2012年6月1日 JBIC
チリ共和国・モリブデン酸化物の長期引取りに係る輸入金融の供与
日本企業による鉱物資源の長期安定確保に貢献
株式会社国際協力銀行(JBIC、総裁:奥田 碩)は、今般、チリ共和国法人チリ銅公社Corporación Nacional del Cobre de
Chile(略称:CODELCO)との間で、融資金額224百万米ドル限度(JBIC分)の輸入金融の貸付契約*1に調印しました。本融資は、株式会社三菱東京UFJ銀行(幹事行)との協調融資によるもので、協調融資総額は320百万米ドルです。
本融資は、JFEスチール、新日本製鐵、住友金属工業、神戸製鋼所、日新製鋼、新日鐵住金ステンレス、日本冶金工業、大同特殊鋼及び日立金属が、CODELCOとの間でモリブデン酸化物の長期引取契約をそれぞれ締結し、本件融資期間を通じたモリブデン酸化物の安定調達を目的として融資を行うものです。
モリブデンは、主に銅鉱山における副産物として産出され、鉄鋼(特殊鋼)の耐熱性、強度、及び耐塩素性等の機能を高めるための副原料*2として、ステンレス鋼をはじめとする高級鋼材の製造において不可欠なレアメタルです。CODELCOは、世界第一位の銅生産量及び世界最大級のモリブデン生産量を誇るチリ共和国政府全額出資の国営企業であり、世界トップクラスのモリブデン酸化物のサプライヤーです。日本は1980年代前半よりCODELCOから高品位モリブデン酸化物の供給を受けてきましたが、近年、国内需要が旺盛な新興国が国際市場からモリブデンを大量に調達する等、モリブデンの国際的な需給バランスに対し大きな影響を与えるようになってきていました。
日本の鉄鋼各社は、これまでも経済産業省他の協力を受けてCODELCOからのモリブデン酸化物の安定調達に向けた取組みを行なってきましたが、今般、こうした流れを踏まえ、JBICとして、日本企業によるモリブデン酸化物の長期引取りを前提とした融資を行うことでCODELCOと合意に至ったものです。本件融資は、モリブデン製品の生産を行なうCODELCOの精練工場新設に必要な資金として充てられる予定であり、日本の中長期的な鉱物資源確保にとっても意義の高いものです。
JBICは、今後も外国政府・企業との交渉や、様々な金融手法を活用した案件組成やリスクテイク機能等を通じて、日本にとって重要な資源の開発及び取得の促進を金融面から支援する方針です。
日本経済新聞 2012/6/1
注釈
*1本融資の貸付契約は2012年5月24日に締結済みですが、関係当事者間のその他の必要手続が完了したため、本日プレスリリースを行ったものです
*2ステンレスは鉄とクロムの合金で、クロム酸化物を主成分とする皮膜に覆われているため耐食性等の特性を有していますが、モリブデン酸化物を添加することで、この被膜効果が強化され、より強い耐食性(塩素への耐性等)を持たせる効果があります。