欧が導入しているが、欧州委では温暖化対策の強化にはEU全域での導入が不可欠と判断した。

 具体的にはエネルギー税指令(法律)を改正。加盟国が従来、ガソリンなどに課してきた税金をCO2排出量による「炭素税」と熱量に応じた「一般エネルギー消費税」に分割するよう求める。

 炭素税はガソリン、軽油、灯油、液化石油ガス(LPG)、天然ガスの5製品が対象。いずれもCO2排出量1トンあたり20ユーロを最低基準とする。

 日本では11年度税制改正で地球温暖化対策税(環境税)の導入を決めた。現行の石油石炭税を11年10月から増税し、増税部分を環境税と位 置づける。当初はCO21トンあたり300円程度で、EUの最低基準はこれを大きく上回る。CO2大量排出国の米国や中国では炭素税は未導入。EUは先行 して枠組みを固めたい考えとみられる。

EUの炭素税・エネルギー消費税のイメージ
  炭素税 一般エネルギー消費税
2013年
1月〜
13年
1月〜
15年
1月〜
18年
1月〜
ガソリン 20   9.6  9.6  9.6 
軽  油 20   8.2  8.8  9.6 
灯  油 20   8.6  9.2  9.6 
液化石油
ガス(LPG)
20   1.5  5.5  9.6 
天然ガス 20   1.5  5.5  9.6 

(注)欧州委員会案から作成、数字は最低基準。単位ユーロ、炭素税はCO2 1トンあたり、エネルギー消費税は1ギガジュールあたり金額

 欧州委案の一般エネルギー消費税は13年から段階的に税率を引き上げ、5製品すべてで18年1月時点で熱量1ギガジュールあたり9.6ユーロとなるように最低基準を決めた。両税とも最低基準を超える部分は加盟国が自由に税率を上乗せできる。

 課税対象は家計と企業で、企業は主に運輸部門やオフィスビルを想定。企業に排出枠を定め、その過不足分を市場で売買する排出量取引制度(EU―ETS)の参加企業は対象外としており、鉄鋼大手などは課税対象とならない見込み。電力会社も原則対象外となる。

 炭素税は1990年にフィンランドで導入されたのを機に北欧で導入が広がった。ただ、フランスは当初の独自導入方針を転換。「EUレベルで 導入すべきだ」(フィヨン首相)と欧州委提案を待つ姿勢を示していた。一方、EU加盟国の間でも化石燃料への依存度が高い中・東欧諸国の反発が予想される ほか、英国が「税制は加盟国権限」としてEU基準採用に難色を示す可能性がある。