73回GRIPSフォラム 2012/12/10

持続可能性確保へ発想の転換を
 人口減少高齢社会の経済・財政・社会福祉政策

  政策研究大学大学院名誉教授 松谷明彦 大蔵省主計官、大臣官房審議官等歴任

  ソース:国立社会保障・人口問題研究所

 

1872(明治5)年の日本の総人口は、3,480万人。
急速に120百万人に増加、
急速に減少し、2060年には86,737千人の予想。

構造的人口減で、日本のみ。
米は大幅増、英仏も増、独伊は減少可能性あるが少しだけ。

急速なことがシビアな問題。

 

 

 

 

 

 

 

65歳以上が急速に増え続ける。

ドイツも増えるが、その後横ばい。
他国も横ばい。

   

人口減少の理由1、死亡年齢が多い。

 

日本は死亡年齢(男子75歳以上、女子80歳以上)が非常に多い。 

1910〜40年生まれ 「生めよ増やせよ」政策

ドイツ 外国人労働者を大量に受け入れ、その後、急に減らした。

 

  人口減少の理由2、出生率(25-39歳の女性人口)

25-39歳の女性人口、欧米はフラット化、
日本は2060年には2010年比で55%減

少子化問題は日本だけでない。
理由はそれではない。

1950〜70年代のfertility rate の減が問題。

 

 

 

 

 

 

 

 

1948年優生保護法

引揚者、復員、等々で人口増、子沢山では飢餓状態に

→産児制限 (260万人→160万人)

これが今になって響いている。

 

戦前と戦後に二度にわたる政策で、歪んだ人口構造をつくってしまった。

これは変えられない。

少子化対策などなっても成功しない。


http://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf

                                                         特殊出生率の減はなだらかだが、対象女性数自体が大幅減

 

 
年金対象の20歳以上に対する年金負担層の割合

各国はフラット化

ドイツは一旦下がるが、その後フラット化
日本は低下続ける。

  ドイツは外国人で調整=一代限り
  日本は日本人で調整=ずっと続く。

 

この結果、年金制度を改定し続けないと破綻する。
  実際には無理。

  今の年金制度では対応不可能。

   

人口増加時代は財政赤字は一度増税すれば、以降は財政均衡する。(納税者割合 一定)

人口減少時代
 納税者割合が減少=全体の一人当たり税収減
 生産性アップがこれを補正し、横ばいに。

一人当たり政府支出は老人増で増加
→財政赤字拡大

増税してもその場限りで、毎年増税が必要。

解決策は、政府支出のやり方変更しかない。
 年金制度以外の社会福祉政策

 

   

 

 

 

生産年齢人口

GDPは生産年齢人口 x 一人当たり生産性

  一人当たり生産性はグローバル化で先進国は同じ

  

 

 

 

 

 

その結果、一人当たりGDPは、
  日本はマイナスに。

  予想は1970〜2010年の成長率で計算

   

各国私企業の売上高営業利益率対比

 1970-2010年平均を100としたもの。
 日本のみ、最近は大きく減少

理由1)

 途上国による価格破壊

  日本だけが途上国と同じ欧米開発品を生産
   過去は、競争者がなく、利益
     (高度成長のマジック)

  途上国が出てくると、敗退

 

 

 

 

 

理由2)

 途上国の低労務費対策として機械化で
 コストダウン図る。
  →設備過剰でコストアップ

 

要は、途上国モデルを今も利用
 他国が開発したものを低賃金でという前提のモデル
 外国人労働者導入では対処できない。

 先進国モデルへの転換が必要
  他国に真似されないもの

 そのためには、製品開発力強化が必要

   科学教育などだけでは不十分 

   優れた人材を外国から導入
   (米国は半分は外国人)
   
    その分、日本人は首になる。
    それが怖いから、やらない。

   

財政問題
  
 国+地方で見ると、
  1980年代末に均衡、
  2007年頃にも均衡に近づいた。
  最近の赤字は民主党のバラ撒き政策

 これまでは、減税が続いた。

 それほど悪くはない。 (現状)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生産人口が増えている場合は納税割合が増えるため、
 増税なしですんだ。

 今後は一人当たり政府支出の増は加速する。
 他方、納税割合は激減。

   

欧米と比べ、日本では老年層の就業が多い。

  65歳以上は仏独は急減
  日本は男子で30%

賃金の差
  時間当たり賃金は、
   日本を100とすると、
   独 155、仏 125、米 122

日本の賃金は低く、老後も働く必要。

欧米は、働かなくても食っていける。

では、どうすればよいのか?

松谷氏 私見:

1)年金

  発想の転換が必要で、就業者が年金を負担する所得移転は無理。

  対策の一つは、高齢者の生活コストを下げること。

最大のコストは住宅費。
 高齢者の3割(都会では4割、東京で400〜600万人)は借家。
 自宅保有者も未償却という意味で負担となる。

欧州では公共の賃貸住宅が普通、家具等もついており、世代を通じて使用するシステム。

100年償還の国債で、100年住宅を建てる。国や地方政府所有の公共用地を使用する。
その結果、賃貸料は極めて安くできる。

社会保障費なしの財政中立で、建設による経済活性化も。

日本の土地価格
 欧米ではまず住宅地確保だが、日本は産業用優先し、住宅地も産業用と同じとなった。
時間はかかるが、住宅ゾーン設定など

2)財政

  老齢者増、過去の借金返済を考えると困難。

  但し、日本は放漫財政(大蔵省主計局主計官としての経験)

    ・天下り組織への丸投げ体制 
    ・官庁価格  50〜100%高い

  これの是正だけでも、赤字はほとんどなくなる。