過去の国際カルテル

化合繊(レーヨン糸)国際カルテル事件(旭化成事件)
勧告審決 昭和47.12.27 

事実の概要

旭化成工業、クラレおよびユニチカは、それぞれ、レーヨン、ビスコース、フィラメント(以下「レーヨン糸」)の製造業を営む者であり、その輸出量合計は、わが国におけるレーヨン糸の輸出量のほとんどすべてを占めている。

1)3社は、昭和34年5月、イタリア共和国ミラノ市において、西ヨーロッパにおけるレーヨン糸の製造量の大部分を製造している事業者らと会合し、レーヨン糸の輸出について協議した結果、
ア 日本国の地域を3社の伝統市場、西ヨーロッパの11か国の地域を西欧事業者らの伝統市場とし、
  それぞれ相手方の伝統市場に対して輸出しない
イ 3社および西欧事業者らのそれぞれの伝統市場ならびにアメリカ合衆国地域を除く地域を共通市場とし、
  これに対する両者の年間総輸出数量を100として、
  このうち3社は14.5、西欧事業者らは85.5の比率となるよう双方の輸出数量を制限する。
ウ 両者の会合を毎年数回開催し、輸出数量については、共通市場を数地域に区分し、
  前記イの範囲内において、それぞれについて限度量を設定し、
  また、価格については、共通市場の各国の地域別に最低価格を設定する。
ことを決定をした。

2)その後、3社は、昭和40年11月、東京都において西欧事業者らと会合し、前記1)の決定のうちイの項については、双方の輸出数量に限度を設けることに改め、ついで同46年1月28日、京都市東山区所在の都ホテルにおいて西欧事業者らと会合し、輸出限度量について、同年以降共通市場を数地域に区分し、それぞれについて双方の輸出数量を「セールスプランの交換」によって定めることを決定した。

3)3社は、昭和47年3月15日、イタリア共和国ローマ市において西欧事業者らと会合し、前記の各決定に基づき、同年1月から12月までの共通市場の地域別の3社の輸出限度量を同年1月から6月までおよび同年7月から12月までにわけてそれぞれ定め、合計1万6千トンとすることならびに同年1月から12月までの共通市場の各国の地域別の最低販売価格を、運賃保険料込みのドル建て価格にあっては、コーン巻された120デニールのもの1キログラム当り1ドル49.1セントから2ドル12.8セントの範囲内で定める等デニール別、荷姿別、取引条件別に決定した。

4)しかして、3社は、おおむね、前記の各決定を実施している。

【審決の要旨】
(法令の適用)
「3社は、西欧事業者らとの間に3社のレーヨン糸のアメリカ合衆国の地域を除く地域向けの輸出地域、輸出限度量および最低販売価格を決定することにより、公共の利益に反してレーヨン糸の当該地域向けの輸出取引の分野における競争を実質的に制限しているものでおり、これは、不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定を締結しているものであって、私的独占禁止法第6条第1項の規定に違反するものである。」

(主文)
「(3社は、)昭和34年5月、同46年1月28日および同47年3月15日に西ヨーロッパにおけるレーヨン・ビスコース・フィラメントの製造業者らと締結した同フィラメントの輸出に関する国際的協定を破棄しなければならない。
 前記3社は、前項に基づいてとった措置について、すみやかに当委員会に報告しなければならない。」


化合繊(アクリル紡績糸)国際カルテル事件(東洋紡績事件)
勧告審決昭47・12・27

事実の概要
東洋紡績、三菱レイヨン、東邦レーヨン、旭化成工業および東レ(「5社」)は、アクリル紡績糸の製造業を営む者である。
しかして、5社のドイツ国の地域向けのアクリル紡績糸の輸出量の合計は、わが国における当該地域向けの同紡績糸の輸出量のほとんどすべてを占めている。

5社は、かねてからアクリル紡績糸のドイツ国の地域への輸出数量を制限するようドイツ国のアクリル紡績糸の製造業者らによって結成されている西ドイツ梳毛紡協会から要求されていたところ、昭和45年10月13日および同月16日、大阪市北区所在のaホテルにおいて同協会の代表者らと会合し、同協会から、右要求に応じない場合には、ドイツ国の地域へのアクリル紡績糸の輸入量が制限されるよう対策を講ずる旨が表明されたため、昭和45年および同46年の5社のドイツ国の地域向けの輸出限度量をいずれも4100トンとすることならびに同47年については、必要に応じて再度協議することを決定した。

5社は、西ドイツ梳毛紡協会から、前記の決定に基づき、アクリル紡績糸のドイツ国の地域向けの輸出限度量を昭和47年についても前年と同様とするよう要求されたのに対し、同年2月10日付け文書により、これに同意する旨を回答し、同年における輸出限度量を4100トンとすることを決定した。

5社は、昭和47年2月17日、大阪市東区所在の大阪化学繊維会館において会合し、前記の輸出限度量の範囲内で、各社の同年のドイツ国の地域向けのアクリル紡績糸の輸出限度量を決定した。

しかして、5社は、おおむね、前記の各決定を実施している。


【審決の要旨】
(法令の適用)
「5社は、西ドイツ梳毛紡協会との間にドイツ国の地域向けのアクリル紡績糸の輸出限度量を決定することにより、公共の利益に反してアクリル紡績糸の当該地域向けの輸出取引の分野におげる競争を実質的に制限しているものであり、これは不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定を締結しているものであって、私的独占禁止法第6条1項の規定に違反するものである」

(主文)
「(5社は、)昭和45年10月16日および同47年2月にドイツ梳毛紡協会と締結したアクリル紡績糸のドイツ国の地域(東ドイツの地域を除く。以下同じ。)向けの輸出に関する国際的協定を破棄しなければならない。
前記5社は、昭和47年2月17日に行なったアクリル紡績糸のドイツ国の地域向けの輸出限度量に関する決定を破棄しなければならない。
前記5社は、前各項に基づいてとった措置について、すみやかに当委員会に報告しなければならない。」