「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律及び不当景品類及び不当表示防止
法の一部を改正する法律案」の国会提出について,2008/3/11日閣議決定された。

 独占禁止法については,平成17年の一部改正法の附則第13条において,改正法施行後2年以内に,改正法の施行状況,社会経済情勢の変化等を勘案し,課徴金に係る制度の在り方,違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方,審判手続の在り方等について検討を加え,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされた。
 この規定を踏まえ,内閣官房長官の懇談会である「独占禁止法基本問題懇談会」(座長:塩野宏東京大学名誉教授)が,平成17年7月から2年間にわたって開催された。
 同懇談会は,平成19年6月に報告書を取りまとめ,内閣官房長官に提出された。
 公正取引委員会は,同報告書における独占禁止法見直しに関する提言を踏まえつつ,具体的な法改正の方向性について検討するとともに,公正取引委員会として,我が国経済における公正かつ自由な競争の促進を図る観点から必要と考えられる事項についても検討し,関係各方面からの意見も踏まえ,今回の独占禁止法等改正法案を取りまとめたところである。

独占禁止法等の一部改正法案の概要
1 課徴金・排除措置命令関係
(1) 課徴金の適用範囲の拡大
(ア) 排除型私的独占

他の事業者の事業活動を排除することによる私的独占について、公正取引委員会は、当該行為を行った事業者に対し、違反行為に係る売上額に百分の六(小売業百分の二、卸売業百分の一)を乗じた額の課徴金の納付を命じなければならないものとすること。(第七条の二第四項関係)

(イ) 不当廉売,差別対価,共同の取引拒絶,再販売価格の拘束
  (同一の違反類型を繰り返した場合)

正当な理由がないのに、競争者と共同して、ある事業者に対し供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限する等の行為について、公正取引委員会は、当該行為を繰り返した事業者に対し、違反行為に係る売上額に百分の三(小売業百分の二、卸売業百分の一)を乗じた額の課徴金の納付を命じなければならないものとすること。(第二十条の二関係)

不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるものについて、公正取引委員会は、当該行為を繰り返した事業者に対し、違反行為に係る売上額に百分の三(小売業百分の二、卸売業百分の一)を乗じた額の課徴金の納付を命じなければならないものとすること。(第二十条の三関係)

正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるものについて、公正取引委員会は、当該行為を繰り返した事業者に対し、違反行為に係る売上額に百分の三(小売業百分の二、卸売業百分の一)を乗じた額の課徴金の納付を命じなければならないものとすること。(第二十条の四関係)

正当な理由がないのに、自己の供給する商品を購入する相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束する条件をつけて当該商品を供給する等の行為について、公正取引委員会は、当該行為を繰り返した事業者に対し、違反行為に係る売上額に百分の三(小売業百分の二、卸売業百分の一)を乗じた額の課徴金の納付を命じなければならないものとすること。(第二十条の五関係)


(ウ) 優越的地位の濫用

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、継続して取引する相手方に対し当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させる等の行為について、公正取引委員会は、当該行為を継続した事業者に対し、違反行為の相手方との間における取引額に百分の一を乗じた額の課徴金の納付を命じなければならないものとすること。
(第二十条の六関係)
・押し付け販売,経済上の利益を提供させる行為(協賛金・従業員派遣),受領拒否,不当返品等

(エ) 不当表示【景品表示法の改正】

・違反行為の対象商品等につき1億円以上の売上げ
・ただし,一定の注意義務を果たしていた場合は除く。

【算定率】

  製造業等 小売業 卸売業
不当な取引制限  10%  3%  2%
同上(中小企業)   4%  1.2%  1%
支配型私的独占  10%  3%  2%
排除型私的独占  6%  2%  1%
不当廉売等
(繰り返し)
 3%  2%  1%
優越的地位の濫用       1%
不当表示       3%

(2) 主導的役割を果たした事業者に対する課徴金の割増算定率
  (5割増 例:製造業等の大企業10%⇒15%)

○ カルテル・入札談合等が対象
○ 課徴金を5割増(例:大企業・製造業等の場合10%⇒15%)

割増率の対象となる事業者
○ 違反行為をすることを企て,他の事業者に違反行為をすることを要求し,当該違反行為をさせた者
○ 他の事業者の求めに応じて,継続的に他の事業者に対して対価,取引の相手方等を指定した者等

課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が、単独で又は共同して、当該違反行為をすることを企て、かつ、他の事業者に対し当該違反行為をすること若しくはやめないことを要求し、依頼し、又は唆し、当該違反行為をさせ、又はやめさせなかった者等であるときは、納付を命じる課徴金の額の計算に係る売上額に乗ずる率を百分の十五(小売業百分の四・五、卸売業百分の三)等とすること。(第七条の二第八項関係)


(3) 課徴金減免制度の拡充
  (最大3社⇒最大5社,グループ会社による共同申請可)

   一定の要件を満たす場合に、同一企業グループ内の複数の事業者による共同申請を認め、
   すべての共同申請者に同一の順位を割り当てる。

   減免申請者
    調査開始前と開始後で併せて5社まで
     (調査開始後は最大3社)

   減額率

      検査前      検査後
     @100%      30%
     A 50%
     B〜D 30%

自主申告した企業の課徴金を減免する制度(現行)

公取委が立ち入り検査をする前に、
最初に申し出た企業は課徴金を全額免除、
2番目は課徴金額の50%割引(製造業大企業の場合5%に)、
3番目は30%割引(同上 7%)

公取委の立ち入り検査後に申し出た企業は30%割引(同上 7%)
但し、合計3社まで(先着順)

(4) 事業譲渡等が行われた場合の課徴金納付命令等に係る名宛人の取扱い(事業を承継した一定の企業に対しても命令)

(5) 課徴金納付命令等に係る除斥期間の延長 (3年⇒5年)

(参考)国内他法令,米国・EUの競争法の金銭的不利益処分の除斥期間

法令等 国税通則法
(過少申告,無申告,不納付)
金融商品取引法
(インサイダー取引等)
公認会計士法
(※改正法)
(財務書類の虚偽証明)
米国・反トラスト法
(カルテル等)
EU・競争法
(カルテル等)
除斥期間 加算税:5年
重加算税:7年
課徴金:3年 課徴金:7年 刑事罰:5年 制裁金:5年
(最長10年)

 

2 企業結合関係
(1) 株式取得の事前届出制の導入
(2) 届出基準の見直し等 (総資産⇒売上高,届出閾値の簡素化 等)

3 その他
(1) 海外当局との情報交換に関する規定の整備
(情報交換を行う場合の条件等を法定化)
(2) 利害関係人による審判の事件記録の閲覧・謄写規定の整備
(正当な理由がある場合には開示を制限)
(3) 民事救済制度の拡充
(差止訴訟における文書提出命令の特則の導入)
(4) 事業者団体届出制度の廃止
(5) 公正取引委員会職員等の秘密保持義務違反に係る罰則の引上げ
(10万円以下⇒100万円以下)

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成20年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。