2011年9月1日
ダイムラーとBASF、先駆的な電気自動車プロジェクトで双方のノウハウを結集
共同開発のコンセプトカー「smart forvision」を「2011年フランクフルト国際モーターショー」で世界初公開
化学業界の革新的技術が自動車のエネルギー効率化に貢献
ダイムラーとBASFはこのたび、電気自動車全般に適応可能な、両社のアイデアを結集した最新のコンセプトカー「smart forvision」を開発しました。同コンセプトカーは、エネルギー効率、温度管理、軽量設計を特に重視した設計となっています。「smart forvision」は、2011年9月13日から開催される「第64回フランクフルト国際モーターショー」で世界初の公開を予定しています。
ダイムラーとBASFはともに、電気自動車の普及と日常生活への早期導入のため、幅広い研究開発に取り組んできました。
ダイムラーは、電気自動車で4つの量産モデルを発表した初の自動車メーカーであり、また、smartブランドのマイクロ・コンパクトカー「smart fortwo」の電気駆動装置は、バッテリー駆動自動車の中でも先駆的なものです。
BASFは、自動車産業に対しても化学製品の世界最大サプライヤーとして、エネルギー効率の高い未来の移動手段を実現するため、持続可能で環境に優しいソリューションを開発しています。
そして、両社の技術力により、将来的に発生するさまざまな課題を解決する未来志向のコンセプトカーが、今回初めて誕生しました。このコンセプトカーは、デザイン、ライフスタイル、テクノロジーを融合させることで、これまでにない包括的な機能性を実現しています。
BASF取締役兼リサーチ・エグゼクティブ・ディレクターのアンドレアス・クライマイヤーは、次のように述べています。「ダイムラーとの共同プロジェクトでは、未来の都市における移動手段に対する包括的なアプローチを作り出すことに成功しました。今回の結果には、非常に満足しています。低コストで環境に優しく、持続可能な電気自動車の確立に向け、両社の研究活動は大きく貢献しています」。
ダイムラーの取締役会メンバーで、メルセデス・ベンツ・カーズのグループ研究開発を統括するトーマス・ウェーバーは、次のように述べています。「『smart
forvision』は、2つの全く異なる業界から、2つのリーディングカンパニーが結集し、力を合わせ実現した絶好の事例です。当社の開発者とデザイナーがBASFの研究者と力を合わせ、コンセプトカーを共同考案したことにより、未来の電気自動車のあり方を有意義な形でご提案できることを、非常に嬉しく思います」。
スマートは当初から他の自動車コンセプトとは一線を画すものとして開発されたため、このような共同プロジェクトがスマートを対象とし推進されたことは必然的な流れでした。その結果誕生した「smart
forvision」は、最新のテクノロジーを披露する上で、最適な自動車となっています。研究開発チームは、今回の新たなコンセプトカーで、5つの「世界初」を実装することに成功しました。5つの世界初とは、透明有機太陽電池、透明有機発光ダイオード(OLED)、完全プラスチック・ホイール、新軽量ボディ部品、赤外反射膜・塗料です。これらはすべて、車両のエネルギー消費量の削減に寄与しており、また走行距離や実用性も向上しています。
エネルギー効率化に貢献
最先端の素材とテクノロジーにより、今回の電気自動車には、エネルギーの効率化のみならず発電も可能という新たなコンセプトも導入されています。その結果、より長距離の走行が可能となり、電気自動車の性能と経済性はこれまで以上に優れたものとなります。「smart
forvision」は、有機化学染料ベースの発電太陽電池をルーフに取り付けるなど、エネルギー効率を高めたソリューションを採用しています。省エネ型の有機発光ダイオード(OLED)との組み合わせにより、太陽電池で覆われたルーフは、環境に優しいだけでなく、優れたデザイン性をも発揮しています。
電気自動車の開発を継続するにあたっては、自動車の駆動に必要な電力を持続可能な形で生産・使用することが課題のひとつです。電気自動車では、必要なエネルギーを高効率で生成し、二酸化炭素排出量を最小限に抑えることが、気候変動の防止や環境保護の観点から最も有効です。こうした理由により、BASFでは、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用した電力の生成ソリューションにも取り組んでいます。
多機能・軽量化設計
電気自動車の軽量化が進むことで、駆動エネルギーは少なくなり、走行距離も長くなると考えられます。そのため、車両の軽量化は、未来の電気自動車の重要な課題のひとつであり、BASFは、この分野で重要な貢献を果たすことが出来ます。軽量設計においては、重い金属部品の代わりに、機能性や安定性の変わらない複合プラスチック材料を使用します。シャシーなどの耐力部品を繊維強化プラスチックに置き換えることで、とりわけ効果的な重量削減が可能です。さらに、「smart
forvision」は、BASFが開発した最新の高機能素材「Ultramid®
Structure」を原料とし、大量生産にも適した史上初の完全プラスチック・ホイールを採用しています。この素材は、金属と遜色のない安定性を誇り、最大30%の軽量化が可能です。
総合的な温度管理
自動車の暖房・空調システムは、多くのエネルギーを消費します。熱放射を反射するためのウィンドウのポリマー薄膜や高性能の断熱材など、画期的な素材を使用した総合的な温度管理システムを活用することで、車内の暖房・冷却に必要なエネルギーの量を削減可能です。
「smart forvision」には、上述のような化学業界の誇る未来志向のテクノロジーと、独自のモビリティ・コンセプトや特徴的なデザインが結集しています。自動車業界と化学業界が力を合わせることにより、電気自動車の低コスト化、環境への配慮、安全性について、大きな貢献を果たしています。
最先端の素材とテクノロジーにより、今回の電気自動車には、エネルギーの効率化のみならず発電も可能という新たなコンセプトも導入されています。その結果、より長距離の走行が可能となり、電気自動車の性能と経済性はこれまで以上に優れたものとなります。
ダイムラーとBASFは電気自動車全般に適応可能な、両社のアイデアを結集した最新のコンセプトカー「smart forvision」を開発。両社の技術力により、将来的に発生するさまざまな課題を解決する未来志向のコンセプトカーが、今回初めて誕生しました。このコンセプトカーは、デザイン、
ライフスタイル、テクノロジーを融合させることで、これまでにない包括的な機能性を実現しています。
効率的で持続可能、妥協のない電気自動車を目指すにあたって、ダイムラーとBASFは「smart forvision」という最高の基盤を築き上げることができました。
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エネルギーの効率化:ルーフからの明るさとエネルギー
「smart forvision」のルーフの六角形の透明なエリアは、人目を引く特徴的なデザインを採用しており、史上初の光伝達ルーフとして、エネルギーを生成する役割を担っています。ここで使用しているテクノロジーは、ルーフ全体の表面を覆う透明な太陽電池です。これらは、サンドイッチルーフに埋め込まれた有機染料をベースとしています。太陽電池の透明な染料は、光で起動します。散光時や薄暗い状況下でも、マルチメディア機能および車内の温度・湿度管理をサポートする3つの換気システムを稼働するのに必要なエネルギーが生成されます。自動車が陽のあたる場所にある限り、太陽電池によって継続的な換気が可能であり、自動車の冷却状態が維持されます。この新たな太陽光技術は、さらなる効率化の可能性を高めるものであり、作り出されたエネルギーは、車内の他の用途にも使用できます。
太陽電池の裏側にも、新たな機能を追加しています。例えば、ドアを開けた時やボタンを押した時には、透明有機発光ダイオード(OLED)が車内を照らし、スイッチがオフの状態では、外部が透けて見えるようになります。これによって、日中はグラスルーフの効果が得られる一方、夜間には眩しすぎない快適な照明が得られます。新型OLEDでは、カラーを自由に選ぶことができるため、より自由なデザインが可能になるだけでなく、従来型の省エネランプと比べても、消費エネルギーは半分以下となります。
軽量:差別化し、よりよく、スタイリッシュに
「smart forvision」では、世界初の技術、すなわち、量産が可能な初の完全プラスチック・ホイールによって、大幅な軽量化と独自のデザイン性を実現しています。BASFが開発した最新の高機能素材を活用したホイールにより、現段階でホイール1個あたり3kgの大幅な軽量化を達成しました。従来型のポリアミド複合材料とは異なり、この新型プラスチックは、長い強化繊維を採用することで、力学特性を向上させます。その結果、傑出した熱安定性や化学安定性、動的強度、堅牢性と、良好な連続動作特性が得られます。スマートが実施した初の生産テストでは、完全プラスチック製ホイールの性能が実証されると同時に、量産車で使用可能であることが確認されています。
In the smart forvision, BASF SE presents the first polymer wheel rim suitable for mass production. It consists of the long-fiber-reinforced plastic Ultramid® Structure and provides a potential weight saving of up to 30 percent over metal rims.
ウルトラミッドは、PA6、PA66、それにPA6/66、PA66/6や部分的に芳香族ポリアミドなどの各種コポリマーをベースにしたポリアミド成形材料です。ウルトラミッドは、その機械的高強度、剛性、熱安定性においては際立っています。さらに、ウルトラミッドは低温下での耐衝撃性に優れていると同時 に、摺動特性や優れた成形性においても有利な条件を備えています。
高機能複合材料である炭素繊維強化エポキシ樹脂は、「トリディオン・パッセンジャーセル」に採用されていますが、「smart
forvision」では、ドアなどの部品もこの素材を原材料としています。このような素材を使用することで、鋼との比較で50%以上、アルミニウムとの比較では30%の軽量化が実現します。BASFの樹脂は、硬化時間が短いことから、大量生産にも適しています。
暖房:体の近くで、効率的に
「smart forvision」は、多機能・快適・軽量シートを採用しており、効率的な温度管理の性能と省エネ軽量デザインを兼ね備えた独自の設計です。ここでは、複数の画期的な製品を初めて組み合わせました。最新の軽量・自立型のプラスチック製シートシェルがその基盤となっています。
人の身体は、特定の接触ポイントからのみ、熱を効率的に吸収することが多数の研究から判明しています。こうした理由により、「smart forvision」では、従来型のシート暖房とは異なり、独自の導電コーティングを施した薄型繊維のe-テキスタイルが使用されています。背中の中央部と腰のあたりで身体により密着した形で直接的に暖めることにより、快適な暖かさが得られます。省エネルギー、省スペース、軽量化を実現するe-テキスタイルの技術は、ドアに取り付けたアームレストにも使用しており、寒さに敏感な体の接触ポイントも暖めます。
さらに、同様のイノベーションはシートフォームにも採用しており、快適性と軽量化を両立しています。BASFの素材は、他社の素材と比べて約10〜20%の軽量化を実現し、また、一度の動作工程で、クッションの部分ごとに硬さの度合いを変えることが可能です。これは人間工学上、明らかな利点といえます。
超吸収剤を含むフリース繊維をシートに織り込んだ受動的な温度・湿度管理により、シートの快適性は大幅に向上します。従来型の温度・湿度管理シートと比べ、「smart
forvision」の軽量シートは、機械的な換気による複雑さやエネルギー要件を伴いません。
温度管理:熱の侵入を防ぐ
自動車の空調・暖房には、大量のエネルギーが使用されるため、スマートとBASFの研究者にとって温度管理は、重点的な取り組みを必要とする分野でした。「smart
forvision」は、自動車の空調をより効率的にするために、これらの施策全体が実装されており、同時に、エネルギー集約型の暖房機能により、車内全体を十分に暖めることも可能になっています。
断熱材は、自動車用途では初の採用となるBASFの新赤外反射膜で構成されています。これをフロントガラスやサイドウィンドウに採用することで、車内の温度上昇を防ぎます。安全ガラスの窓枠の間に無金属のフィルムを取り付けることで、赤外線は効果的に反射されます。これは可視領域の透明性が高いため、色付きウィンドウにも使用可能で、太陽光や熱の極めて高い反射率を保証しています。一部の自動車ですでに使用されている金属化フィルムとは異なり、この新型フィルムは、太陽の赤外線のみを反射します。GPSやBluetooth、携帯電話、ETCの使用に必要な電波が妨げられることはありません。
また、BASFの高機能発泡体を車体パネルに使用することで、車内の温度・湿度を快適に保つことができます。夏には快適な涼しさが維持され、冬には寒気を防ぎます。これは、幅の狭い場所でも高い効率性を発揮するため、自動車のあらゆる場所に取り付けることが可能です。このような画期的な断熱システムを「smart
forvision」に採用することで、両社は自動車市場で新境地を開拓しています。
涼しい塗料で、車内も涼しく
赤外線を反射し、極めて傷のつきにくい塗料分野は、広範囲の温度管理システムに対するサポートと、その鮮やかで高品質な質感により、「smart forvision」独自のデザイン性を強調するという2つの機能を同時に発揮します。コンセプトカーには、ガラスフレークを用いたホワイトの特殊効果コーティングを採用しており、光り輝くメタリック調の外観となっています。さらに、重要な副次効果として、太陽からの熱線や光を極めて効果的に反射します。また、BASFが誇る特殊な着色顔料により、暗色塗料の表面でも、これまでより大幅な冷却状態が維持されます。BASFのこの特殊な着色顔料は、熱放射を吸収するのではなく確実に反射するものです。この結果、塗料表面温度は最大20℃、車内温度は最大約4℃下がります。
未来型デザインのトレンドセッター
パールホワイトの塗装と、銅色の液体金属塗料でコーティングしたトリディオン・セーフティセルがアクセントとなっている「smart forvision」の基本構造と「smart
fortwo」のデザインの間には、意図的な関連性が存在します。先進的でありながら高品質、そして液体金属の塗装面のアルミニウムフレークにより、セーフティセルの反射面が作り出されることで、見る角度に応じて明暗が変化します。さらに、「smart
forvision」のパネルとセルの両方には、極めて傷のつきにくいクリアコートを塗布しています。
ドアオープナー内蔵のファセット加工されたサイドドアは、人目を引くデザインに仕上がりました。これまでにない表現力豊で立体的なプラスチック加工を実現しており、プラスチックの使用を強みとする、スマートのみが実現可能な、斬新なデザインです。また、精密なファセットにより、安定感が生まれ、素材の厚みも抑えることが出来ます。このデザインは、プラスチックの可能性を最大限に引き出すものとなっています。これとは対照的に、フロントとリアは、ドアから滑らかに流れる柔らかなデザインを採用しています。内蔵されたドアハンドルは余分な部品を必要としないデザインで、スマートではお馴染みの空気吸入口も六角形の形状で車体に組み込まれています。
ジェット機のようなリアランプは、小型飛行機のタービンを連想させるもので、これによってリアは、未来的かつスポーティな外観になりました。リアランプ内の小型プロペラは、内部の空気を外部に送りだします。照明の必要機能はすべて備えつつ、周辺にはリングの形状の透明なスタックが置かれて、充電時にはバッテリーの充電状態が分かるようにもなっています。
ヘッドランプは、リング型の昼間点灯と方向指示器がアクセントで、これにより、「smart forvision」の外観は、さらに好感の持てる印象となっています。
未来への扉
多角形およびオーガニックな形状が混在することで、「smart forvision」の車内は、外観のデザインとも上手く調和しています。これは、カラーコンセプトにも採用しており、クールなホワイトが基調となっている車内に、インストルメント・パネルの内側部のリキッド・コッパーがアクセントとなります。ホワイトのフロア上には、ホワイトの六角形のラバーナブを配置し、シートクッションのトーン・イン・トーン配色のデザインと合わせて、自動車全体を通じてデザインの統一感を保っています。
サイドドアのファセット加工は、ドアの内側にも施され、一体型のアームレストとドアポケットを組み込んだ多角形状のデザインが、柔らかなカーブを描いています。
ドアの内側には、車体と同じ色を採用しており、カラーLEDを取り付けたドアを開けると、光のアニメーションがドライバーを出迎えます。また、ドアを閉めると、外側から内側へと流れる光のアニメーションが再び表示され、その後控えめなアンビエント照明に切り替わります。
楕円形のユーザーインターフェイスは、軽量のトリディオンと同様の銅色フレームを採用しており、電源オフ時には半透明状態となります。車両の電源をオンにすると、透明な画面上に全ての運転情報が表示されます。ドライバーは、タッチスクリーンで動作メニューの切り替えを行うことができます。
ホワイトのハンドルは、航空機の操縦桿を連想させるデザインで、運転席の未来的な外観を演出しており、ファンクション・ボタンと、バッテリーの充電状態を示すLEDディスプレイも配置しています。
未来志向のテクノロジー
「smart forvision」は、電気自動車によるゼロ・エミッション運転の可能性を示すだけでなく、自動車業界での技術革新の道をも切り開きます。こうしたイノベーションの大半は、持続可能なソリューションを開発する上で欠かせないナノテクノロジーを基盤としています。建設、エネルギー、ヘルスケア、エレクトロニクスの分野と同様、ナノ素材は、自動車業界でもイノベーションの原動力としての役割を担っています。
コンセプトカーに搭載されたすべてのテクノロジーが一体となることで、走行距離は目に見える形で向上します。バッテリー駆動の電気自動車に関する議論においては、走行距離が常に中心的なテーマとなっています。最高のエネルギー効率、高度な温度管理、一貫した軽量構成により、未来の電気自動車では、走行距離を最大20%延長することが可能になります。