神東塗料製品を使った全製品の出荷が停止に
水は社会の血液であり水道管は血管だ。全国に張りめぐらされた水道管は目に見えないところで私たちの生活を支えている。老朽化した水道管は交換される。12月から3月は水道工事の多い時期だ。
しかし、その工事が止まった。水道管が供給されないからだ。「水道管ショック」とも言える異常事態はなぜ起きたのか。私たちの生活にどんな影響があるのか。
神東塗料が水道管用の合成樹脂塗料の認証を不正に取得していた疑いがあることが発覚し、影響が広がっている。同社製品を使う鉄製水道管大手のクボタに続き、栗本鉄工所と日本鋳鉄管が14日までにダクタイル鋳鉄管の出荷を停止した。大阪市水道局は14日、毎月実施している水質検査で異常は確認されていないと発表したが、複数の自治体などの水道局は安全性が確認できるまでの間、対象製品を使う工事を停止する。
合成樹脂塗料は土の中に埋められた水道管の外側やつなぎ目に塗装し、さびや腐食を防ぐ効果がある。神東塗料は一部の製品について日本水道協会の規格と異なる条件下での試験結果を使ったり、規格に記載されていない原料を使用したりしていた疑いがある。神東塗料は14日、協会から認証の一時停止などの通知を受けたと発表した。
厚生労働省によると2019年度に敷設された水道管のうちダクタイル鋳鉄管は半分以上を占める。クボタ、栗本鉄工所、日本鋳鉄管でほぼ全量の出荷をまかなっている。クボタは鋳鉄管のほとんどで神東塗料の製品を使っていた。
東京都水道局や大阪市水道局は問題の塗料を使った水道管を含め一部の工事を停止した。大阪市水道局の場合、発注している市内の水道管工事約80件のうち半分程度が対象という。堺市上下水道局も対象の10件以上の工事を停止した。工事の立て込む年度末を控えており、水道管工事に混乱が生じる可能性がある。
日本水道協会は13日から14日にかけ、神東塗料の製造工場に立ち入り調査に入った。鉄管メーカーからも品質データを取り寄せるなどして、神東塗料が出荷を停止した製品の安全性について調査している。
神東塗料も全社員への聞き取りを通じて水道管用の塗料以外にも同様の事例がないか調査を始めた。建築用や工業用の塗料を納入した取引先などからも問い合わせが相次いでいるという。
ーーー
Yahoo news 2022/1/14
塗料不正で「水道管ショック」の事態に 工事全停止の異常、何が起きているか解説 橋本淳司 水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
神東塗料製品を使った全製品の出荷が停止に
水は社会の血液であり水道管は血管だ。全国に張りめぐらされた水道管は目に見えないところで私たちの生活を支えている。老朽化した水道管は交換される。12月から3月は水道工事の多い時期だ。
しかし、その工事が止まった。水道管が供給されないからだ。「水道管ショック」とも言える異常事態はなぜ起きたのか。私たちの生活にどんな影響があるのか。
1月11日、日本水道協会品質認証センターは、水道管の一部に「指定外原料」が使用されたと公表した。同センターは、厚生労働省が定める基準にもとづき、水道に関する製品を評価し、基準に適合した製品を認証登録する。認証登録を受けた製品のみが水道に使われる。
問題が発生したのは、神東塗料が取り扱う水道管向け合成樹脂塗料。同社はこれらについて、@「認証外の原料を使用したこと」、A「不正な条件で得られた試験結果で認証を取得したこと」の2点を報告した。
同社は塗料の重要な原材料である樹脂を独自に開発してきた。該当の塗料は、ダクタイル鉄管(水道管の一種。上記イラスト参照)、バルブ、接合部品に使用されている。腐食、さびを防ぐ目的で使用されるが、接合部分では、塗料と水が直接触れる。
不正を受けて、日本水道協会は該当製品の認証を停止。ダクタイル鉄管を取り扱う主な企業は、次々に神東塗料製品を使った全製品の出荷を止めた。
大都市の水道管は85.2%がダクタイル鉄管水道管を素材で分類すると、硬質塩化ビニル管、鋼管、鋳鉄管、石綿セメント管などがあるが、ダクタイル鉄管の使用率は圧倒的に多い。全国に約72万キロある水道管路のうち、約39万キロがダクタイル鉄管である。都市部ほどダクタイル鉄管の使用率は高く、100万人以上の給水人口では85.2%がダクタイル鉄管である。
工事の遅延による影響、塗料の安全性に関する影響
影響をまとめてみる。
@工事の遅延による影響
製品の安全性が確認されるまで出荷停止が続く。
全国の水道管のうち法定耐用年数の40年を超えた割合(老朽化率)は、2018年度末には17.6%にまで上昇した。財源不足などから、布設から50年、60年経過した水道管を地道に補修しながら使用しており、年間2万件を超える漏水・破損事故が発生している。毎年約5,000キロが更新されるが、「なんとか更新にたどりついた」というのが実態だ。
その工事が今回の出荷停止によって止まる。水道事業者(自治体)にすでに納入されている製品についても、日本水道協会品質認証センターが使用しないことを呼びかけている。当面の工事だけでなく、今後の工事予定も大幅に遅れるだろう。
実際、大阪市水道局は「計画的な工事については、当該水道管の安全性が確認されるまでの間、工事を原則停止」と公表した。
水道事業者(自治体)、部材供給業者、工事業者に影響が出るだけでなく、市民生活にも影響が出る可能性がある。
A塗料の安全性に関する影響現時点では塗料の原料の安全性が確認されていない。最悪、人体に有害な物質であった場合、影響は甚大だ。すでに終わっている工事でも、当該塗料を使用したダクタイル鉄管やバルブを使っているはずだ。いつからこの塗料が使用され、製品がどの水道事業に納品され、どこに布設されたのかを明らかにし、対応する必要がある。
前述の大阪市水道局は水質について「毎月1回実施している定期水質検査において、これまで異常は確認されていません」「当面は水質状況に大きな変化がないかを注視しつつ、給水を継続します」としている。
神東塗料は、前述の「当社製の一部製品に係る不適切行為について」のなかで「速やかに社外の専門家も交えた特別調査委員会を設置する予定であり、事実関係の解明、原因究明、再発防止策の策定等に全力を挙げて参ります。特別調査委員会の設置については決定次第、公表いたします」としている。
迅速な調査と情報公開は重要なことだ。
その一方で、「対象製品の納入先であるお取引先様には、順次お詫びとご説明を進めております」「本件が当社グループの業績に与える影響につきまして、今後開示すべき事項が生じた場合には、速やかに公表いたします」と取引先と株主へのメッセージは出しているものの、水道事業者や水道水の受益者である市民へのメッセージはない。
社会の血液であり、市民生活への影響が大きい水道に携わる企業としての自覚に乏しい。そうしたことが、安易に規格認証外の原料を使用したり、不正な条件で得られた試験結果で認証を取得することに繋がりはしなかったか。水道への信頼が問われている。
ーーーーーーーーーーーー
2022年1月12日 神東塗料
当社製の一部製品に係る不適切行為について
当社で製造する水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料(管用)につきまして、公益社団法人日本水道協会の認証規格(JWWA
K139)及びお取引先様との協定に関し、下記のとおり、当社における不適切行為がありましたので、お知らせいたします。
本件に関する詳細につきましては、現在調査中であり、詳細を確認でき次第、改めて速やかにご報告いたします。
1.不適切行為に係る対象製品(1と2は一部重複)
(1)K139
認証品@
・クボタコートEM#1001NT
・タイセイコート#139
黒・グレー
・クボタコート
EM#1001NT-LO
・ニッチューコート
WL#7000
グレー
・シントーコート
EM#800
グレー
(2)K139
認証品A
・クボタコート
Dip#300(速乾を除く)
・コスモコート#3000
・シントーコート
139
・クボタコート#4100
・ダクタイル管外面補修用塗料
・タイセイコート#139
黒・グレー
・クボタコート
EM#1001NT-LO
・ニッチューコート#7000
グレー
・ニッチューコート
E#7000
グレー
・シントーコート
EM#800
グレー
・シントーコート
139(H)グレー
(3)K139
認証品相当として販売していた非認証品
・非認証品について、該当するお取引先様には個別にご連絡を差し上げております。
当社における社内調査の結果、K139 認証品@について、K139 とは異なる条件で得られた試験結果により水道協会の認証を取得し、同規格認証品としてお取引先様に販売・出荷していた疑いが確認されました。
また、K139 認証品Aについて、K139 に記載されていない原料が使用されている疑いが確認されました。
(2)非認証品
非認証品について、お取引先様との間で、K139 相当品との仕様を協定していたにもかかわらず、上記(1)同様、試験条件及び原料の点で、当該仕様に定める条件を満たさない製品を製造・出荷していた疑いが確認されました。
3.現在までの対応状況
これを受けて、当社は、上記不適切行為の疑いが確認された対象製品についての出荷を停止いたしました。また、水道協会において、上記不適切行為が確認された
K139
認証品について認証マーク等の使用停止を検討中とのことです。
4.今後の対応
上記対象製品の納入先であるお取引先様には、順次お詫びとご説明を進めております。
また、これと同時に、本件の重要性に鑑み、速やかに社外の専門家も交えた特別調査委員会を設置する予定であり、事実関係の解明、原因究明、再発防止策の策定等に全力を挙げて参ります。特別調査委員会の設置については決定次第、公表いたします。
--------
2022年1月14日 特別調査委員会の設置及び当社製の一部製品に係る第三者認証マークの使用停止等について
当社と利害関係を有しない外部専門家1名、当社独立社外取締役1名及び当社独立社外監査役1名(計3名)から構成される特別調査委員会の設置を決定いたしましたので、お知らせいたします。
また、当社は、2022年1月12日付で、公益社団法人日本水道協会より、下記2.の当社製水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料(管用)に係る認証に関し、認証の一時停止及び認証マークの使用禁止の通知を受けるとともに、認証マーク等の使用を停止すること及び認証マーク等を表示している当該認証製品であって、該当する審査基準に適合していないものを出荷しないこと等について請求を受けましたので、お知らせいたします。
2022年1月14日 弊社一部製品の出荷停止について
当社で製造する水道用ダクタイル鋳造管合成樹脂塗料(管用)において、公益社団法人
日本水道協会の「JWWA
規格」及びお取引先様との協定に関し、当社における不適切行為により、下記のとおり、対象製品の出荷を一時停止しました。
1.不適切行為を受けて一時出荷を停止した対象製品
上記 1/12発表の製品