富山和彦 企業再生への国家の関与と競争政策
富山和彦 企業再生への国家の関与と競争政策
再生機構
過剰債務対策
@債務減 裁判所機能 但し、社会的コストが大きい(連帯保証はやめるべし)
ARisk Money 当時はなし、ハゲタカにはアレルギーがあった。
このため、再生機構Due diligence の費用も負担 →カネボウ 粉飾判明
市場経済のゆがみの最小化を図る。
政府保証の借入金(国債なみ低利)で買収
再建後、政府の損害を避けるため、auctionで売り切り
再上場は1件(ミヤノ)のみ (auction併用)
大量の株式販売では安くなり、損失
日本の株式市場ではうまくいかない
市場経済のゆがみ
弱いものを救済すると、負担減で安売り、強いところも影響を受ける。
企業破綻
事業にはよいものも悪いものもあるが、債務は企業にある。
裁判所の決定
破産ならよいが、救済なら弱者が残る。
9割カット、残り1割を20年返済など、異常すぎる。
栃木のホテル
よいものを救済、悪いものはつぶす。
地元:全部救済を要請
経済政策は社会政策とは異なる。ごちゃごちゃにするのはまずい。
社会政策は別のところがやるべし。
JAL 例外 緊急避難
公共性? ANAがあり、同じ条件でやっている。
Systemic risk 存在せず
航空産業は天国が地獄
通常は限界収入があれば企業は存続
航空は燃料代を払えないと飛べず、飛べないと収入がゼロになる。
領空通過も金を払っており、払わないと領空侵犯(撃墜も理論上は可能)
(海外の空港で足止め)米国では運転資金(DIPファイナンス)を確保したうえでChapter 13
労働協約もカットできる
一時は倒産も判断。政権の意向で存続決定。
・人、飛行機、ラインを1/3カット
・年金カット (無茶なシステムで、共稼ぎの場合、月に130万円の人も)
・債務カット(裁判所)
・資金投入 Risk money調達困難退職金は支払う。
最高裁判例批判。
倒産するまで解雇できないと、解雇する時には退職金支払いゼロに。
結局は労働者に不利
米国のGM救済
Systemic risk あり
日本企業も含め、自動車業界全体をなんらかの形で救済
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2012/3/22 日本経済新聞 経済教室
国主導の企業再生 慎重かつ抑制的に判断を
公共性・緊急性が条件 関わるなら、改革徹底的に
富山和彦 経営共創基盤代表取締役
ポイント
・市場機能不全の際は国の関与の許容度高い
・国の関与時は市場プレーヤーとして行動を
・裁判所が行うべきは価格調整とリスク遮断
企業再生に国が深く関与することの是非を巡る議論が続いている。最近では日本航空や米ゼネラル・モーターズ(GM)の一時国有化による再生が注目されたほか、今年2月には公的資金300億円を使って政府も再建を支緩した半導体大手のエルピーダメモリが会社更生法の適用を申請した。少し遡ると、筆者が最高執行責任者(C00)を務めた産業再生機構が扱った41案件やりそな銀行の事例がある。
もとより企業の淘汰は、市場経済の基本機能の一つである。国または国の機関が公的貿金の投入などにより介入することは、生産性の低い企業の退出を通じた市場の素減配分機能をゆがめかねない。競争によるイノベーション(披術革新)促進機能を阻害する危険性もある。本稿では、国の関与、介入の許容要素と留意点について、経済政策と経営実践の観点から整理したい。
まず、深刻な「市場の失敗」や巨大災害などで、市場経済自体が機能不全を起こしている状況で、その機能を代替・修復するために国が企業再生に関与するケースを考える。典型例は金融危機から経済システム全体にシステミックリスクが生じ、リスクマネーの収縮が起きている場合である。こうした状況下では公共機能を担う企業が無秩序な経営破綻に陥ったときに、著しい公共的な不都合が生じることも許容度を高めうる。日航や東電の再生事案では、高い公共性が国の関与を正当化できる要因の一つとなっている。ただ、公共機能を守ること自体は、法的整理、私的整理の両面で破綻型再生法制が整った今日においては、制度の適切な運用と民間のファイナンス(資金供与)で実現できる場合が少なくない。従って国が関わるにしても、その必要性と方法の妥当性について慎重な検討が必要である。
次に産業政策上、顕著に重要な産業に関わる企業の経営危機に際し、技術散逸や国際競争力低下が懸念されるケースを考える。2月に更生法を申請したエルピーダはこの類型に該当する可能性がある。
これも広義の公共的要請といえなくはないが、ライフラインのケースと比べ、その産業や企業が本当に重要か、誰がどんな基準で判断するのか線引きが難しい。加えて産業界では激しい競争のダイナミズムやイノベーションが常に起きている。今後の成長分野ならまだしも、再生にまで至った段階で、個別企業の経営に国が探く関与して特定産業を振興することは容易ではない。むしろ市場の新陳代謝機能をゆがめ、イノベーションを阻害する危険性さえある。
エルピーダヘの3年前の公的資金投入が正当化されるとすれば、リーマン・ショック後の需要とリスクマネーの激しい収縮局面で、市場機能を補完するために必要だったという脈絡においてだろう。
国の関与を是認できる状況においても民業圧迫や競争市場がゆがむリスクに留意し、極力回避する努力は必要だ。
産業再生機構における初期の大型案件である三井鉱山やカネボウでは、機構自らが出資して支配権を握り再生を主導した。しかし金融情勢の改善で民間のリスクマネーの動きが活発化した後半期には、ダイエー、ミサワホーム、大京に対して、機構は民間から出資者が出てこなかった場合のバックストップ(安全装置)または補完的出資者となるにとどめ、債務調整後、直ちに民間からエクイティ(株式)スポンサーを募る方法をとった。また大型案件では、競争相手を含む民間スポンサー候補に対し、機構保有株への公正な入札機会を提供した。
日航の場合、市場の機能不全の問題はあまり大きくなく、全日本空輸との経営力の差が破綻の主因だ。その証拠に全日空は公的支援を受けていない。危機が顕在化した時点で、資金枯渇による全面無期限運航停止まで3ヵ月しかなかった。それまでに5千億円以上の流動性確保と、リストラ資金として3千億円以上のエクイティ性のリスクマネー(出資)確保のめどを立てる必要があった。こうした緊急性と公共性の両面を考慮したうえで、公的資金投入を正当化できる事案である。
その緊急性が減少した時点、具体的には企業再生支援機構の信用補完で会社更生法の申し立てに成功した時点以降の処理方法については、民業圧迫、競争歪曲への配慮という観点から議論の余地があるだろう。全日空との公平性の問題も、この論点と表裏一体である。一方、制度的に地域独占型である東電の事案ではこうした問題への懸念は少ない。
このように、国の関与そのものは慎重かつ抑制的であるべきだが、主な出資者として関わるとなったら、市場プレーヤーとして徹底的にやるべきである。再生という非常時経営の基本は、ガバナンス(株主権)の集中に裏付けされた経営者の強力なリーダーシップだ。出資する以上、しっかり経営権を握って真正面から再生に取り組み、一気呵成に経営改革を完遂して株式を民間に単期売却する必要がある。
そもそも市場機能の代替・修復を主目的とする以上、遠慮は無用だ。リスクを恐れ、中途半端な関与でガバナンスを拡散することは、再生に必要なリストラや経営改革の遅らせ、かえって公的資金の毀損リスクを大きくする。政治家や官僚が、再生企業の経営に対し、個別の政策原理や政治的思惑から介入することも厳に慎むべきだ。マクロ的な制度・政策論は国会ですべきものであり、個別企業の再生問題と混同してはならない。結局再生プロセスをゆがめ、公的貿金も毀損しかねない。
日航の事案では、企業再生機構へのガバナンスの集中(当初は管財人、出資後は100%株主として)と、異業種出身の稲盛和夫前会長のリーダーシップにより、政治的な雑音を完全遮断し、迅速なリストラと経営改革を断行した。東電を巡っても、時代遅れの「国営化」神学論争を展開するよりも、こうした原理原則の貫徹こそが重要だ。
最後に、「裁判所が関与する法約手統きを経れば、国の関与がもたらす弊害が減殺される」という議論を検証する。日航と全日空の問題をみれば分かるように、これは誤りだ。法的整理を申し立てた企業が身軽になって市場に舞い戻ること自体、市場の新陳代謝機能を阻害する側面がある。
市場経済的な観点から積極的に評価できる裁判所の機能があるとすれば、減資や債務調整による企業の価格調整機能とリスク遮断機能だ。市場の買い手からみて、債務や時価評価が重すぎたり、簿外リスク懸念が大きく買収不能であったりする場合に、裁判所の強力な権能により価格調整を進めリスクを遮断すれば、M&Aが可能となる。これにより破綻企業の経営資源は過剰債務のくびきから解放され、再配分や再活用もできる。
表は、筆者が本稿で取り上げた問題点に関して、国が関与した企業再生案件の妥当性を評価したものである。
国が関与した企業再生案件に対する筆者の妥当性評価
評価項目 りそな銀 GM エルピーダ 日航 東電 市場の機能不全への対処 〇 〇 〇 X〜△ △〜〇 公益性の要請 △〜〇 △〜〇 X 〇 〇 競争歪曲への配慮 △ △ △ ? △〜〇 市場プレーヤー的行動の貫徹 〇 〇 △ 〇 ? 〇は妥当、△は線上、Xは不適当
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