2025/1/14 Forbes  

トランプの盟友Steve BannonがElon Muskを攻撃、「就労ビザ」巡る論争で

トランプ次期米大統領の盟友で、第一次政権で最初の7ヶ月間、ホワイトハウスの首席戦略官を務めたSteve Bannonは、Elon Muskを批判し、彼のホワイトハウス入りを阻止するためなら「何でもする」と発言した。

Bannonは、ハイテク企業が海外からの技術者の受け入れのために活用する就労ビザ、H-1Bビザを擁護するMuskを公然と非難してきたが、イタリアの新聞によるインタビューで、Muskを再び攻撃した。

H1-Bビザは、アメリカの企業が外国の特殊技能職を雇用するためのビザです。アメリカの企業が外国人を雇用する際には、就労ビザの取得が必要となりますが、その中でH1-Bビザは、特定の技能や知識を持つ外国人を対象としています。例えば、ITエンジニアや研究者など、特定の分野での専門的な知識や技能を持つ方が対象です。 

また、H-1ビザはL-1ビザと混同されることがありますが、H1-Bビザは、米国内の雇用主が外国人を米国内で雇用するためのものです。一方、L-1ビザは米国外の企業(日本企業など)が、在米国の関連会社等に米国人でない者(日本人など)を転勤させる場合に発給されるビザとなります。

H1-Bビザの取得要件

H1-Bビザの取得には、特定の要件を満たす必要があります。アメリカ政府は、特殊技能職としての資格を確認するために、いくつかの要件を設定しています。
具体的な要件は次のとおりです。 

●特定の技能に関して、州のライセンスを所持していること

●特定の技能に関して、学士号相当以上の学歴を有していること

●特定の技能に関して、学士号と同等以上の経験を有していること

また、H-1Bビザに該当する職種としては、主に次のような職種が挙げられます。 

医師、弁護士、会計士、建築家、財務アナリスト、マーケティング・アナリスト、為替ディーラー、エンジニア、プログラマー、科学者、経営コンサルタントなど

 

Bannonは、Muskが故郷の南アフリカに帰るべきだと語り、「なぜ世界で最も人種差別的な民族である南アフリカの白人が、米国で起きていることに口を出すのか」と問いかけた。

この発言は、ワシントン・ポスト紙が1月12日に報じたイタリアの現地紙によるインタビューでのことだ。

トランプの1期目の政権で首席戦略官を務めたBannonは、Musk を「ホワイトハウスから遠ざけるためにあらゆる手段を行使する」と語った。

彼は、Muskの考えがハイテク大手が人々を搾取するための「テクノ封建制(Techno-feudalism)」を世界規模に拡大するものだと批判し、彼がトランプに与える影響を可能な限り制限するすつもりだと述べている。

H-1Bビザをめぐる対立は、トランプが先月、インド系投資家のSriram Krishnanを人工知能(AI)の政策顧問に選んだことから始まった。

ベンチャーキャピタル会社Andreessen Horowitzのジェネラルパートナー

   Andreessen Horowitz(AとZの間に16文字あるため、a16z と呼ぶ)

 Krishnanは、以前にグリーンカードや熟練労働者向けビザの発給を拡大するよう主張しており、Bannonを含む極右の陣営は、トランプが掲げるMAGA(米国第一主義)の取り組みと相反すると主張した。

Bannonは、自身のポッドキャストで、H-1Bビザプログラムを「経済的および財政的詐欺」と呼び、Muskが支持を続けるならば、MAGA陣営と協力して「Muskの顔を引き裂いてやる」と発言した。

Muskは以前、テクノロジー企業の運営には「H-1Bビザを持つ優秀な外国人が欠かせない」と主張していたが、Bannonは、Muskに対して「H-1Bビザで雇用したエンジニア全員のデータを公開し、米国人がその役割を担えないことを証明しろ」と挑発した。

これに対し、Muskとその盟友のVivek Ramaswamy(や投資家のデービッド・サックスらは、クリシュナンとH-1Bプログラムを擁護しており、Muskはこのビザを批判する人々を過激なスラングで罵倒し、「この問題で戦う」と宣言した。

Vivek Ramaswamy  MuskとともにDepartment of Government Efficiency

インドからの移民2世で、実業家として製薬ベンチャーなどを起業。24年大統領選では共和党の指名争いに立候補し、撤退後はトランプ氏を熱烈に支持してきた。製薬スタートアップ企業のRoivant Sciences (住友ファーマにライセンス)の創業者

 トランプ自身はH-1Bビザを一貫して支持してきたわけではないが、ニューヨーク・ポスト紙の取材に、自身の事業で多くのH-1Bビザ労働者を雇用していると語り、このプログラムが「素晴らしいものだ」と評価していた。

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時事通信 

マスク氏、トランプ支持者と応酬 移民巡り「内部対立」―Xの投稿管理問題に飛び火

実業家イーロン・マスク氏が、トランプ次期米大統領を支持するインフルエンサーらと衝突した。ITなど専門性を持つ外国人向けの就労ビザ「H-1B」の扱いを巡る相違が原因で、トランプ氏を積極支援し政治的影響力を高めるマスク氏と、トランプ氏の支持基盤である反移民強硬派の「内部」対立が浮き彫りになった形だ。

 きっかけは、トランプ氏が22日、次期政権の人工知能(AI)に関する政策顧問にインド系の投資家Sriram Krishnan氏を起用すると発表したこと。同氏はこれに先立つ11月、専門性を持つ移民の受け入れ拡大を主張しており、トランプ氏に近い極右インフルエンサーのローラ・ルーマー氏が「米国第一主義の政策に反する見解で、憂慮すべきだ」と人事に異論を唱えた。

 黙っていられなかったのが、テック業界でのし上がってきたマスク氏だ。今月25日のX(旧ツイッター)への投稿で「米国には超才能があり、やる気満々のエンジニアが少な過ぎる」とIT技術者の不足を指摘。27日にも「米国を強くしたスペースXやテスラ、その他数百の企業を築いた多くの重要人物と共に私がこの国にいるのは、H-1B ビザのおかげだ」と強調し、反対派との「戦争」を宣言した。

 ルーマー氏はH-1Bを擁護するマスク氏の姿勢に「毎日奴隷のように働いている米国生まれの人はどう思うだろうか。軽蔑されていると感じる」と疑問を投げ掛けた。トランプ氏の元側近スティーブ・バノン氏も加勢し、H-1B擁護論を「詐欺」と切り捨てた。

 肝心のトランプ氏はニューヨーク・ポスト紙の取材に「H-1Bビザは素晴らしいプログラムだ」と語り、マスク氏に同調したようにみえる。だが、厳格な移民規制を求める層を取り込んで大統領選に勝利しただけに、議論が過熱すれば、支持基盤の動揺を招きかねない。

 ビザを巡る論争は、マスク氏をオーナーとするXへの批判にも飛び火した。ルーマー氏は27日、Xの有料会員から外されたと投稿。長文投稿ができなくなり、収益も分配されなくなるという。

 NBCニュースは、移民政策に関するマスク氏の見解に反対する少なくとも14の保守系アカウントが、こうした措置の対象になったと報じた。マスク氏は「言論の自由至上主義者」を自称し、SNS上の投稿管理を「検閲」と非難してきたが、今回は検閲を批判される側になっている。