望月記者の栄転を警戒せよ 「8月の人事異動まで持つかなあ…」

 

野党合同ヒアリング後、望月記者は沖縄防衛局幹部を追及した。=1月16日、那覇市内 撮影:田中龍作=

 

 「いくら待っても(本省の)報道室から回答がないから、こうやって沖縄まで来たんじゃないですか!」。沖縄防衛局幹部に食らいつく小柄な女性記者の姿があった。辺野古新基地建設の埋め立てに赤土が大量に混じっていることを追及しているのだ。

 東京新聞社会部記者・望月衣塑子。国民が今、最も知りたがっていることなのに、記者クラブは質問してくれない・・・それを聞いてくれるのが望月だ。官房長官記者会見はその象徴でもある。

 当然、官邸からは嫌われる。官邸の広報と化した記者クラブからはもっと嫌われる。本来業務であるはずの権力監視を怠っていることが白日の下に晒されるからだ。

 上村秀紀・官邸報道室長名で内閣記者会に届いた文書が物議を醸している。文書は「東京新聞の特定の記者」と事実上名指ししたうえで「事実誤認の質問」「記者会見の意義が損なわれる」などとする内容だ。「記者クラブで望月を追放するように」という官邸からの お達し である。

文書では「東京新聞の特定の記者」による質問内容が事実誤認であると指摘。そして会見がネット配信されているため、「正確でない質問に起因するやりとり」は「内外の幅広い層の視聴者に誤った事実認識を拡散」させ、「記者会見の意義が損なわれる」と訴える。

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昨年12月28日付の申し入れ文書が「事実に反する質問」としているのは、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設のための土砂投入で赤土が広がっているなどの質問。「内外の幅広い層の視聴者に誤った事実認識を拡散させることになりかねず、官房長官記者会見の意義が損なわれることを懸念いたします」と表明。「東京新聞の当該記者による度重なる問題行為」は「深刻なものと捉えて」いるとして、「このような問題意識の共有をお願い申し上げる」としています。

 

 記者クラブにとって、上村報道室長からのお達しは渡りに舟だった。東京新聞関係者によると官邸報道室から似たような お達し が、同社の上層部へ届いているそうだ。上層部は今のところ、官邸の求めに応じていないという。

 ただ上記の関係者は「下(会社内部)からの突き上げが強烈になった場合は、上層部の対応もコロっと変わる恐れがある」と見る。突き上げとはこうだ。現場記者→デスク→政治部長→編集局長→社長・副社長。

 同社の政治部記者にしてみれば望月は “はた迷惑” なのである。「東京新聞」というだけで官邸に嫌われれば特オチさせられる。特オチが続けば、キャップ・サブキャップは次の人事異動で左遷だ。デスク一歩手前のキャップ・サブキャップがデスクに進言すれば、その日のうちに政治部長、編集局長まで行く。

 「望月をナントカしてほしい」。官邸から要請されるだけではなく、部下からも突き上げられる。編集局長あたりは、針のムシロだろう。

 望月を官邸担当から外す口実は8月恒例の大規模人事異動だ。栄転にすれば読者にも言い訳が立つ。「でも、それ(8月)まで持つかなあ?」・・・望月の大先輩にあたる東京新聞関係者は気を揉む。

 東京新聞が社として最も恐れているのは、もし望月を官邸担当から外したら、読者の反発を招き、発行部数減につながりはしないか、だ。

 彼女の人事を巡って妙な栄転があったら、読者は東京新聞の不買運動をすればよい。そうなる前に東京新聞に電話をかけまくるのもいいだろう。

 どこまでも権力を追及する、今どき希少な記者を市民が守るのである。この国のジャーナリズム始まって以来の快挙となるだろう。(敬称略)


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首相官邸“望月衣塑子記者排除”の恫喝に新聞労連が抗議声明! 水面下でもっと露骨な圧力も記者クラブは抗議せず

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日本新聞労働組合連合(新聞労連)は5日、首相官邸が官邸報道室長名で内閣記者会に申し入れたことに抗議する南彰委員長の声明を発表しました。「官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認することはできません。厳重に抗議します」と表明しています。

 「さまざまな角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことは、記者としての責務であり、こうした営みを通じて、国民の『知る権利』は保障されています」と指摘しています。

 「日本の中枢である首相官邸の、事実をねじ曲げ、記者を選別する記者会見の対応が、悪(あ)しき前例として日本各地に広まることも危惧しています。首相官邸にはただちに不公正な記者会見のあり方を改めるよう、強く求めます」としています。

 

 

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赤旗

2018年12月9日(日)

辺野古埋め立てに赤土

元土木技術者「条例に違反」

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設工事で、埋め立て用の土砂として大量の赤土が搬出されていることが、専門家らの指摘などから8日までに分かりました。同市安和(あわ)の琉球セメント桟橋から4隻の運搬船で搬出されたもので、少量の砕石とともに確認されています。辺野古の海に投入された場合、自然環境への深刻な影響が懸念されます。

 防衛省側は6日の参院外交防衛委員会で、伊波洋一議員(会派・沖縄の風)から埋め立て用の土砂について問われ「鉱石の採掘等で掘り出される岩石(=岩ズリ)」と答え、石材だと主張しています。

 搬出作業を確認した1級土木施工管理技士の奥間政則氏は「赤土は海水に溶けてヘドロ状になる。国が説明する岩ズリとは性質が違う」と述べました。

 元土木技術者の北上田毅氏も「国は『石材』と主張することによって赤土等流出防止条例の適用を逃れようとしているが、桟橋に雨ざらしの状態で赤土を置く行為は同条例に抵触する」と指摘。桟橋やベルトコンベヤーの使用に関しても「『石材の堆積』『石炭・石材の搬送』として県に届け出た内容に違反する」と批判しました。

 4隻は7日午前、辺野古沿岸域に到着しましたが、少なくとも1隻の土砂は、赤土等流出防止条例に基づく事業行為届出が提出される前の“違法状態”で積み出されたものです。