2024/9/13

中国が定年退職を段階的に引き上げ

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に当たる)常務委員会は9月13日、働く人の退職年齢の引き上げを今後、15年間をかけて3〜5年引き上げることを決めた。国営新華社通信が報じた。

70年以上変わってこなかった中国の働く期間が、高齢化による労働人口の減少に促される形で転換点を迎えた。ただ、社会の反発も予想される中で、慎重さも目立っている。

9月13日に可決された方針は、現在男性60歳、女性50歳(女性幹部は55歳)となっている中国の定年について、2025年から徐々に延長を始め、2039年までに男性63歳、女性55歳(女性幹部は58歳)とする。

これに伴い、年金を受け取るために最低限、年金保険料を支払う年数は現行の15年から徐々に引き上げて20年にする。一方で、この年限の支払いを終えるなどの条件を満たした場合は定年より早く退職することができる制度も設ける。

共産党は7月に開いた重要会議「中央委員会第3回全体会議(3中全会)」後の公表文で、「働く人の自らの希望に基づき、弾力的な運営を原則とする」「穏当に進める」と慎重な表現を用いながらも、定年引き上げに踏み切る方針を示していた。

中国の定年は1950年代初期に定められて以降70年以上にわたって原則として変わっておらず、国際的に見ても若い段階で退職してきた。

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人民網(2024-09-13)は背景について下記の通り述べている。

専門家は、法定の定年退職年齢を引き上げるのは、現時点での人口の発展動向に対応し、高齢化という課題に効果的に対処するためであることが大きな原因の一つとの見方を示している。


動向その1:中国の平均寿命がすでに78.6歳まで伸びている

中国人口・発展研究センターの賀丹主任によると、「2030年までに、中国人の平均寿命は80歳を超える可能性がかなり高いと予測されている」としている。

「現行法の定年退職年齢は1950年代に決められた。当時の平均寿命は50歳未満だった。定年退職年齢を引き上げることは、総合的な社会改革であって、経済や社会の発展の多方面のニーズに対応することができる。平均寿命が延びているのに対応するというのも、そのうちの重要な検討要素だ」と説明する。


動向その2:人口資質が向上 新規労働者が受けた教育の平均年数は14年以上に

生産年齢人口が受けた教育の平均年数は、1982年の8年程度から、2023年には11.05年にまで高まっている。特に、新規労働者が受けた教育の平均年数だけを見た場合、14年以上になっている。

「労働市場に出て来る労働者の年齢が高まっているのに、定年退職年齢が変わらなければ、ヒューマンリソースを十分に活用することが難しい」との見方を示す。


動向その3:高齢化が進み、高齢者人口が占める割合が3割超へ

中国民政部(省)のデータによると、2023年末の時点で、中国の60歳以上の高齢者人口は2億9700万人となり、総人口に占める割合は21.1%に達した。また65歳以上の高齢者人口は2億1700万人となり、総人口に占める割合は15.4%に達し、「中度の高齢化」社会に突入した。

「人口の高齢化が進むにつれて、高齢者ケアサービスの需要に供給が追いつかない状態が際立つようになっている。高齢化は世界各国が直面している課題だ。定年退職年齢を引き上げるだけでは、高齢化問題を完全に解決することはできないものの、労働参加率を高めて、意欲や能力があり、そうできる環境にある高齢者であれば、ある程度仕事をすることを選択することができる」との見方を示す。


動向その4:労働者数が減少し、生産年齢人口が約8.6億人に

人口経済学において、生産年齢人口は16‐59歳と定義されており、社会生産の主力となる。中国国家統計局のデータによると、2023年末の時点で、中国の生産年齢人口は約8億6000万人で、総人口に占める割合は61.3%だった。

データによると、2012年から、生産年齢人口が年々減少している。趙忠院長は、「構造を見ると、生産年齢人口のうち、青年のグループが減っているのに対して、それより年齢が高いグループは増えている。これはつまり、労働市場において、働き盛りの能力が最も高い年齢層が減少しているということだ」と指摘する。

そして、「人口の高齢化が進むにつれて、生産年齢人口が減少するというのは、客観的な発展の規律だ。定年退職年齢を段階的に引き上げることで、意欲がある高齢の労働者が将来の労働力を充実させる重要な力になるよう働きかけ、生産年齢人口減少の勢いを弱めることができる」との見方を示した。