PPカルテル審決          詳細       
                             
Japan's FTC fears Sumitomo Chem may engage in price fixing again

 

結論 独禁法違反あり(各社は否定しているが)

 住友化学、サンアロマー:価格引き上げ合意の消滅の確認とその周知徹底
 出光、トクヤマ:格別の措置なし(PPの製造販売業を実質的に営んでいない)

これを応諾すれば、その後に課徴金納付命令が出る。
拒否の場合は東京高裁へ

住友化学は、「カルテル行為を行った事実はないので、今回の審決内容は誠に遺憾だ」と不満を示しており、「東京高裁への提訴も検討中」と強い態度に出る意向を示している。

参考  

2003/3/31 2007/6/19
会社名 課徴金 対応 会社名 課徴金
日本ポリケム  8億4517万円 審判請求 日本ポリプロ  2億2087万円
チッソ  4億3513万円 審判請求 チッソ  1億1662万円
三井化学  7億6008万円 応諾   −     −

平成19年8月8日 公平成13年(判)第15号

審 決

 公正取引委員会は上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく平成13年(判)第15号独占禁止法違反審判事件について公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第82条の規定により審判長審判官原啓一郎及び審判官中出孝典から提出された事件記録並びに規則第84条の規定により被審人らから提出された異議の申立書及び規則第86条の規定により被審人らから聴取した陳述に基づいて同審判官らから提出された別紙審決案を調査し次のとおり審決する。

主 文

 被審人住友化学株式会社及び被審人サンアロマー株式会社の2社は平成12年3月6日にこれら2社並びに日本ポリプロ株式会社株式会社グランドポリマーチッソ株式会社出光石油化学株式会社及び被審人株式会社トクヤマの間で行ったポリプロピレンの販売価格の引上げに関する合意が消滅していることを確認しなければならない。
   
 被審人住友化学株式会社及び被審人サンアロマー株式会社はそれぞれ次の事項をポリプロピレンの取引先販売業者及び需要者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法についてはあらかじめ当委員会の承認を受けなければならない。
(1) 前項に基づいて採った措置
(2) 今後それぞれ相互に又は他の事業者と共同してポリプロピレンの販売価格を決定せず各社が自主的に決める旨
   
 被審人住友化学株式会社及び被審人サンアロマー株式会社は今後それぞれ相互に又は他の事業者と共同してポリプロピレンの販売価格を決定せず各社が自主的に決めなければならない。
   
 被審人住友化学株式会社及び被審人サンアロマー株式会社は前3項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告しなければならない。
   
 出光石油化学株式会社及び被審人株式会社トクヤマが日本ポリプロ株式会社株式会社グランドポリマーチッソ株式会社被審人住友化学株式会社及び被審人サンアロマー株式会社と共同して平成12年3月6日に同年4月以降ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げることを決定した行為は独占禁止法第3条の規定に違反するものでありかつ当該行為は既になくなっていると認める。
   
 出光石油化学株式会社及び被審人株式会社トクヤマの前記5の違反行為については被審人出光興産株式会社及び被審人株式会社トクヤマに対し格別の措置を命じない。
  (注 出光、トクヤマは現在は、主体としてはPP事業を行っていない)
   
理 由
 当委員会の認定した事実証拠判断及び法令の適用は(別紙審決案の一部を改めるほかは)いずれも別紙審決案の理由第1ないし第5と同一であるからこれらを引用する。
なお平成12年3月6日の営業部長級の者らによる会合(以下「部長会」という。)における被審人らによる本件ポリプロピレンについて「4月以降ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げること」という合意(以下「本件合意」という。)の有無の点に関し次のとおり付言する。
   
   独占禁止法第3条において禁止されている「不当な取引制限」すなわち「事業者が他の事業者と共同して対価を引き上げる等相互に事業活動を拘束し又は遂行することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(独占禁止法第2条第6項)にいう「共同して」に該当するというためには複数事業者が対価を引き上げるに当たって相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であると解されるがここにいう「意思の連絡」とは複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測しこれと歩調をそろえる意思があることを意味し一方の対価引上げを他方が単に認識認容するのみでは足りないが事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して暗黙のうちに認容することで足りると解されまたその判断に当たっては対価引上げがなされるに至った前後の諸事情を勘案して事業者の認識及び意思がどのようなものであったかを検討し事業者相互間に共同の認識認容があるかどうかを判断すべきである(東芝ケミカル株式会社審決取消請求事件平成7年9月25日東京高等裁判所判決同旨)。
   
   そこで本件につきまず平成12年3月6日(平成12年の月日については以下年の記載を省略する。)の部長会の前後の経緯をみると別紙審決案において認定しているように1月21日の部長会においてナフサ価格の高騰を背景に4月以降のナフサ価格の見通し及びポリプロピレンの値上げの必要性について意見交換を行いポリプロピレンの値上げについて部長会において検討していくこととしこれに基づき2月7日及び2月21日の部長会において当該値上げについて意見交換等が行われた。そして3月6日の部長会後の3月17日の会合においては各社の値上げのための社内手続の進ちょく状況値上げの打出しの内容対外発表時期等につき確認をした上で次回3月27日の会合において各社が責任をもって値上げ交渉を行う需要者に対する分担を決める案を持ち寄ることとし続く3月27日の会合においてその分担が決められその後実際に値上げの交渉が行われさらには実施状況の確認等について会合等が行われたのである。
   
   これらのことからすると値上げの打出しの内容時期等の確認が行われた3月17日の会合までにはポリプロピレンの値上げについて被審人らの間に上記の趣旨における「意思の連絡」が既に存在していたと考えられるところ3月6日の部長会をはさんだ上記の一連の事実経過3月6日の部長会において当該値上げに関して認識が一致したとの趣旨を被審人ら関係7社のうち5社の出席者が審査官に供述している(これらの供述調書が供述者の意思に反して作成されたことを疑わせるに足る事情は認められない。)ことそしてその後本件合意内容に沿う値上げ交渉が実際に行われその実施状況の確認も行われたことなどを総合的にみると3月6日の会合において被審人らが相互にポリプロピレンの需要者向け販売価格の引上げを実施することを認識ないし予測しこれと歩調をそろえる意思を有しもって上記「意思の連絡」に当たる本件合意が成立したと認めることができるというべきである。
   
 よって被審人住友化学株式会社及び同サンアロマー株式会社に対し独占禁止法第54条第2項及び規則第87条第1項の規定により被審人出光興産株式会社及び同株式会社トクヤマに対しては独占禁止法第54条第3項及び規則第87条第1項の規定により主文のとおり審決する。
   
審決案
本件の争点
  @ 7社が3月6日に4月以降PPについて1キログラム当たり10円をめどに値上げする旨の本件合意をしたか否か
A 本件における「一定の取引分野」はどのようなものか
B 措置の必要性の有無

なお、被審人住友化学は、独占禁止法第54条第2項が罪刑法定主義に反し、違憲である旨主張するが、公正取引委員会は違憲立法審査権を有しないので、この主張については判断の限りではない。
   
争点@についての結論
 以上のとおり、3月6日の部長会での本件合意の成立については、その直接証拠の信用性を特段否定すべき事情はなく(前記(1))、同部長会に至る経緯(同(2))及び同部長会後の7社の行動(同(3))も、本件合意の成立とよく整合している。これらのことからすれば、同部長会において、本件合意が成立したことが認められる。
 そして、前記第1の3及び4に掲げた各証拠に照らせば、本件違反行為は、5月30日以降遅くとも10月25日までの間に違反行為者全員についてなくなり、本件合意もそのころ消滅したものと認められる。
   
 被審人サンアロマーは、MSS佐紺は、部長会において、MSSの意思と受け取られるような発言を避けており、3月6日の部長会では沈黙していたから、本件合意に加わる意思がなかったことは明白であったと主張する(前記第3の1(2)ア(ア)k)。
   上記部長会におけるMSS佐紺の言動の詳細は明らかでないが、日本ポリケム宇川は、その供述調書(査第27号証)において、MSS佐紺は、同部長会において終始沈黙していたのではなく、「皆さんのお考えは分かりました。私もここまでナフサが上がれば値上げは止むを得ないと考えております。皆さんのお考えは分かったので値上げするかどうかについては会社に持ち帰って判断します。」と発言したとしている。
 上記発言は、単に個人的見解として賛同の意を述べたにすぎず、MSSとしての判断は留保したものであると解されないでもない。
   しかし、日本ポリケム宇川は、その供述調書(査第27号証)において、MSSは外資系で独占禁止法違反に対する社内ルールが厳しいのでMSS佐紺はいつも会社に持ち帰って検討する旨の発言を付け加えていたと推測しており、MSS佐紺が当該発言を付け加えたとしてもMSSも値上げを打ち出すことを疑っていなかったと述べているところ、これによれば、MSS佐紺の当該発言は、会社の立場をおもんばかっての表面的なものにすぎないと解することができる。そして、同人は、前記第1の2(1)ないし(3)及び(5)のとおり、1月21日から3月6日までの部長会のうち2月21日の部長会を除きすべて出席しており、そこでは、PPの値上げについて各社の意思の合致に向けての話合いがされ、同人はこれについて特段の異論を述べたわけではなく、3月6日の部長会では、7社のうち少なくともMSSを除く6社間ではPPの値上げにつき合意が成立しており、同人も反対意見を述べたわけではないのである。しかも、MSSは、その後、3月27日の部長会に出席して責任分担ユーザーの決定に参加し、4月11日には合意の内容に沿った値上げを打ち出している。これらの行動は、独自に事業活動を行う真の競争者の行動としては到底説明のつかないものであって、MSSも3月6日の部長会において本件合意に参加したものと認められる。
   また、仮に、被審人サンアロマーの主張するとおりMSS佐紺が3月6日の部長会の席上何らの発言をしなかったとしても、上記の経過に照らせば、MSSも3月6日の部長会において本件合意に参加したものと認められる。
   
 また、上記イ及び前記(3)イ(イ)で述べたことに照らせば、MSSの本件合意への参加及び他社との意思連絡を否定する被審人サンアロマーの前記第3の1(3)ア(イ)fの主張も採用できない。
   
争点A(一定の取引分野)について
   審査官の前記第3の2(1)の主張は相当であり、本件においては、PP(ナフサリンク方式により販売価格を設定しているものを除く。)全体で1個の「一定の取引分野」を形成していることは明らかである。
   
争点B(措置の必要性)について
(1) 被審人住友化学及び被審人サンアロマーについて
   前記第1のとおり、本件審判開始決定の時までに本件違反行為が存在し、かつ当該行為は既になくなっていると認められる。そして、本件違反行為が平成12年中に終了した後、現在まで6年以上が経過し、PP製造販売業者の数は7社から4社に減少した。すなわち、まず、被審人トクヤマは、平成13年7月1日、PPの販売業を出光石化に譲渡し、次に、出光石化は、平成16年8月1日、被審人出光興産に吸収合併され、被審人出光興産は、平成17年4月1日、グランドポリマーを吸収合併していた三井化学と共同新設分割によりプライムポリマーを設立し、両社のPPの製造販売業を包括承継させ、被審人トクヤマ及び被審人出光興産は、PPの製造販売業を営んでいない。さらに、チッソも、チッソ石化にPPの販売業を譲渡し、チッソ石化は、平成15年10月1日、吸収分割によりPPの製造販売業を日本ポリケムに承継させた。したがって、現在、国内でPPの製造販売業を営むのは、日本ポリプロ、プライムポリマー、被審人住友化学及び被審人サンアロマーの4社のみである。
   
   被審人らは、本件違反行為に至る過程において、本来他企業には秘匿すべき各社のナフサ価格とPPの価格との具体的関係について平然と情報交換してきたのであって、本件違反行為終了後、PP小委員会及び部長会は開催されなくなったものの、これは公正取引委員会の立入検査を契機とするものであること、PP製造販売業者の数は7社から4社に減少したことにより、PP製造販売業者がPPの値上げ合意へ向けて上記の情報交換をすることは本件当時に比べさらに容易になったこと、前記第1の1(4)のように、ナフサ価格とPPの価格との連動性が比較的単純であることに照らすと、PPの値上げについて共通の認識を形成しやすいといえること及びPPをはじめとするポリオレフィン業界においては価格の引上げを行う不当な取引制限が繰り返し行われてきて、とりわけ被審人住友化学は過去にPPの価格カルテルにつき1回、PEの価格カルテルにつき3回行政処分を受けたこと(争いがない。)からすれば、今後、本件違反行為と同様の違反行為が再び行われるおそれがあると認めることができる。したがって、被審人住友化学及び被審人サンアロマーについては、独占禁止法第54条第2項に規定する「特に必要があると認めるとき」に該当するということができる。
   
(2) 被審人出光興産及び被審人トクヤマについて
 被審人出光興産について、審査官は、同社がプライムポリマーのPP製造販売業を実質的に営んでいると主張するが、同社とプライムポリマーは別法人であって、同社のプライムポリマーに対する出資割合が35パーセントにとどまることにもかんがみると、被審人出光興産がPP製造販売業を実質的に営んでいるということはできない。また、被審人トクヤマは、現在、PPの製造販売業を営んでいない。したがって、被審人出光興産及び被審人トクヤマについては、独占禁止法第54条第2項に規定する「特に必要があると認めるとき」に該当するとはいえないものというべきである。
   
(3)  なお、独占禁止法第54条第2項にいう「特に必要があると認めるとき」に該当するか否かの判断については、公正取引委員会の専門的な裁量に委ねられているものというべきである(最高裁判所平成16年(行ヒ)第208号、平成19年4月19日判決)。
   
   第54条 公正取引委員会は、排除措置命令に係る審判請求があつた場合において必要と認めるときは、当該排除措置命令の全部又は一部の執行を停止することができる。
 2 前項の規定により執行を停止した場合において、当該執行の停止により市場における競争の確保が困難となるおそれがあるときその他必要があると認めるときは、公正取引委員会は、当該執行の停止を取り消すものとする。
   
第5 法令の適用
   以上に判断したとおり、被審人4社及び3社は、共同して、PPの販売価格の引上げを決定することにより、公共の利益に反して、我が国におけるPPの販売分野における競争を実質的に制限していたものであり、これは、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法第3条の規定に違反するものであり、かつ、被審人住友化学及び被審人サンアロマーについては、同法第54条第2項に規定する「特に必要があると認めるとき」に該当するので、被審人住友化学及び被審人サンアロマーに対し、同条同項の規定により、主文第1、2項のとおり審決することが相当であり、また、被審人出光興産及び被審人トクヤマについては、同条同項に規定する「特に必要があると認めるとき」に該当しないので、同条第3項の規定により、主文第3、4項のとおり審決することが相当であると判断する。
   

部長会メンバー出欠

    ポリケム グランド チッソ 出光  住友 MSS トクヤマ
宇川 下津 土田 鈴木 森本 三角 阪本 鈴木 佐紺 横地
1/21 意見交換 ---
2/7   ---
2/21   ---
2/末 宇川訪問                
  阪本訪問            
3/6 合意 ---
3/17 (ポリケム) ---
3/27  送別会 ---
4/11 (天山) ----
4/19   ----

 


Platts 2007/8/13

Japan's FTC fears Sumitomo Chem may engage in price fixing again

Japan's Fair Trade Commission expressed concern that Japan's Sumitomo Chemical might engage in price fixing again since the company had previously been punished for polyolefins engaging in such behavior, the commission said late Friday.


TRIAL BEGAN IN 2001

PP PRICE FIXING SAID EASIER THAN BEFORE