福島原発の状況
一般の工事現場との違い
1)近辺はまだ住民が戻れず、現場の放射能は非常に高く、完全防備で、しかも、常時 線量計を持参し、限度を超えれば退場せねばならない。10年経っても、建屋上部にある使用済み核燃料を取り出せない状況。
通常の現場と同じような工事はできない。
2)地下水は地下から上がってくるものではない。原発建屋は海抜30〜40mの台地を海面近くまで掘削したため、原子炉建屋の地階は透水層の真ん中にあり(下図)、山側から流れ込んでいる。
対策前の時点では、地下室に地震で壊れた場所から1日1000m3が流れ込んだ。現在は140m3。GEによって設計されたものを基本としている。プラント施工工事は鹿島建設によって行われた。
1号機周辺の敷地は標高30ないし35mの台地を掘削し、標高10mで整地された。原子炉建屋など重要度の高い建物を岩盤に直接支持させるためであった。
津波の可能性は建設当初より、一定のレベルまでは考慮していた。整地面レベルは津波対策に必要とされた敷地高さ4mを上回る10mとなったが、この高さが最もコストを低減するためだった。
ガス爆発 | 核燃料 | 汚染水 | 使用済み核燃料 | ||
1号機 | 3/12 15:36 メルトダウン | 発生 | 溶けて圧力容器を破り、格納容器に (確実) |
格納容器破損で地下に流れ出す。 外部から流入する地下水と混合 |
瓦礫散乱で取り出せず 折れたクレーンもそのまま(仮の手当て) |
2号機 | 3/14停止 メルトダウン | ー (これのみ壁、天井が残る) |
ベント失敗で大量の放射線物質が流出 近寄れず、取り出せず |
||
3号機 | 3/13停止 メルトダウン | 発生 | 同上? | 一部取り出し | |
4号機 | 定修停止中 | 発生(3号機から水素流入) | 圧力容器内 | 無し | 当初、プール宙吊りで危機 全量取り出し |
燃料爆発を防ぐため、大量の水を注入している。この水は燃料に触れ、汚染水となる。(後述するが、この水は循環注水冷却している。)
1号機、2号機は格納容器の外側の容器の水位が下がっている。これは汚染水が外に漏れていることを示す。特に2号機は地下水水面と同レベルのため全量が漏れている。
3号機は外側容器が満杯のため、漏れはごく一部。
4号機はメルトダウンなく、燃料が圧力容器にとどまるため、格納容器に無く、外への漏れもない。内部の状況はいろいろな計測・事実からの推定で、実状は不明。
放射能問題
放射能の問題が一般の現場と全く異なる点の一つ。
現場周辺は近づけば即死するほど高濃度の放射能が広がる。
建屋内は地震と爆発で瓦礫が散乱、2機のロボットを送ったが、1機は瓦礫に挟まれ、動けず、1機は放射能の影響でカメラが破損、写せず。
上図はいろいろな計測・事実からの推定で、実状は不明。
東電は溶融燃料回収を図るが、状況が分からないため、回収は実際は不可能とされる。
一般人の被ばく限度は年間1ミリシーベルトだが、原発労働者は年間50ミリ、5年で100ミリがルールだが、事故終息のため100ミリまでは認められている。
しかし、福島では250ミリまでやらせた。(現在は100ミリ) 1日の上限5ミリ。超えれば退場。
凍土遮水壁建設では、防護服の上に7〜8kgもある遮蔽ベストを着用して作業した。
汚染水
1) 注水し炉心を冷やす必要があり、1〜3号機で溶解燃料に触れて汚染水となり、底の抜けた圧力容器から格納容器へ、更に損傷した部分から原子炉建屋、タービン建屋の地下に流出 する。
2) 原発建屋は海抜30〜40mの台地を海面近くまで掘削したため、原子炉建屋の地階は地下水位より低い。
地階はコンクリートで水から守られていたが、3/11の地震で地階が破壊され、地下水が流入 している。これが1)と混じりあい、汚染水となって地下に溜まり続けた。
放置すれば1階から外に出て、海に流出するため、汲み上げている。
原子炉地階は上部透水層にあり、斜面なので、隙間から大量の水が流れ込む。
当初の状況:
山からの流入が1日 1000m3
山側の汚染前の地下水を汲み上げ、海に流す「地下水バイパス」、敷地舗装等で流入を400m3に減らした。炉心を冷やした水の漏れが400m3 ←ーーーーーーーーーーーーーーー
合計 800m3が増加 ↑
1日800m3を汲み上げ、セシウムを除去して、うち400m3を冷却用に循環。
最終的に残り400m3をタンクに。
その後、多核種除去装置「ALPS」 で処理して、タンクに。
現状
その後、建屋近くの上流及び下流の地下水をくみ上げ、浄化して海に流す「サブドレン計画」、凍土遮水壁建設で、現在は140m3程度に減っている。 〔ゼロにする計画だったが〕
(サブドレンで150m3程度、凍土遮水壁で100m3程度減)
凍土遮水壁
地下に30mの長さのパイプを1m間隔で打ち込み、そのパイプにマイナス30℃の液体冷却剤を流し込み、周りの土壌を地下水とともに凍らせる。
地下水を完全に止めるのは無理。冷却剤を流し続け、電気で冷やす必要あり。
建設費 562億円、電気代年間10億円当初、鋼鉄・コンクリートの壁をつくる案があったが、建設費1000億円の試算で取り止め。