東芝粉飾の原点  内部告発が暴いた闇

【序章】 こじ開けたパンドラの箱
【第1章】 不正の根源、パワハラ地獄
【第2章】 まやかしの第三者委員会
【第3章】 引き継がれた旧体制
【第4章】 社員が明かす不正の手口
【第5章】 原点はウエスチングハウス
【第6章】 減損を回避したトリック
【第7章】 歴代3社長提訴の欺瞞
【第8章】 「著しく不当」な監査法人
【第9章】 迫る債務超過、激化するリストラ
【第10章】 視界不良の「新生」東芝

 

日経ビジネス、2015/8以来、内部告発を募る。

 

業務目標の強要、「チャレンジ」=必達目標(2008〜09頃から)

Lehman shock での大赤字 西田社長がプレッシャー(赤字事業売却の脅し) →パソコン部品の押し込みで黒字化

部品供給価格(マスキング価格)で利益+押し込み Buy-Sell取引

2012/9 佐々木社長、パソコン責任者に「3日間で120億円の営業利益改善」要求

ノーマル化の提案に対し、「会社が苦しいときにノーマルにするのは会社にとって良くない」

パワハラ会議

→ 検収シフト(コスト計上の先送り)

社員が証券取引等監視委員会に内部告発 不正会計問題の端緒  →開示検査(2015/2)

トップ自身が不正を指示

田中社長、パソコン事業でBuy-Sell 強化による損益改善を指示
        映像事業撤退の脅し 「テレビ事業の黒字化は社長の公約、あらゆる手段で黒字化を」

子会社でもパワハラ、下請けや関連会社にも「チャレンジ」押し付け、協力金要求

 

トップの権力闘争 西田会長 vs 佐々木社長

まやかしの第三者委員会

2015/2 証券取引等監視委員会が東芝に開示検査を実施。 社会インフラ事業の「工事進行基準」を問題視。

2015/4 田中社長 「原子力事業の工事進行基準と初物案件(ETC、スマートメーター)だけが問題で、たに問題ないということにせよ」

2015/4 特別調査委員会設置 → 他の部門でも問題続出

    財務アドバイザーのデロイト トーマツに支援を依頼   新日本の審査を速やかに通す方法 → 決算発表延期の意見

2015/5 第三者委員会設置、決算発表の延期  直後に3年間累計500億円の利益かさ上げの可能性の発表

第三者委員会 4人のうち2人は過去に東芝と関係(弁護士は子会社の顧問弁護士、CPAはトーマツ出身) 久保利弁護士がクレーム
          費用は東芝が負担

          テーマは進行基準のほか、映像事業の経費計上、半導体事業の在庫評価、パソコン事業の部品取引

          調査範囲は東芝経営陣が内諾した範囲内。
            WECとL&Gの減損を調査するかどうか、東芝で判断せよ (第三者委員会)

2015/7  第三者委 報告  7年間で1518億円の利益かさ上げ 自主チェックの44億円を加え 1562億円  → のちに2306億円に膨らむ。
          不正の原因 @経営トップを含む組織的関与、A目標必達のプレッシャー、
          B監督・監査の不在(内部統制すべき経理部がチャレンジ原案作成):取締役会、監査役会、会計監査人がチェック機能果たさず。
          上司の意向に逆らえない企業風土!

      第三者委 東芝の依頼で東芝のたけだけに実施、第三者に責任を負わない。 会社側と謀議の結果の報告  「不正」でなく「不適切」
             Westinghouseを除外、新日本監査法人に対する評価もせず。

引き継がれた旧体制   不正会計発覚時に顧問、相談役が17人。

西室相談役が室町社長を指名、経営刷新委員会設置を決定 (伊丹敬之教授が委員長) 小林喜光がオブザーバー。
2015/8 社外取締役候補に、西室相談役の依頼で、資生堂・前田相談役、三菱ケミ・小林社長、アサヒ・池田相談役など。

辞任後も歴代3社長が社内闊歩、不正会計時のCFOが復帰(特設注意市場銘柄の指定解除に知見が必要)

2015/9 決算発表 税引前利益かさ上げ2248億円、最終損益 378億円の赤字
 @2009/6の公募増資3000億円の正当性
 A役員報酬
 B各事業の実力 特にライフスタイル(パソコン、TV、白物家電)

個人株主が提訴請求書(対処しないと株主代表訴訟)
東証  特設注意市場銘柄に指定(1年で解消しないと上場廃止)、上場契約違反金 9120万の請求

不正の手口

  引当金の悪用
  査定原価   固定費の製品間調整  工場経理は現場算出の原価を追認、経理処理するだけ。
  半導体事業  NANDフラッシュメモリ事業を他が食いつぶす。(ディスクリート:単機能半導体やシステムLSIが)
           性能データも粉飾
           「3次元メモリ量産ではサムスンに2年遅れ」
           家電でも。

  スマートメーターの失敗 @30分に一度データを収集し、送信(欧米では検針業務合理化のためで、週に1回)
           Aデータは無線マルチホップ方式(携帯電話回線では費用が高騰) メーター間通信は不安定で、高度な技術必要だが、L&Gの技術ではダメ。


           田中社長は損失引当を認めず(L&G買収が失敗とわかるから)

  取引先に支払い条件変更 サイト180日 (子会社も)

Westinghouse問題

東芝が割って入り、約6000億円で買収 (三菱重工は4500億円程度?) 2930百万円(3500億円)のノレン計上

Lehman shock で東芝大赤字、原発にのめりこむ。2009/8説明会で、「2015年までに世界で39基受注」

大震災で神話崩壊するも、強気姿勢崩さず、2011/5、依然39基目指すと。

WH業績悪化を受け、米のCPAのEarnst Youngが厳しい姿勢。新日本経由の圧力も効かず。

  2013/7 2012年度で、926百万ドルの減損(4部門のうち、新規建設とオートメーションで減損) → EY姿勢を不満とし、新日本に契約打ち切りも示唆

  → EYは日本人CPAを担当とし、東芝と連携

2014/3 減損テストでアウト (新規受注なく、既存プロジェクトからの cash flow 減少) 2013年度で新規建設で390百万ドルの減損

東芝決算に反映させないよう、新日本が受け入れる「屁理屈を考えろ」 → 東芝決算では反映せず。
  

問題点:財務制限事項 連結営業損失を計上しないこと。 (借入金の期限の利益喪失)
  Lehman shock 時に緩和の条件として1800億円の劣後債(利率は懲罰的 7.5%で、5年返済できず) 2014/6 5年経過で利率2%の劣後ローンで1800億円調達し、返済。

新しい条件は、純資産から年金負債調整金を除き8000億円以上。 WHノレン償却で危険水域。

日経ビジネスのスクープ 2015/11/12 直前に東芝が臨時役員会、午後にWH減損処理を発表。(数字は出さず)

東証、適時開示基準違反を伝える。(子会社の損失が連結純資産の3%超)

東芝説明  WHは部門ごとに計算、東芝は全社として計算

問題点@ テスト手法  WHは最初はIncome approach、2年目は Market approachと併用、東芝はIncome approach のみ
     A  事業部門組み換え 

実は、新日本が手法を示唆   2年目で、EYは併用を譲らないが、日本ではIncome approach のみで辛うじて減損不要に。

東芝、2015/11/27、買収後10年で7290百万ドルの赤字発表、WHの中期計画(64基受注)発表

2014/3 社内で、どこかで64基を修正する必要ありとのメール。

実際は、64基受注を前提とした収益予測で、減損不要の判断。

3社長提訴の欺瞞

2015/9 総会で、議決権助言機関ISSが室町会長、伊丹敬之、牛尾文昭の再任反対を推奨

役員責任調査委員会  簡単な調査

11/7 3社長、2CFOの5人に3億円の訴訟提起(決算修正CPA費用、東証違約金など10億円超の損害に対し)  (責任範囲と懐具合を勘案)
      調査対象98人(関与者14人)のうち、93人(関与者9人)免責の理由なし。

       一部について 「社長からの過大なチャレンジを受け続けたことにより、やむを得ず、・・・  善管注意義務違反があったと認定するに足りない」

    意図的に訴訟対象を絞り込んだ可能性  室町所管の半導体事業は軽く調査

 

「著しく不当」だった監査法人

2015/12 監視委員会が73億7350万円の課徴金を勧告   水増し利益をもとに3000億円超の社債 金商法に基づき2%超をペナルティ
不正会計訂正で新日本に20億7152万円のコスト支払い

損害額拡大で請求額 32億円に

2015/12/22 金融庁、「著しく不当」と判断、新日本に3か月の新規業務停止、課徴金約21億円、東芝の次期監査を辞退→PwCあらた

監査の問題点
 会計基準変更:見積もりの要素増加 工事進行基準、減損(将来の収益性)
 金融庁の迷走:CPAの必要性増加→Lehman shock で雇用減→受験減→人手不足

 東芝は重要顧客 年間10億円は数少ない。

 デロイトグループの悪知恵

リストラ

東芝セミコンダクター&ストレージ  

フラッシュメモリ

それ以外 DLIMS Discreet (単機能半導体)
         Logic LSI
         Image Censor    -----ソニーに売却
                                     Mixed Signal IC

ライフスタイル

    パソコン  富士通・Vaioとの3社統合構想 世界では弱者連合
    TV
    白物家電  シャープの革新機構による救済で、シャープの事業との統合案

  不採算事業処理の赤字で自己資本減、

  2016/2 最終赤字7100億円の予想、増資は不可、債務超過の危機 → ヘルスケアの売却(Canon)

  2016/3 白物家電を美的集団に売却

  2016/4 WHノレン取り崩しで2600億円の減損  原発事業不振ではなく、東芝の格下げによる財務悪化で金利アップ 割引率を 9.5%→11%

2016/5 小林喜光・指名委員長が志賀副社長を次期会長に 「若干グレーだが 国策的な原子力事業で余人をもって代えがたい」 綱川社長はホワイト。

 

2005 西田厚聰(パソコン・半導体) 社長就任
2006   Westinghouse を約6000億円で買収(佐々木が交渉)
半導体(NAND)に3年間で1兆円投資を発表(ITバブルの反省、DRAMで先行サムスンにやられる)
2008 Lehman shock   
2009   最終赤字 3436億円→公募増資約3000億円
佐々木則夫(原子力) 社長就任
2010   富士通と携帯電話事業統合
2011 東日本大震災 半導体(Lehman)と原発(大震災)の日本柱がゆらぐ  西田、佐々木の対立の激化
原発推進の旗をおろさず。
スイスのランディス・ギア買収  東電スマートメーター用
2012   日立・ソニーと中小型液晶事業統合 東芝テック、IBMからPOS事業買収
2013 田中久雄 社長就任(西田による佐々木下し)  Buy-Sell 取引の考案?
2014/6 室町(半導体) 会長就任
2015/2   証券取引等監視委が「開示検査」、報告命令
  /3   一部インフラ関連の工事進行案件で疑義判明
  /4   室町会長指揮で特別調査委員会設置 全容の調査できず。
  /5   第三者委員会設置、有報提出延期
  /6   特別調査委、調査概要と自主チェック結果発表 定時株主総会
  /7   第三者委員会 7年間合計で1500億円以上の不正会計を指摘
  /7 田中社長と前社長2人、不正会計に関与した6人の取締役、計8人が引責辞任  室町会長が暫定社長 (西室泰三相談役・日本郵政社長が残留指示)
  /8   有報提出再延期
  /9   決算発表
  /9   東芝株を特設注意市場銘柄に。上場契約違約金9120万円。
  /9   役員責任調査委員会設置
  /9 室町社長 臨時株主総会、新経営陣
  /10   ソニーにイメージセンサ―事業売却
  /11   旧経営陣5人に合計3億円の損害賠償訴訟
  /11 日経ビジネス報道(WH)
  /11   東証の開示義務違反指摘で会計処理説明、  2015年で54基受注を目指すと。
  /12   監視委員会が73億7350万円の課徴金を勧告
  /12   5500億円の最終赤字見込みを発表、1万人の人員削減
  /12   金融庁が新日本監査法人に行政処分
2016/1   旧経営陣5人に対する請求を32億円にアップ
  /1   PwC あらたへの監査法人変更を発表
  /2   赤字を7100億円に修正
  /3   東芝メディカルを6655億円でキヤノンに売却と発表
  /3   半導体に3年間で8600億円投資と発表
  /4   早期退職優遇等で14,450人の合理化
  /4   WHのノレン等2600億円の減損処理
  /5   決算発表 7191億円の営業赤字→7087億円に修正
  /6 綱川社長、志賀会長