安倍首相は移民法案であることを否定する。だが、政策転換の実質的な司令塔と見られる竹中平蔵氏は移民推進姿勢を明らかにしている。新著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』に以下の記述がある。

移民政策の失敗には二通りがある。一つは受け入れないで失敗すること、もう一つはEU諸国のように受け入れすぎて失敗することである。日本はこのままだと前者になる可能性が高い。そのためにも早く移民法をつくったほうがいい。

加計学園問題でクローズアップされた国家戦略特区諮問会議で中心的な役割をつとめる竹中氏は、特区で外国人が家事代行サービスに従事できるよう提案し、それを実現させた。

竹中氏が会長をつとめる人材派遣のパソナフィリピンの同業大手と提携し、2016年初旬から神奈川を皮切りに大阪、東京でも、フィリピン人スタッフによるハウスキーピングサービスを始めている。

さらに竹中氏は諮問会議を主導して2016年11月、国家戦略特区の外国人受け入れ分野に「介護を加えることに成功。その後、飲食店や宿泊業などのサービス業も追加した。

人材派遣会社に有利となる政策決定にパソナ会長である竹中氏が関与することについて「利益相反」との批判があるが、パソナ会長としてではなく大学教授の肩書で政府の有識者会議に参加しているから問題ないというのが竹中氏の理屈だ。ちなみに竹中氏は経済財政諮問会議や産業競争力会議のメンバーでもある。

特区で動き出した外国人労働者受け入れの波は、経済界の強い要望を受けて広がり、今年6月15日、安倍内閣の「骨太の方針2018」に新たな外国人の在留資格を設けることが盛り込まれた。この時の発表では、2025年までに50万人超の就業をめざす、とされていた。

だが、日本はすでに“移民大国”だといわれる。

都心のコンビニ、牛丼店、ドラッグストア、スーパーで働いている外国人はほとんどアルバイトの「留学生」たちだ。介護の現場、地方の農家、工場などでは「技能実習生」が働いている。その数、合わせて60万人近い

研究者や芸術家、経営者、医師、弁護士、ジャーナリストら、最長5年もしくは無期限の在留資格者を加えると、128万人ほどの外国人が日本で仕事をし、その家族を含め約247万人が住んでいる。OECDに加盟する35ヵ国のデータによると、ドイツアメリカイギリスにつぐ数字だ。

国際的に合意された「移民」の定義はないが、1997年の国連事務総長報告書にはこう記載されている。

通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12ヶ月間当該国に居住する人のこと

国会の質疑で、政府は「入国時に永住権を持っている人」が移民だと苦しい答弁をした。世界の常識からは甚だしくずれていると言わざるを得ない。

つまり、安倍政権は「移民」と認めたくないのである。日本人の血とか伝統、国柄を偏重する安倍首相の支持層に配慮しているゆえだろうか。

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