2011/7/25 日本経済新聞
日本近海のメタンハイドレート 政府、ガス採取へ試掘 12年度末に
政府は2012年度末にメタンハイドレートと呼ばれる海底資源から天然ガスを産出する実験に乗り出す。今年度末に掘削に着手し、12年度末に数週間かけて実施する。海底から産出に成功すれば世界初と なる。東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて天然ガスなどの安定確保の必要性が高まっており、政府は18年度までに産出技術の確立を目指す。
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産出試験は和歌山県沖から静岡県沖にかけての「東部南海トラフ海域」で行う予定だ。最終的には専門家の意見を踏まえ、8月上旬をメドに決定する。経済産業省は12年度予算案の概算要求で、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)への委託費として100億円超の計上を検討している。
メタンハイドレートは水分子とメタン分子が低温高圧の環境で固体になったもので「燃える氷」と呼ばれる。メタンを抽出して天然ガスとして利用できる。
経産省は03年度から06年度に実施した掘削調査で「東部南海トラフ海域」に日本の天然ガス消費量の13年分の資源量があることを確認した。日本近海だけで100年分存在しているとの試算もあるが「採取できても埋蔵量の2、3割」(経産省)とみている。
政府は地層内の圧力を下げる方法によってメタンハイドレートを分解する技術の開発を進めている。08年にカナダで陸上での産出には成功しており、今回海底から産出できれば世界初となる。産出に成功しても、吸い上げた天然ガスを陸上に運搬できるかなどの課題は残る。
JOGMECや独立行政法人の産業技術総合研究所などで技術開発を進めており、政府は18年度までに技術を確立し、20年代の早い時期の商業化を目標としている。
福島第1原発の事故を受けてエネルギーの安定的な確保が課題となっている。日本は天然ガスの消費量の96%をインドネシア、マレーシア、ロシアなどからの輸入に頼っている。天然ガスを自国で本格的に産出できれば大きな前進となる。
政府は3月に60年ぶりに鉱業法を改正。これまで規制のなかった探査の権利を許可制に改めた。世界的な資源獲得競争が激しくなる中で、海底資源の管理を強化していく。
海底熱水鉱床 |
海底から噴出する熱水に含まれる金属が沈殿したもの。銅、鉛、亜鉛、金などで構成される |
コバルトリッチクラスト |
海底の岩石を覆う厚さ数ミリメートルから十数センチメートルのマンガン酸化物。銅、ニッケルなどを含有 |
マンガン団塊 |
直径2〜15センチメートルの球形の鉄、マンガンを主成分とする酸化物。銅、コバルトなどの有用な金属を含む |