杉山大志 「環境史から学ぶ地球温暖化」 (エネルギーフォーラム新書)


1991年東京大学理学部物理学科卒業。1993年東京大学大学院工学研究科物理工学修士了。
1993年(財)電力中央研究所入所。国際応用システム解析研究所(IIASA)研究員、国際学術会議科学執行委員、京都議定書CDM理事会パネル委員、産業構造審議会専門委員、IPCC第四次評価第三部会及び統合報告書主著者、第五次評価第三部会総括執筆責任者。現在、電力中央研究所上席研究員

過去にも環境は変わってきたが、人類はそれに適応して生き抜いてきた。人類の「気候変動への適応」の歴史を知ることで、いたずらに温暖化を怖れるのではなく、冷静に対処できるようになる―。IPCC報告書主執筆者が、今までの温暖化対策の議論から抜け落ちていた、新たな視点で地球温暖化を考える。

第四章 環境改変の日本史
 

第五章 災害の日本史

飢饉に備える食の多様化
外来種が99% 日本の食卓  生態系を大幅に作り変えてきた
冷害の原因 文化的な不適応  全国一律の稲作、冷涼な気候に適した作物を
中世の多面的水害対策   堤防 竹林による水の流れの緩和 時期分散(台風対策)、漁業との生業複合
地震で海面は変動   4m以上の津波50件 関東大震災で相模湾など1〜3m隆起、丹沢1m沈降
火山  象潟(鳥海山噴火で2m隆起) 会津磐梯山(富士山型から北半分吹き飛び、桧原湖などできる)
高潮  昔は3mほどの高潮が100年に数回
昔は夏に人が死んだ  日本でもマラリアが
都市熱は温暖化先取り   農林漁業、生態系への影響見られない

第六章 日本は温暖化へ適応できるか

  2100年までに3℃程度の温暖化は人為的介入、自然変動に比べ小さく、適応可能
  他の条件を所与のものとして温暖化の影響を見るのでなく、これまでの環境の歴史のなかで見るべし

 森林: これまで人間が変えてきた
        焚き木採取→栄養不良→松→(植林)杉檜→放置 
     3℃程度なら、他の植生に変わるだけ

 農業: コメ  これまで非常に頻繁に品種改良  今後も同様
          北海道・東北  冷害回避

      都市近郊の気温変化による影響なし 需要に合わせ適応

 沿岸域: 海面上昇、下降は経験済み

        人口希薄地域は放棄し、自然に任せることも
        これまで人間の介入で景観や生態系を変えてきた

 健康: これまで都市近郊で影響は出ていない

      感染症、マラリアなど 医療で対応可能

 水資源: 森林開発の在り方、防災体制、温暖化以外の災害対策が重要

 ◎温暖化影響よりも人為的介入の方が桁違いに大きい

 現存する不適応

森林:放置して荒れた山は不適応な自然
農業:南方のコメを寒冷地に育てることは不適応  気候に合う作物を
沿岸域:津波に脆弱な地に住み続けることが必要か(飢饉リスク軽減、交通手段・・・)
健康:暑い夏の服装、寒い冬の局所的暖房
水資源:十津川など危険地帯で防災してまで住むことが必要か

 

 最貧国  今でも問題  社会秩序→経済開発→人口抑制(女子の教育向上など)

 

 ◎ 温暖化影響の総合不確実性幅が、排出削減努力による影響軽減幅より桁違いに大きい