地球温暖化って何?

https://agora-web.jp/archives/2051393.html

 

参考

https://www.k.u-tokyo.ac.jp/news/20091224press.html

東京大学大学院新領域創成科学研究科

三内丸山遺跡の盛衰と環境変化 -過去の温暖期から将来の温暖化を考える-

陸奥湾で過去の環境復元を行った.三内丸山遺跡が栄えた約5000年前は,現在より2.0℃ほど温暖化してクリなども沢山実っていた.しかし,4200年前に突然寒冷化(2.0℃)したため,人々は遺跡を放棄し,散逸した.同時期東アジアの文明も乾燥や寒冷化のため衰退した.今世紀末までに気温は2.0℃位上昇すると,農林水産業には大きな影響がでるかもしれない.

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関は2021/5/26日、青森県の三内丸山遺跡など「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森県、岩手県、秋田県)を世界文化遺産に登録するよう勧告した。文化庁が同日、明らかにした。1万年以上にわたって営まれた狩猟や採集を基盤とした定住生活の変遷を網羅し、農耕以前の人類の生活や精神文化の実態を示す貴重な物証と認められた。

7月16~31日に開かれるユネスコの世界遺産委員会での決議を経て正式に決まる。5月10日には自然遺産候補の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)も勧告を受けており、ともに登録されれば日本の世界遺産は計25件となる。

縄文遺跡群は4道県13市町にある17遺跡で構成する。道路や大型建物などが計画的に配置された大規模集落跡の三内丸山遺跡や、大小の石を同心円状に配した大湯環状列石(秋田県)、祭りに火を使ったことが推定できる木の実が見つかった御所野遺跡(岩手県)などがある。

ユネスコの諮問機関は「先史時代の農耕を伴わない定住社会と複雑な精神文化、定住社会の発展段階や環境変化への適応を示している」と評価した。

勧告を受け、萩生田光一文部科学相は同日、「我が国の貴重な文化遺産が国際的に高い評価を受けたことを大変喜ばしく思う。地元関係者の努力に敬意を表する」とのコメントを出した。

政府は2020年1月に遺跡群の推薦書をユネスコ本部に提出。同年9月には諮問機関の調査員が現地視察に訪れていた。

当初は20年の登録を目指して19年に推薦する候補にも上がった。推薦枠は文化・自然を合わせて1国1件に制限されたことから、政府は奄美・沖縄を優先した。

20年の世界遺産委は新型コロナウイルスの影響で延期された。今年は奄美・沖縄など20年に審査予定だった候補と21年分とを合わせて審査する。

 

 

発表内容

<三内丸山遺跡の特徴>
三内丸山遺跡は青森市に位置する日本最大級の縄文集落跡で,巨木を用いた高層建築,広い交易範囲など高い文化が特徴で,狩猟採集を糧に移動生活をするという従来の縄文人の生活観を大きく変えたという点で注目されている.発掘調査によると,集落は約5,900年前に成立し,その後規模は拡大し,約4,200年前に人々は遺跡を放棄したが,その理由はわかっていない.

<日本全国とのトレンドの一致>
日本全体の人口は縄文時代最初期(12,000年前)で約2万人,遺跡が存在した縄文時代中期に最大(約26万人)に達し,晩期には人口は減少(約8万人)した(小山・杉藤,1984; 小山,1984).三内丸山遺跡の盛衰のトレンドは,全国のトレンドと一致するので,何らかの共通の環境的な要因が関係していると言われてきたが,連続的で定量的な環境記録の復元はほとんどなされていない.

<遺跡に近い海での環境復元の大きな利点>
三内丸山遺跡から20kmに位置する青森県・陸奥湾の堆積物(北緯41度,東経140度46分,水深61m)を採取し,環境復元を行った.陸と違い,海の試料は連続的に環境を記録しており,正確な年代や水温決定ができるという利点がある.

<遺跡の成立原因>
約5,900年前陸の気温が急に上昇して暮らしやすくなった.特に,ドングリやクリなどが繁茂し,その実りを享受できるようなったことが大きい.海産物の生産も増加した.

<遺跡の衰退原因>
4,200年前には急激に寒冷化した.特に,海水は2.0℃の下降を示した.2.0℃という気温・水温差は緯度方向の距離で約230kmに相当する(青森-仙台あるいは酒田).大きな実のなる(商業目的の)クリ林は,現在山形県あるいは宮城県南部以南なので,縄文中期には,青森でもりっぱな実のなる栗林が存在し,三内丸山遺跡の人々も食料も潤沢であった.しかし,突然の寒冷化により,クリなどの陸上の食料生産は激減した.陸上動物も同様に減少し,遺跡の人々の食料確保に深刻な影響を与え,遺跡の衰退をもたらした.この気候の寒冷化は日本全国でおこり,縄文人の人口減少の重要な原因であった可能性が高い.

<世界の文明盛衰とのリンク>
中国の長江周辺,西アジアのメソポタミアなど世界の文明においても,ほぼ同じ時期(4,000-4,300年前)に衰退が報告されている.このようにアジアの中緯度域でほぼ同時に文明が衰退していく原因は,アジアモンス−ンの寒冷化あるいは乾燥化などのさまざまな影響と言えるかもしれない.

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政府は「2050年カーボンニュートラル」という方針を決めました。これは「2050年までに温室効果ガス(特にCO2)の排出を実質ゼロにする」という意味で、そのために2030年までに46%減らすことになっています。これは地球温暖化を防ぐためということですが、どういう意味でしょうか?
 

Q1. 温暖化の原因は人間の活動なんでしょうか?

東大には去年「グローバル・コモンズ・センター」ができて、そのダイレクターの石井菜穂子さんは図1のようなスライドで「人類が地球環境危機を起こした」といっていますが、これは変ですね。



「完新世」というのは今から1万1700年前に氷河期が終わり、人類が定住し始めた時代ですが、地球の平均気温もその時期に大きく上がっています。でも1万年前に人間の出すCO2は微々たるものだったので、この図は地球温暖化が始まった原因は人間活動ではなかったことを証明しています。その逆に、温暖化で大気中のCO2が増えたのです。

 

Q2. 人類は地球環境を大きく変えたんでしょうか?

図1のように産業革命以降を「人新世」と呼んで、人類が地球環境を大きく変えたと思っている人は多いのですが、最大の温室効果ガスは水蒸気です。大気中のCO2濃度は0.04%ですが、水蒸気は2%なので、温室効果の48%は水蒸気で、CO2は21%です

図2 炭素循環

 

CO2の循環の中でも、人間活動で出るのは年間50億トン。大気中にあるCO2の1/15です。自然の大きなサイクルの中では人間活動はちっぽけなものですが、人間は今までの気温に順応して生活してきたので、それが急に変化すると困ります。人間が悪化させているのは人間の生活であって、地球の問題ではないのです。

 

Q3. 今は人類の歴史上いちばん暖かい時期でしょうか?

図3はアメリカの海洋気象庁(NOAA)がいろいろな研究のデータを集めたものですが、西暦1000年ごろは今とほぼ同じ気温で、中世温暖期と呼ばれています。この原因も明らかに人間活動ではなく、太陽活動が活発だったためと推定されています。今はそれと同じぐらい暖かくなっていますが、温暖化と寒冷化は周期的に繰り返しており、このままずっと暖かくなるとは限りません。

 

 

Q4. 温暖化は今までずっと起こってるんですか?

図4は気象庁のデータですが、北半球では1960年ごろから寒冷化の傾向がみられました。このため1970年代には「地球は寒冷化する」とか「氷河期に入る」という論文がたくさん発表されました。このように気候変動というのは当てにならないものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これについてはIPCC第5次評価報告書で「先進国の工業化による大気汚染が原因だった」と説明していますが、いま中国やインドで起こっている大気汚染の効果はよくわかりません。

 

Q5. 温暖化は地球上で同じように起こってるんですか?

みなさんが暖かくなったと感じる最大の原因は地球温暖化ではなく、都市化によるヒートアイランド現象です。この原因は道路が舗装され、建物がコンクリートになって熱を吸収しなくなり、工場や自動車などの排熱が増えたためです。東京の平均気温はこの100年に3℃上がりましたが、そのうち地球温暖化は0.74℃と推定されています。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q6. 異常気象は増えてるんですか?

NOAAの調べでは、世界中で20世紀にハリケーンなどの異常気象が増える傾向は見られませんが、図6のように雨量は増えています。

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今後は熱帯でサイクロンや熱波や洪水が増えると予想していますが、今のところそれほど大きく災害が増えているわけではありません。今の気温は産業革命から200年で1.2℃上がっているので、同じペースで上がるとすれば、それほど激増することはないでしょう。

 

Q7. 自然災害の被害は増えたんですか?

大きく減りました。EMDAT(国際災害データベース)によると、図7のように自然災害の死者は、1920年代の年間55万人から2010年代には5万人に減りました。自然災害による死者は、この100年で92%も減ったのです。これは災害が減ったからではなく、途上国の災害対策が整備されたからです。

 

Q8. 温室効果ガスはCO2だけですか?

ちがいます。世界の温室効果ガスのうち、メタンは15.8%(CO2換算)を占めます。これはメタンの温室効果が、CO2の28倍と高いためです。メタンのうち最大の24%を占めるのが、消化管内発酵つまり家畜のゲップやオナラです。

 

        

 

Q9. 地球温暖化で農産物の生産は減るんですか?

増えます。国連農業機関(FAO)のシナリオによると、2050年の世界の食糧生産は、何もしないと今より25%増えますが、畜産から温室効果ガスの15%が出ているので、それを削減すると増加率が12%に下がります。

 

CO2は植物の生長に不可欠で、温暖化すると収穫は増えますが、温暖化を避けるために「サステイナブルな農業」に転換すると食糧生産は減ります。つまり食糧生産は温暖化で減るのではなく、温暖化対策で減るのです。

 

 

Q10. 温暖化で確実に起こることは何ですか?

海面が上昇することです。地球の平均気温は2100年までに2℃ぐらい上がると予想されていますが、これによって海面が中央値で48cmぐらい上がるでしょう。これは毎年6mmの上昇で、満潮と干潮の差は1.5mあるので堤防で防げます。

 

        

このように地球温暖化は、日本では大した問題ではありませんが、熱帯の途上国では大きな問題です。だからこれは開発援助の問題ですが、その方法としてCO2削減の効果は不確実性が大きく、コストが膨大なので、効率が悪いと思います。