2024/9/16付 日本経済新聞

不正通報に報奨金制度 米司法省が試行、日本企業も対象

米司法省はこのたび、企業などの不正行為について同省に直接通報した個人に報奨金を支払うパイロットプログラムの運用を始めた。今後まず3年間運用する。日本企業も対象となり、各社のコンプライアンス体制や内部通報制度の実効性がこれまで以上に厳しく問われることになりそうだ。

米証券取引委員会(SEC)など米国の他の規制当局には、以前から企業犯罪などに関して個人の通報者に対し報奨金を支払う仕組みが複数ある。司法省も同様の取り組みを試みる。

同省はこれまで企業内での内部通報制度や通報で発覚した不正を企業が自主的に司法省に申告することを奨励。個人から当局への直接通報には消極的だったが、その方針が変化した。

パイロットプログラムは8月に始まっており今後3年間運用される。マネーロンダリングなどの金融機関が関わる犯罪や米国内外での汚職などを対象とする。

報奨金の支払い条件として、
(1)司法省や他の当局関係者ではない個人からの通報であること
(2)司法省が把握していない独自情報であること
(3)自主的な通報であること
(4)真実で完全な情報の報告であること
(5)司法省の捜査に協力すること
(6)通報に基づいた捜査によって100万ドル(約1億4000万円)超が没収されること――が示されている。

通報者には、没収純収益額の最初の1億ドルについては最大30%相当額を、1億ドル以上5億ドル以下の分については最大5%相当額を上限として報奨金が支給される。具体的な支給額は司法省が、通報で提供された情報の重要性や捜査への貢献度などを考慮して決定する。

米国当局の動きに詳しい井上朗弁護士は「不正の直接通報への報奨金は先行する米SECの制度が定着しているが、事実上、米国企業に対象が限られていた。司法省のプログラムは日本企業にも影響が大きい」と指摘する。

日本企業への影響が予想されるのは、贈賄などを禁じた海外腐敗行為防止法(FCPA)に関する事件だ。FCPAが適用されるとアジアやアフリカなど米国外での贈賄行為も多額の制裁金を命じられるのが特徴だ。

米子会社の関与や米金融機関の口座を通じた資金の流れなど、米国と少しでも関係があれば対象となり、過去にパナソニックやオリンパス、丸紅など多くの日本企業も摘発されている。

井上弁護士は「企業が自社の不正を把握して司法省に自主申告する前に、報奨金目当ての個人に直接、通報される事態も起こりうる。企業にとって避けたいシナリオだ。社内調査など後追いでの対応を迫られ、司法取引で訴追免除などを受けられる可能性も低くなるからだ」とみる。

こうした事態を避けるためには、企業が自社の不正行為に関する情報をいち早く把握できる体制を整えることが大切になる。社内の監査体制や内部通報制度をより充実させ、実効性を高めることが求められる。


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米証券取引委員会(SEC)と米司法省は2018年4月30日、パナソニックと米子会社パナソニックアビオニクス(PAC)に対し、外国公務員への贈賄を禁止・処罰する海外腐敗行為防止法違反などで、計2億8060万ドル(約310億円)の制裁金を科すと発表した。

SECによると、航空機向けの娯楽システムを提供するPACは、ある国の国営航空会社との7億ドル規模の契約成立のため、政府関係者を自社の顧問として雇用した。その報酬を隠蔽しており、SECは賄賂に当たると判断した。

また、SECはPACの会計操作でパナソニックが2012年4〜6月期決算で8200万ドル分の売り上げを不正に報告したと指摘し、これが不正会計に当たるとした。パナソニックは不当利得の返還などで1億4320万ドルを支払う。

米司法省も同日、PACが1億3740万ドルの罰金の支払いに合意したと発表した。

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オリンパス 2016/3

1.米国反キックバック法及び米国虚偽請求取締法に関する合意について

(1)概要
当社の米国子会社である Olympus Corporation of the Americas (OCA)は、同社の平成 18 年から平成23 年までの間の米国医療事業に関連する活動に関して米国司法省の調査を受けておりました。同省は、主として医療従事者や医療関連組織に対する寄付金等の支払い、物品の供与及び機器の貸し出しに関する調査を実施しました。

(2)合意内容
平成 28 年 2 月 29 日に、本件に関して OCA は米国司法省との間で訴追の留保に関する協定を締結し、また OCA は民事上の和解に関する協定を締結しました。これらの協定に従い、OCA は米国政府に対して罰金及び制裁金として 612 百万米ドル(約 704 億円)に利子約 11.2 百万米ドル(約 13 億円)を支払うことで合意しました。
また、OCA は米国保健福祉省の監察総監室との間で法令遵守に関する協定を締結し、当該協定及び上記の2つの協定に基づいて、コンプライアンスの改善のために各種の施策を実施することに合意しました。


2.米国海外腐敗行為防止法に関する合意について

(1)概要
OCA は、平成 23 年 10 月より当社の間接米国子会社である Olympus Latin America, Inc.(OLA)及びそのブラジル子会社である Olympus Optical do Brasil, Ltda.(OBL)の医療事業関連活動に関して米国司法省の調査を受けておりました。同省は、主として、医療従事者に対する支払い、無償又は割引価格での機器の提供等の当該子会社の医療事業関連活動に関する調査を実施しました。

(2)合意内容
平成 28 年 2 月 29 日に、OLA 及び当社子会社(OCA 含む)は本件に関して米国司法省との間で訴追の留保に関する協定を締結し、米国政府に対して罰金として 22.8 百万米国ドル(約 26 億円)を支払い、コンプライアンスの改善のために各種の施策を実施することに合意しました。

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丸紅

インドネシア火力発電所向ボイラー案件に関する米国司法省との合意について

当社は、2014 年 3 月 19 日、下記のとおり、インドネシアタラハン火力発電所向ボイラー案件に関し、米国司法省との間で司法取引に合意しました。

本件の受注に関し、米国司法省は、コンソーシアムが起用した代理店がインドネシアの公務員に対して不正な支払いを行った疑いがあるとして、米国連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)違反の疑いで当社及びコンソーシアムパートナーその他関係者に対する調査を行いました。

当社は、この度米国司法省と司法取引契約を締結し、米国司法省に対して 88 百万ドル(約91 億円)を支払うことと致しました。裁判所による判決は 5 月 15 日の予定です。

(インドネシアでは公務員への賄賂は必須であり、代理店を通じておこなうのが一般的)