2007/6/27 日本経済新聞                        報告書

独禁法改正で懇談会 提言
課徴金の対象行為拡大 「主犯格」は高額に

 独占禁止法の見直しを検討してきた「独禁法基本問題懇談会」(塩崎恭久官房長官の私的懇談会)は26日、違反行為への罰則強化を提言する最終報告書を発表した。課徴金の対象を広げ、悪質行為には重くする。一方で、経済界が強く主張していた審判制度の見直しは退けた。公正取引委員会は来年の通常国会に独禁法改正案を提出する方針だが、経済界との調整は難航しそうだ。

審判制は当面存続 経済界、不満募らす

報告書の骨子と経団連の見解

懇談会の報告書 経団連の見解
主犯格の課徴金を引き上げ、調査協力企業の課徴金を引き下げ おおむね賛成。ただ、法令順守対策を講じている企業の課徴金も引き下げを
課徴金の対象を不当廉売などを理由とする「排除型私的独占」に拡大 課徴金を科すには違反行為とそうでない行為の境界があいまい。
課徴金を科す違反行為の「時効」(3年)を欧米(5-10年)を視野に見直し 「時効」の論議は、前回(05年)改正時に決着済み
現在の公取委の審判制度は当面、維持 反対。訴訟手続きに委ねるべき
課徴金と刑事罰の併科は維持 法人制裁は課徴金に一本化。または、公取委がどちらかを選択する制度に。

独占禁止法基本問題懇談会報告書  平成19年6月26日

             本文  資料集
(概要)

検討の基本的視点
違反行為に対して十分に抑止力のある措置が設けられることが必要。その際に、法執行の実効性確保と適正手続の保障を適切に調和させることが重要。
我が国において参考となると考えられる制度、欧米主要国の制度との比較・検討も有益。
消費者政策と独占禁止政策は相互に密接に関係しており、両政策を一体的に推進するという視点が重要。
   
違反金制度の在り方
違反金と刑事罰の在り方
  法人に対する刑事罰(が存在すること)の有効性を活かしつつ、違反金を設計してこれを機動的に賦課することが、現状においては違反行為に対する抑止の観点からは効果的であり、引き続き、違反金と刑事罰を併存・併科することが適当である。

(注)報告書においては、現行の課徴金制度に縛られず検討を行うため、「違反行為抑止のための行政上の金銭的不利益処分」について、「違反金」という用語を用いている。
   
不当な取引制限、私的独占(支配型)に係る違反金の水準、算定方法等
  違反金は違反抑止のための処分であるから、「違反行為をする動機付けを失わせる」のに十分な水準に設定すべきである。
違反金の算定方法については、現行課徴金と同様に比較的簡明なものとし、関連商品等売上高に所定の算定率を乗じたもの(基礎額)をベースにして、所定の考慮要素を満たす場合に加減算を行う仕組みとすることが適当である。
   
私的独占(排除型)、不公正な取引方法を違反金の対象とするかどうかについての検討
  私的独占(排除型)については、違反金の対象とすることが適当である。
不公正な取引方法については、違反金の対象とすることは不適当であるという立場と、違反金の対象とすることはできないわけではなく、必要なものについては違反金の対象とすべきであるという立場に分かれた。
   
違反金と損害賠償(違約金)等との関係
  違反行為の抑止のためには、抑止につながる様々な法執行手段があることが効果的であり、これらの手段がそれぞれの機能を発揮することが期待される。
個々の措置等はそれぞれ趣旨・目的が異なっており、違反金と民事上の損害賠償金等との調整を制度上図る必要はない。
   
   
審判、行政調査手続等の在り方
審判制度の在り方
  平成17 年改正により導入された不服審査型審判方式は、処分の早期化・審判件数の減少等一定の成果を上げていると考えられることから、当面は、これを維持することが適当である。
しかしながら、行政審判は、行政過程において準司法的手続を採用して被処分者に十分主張・立証の機会を与えることにより適正手続を保障するとともに、紛争の専門的早期的解決を図るものであることから、一定の条件が整った段階で、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当である。
   
審判に対する信頼性・透明性確保
  審判に対する信頼性を一層高める見地から、審判官の構成、審判官作成の審決案の取扱い等に関し所要の措置を講ずることが適当である。
   
審判・事前手続における証拠開示の在り方
  公正取引委員会の審判・事前手続における証拠開示の在り方については、他の類似の諸制度との整合性、手続の迅速性の確保の必要性に鑑み、現行の制度・運用を維持することが適当である。
   
行政調査(審査)手続の在り方
  行政調査(審査)手続の在り方に関しては、基本的には現行制度を維持するが、事業者の手続上の保護にも配慮した運用がなされるべきである。
   
警告・公表の在り方
  警告・公表は、違反行為の抑止の観点から、今後とも維持することが適当と考えられるが、対象となる事業者の懸念を解消するため、独占禁止法制上、警告の主体、要件、形式、意見聴取等に関する規定を整備し、警告・公表の適正化を図ることが適当である。

 


日本経済新聞 2008/1/25

談合やカルテル 公取委、不服審判を廃止 2年後メド 企業、直接裁判所に

 公正取引委員会は、独占禁止法違反の行政処分の是非を公取委自らが判断する審判制度を大幅に見直す方針を固めた。談合やカルテルについては、不服審判制を廃止し、企業が直接裁判所に申し立てる制度にする。企業合併審査や不当廉売などについては、公取委が企業の主張を聞いてから処分内容を判断する「事前審判制度」に改める。審判制の撤廃を求める経済界などの意見を取り入れ、従来の方針を転換する。