2011/7/31 朝日新聞

原発への攻撃、極秘に被害予測 1984年に外務省

外務省が1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を極秘に研究していたことがわかった。原子炉や格納容器が破壊された場合に加え、東京電力福島第一原発の事故と同じ全電源喪失も想定。大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて公表しなかった。

 欧米諸国は原発テロを想定した研究や訓練を実施しているが、日本政府による原発攻撃シナリオの研究が判明したのは初めて。

 81年にイスラエルがイラクの研究用原子炉施設を爆撃した事件を受け、外務省が財団法人日本国際問題研究所(当時の理事長・中川融元国連大使)に想定される原発への攻撃や被害予測の研究を委託。84年2月にまとめたB5判63ページの報告書を朝日新聞が入手した。

シナリオ1 全電源喪失

    送電線と設備破壊、原発内の電気、冷却機能の破壊
                ↓
    緊急炉心冷却システムも動かず炉心溶解
                ↓
    放射性物質が大気中へ

シナリオ2 格納容器破壊
  
    爆撃で格納容器や冷却装置が破壊
                ↓
    炉心溶解し、ただちに放射性物質が大気中へ

シナリオ3 原子炉の直接破壊(最悪のシナリオ)

    誘導型爆弾などで格納容器、原子炉が破壊、炉心も爆破
                ↓
    炉心の一部が飛散、燃料棒の温度上昇

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シナリオ2の具体的な被害予想 

 緊急避難を全くしなかった場合  
    急性死亡 最大18,000人、急性障害 最大41,000人

 風下約18km圏内の住民が1〜5時間以内に避難 
    急性死亡 最大 8,200人、急性障害 最大 33,000人

  長期的影響
    がん死亡 最大24,000人、居住制限地域 最大87km圏内