中ロが原油輸送料で対立 未払い160億円、ロシアは提訴も
ロシアが今年始めた中国向け原油輸出で、パイプラインでの輸送料を巡る両国の対立が激しくなっている。料金引き下 げを求める中国側は引き下げ分を差し引いて輸入代金を支払い、ロシア側が「合意に反する」と反発。ロシアが主張する「未払い額」は2億ドル(約160億 円)超に達したもよう。ロシア側は訴訟も辞さない構えで、世界最大の資源保有国ロシアと消費大国・中国のエネルギー協力の行方が不透明になっている。
中ロ両政府は2009年、ロシア国営石油ロスネフチと石油輸送会社トランスネフチが中国から250億ドルの融資を受ける見返りに、中国石油 天然気集団(CNPC)を通じて20年にわたり毎年1500万トンを供給する大型の協定を締結。今年1月に東シベリア産原油を輸出する東シベリア太平洋石 油パイプライン(ESPO)の中国・大慶向け支線が完成、対中輸出を開始した。
両者が対立しているのは、原油の代金に含む国境までのパイプラインによる輸送料の取り扱いだ。ロシアは中国国境までとESPO幹線の最終地 点である日本海岸までを同じ料金設定にしたと主張。中国側は中国向け支線は輸送距離が短く料金はその分安くなるとして、差し引いた代金を支払っている。差 額は毎月4千万ドル前後に達する。
問題解決に向け両国政府は5月末に協議する予定だったが、中国側が直前に延期を通告。インタファクス通信は25日、2〜3週間後にはロスネ フチとトランスネフチ両社がCNPCをロンドンの仲裁裁判所に訴える準備が整うと伝えた。中ロの外交関係にも影を落とし始めており、中国外務省報道官は 26日「対等な協議と双方の譲歩」による問題解決を呼びかけた。
原油の輸入代金問題が長期化すれば、今後の極東シベリアでの中ロエネルギー協力に影響するのは必至だ。両国は今夏までに新たなパイプライン 建設による対中ガス供給の価格設定で最終合意する方針だが、セチン副首相は原油とガスの輸出価格問題を相互に関連づける考えを示した。中国は原油輸入量を 倍増する提案を出し、輸入代金の再設定を求めた。
中ロエネルギー協力の進展が遅れた場合、ロシアは同分野の有望な協力相手として日本を重視する姿勢を強める可能性がある。シマトコ・エネル ギー相は23日、中国のように資金と長期供給契約だけでなく「技術面も含めて総合的に日ロ協力を強化したい」と表明。東日本大震災の影響でエネルギー需給 が逼迫する日本との共同資源開発の促進を提案した。
2011/6/2
ロシア産原油輸送料「未払い分」、中国が一部納入 算定巡りなお
ロシアが中国にパイプラインで輸出する原油の輸送料を巡り両国が対立している問題で、コメルサントなどロシアの有 力紙は1日、5月31日までの協議で中国側が歩み寄る姿勢を示したものの、なお溝を残したと伝えた。輸送料の算定方式に関して意見の相違が残っており、話 し合いを続ける見通しという。
原油の輸送料を巡る対立で、料金引き下げを求める中国側は引き下げ分を引いて輸入代金を支払っている。ロシア側は中国のこうした動きに 発。ロシアが主張する中国の「未払い分」は2億5千万ドル(約200億円)に達していた。中国側はこのうち1億9500万ドルの支払いに応じたが、なお輸 送料の一部割引を求めて5500万ドルを払っていないとしている。
中ロ両政府は31日にモスクワで、資源エネルギー協力を話し合う副首相級のエネルギー対話を開いていた。原油の輸送料とともに、議題になっ た天然ガスを中国に輸出する長期契約に関して、ロシアのセチン副首相(エネルギー担当)は対話終了後、協議の進展を受け、6月10日までに交渉を終える意 向を示した。
天然ガスの対中輸出は東西の2つのルートで合計年約680億立方メートルを供給する計画で、2030年までの長期契約を想定しているとい う。ペスコフ首相報道官は31日、ガスの輸出価格についてはさらに調整の必要があると述べた。6月中旬の胡錦濤・中国国家主席の訪ロをにらんで協議を急ぐ 考えとみられる。