毎日新聞2016年9月10日
豊洲、汚染対策の盛り土せず 都、異なる説明
東京都中央卸売市場築地市場(中央区)の移転先となる豊洲市場(江東区)で、都が土壌汚染対策として行う予定だった4.5メートルの盛り土を、食品を実際に取り扱う全3棟の建物の下で行っていなかったことが分かった。都が共産党都議団に説明した。小池百合子知事は11月7日に予定されていた移転開場を延期したが、都のこれまでの説明が事実と異なっていたことになり、更に影響が出る可能性がある。
豊洲市場は土壌からベンゼンなどの有害物質が検出されたため、都は地表約2メートルの土壌を取り除き、きれいな土を4.5メートル盛った上に建物を建てると説明。有識者でつくる「豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」に「盛り土の完了を確認した」と説明し、同じ旨の説明を公表していた。
2016/9/14
ところが実際は、水産卸売場棟▽水産仲卸売場棟▽青果棟−−の3棟の建物の下は盛り土がされず、床下は全て深さ5メートルの空洞になっている。都は共産党都議団に「地下にある排水用の配管を管理するため」と説明したという。共産党都議団が7日に水産卸売場棟の地下を確認したところ、盛り土はなく、深さ約2センチの地下水がたまっていた。
配管に4.5mは不要。逆に作業のために配管を低くする(上から長く吊り下げる)と、地震の際に危険。
共産党都議団は七日に水産卸売場棟の地下を視察。盛り土はなく、大きな柱のほかにはコンクリートで囲まれた空間になっていることを確認した。空間の底に当たる地面と接する部分は、都側からは「薄いコンクリートになっている」と説明を受け、その部分には地下水とみられる水がたまっていたという。都議団によると、他に水産仲卸売場棟、青果売場棟でも、同様に盛り土がなされていない。青果棟では下はコンクリートもなく砕石だと。酸欠の危険ありとして入場を拒否された。
都は毎日新聞の取材に、「3棟の下が空間になっているのは事実。ホームページで公表している図面は盛り土の上に建物があるようになっているが、誤解を招く図面だった」としている。
豊洲市場はガス工場の跡地で、土壌からベンゼンなどの有害物質が検出されたため、都は2011年から約850億円を投じて汚染対策をした。地表約2メートルの土を除去し、きれいな土を4.5メートル盛り土した上に建物を建てる計画で、都は都議会やホームページで計画通り対策を実施したと説明していた。
だが水産物を扱う売り場棟は床下に配管を通すため表土を除去した跡に盛り土をせず、コンクリート層を設けた上に建てたという。都が実施した地下水や構内の空気中のベンゼン濃度は環境基準を下回っている。
水産卸売場棟 マグロなどの水産物のせりをはじめとした取引が行われる場所
水産仲卸売場棟 水産の仲卸店舗が集まる、豊洲市場で一番大きな建物