2011年10月10日 読売新聞

モミの木の油、大気汚染物質を無害化…エステー

 エステーは、モミの葉からとった油の成分を噴霧して、光化学スモッグの原因ともなる二酸化窒素(NO2)を無害化する技術を開発したと発表した。

 空気清浄機や加湿器などの用途を想定し、技術を生かした商品を2012年までに販売する方針だ。自動車の排ガス浄化装置への活用も検討する。

 エステーの子会社と独立行政法人の森林総合研究所が、森林ではNO2が少ない点に着目して共同研究したところ、モミの油に含まれる複数の成分がNO2の毒性を除去することが分かった。

 エステーによると、山間部の多い日本では、モミなどの間伐材が大量に放置されている実態があり、森林資源の有効活用につながるという。

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2011/9/26  エステー

ニュービジネス 「クリアフォレスト」事業を展開
 環境汚染物質に対する濃度低減効果がある「機能性樹木抽出液」を開発

エステー株式会社のグループ会社である『日本かおり研究所株式会社』は、〔樹木精油を利用した環境汚染物質の無害化剤〕について、独立行政法人森林総合研究所と共同で研究、開発を行ってきました。

この研究成果として、これまで自然廃棄されていた樹木の残材を有効利用して、樹木の香りで空気の質を改善する画期的な「機能性樹木抽出液」を作り出すことに成功しました。そして、この「機能性樹木抽出液」を抽出するために開発したのが、省エネルギー型抽出機「マイクロ波減圧コントロール抽出装置」です。

日本かおり研究所では、この「マイクロ波減圧コントロール抽出装置」から作り出される「機能性樹木抽出液」を多方面で活用するための新事業として「クリアフォレスト」という技術ブランドを立ち上げ、展開します。

「クリアフォレスト」は、次の3つの新技術から成り立ちます。
●森林を有効活用する:林地残材(未利用枝葉)搬出システム
●未利用枝葉から精油、精水を抽出する革新的技術:マイクロ波減圧コントロール抽出装置
●環境汚染物質浄化剤:機能性樹木抽出液

この「クリアフォレスト」の核となる「機能性樹木抽出液」は、1.大気汚染低減、2.抗酸化機能、3.消臭効果、4.森林浴の効果があります。

1.大気汚染低減
  大気汚染の原因物質の大きな要素である二酸化窒素(NO2)等を空気中で低減します。
2.抗酸化機能
  空気中の活性酸素種である二酸化窒素(NO2)等に作用し、過酸化脂質の生成を抑制します。
3.消臭効果
  各種悪臭に対して効果があります。
4.森林浴効果
  森林浴の効果があるとされる成分を多く含んでいます。

クリアフォレストのビジネス展開
日本かおり研究所では、「クリアフォレスト」を環境衛生事業として捉え、本来自然が有している治癒力、生命維持能力などを科学の力で引き出して、人間が引き起こす大気汚染の低減や菌・ウイルスによる感染を制御することに焦点を当てた事業展開を目指しています。
「クリアフォレスト」ビジネスは、日本かおり研究所がコアとなり、〈クリアフォレスト・パートナーズ〉として事業展開します。
この〈クリアフォレスト・パートナーズ〉は、テクニカル・パートナーズ、マテリアル・パートナーズ、プロダクト・パートナーズの3つのパートナーズで構成されます。

テクニカル・パートナーズは、日本かおり研究所、森林総合研究所等により研究開発・技術開発を推進し、

マテリアル・パートナーズは、機能性樹木抽出液等の製造を行い、北海道プラント(株式会社北都)をはじめ、全国各地に抽出拠点を設置していきます。

さらにプロダクト・パートナーズでは、エステーグループにおける製品化や外部企業に対しての製品加工によるOEM、あるいは原料の供給などを行います。

既に「クリアフォレスト」による空気洗浄器、パーソナル空気清浄器、エコ加湿器用薬液、業務用デフューザーなどの製品がプロダクト・パートナーズにおいて進行しています。
なお、エステー株式会社からは、2012年に商品化を計画しています。




日本の森林と林業の再生に向けて
日本の国土の66%は森林です。そのうちの40%を占める人工林は、現在では約1,000万haにわたっています。日本人はこの森林資源を住宅をはじめとする建築物や家具、さまざまな日用品として利用してきました。一時期、価格が安く、大量かつ安定的に供給される外国産木材に押されて、国産木材の利用が低迷していましたが、政府も森林・林業再生プランを公表し、日本の森林と林業は再生に向け大きな一歩を踏み出したところです。このような時に、大量に発生する林地残材をはじめ木質資源を有効に利用して国産木材の利用拡大を進めることは、まさに時流に乗ったことと言えます。木質資源の利用は、カーボン・ニュートラルな社会を作っていく上でたいへん重要です。また、森林資源を有効に使うことによって、森林を健全に育成・管理していくことは、CO2の吸収力を高めるとともに、雨や風などの自然災害への抵抗力を向上させることになります。

1.林地残材(未利用枝葉)搬出システム
北海道に広く分布する北海道モミの木(トドマツ)の森林整備事業時に大量発生する未利用の枝葉林地残材を効率良く搬出するシステムを株式会社 北都と協力して開発しました。

2.マイクロ波減圧コントロール抽出装置
日本かおり研究所と森林総合研究所との共同研究によって開発された省エネルギー型抽出機「マイクロ波減圧コントロール抽出装置」は、伐採した樹木から切り落とされた未利用の残材である枝葉を原料とし、精油と精水とを分けて抽出します。
既存の“水蒸気蒸留法”に比べ、抽出時間を大幅に短縮して省エネにつなげ、高温で変質する可能性がある成分でも、圧力、温度をコントロールして変質を最小限にし、別途蒸留等をすることなく目的物質の選択的抽出をも可能にしています。また、精油と共に抽出される精水は植物体の水分のみの100%天然物であり、その機能性も期待されます。さらに抽出残渣の水分含有量は、一般水蒸気蒸留の70%以上に対し30%以下であり、新たにエネルギーを消費して乾燥させる事無く、木質燃料の原料としての利用やその他の高度利用が可能になります。
こうした画期的な抽出システムを開発したことで、効率的な環境汚染物質浄化剤の製造を実現しました。
また、この「マイクロ波減圧コントロール抽出装置」は、能力に応じた4タイプが販売されます。

3.環境汚染物質浄化剤
これまでの研究において、葉から取れる精油に強い活性作用があることがわかりました。
この精油は、車の排気ガスなどから出る環境汚染物質の二酸化窒素(NO2)等を除去する働きを持ちます。特に北海道を林地とする北海道モミの木(トドマツ)の葉油は、混合120分後の除去率はほぼ100%に達します。
〔樹木精油を利用した環境汚染物質の無害化剤〕は、独立行政法人 科学技術振興機構(略称:JST/理事長:北澤宏一/本部:埼玉県川口市)が事業展開をしている産学連携・技術移転支援事業における独創的シーズ展開事業の一環で、2007年から日本かおり研究所と森林総合研究所とで研究、開発を進めてきました。この他、石油や石炭などの化石燃料を燃焼する際に燃料に含まれる硫黄と酸素が反応して生成される二酸化硫黄(SO2)、有機化合物の一種であるホルムアルデヒド(HCHO)などの環境汚染物質の濃度を低減します。


【樹木精油を利用した環境汚染物質の無害化剤】は、独立行政法人 科学技術振興機構(略称:JST/理事長:北澤宏一/本部:埼玉県川口市)が事業展開をしている産学連携・技術移転支援事業における独創的シーズ展開事業の一環で、2007年から日本かおり研究所と森林総合研究所とで研究、開発を進めてきました。

北海道モミ精油の抗酸化能力試験

   空気をリノール酸に当て、24時間後の過酸化脂質量を測定(吸光度の測定)

     清浄空気(NO2: 0 ppm)                            酸化なし(吸光度 0.008→0.009)
     都市部の空気(低度汚染)(NO2: 0.015 ppm)   著しく酸化( 0.008→3.427)
     北海道モミ精油の蒸気を同時に混合       酸化を著しく抑制( 0.008→ 0.009)