2011/5/15 日本経済新聞

福島1号機、燃料溶融は地震直後 把握に2カ月

 東京電力は福島第1原子力発電所1号機で3月11日の東日本大震災のわずか5時間後に、原子炉圧力容器の底に燃料棒が溶け落ちる「メルトダ ウン(炉心溶融)」が始まったとの見方を明らかにした。これまで考えられていたよりも早い段階で深刻な事態に陥っていたことになるが、東電はその後の海水 注入で溶け落ちた燃料を冷却できたとしている。今後2、3号機の解析も急ぐ。

 東電は過酷事故(シビアアクシデント)を再現するソフトなどにより地震発生からメルトダウンに至る過程を解析した。2カ月以上も溶融の実態 をつかめなかったのはデータ不足が最大の原因という。1号機の電源が長期間失われて中央制御室のコンピューターが動かず、放射線量も高くて作業員がデータ を取り出せなかったとしている。

 ただメルトダウンは冷却作業にはほとんど影響しなかったとみる。まず真水を地震翌日の12日午前5時50分から注入。午後2時50分に中断したが同午後8時から海水に切り替えて続けた。温度は順調に低下したという。

 溶け落ちた燃料は圧力容器の底部で大半が水没し徐々に冷えたとしている。ただ一部は水から露出して過熱し、高温の蒸気が発生して圧力容器上 部の温度を押し上げたもようだ。もし高温のまま格納容器に落ち、水に触れていれば水蒸気爆発が起き大量の放射性物質が拡散した恐れもある。

 実際には大部分の燃料は圧力容器の底で固まったようだ。棒の状態よりも冷却水に触れる表面積が小さいために冷えにくい。冷却に余計に時間がかかるとの見方もある。

福島第1原発1号機の炉心の状態変化
日 時 出来事
3月11日14時46分 地震発生、原子炉は自動で緊急停止
15時30分ごろ 津波到達
18時ごろ 原子炉の水位が低下し、燃料棒の露出が始まる
19時半ごろ 燃料棒が全て露出。燃料の被覆管の損傷が始まる
21時ごろ 燃料の温度が融点のセ氏2800度に達する
12日6時50分ごろ 大部分の燃料が圧力容器底部に落下

 炉心が溶けると冷却水に燃料の一部や核分裂生成物が溶け込み、放射性物質の濃度が高い汚染水のもとになる。周辺の放射線量が上がり、作業を阻む原因にもなる。

 メルトダウンは米国スリーマイル島の原発事故でも起き、「最悪の事態」といわれる。短時間でこうした事態に陥るのを繰り返さないため、今後、原発の安全設計も再考を迫られる。

米スリーマイル島原発事故などを受け、原子力安全委員会が1992年に炉心溶融などシビアアクシデント対策の報告書の作成を推奨した。

これに対し各社は、電源が喪失した場合でも原子炉内に7〜8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えているが、これに加え、隣接する号機の電源を融通する、非常用ディーゼル発電機を追加設置するなどの方法で電源供給能力を向上させるとした。
電源が8時間を超えるような長時間にわたり失われる事態を想定した社はなかった。

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津波到達の2時間半後に原子炉の水位が低下という事態は上記から考え、おかしい。

 

毎日新聞