エアセパレートガスの製造業者及び販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
公正取引委員会は,エアセパレートガス(注1)の製造業者及び販売業者に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,次のとおり,同法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして,本日,同法第7条第2項の規定に基づく排除措置命令及び同法第7条の2第1項の規定に基づく課徴金納付命令を行った(違反行為については別添排除措置命令書参照。)。
(注1)
「エアセパレートガス」とは,空気から製造される酸素,窒素及びアルゴンをいう。
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アセチレンや窒素などの産業ガスをめぐり、価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は2010年1月19日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、大陽日酸(東京都品川区)などメーカー十数社の立ち入り検査を始めた。
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1 違反行為者,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者並びに課徴金額
事業者名 | 課徴金額 |
大陽日酸 | 51億4456万円 |
日本エア・リキード | 48億2216万円 |
エア・ウォーター | 36億3911万円 |
岩谷産業 | 4億9902万円 |
合 計 | 141億 485万円 |
日本エア・リキードは,平成19年9月1日に,ジャパン・エア・ガシズを吸収合併
2 違反行為の概要
大陽日酸株式会社,日本エア・リキード株式会社,エア・ウォーター株式会社及び岩谷産業株式会社(以下「岩谷産業」という。)の4社(以下「4社」という。)は,遅くとも平成20年1月23日までに,特定エアセパレートガス(注2)の販売価格について,同年4月1日出荷分から,現行価格より10パーセントを目安に引き上げることを合意することにより,公共の利益に反して,我が国における特定エアセパレートガスの販売分野における競争を実質的に制限していた。
(注2)
「特定エアセパレートガス」とは,エアセパレートガスのうち,タンクローリーによる輸送によって供給するもの(医療に用いられるものとして販売するものを除く。)をいう。
3 排除措置命令の概要
(1) 4社は,それぞれ
ア
前記2の合意が消滅している旨を確認すること
イ
今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定エアセパレートガスの販売価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決める旨
ウ
今後,相互に,又は他の事業者と,特定エアセパレートガスの販売価格の改定に関して情報交換を行わない旨
を,取締役会において決議しなければならない。
(2) 4社は,それぞれ,前記(1)に基づいて採った措置を,自社を除く3社に通知するとともに,自社の取引先である特定エアセパレートガスの製造業者及び販売業者(当該3社を除く。)並びに需要者に周知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(3)
4社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定エアセパレートガスの販売価格を決定してはならない。
(4)
4社は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,特定エアセパレートガスの販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。
(5)
4社は,今後,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。
ア
自社の従業員に対する,自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底(岩谷産業にあっては改定及び周知徹底)
イ
特定エアセパレートガスの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,特定エアセパレートガスの営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
4 課徴金納付命令の概要
(1)
4社は,平成23年8月29日までに,それぞれ前記1の表の「課徴金額」欄記載の額(総額141億485万円)を支払わなければならない。
(2) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがある事業者については,独占禁止法第7条の2第7項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。
ジャパン・エア・ガシズは平成19年8月31日まで,日本エア・リキードは平成19年9月1日から,それぞれ,顧客に対し,特定エアセパレートガスを販売していた。
平成17年秋頃から平成19年秋頃にかけて,原油価格の上昇により特定エアセパレートガスの製造に要する電力費用及び輸送に要する費用が上昇し続けていたことから,ジャパン・エア・ガシズを吸収合併した日本エア・リキードを含む4社は,平成19年10月頃以降,2社間又は3社間で個別に部長級の者らによる面談を実施して特定エアセパレートガスの販売価格等について情報交換を行い,----。
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課徴金としては過去5番目の高額
公取委は昨年1月、4社を立ち入り検査。大陽日酸と岩谷産業は立ち入りを受けた後、公取委に違反内容を自主申告したため、課徴金減免制度で3割免除された。
命令に対し大陽日酸は「真摯(しんし)に受け止め再発防止に努めたい」、残る3社は「内容を精査し、今後の対応を検討したい」としている。
大陽日酸は2011年3月決算で特別損失に引当金5,193百万円を計上している。
岩谷産業は499百万円、エア・ウォーターは3,639百万円を計上。
製造業の大企業の場合の課徴金算定率
原則 | 10% | |
早期解消 | 8% | 調査開始日の1月前の日までに違反行為をやめ,かつ,違反行為に係る実行期間が2年未満である事業者。 ただし,「再度の違反」又は「主導的役割」の適用を受ける事業者である場合には適用されない(第7条の2E)。 |
再度の違反 | 15% | 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(確定)等を受けた事業者(第7条の2F)。 |
主導的役割 | 15% | (第7条の2G)。 |
再度+主導 | 20% | (第7条の2H) |
違反事業者が,同一事件について,罰金の刑に処する確定裁判を受けたときは,罰金額の2分の1に相当する金額が控除される(第7条の2R)。ただし,課徴金額が罰金額の2分の1に相当する金額を超えないとき,又は課徴金額から罰金額の2分の1に相当する金額を控除した後の金額が100万円未満であるときは,課徴金の納付は命ずることができない(第7条の2S)。
道路資材カルテルの疑い 復興特需前に7社など立ち入り
道路の盛り土の材料などに使われる発泡スチロール(EPS)ブロックの販売をめぐり、メーカー各社が価格カルテルを結んで受注調整を繰り返していた疑い があるとして、公正取引委員会は31日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、メーカーなど7社と発泡スチロール土木工法開発機構(東京)の関係先 約40カ所を立ち入り検査した。
EPSブロックは軽量であることから軟弱地盤などでの土木工事の材料に適しているとされ、2007年の新潟県中越沖地震の際には道路復旧工事に用いられ た。東日本大震災にかかわる復旧でも活用されるとみられることから、公取委は、需要が本格化する前にカルテルの摘発に乗り出す必要があると判断した。
立ち入りの対象となった企業は、カネカ(大阪)と子会社のカネカケンテック(東京)、アキレス(同)、ダウ化工(同)、JSP(同)、積水化成品工業(大阪)、太陽工業(同)。いずれも同機構の材料部会に所属している。
カルテル:ガス容器4社 公取委、15億円課徴金命令へ
LPガス容器の販売を巡り価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)で中国工業(広島県呉市)などメーカー4社に計約15億円の課徴金納付命令と再発防止を求める排除措置命令を出す方針を固め、事前通知した。
関係者によると、他に命令を受けるのは▽関東高圧容器製作所(前橋市)▽富士工器(名古屋市)▽萩尾高圧容器(愛媛県新居浜市)。神鋼機器工業 (鳥取県倉吉市)は立ち入り検査前に自主申告して命令を免れた模様だ。各社は06年〜10年7月、LPガス卸売業者に家庭、商業用のガスボンベを販売する 際、協議して価格を引き上げたり、維持した疑いがある。
公取委はLPガス関連機器の販売でもカルテルを結んでいた疑いがあるとして、昨年12月に富士工器や矢崎総業(東京都港区)など4社を立ち入り検査した。
ーーー
2011年1月4日
公正取引委員会、LPガス供給機器メーカー4社に立入り検査 −価格カルテルの疑い −
公正取引委員会は、このほど、LPガス関連機器の販売を巡り価格カルテルを結んだ疑いがあるとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、LPガス供給機器メーカー4社(矢崎総業、桂精機製作所、富士工器、伊藤工器)とその関係先約30ヶ所を立入り検査しました。
同委員会は、昨年7月にLPガス容器を巡る価格カルテルの疑いで、今回の4社を含む容器、供給機器メーカー10社に立入り検査した経緯があり、その際に調整器などの供給機器についても疑惑が出た模様です。
関係者によると、今回の立入り検査は調整器を中心とした容器廻りの供給機器(高・低圧ホース、ガス栓、高圧集合装置、金属フレキシブルホースなど)を販売する際、銅などの原材料価格の上昇に応じて4社が協調して価格引き上げを行っていたというものです。容器メーカーともども結果が注目されます。ーーー
2010年7月22日
LPガス容器でカルテルか 公取委が10社立ち入り検査
家庭用のLPガスを入れる「溶接容器」などの販売を巡り、価格カルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会は21日、業界大手を含む約10社や、業界団体の日本溶接容器工業会(東京)の関係先など約三十数カ所を独占禁止法(不当な取引制限)違反の疑いで立ち入り検査した。
立ち入り検査を受けているのは、中国工業(広島)、関東高圧容器製作所(群馬)、神戸製鋼所の子会社の神鋼機器工業(鳥取)、 富士工器(愛知)、萩尾高圧容器(愛媛)など。関係者によると、各社の担当者らは、遅くとも数年前から、工業会の会合に 合わせて集まり、鋼材の価格上昇などに応じて、協調して値上げするなどのカルテルを結んでいた疑いが持たれている。
溶接容器は、プロパンガスとも呼ばれるLPガスの家庭用のボンベや、コンビニエンスストアや飲食店などでLPガスを貯蔵する 「バルク貯槽」、フォークリフトの燃料に使うガスの容器などの分野がある。年間の市場規模は150億円以上にのぼる。家庭用の ガスボンベの分野が多くを占めるという。
平成23年6月24日 公正取引委員会
LPガス容器の製造業者らに対する排除措置命令,課徴金納付命令等について
公正取引委員会は,LPガス容器の製造業者らに対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,後記第1のとおり,同法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして,本日,同法第7条第2項の規定に基づく排除措置命令及び同法第7条の2第1項の規定に基づく課徴金納付命令を行った(違反行為については別添排除措置命令書参照。)。
また,LPガス容器の製造業者等が構成員となっている社団法人日本溶接容器工業会(以下「工業会」という。)に対し,後記第2のとおり要請を行った。
第1
排除措置命令及び課徴金納付命令について
1
違反行為者,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者並びに課徴金額
番号 事業者名 排除措置命令 課徴金額
1 中國工業 ○ 9億2912万円
2 関東高圧容器製作所 ○ 2億4014万円
3 富士工器 ○ 2億2322万円
4 萩尾高圧容器 ○ 9774万円
5 神鋼機器工業 ― ―
6 神鋼JFE機器 ― ―
合
計 14億9022万円
神鋼JFE機器は,LPガス容器の製造業を営んでいた者であるが,平成22年4月1日に,神鋼機器工業に吸収合併されたことにより消滅した。
工業会への要請について
6社が,工業会の業務委員会等の会合の場を利用して,前記第1の2の合意,当該合意に基づき特定LPガス容器の需要者向け販売価格の改定を行うための実施方針の決定等をしていた事実及び業務委員会の会合の場に出席した工業会の専務理事が,会合の場で決定された当該販売価格の改定内容を工業会の理事会に報告していた事実が認められたため,公正取引委員会は,工業会に対し,今後,工業会の会合の場で,前記第1の2の合意等と同様の行為が行われないよう,再発防止のための措置を講じるよう要請した。
協賛金を強要 山陽マルナカに課徴金2.2億円 改正独禁法で初適用
商品納入業者に対し、従業員を無償で派遣させたなどとして、公正取引委員会は22日、独禁 法違反(優越的地位の乱用)で、スーパー「マルナカ」を経営する「山陽マルナカ」(岡山市南区)に、2億2216万円の課徴金納付と排除措置を命じた。優 越的地位の乱用は、昨年1月施行の改正独禁法で課徴金の対象となり、命令が出たのは今回が初めて。
公取委によると、同社は遅くとも平成 19年1月から、商品陳列などの作業を行わせるため、納入業者約140社から従業員延べ約4200人を無償で派遣させた。ほかに店頭での値引き販売を理由 に支払いを不当に減額したり、主催するイベントの協賛金を強要したりしていたという。
同社は岡山県、大阪府、兵庫県、広島県に計約70店舗を展開。21年度の売上高は約1250億円だった。同社は「厳粛に受け止め、再発防止に努めたい。今後内容を精査し、対応を検討する」としている。
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平成23年6月22日 公正取引委員会
株式会社山陽マルナカに対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
公正取引委員会は,株式会社山陽マルナカ(以下「山陽マルナカ」という。)に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,次のとおり,同法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)(注1)に該当し同法第19条の規定に違反する行為を行っていたとして,本日,同法第20条第2項の規定に基づく排除措置命令及び同法第20条の6の規定に基づく課徴金納付命令を行った(違反行為については別添排除措置命令書参照。)。
(注1) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号)の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法の第14項。
1 違反行為者及び課徴金額
名称 株式会社山陽マルナカ
所在地 岡山市南区平福一丁目305番2号
代表者 代表取締役 中山 明憲
事業の概要
食品,日用雑貨品,衣料品等の小売業
課徴金額 2億2216万円
2 違反行為の概要
山陽マルナカは,遅くとも平成19年1月以降,取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(注2)(以下「特定納入業者」という。)に対して,次の行為を行っていた。
(1)
新規開店(注3),全面改装(注4),棚替え(注5)等に際し,これらを実施する店舗に商品を納入する特定納入業者に対し,当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品について,当該特定納入業者の従業員等が有する技術又は能力を要しない商品の移動,陳列,補充,接客等の作業を行わせるため,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,かつ,派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく,当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた。
(2)
新規開店又は自社が主催する「こども将棋大会」若しくは「レディーステニス大会」と称する催事等の実施に際し,特定納入業者に対し,当該特定納入業者の納入する商品の販売促進効果等の利益がない又は当該利益を超える負担となるにもかかわらず,金銭を提供させていた。
(3)
自社の食品課が取り扱っている商品(以下「食品課商品」という。)のうち,自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて,当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないなどにもかかわらず,当該食品課商品を返品していた。
2009/6/5 独禁法改正案成立
課徴金(違反行為に係る売上額に対する率)は以下の通り。
製造業等 小売業 卸売業 現行 不当な取引制限
(中小企業)10%
(4%)3%
(1.2%)2%
(1%)支配型私的独占 10% 3% 2% 追加 (ア)排除型私的独占 6% 2% 1% (イ) 不当廉売等
(繰り返し)3% 2% 1% (ウ)優越的地位の濫用 1%
デンソーなど7社、公取委が独禁法違反の疑いで立ち入り検査
公正取引委員会は7月20日、デンソーなど7社に対し、自動車用部品の取引に独占禁止法違反の疑いがあるとして立ち入り検査を行った。
デンソー以外に立ち入り検査を受けたのは、三菱電機、日立製作所子会社の日立オートモーティブシステムズ、カルソニックカンセイ、ミツバ(群馬県桐生市)、ティラド(渋谷区)、デンソー子会社のアスモ(静岡県湖西市)。
各社は遅くとも2004年ごろから、ホンダや三菱自動車など自動車メーカーがモデルチェンジする際に実施したワイパー、ラジエーター、スターター、オルタネーターの4品目のコンペで、事前に協議して受注予 定者を決めていた疑いがある。受注を分け合うほか、コストダウンを要求する自動車メーカーに対し、見積もり価格を調整して価格の低落を防ごうとしたとみら れる。4品目の市場規模はそれぞれ年約300億〜400億円。
デンソーが、課徴金減免制度の適用を受けるため違反を自主申告した可能性が高いことが、立ち入りを受けた企業関係者の話で分かった。
米司法当局が独禁法違反容疑で部品メーカー大手、デンソー(愛知県刈谷市)などの現地法人を対象に捜査を開始したことが20日、企業関係者への取材で分かった。欧州連合(EU)の欧州委員会も情報を提供するなど連携している模様で、日米欧の国際的なカルテルに発展する可能性が高まった。
ーーー
自動車メーカーに対する部品販売を巡っては車の配線に使うワイヤハーネスでもメーカーが同様にカルテルを結んでいたなどとして、公取委は、2010年2月に住友電気工業、古河電気工業、矢崎総業などに立入り調査を行い、調査を進めている。
これについては、日本の公取委に加え、自国の市場にも悪影響を与えた疑いがあると判断して、米、英、豪、カナダ、欧州委員会の5つの海外当局が調査に着手しているとされている。
2011年6月、公正取引委員会が独禁法違反(不当な取引制限)で排除措置命令を出して3社に総額120億円超の課徴金を課す方針を固め、事前通知したことが、分かった。
関係者によると、カルテルを結んでいたのは、他に住友電気工業(大阪市)、フジクラ(東京都江東区)、古河電気工業(同千代田区)。公取委は矢崎総業とフジクラに排除措置命令を出し、住友電工を加えた3社に課徴金を課す方針。古河電工は違反を自主申告し、命令や課徴金を免除されたとみられる。
株式会社カネカほか1名による審決取消請求上告事件及び審決取消請求上告受理事件最高裁判所決定について(塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの価格カルテル事件)
株式会社カネカ及び三菱レイヨン株式会社による審決取消請求上告事件及び審決取消請求上告受理事件(平成23年(行ツ)第106号及び第107号,平成23年(行ヒ)第116号及び第117号)について,最高裁判所にて上告を棄却し,上告審として受理しないとの決定がありました(9月30日)。
本件は,公正取引委員会が平成21年11月9日に行った審決(平成16年(判)第3号。以下「本件審決」といいます。)について,株式会社カネカ及び三菱レイヨン株式会社(以下「一審原告ら」といいます。)が,(1)平成11年及び平成12年の販売価格の引上げの合意が成立していたとの認定は,実質的証拠を欠いている,(2)上記合意が存在したとしても,競争の実質的制限があったとは認められない,(3)違反行為の終了時期を平成15年1月1日以降と認定したことは誤りである,(4)違反行為の存在が認められたとしても,既に終了しており,排除措置を命ずる必要性はないなどとして,本件審決の取消しを求めたものです。
東京高等裁判所が,平成22年12月10日,本件審決の認定事実によれば,(1)平成11年の合意及び平成12年の合意が成立したことが認められる,(2)市場におけるシェアの大半を占める原告ら及び株式会社クレハの共同行為により,国内の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの市場における競争の実質的制限がもたらされていたことは明らかである,(3)株式会社クレハの営業譲渡契約の効力発生時期である平成15年1月1日以降は上記合意による相互拘束が事実上消滅するに至ったと認められ,平成12年の合意がなされたからといって,平成11年の合意による相互拘束を事実上消滅させるものとはいえない,(4)一審原告ら又は他社との協調関係が再び形成される可能性があり,本件における違反行為と同様の行為が再び行われるおそれがあると認めざるを得ないから,一審原告らに対しては,排除措置を命じる必要があるとして,一審原告らの請求を棄却したところ,一審原告らが上告提起及び上告受理申立てを行っていたものです。
最高裁判所は,(1)上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する上告事由に該当しない,(2)本件は,民事訴訟法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告を棄却し,上告審として受理しない旨の決定を行いました。
本決定により,東京高等裁判所の上記判決が確定しました。
2008/1/29 MBS価格カルテル問題
公正取引委員会は,出光興産による昭和シェル石油の株式取得及びJXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の株式取得について,出光及びJXHDからそれぞれ独占禁止法の規定に基づく計画届出書の提出を受け,審査を行ってきたところ,当事会社が申し出た問題解消措置を講じることを前提とすれば,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認められたので,出光及びJXHDに対し,排除措置命令を行わない旨の通知を行い,本件審査を終了した。
本件の概要
1 出光統合
出光統合は,出光が,昭和シェルの株式に係る議決権を20%を超えて取得することを計画しているものである。
2 JX統合
JX統合は,JXHDが,東燃ゼネラルの株式に係る議決権を50%を超えて取得することを計画しているものである。
結論
公正取引委員会は,当事会社が当委員会に申し出た問題解消措置を講じることを前提とすれば,出光統合及びJX統合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
公正取引委員会は,当事会社が競合又は取引関係に立つ約45の取引分野について審査を行い,そのうちプロパンガス,ブタンガス,ガソリン,灯油,軽油及びA重油の各元売業については当事会社が当委員会に申し出た問題解消措置を前提とすれば,本件両統合が競争を実質的に制限することとはならないと判断した。上記各元売業に関する審査結果は,後記第
4から第8のとおりである。
上記各元売業以外の取引分野については,いずれも本件両統合により競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
1) 単独行動によって,競争を実質的に制限することとはならないと判断
2)統合
プロパン 一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
問題解消策
出光統合会社 昭和シェルが保有するジクシス株式について,出資比率を20%に引き下げる
会社法上認められる権利を超えた権利を行使しないJX統合会社 東燃ゼネラルが保有するジクシス株式全ての譲渡
いずれも、ジクシスに対する工場生産品の供給を継続する,E設備の賃貸を継続する(or 基地提供を継続する)が、情報遮断措置の実施に係る措置を採る。
ガソリン元売業 一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
【平成26年度におけるガソリン元売業の市場シェア】
市場シェア JX 約35% 東燃ゼネラル 約15% 昭和シェル 約15% 出光 約15% D社 約10% E社 0−5% その他 0−5% 合計 100% 本件両統合により,@競争事業者の数が減少すること,A同質的な商品であり,販売条件について競争する余地が少ないこと,Bコスト構造が類似すること,C業界紙による通知価格の掲載等により,各石油元売会社は適時に他社の通知価格の変動状況等に係る情報を入手できることから,互いの行動を高い確度で予測できるようになると考えられる事情が認められる。
灯油元売業 一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
【平成26年度における灯油元売業の市場シェア】
市場シェア JX 約35% 出光 約20% 昭和シェル 約15% 東燃ゼネラル 約15% F社 約10% その他 約5% 合計 100%
ガソリンと同様の事情が認められる。
軽油元売業 自社以外の競争事業者との協調的行動によって,軽油元売業に関する一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなると考えられる。
【平成26年度における軽油元売業の市場シェア】
市場シェア JX 約35% 出光 約20% 昭和シェル 約15% G社 約10% 東燃ゼネラル 約10% その他 約10% 合計 100% ガソリンと同様の事情が認められる。
A重油元売業 自社以外の競争事業者との協調的行動によって,軽油元売業に関する一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなると考えられる。
【平成26年度におけるA重油元売業の市場シェア】
市場シェア JX 約40% 出光 約25% 昭和シェル 約15% H社 約15% 東燃ゼネラル 約10% その他 0−5% 合計 100%
合わない
ガソリン,灯油,軽油及びA重油についての問題解消策
(1) 輸入促進措置(備蓄義務の肩代わり)
油種ごとに,石油元売会社以外の事業者によって輸入される数量が内需の10%に相当する数量になるまで備蓄義務の肩代わりを行う。(2) 輸入促進措置(不利益取扱いをしないことの確約)
当事会社は,取引先に対して,主燃油の輸入を行ったことを理由として,主燃油の販売取引において不利益を与えないことを当委員会に確約し,その旨周知する。
その他の問題解消措置(競争事業者の競争力維持のための措置)
当委員会が,当事会社に対し,競争事業者とのバーター取引の解消等により,競争事業者からの競争圧力が減少するおそれがある旨の問題点を指摘したところ,競争事業者の競争力を維持するため,当事会社からは現行のバーター取引の維持等に係る措置の申出を受けた。