新たな安全評価実施 原発で政府統一見解
政府は7月11日、原子力発電所の再稼働の可否などを判断する新たな安全評価をとりまとめ、枝野幸男官房長官が午前の会見で公表した。
同評価は、欧州連合(EU)で導入されたストレステストを参考に実施するもので、具体的には、定期点検中で起動準備が整った原発を対象に1次評価を実施 し、その結果をもとに再稼働の可否を判断。全原発を対象とした2次評価では、運転継続または中止の必要性などを判断する。
新たな安全評価は、東京電力福島第1原発事故や、その後の原子力政策のあり方に対する議論を踏まえ、従来の仕組みに加えて 導入する。枝野官房長官は、定期検査中の原発の再稼働について「国民・住民に十分に理解してもらっているとは言い難い」とし、さらなる安心と信頼性の確保 のために新たな安全評価を実施すると強調した。
具体的には、定期点検中で再稼働準備が整った原発を対象にした1次評価と、稼働中の全原発を対象にした2次評価に分けて行う。1次評価は、大規模な地震 や津波など設計上の想定を超える事象に対し、重要な施設、機器などがどの程度の安全度を有しているかを評価。これに基づいて政府が再稼働の可否を判断す る。2次評価は、運転中の原子力発電所の運転継続または中止を判断するためのもので、欧州のストレステストの実施状況や福島原発の事故調査・検証委員会の 検討状況などを踏まえ、今後、内容や実施時期を確定する。枝野官房長官は、この2種の評価について「おのおのが完結したものであり、1次評価は2次評価の 途中経過にあたるものではない」と説明している。
政府は、原発再稼働をめぐるこれまでの対応が地元自治体などに混乱を与えたことを認めており、新たな安全評価について、自治体などに丁寧に説明していく 考え。新たな安全評価の導入に伴う、電力需給への影響について枝野官房長官は「中長期的な電力供給が確保されるよう努力する」と語った。
1次評価 | 2次評価 | |
対象 | 定期点検中で起動準備が整った原発 | 全原発 |
目的 | 再稼働の可否を判断 | 運転継続または中止の必要性などを判断 |
内容 | 大規模な地震 や津波など設計上の想定を超える事象に対し、重要な施設、機器などがどの程度の安全度を有しているかを評価 | 欧州のストレステストの実施状況や福島原発の事故調査・検証委員会の検討状況などを踏まえ、今後、内容や実施時期を確定 |
経済産業省原子力安全・保安院は今週内にも評価項目や計画を作成し、安全委に提示する。
原発事業者による評価結果について保安院とともに、安全委も妥当性を確認する。
1次評価は定期検査を終えた九州電力玄海原発(佐賀県)などで先行実施する。これにより定期検査に入っている原発の再稼働は8月以降にずれ込む見通しとなり、夏の電力需給にも影響しそうだ。