産廃金属購入談合で排除命令
2008/10/17 公正取引委員会
地方公共団体が売却する溶融メタル等の入札等参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
公正取引委員会は、地方公共団体が売却する溶融メタル等(注1)の入札等参加業者に対し、独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ、同法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして、本日、同法第7条第2項の規定に基づく排除措置命令及び同法第7条の2第1項の規定に基づく課徴金納付命令を次のとおり行った(違反行為については別添排除措置命令書参照。)。
(注1) 廃棄物処理施設において発生する金属混合物のうち、当該施設の溶融炉(焼却灰、飛灰等を溶融する施設をいい、廃棄物を直接溶融するガス化溶融炉を含む。)の排出口から常時排出される「溶融メタル」と称されるもの、当該施設の溶融炉を傾けて取り出される「傾動メタル」と称されるもの及び当該施設の溶融炉の底に溜まり固まったものを切り出して取り出される「炉底メタル」と称されるものであって、銅及び金、銀等の貴金属の製錬用原料として用いられるものをいう。
1
違反事業者数、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者数並びに課徴金額(対象事業者名、各事業者の課徴金額等については別表のとおり。)
違反事業者数 6社
排除措置命令対象事業者数 3社
課徴金納付命令対象事業者数 2社
課徴金額 724万円
2
違反行為の概要 三菱マテリアル株式会社(以下「三菱マテリアル」という。)、マテリアルエコリファイン株式会社(以下「マテリアルエコリファイン」という。)、日鉱環境株式会社(以下「日鉱環境」という。)、エコシステムジャパン株式会社(以下「エコシステムジャパン」という。)、東京商事株式会社(以下「東京商事」という。)及びDOWAホールディングス株式会社(以下「DOWAホールディングス」という。)の6社は、三菱マテリアルの提案等に基づき、平成16年3月下旬以降(注2)、地方公共団体が一般競争入札、指名競争入札、見積り合わせによる随意契約又は特命随意契約(以下「競争入札又は随意契約」という。)の方法により売却する溶融メタル等(日立市が設置する日立市清掃センター及び香川県が設置する香川県直島環境センター中間処理施設において発生するものを除く。以下「特定溶融メタル等」という。)について、購入価格の上昇を防止するため |
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ア | 発生元(注3)において発生する特定溶融メタル等の売却が見込まれた段階又は入札の指名、見積りの引き合い等が行われた段階において | |
(ア) | 当該発生元において発生した特定溶融メタル等を購入した実績のある者がいる場合は、当該実績を勘案して、話合いにより当該発生元において発生する特定溶融メタル等を購入すべき者(以下「購入予定者」という。)を決定する | |
(イ) | 当該発生元において発生した特定溶融メタル等を購入した実績のある者がいない場合は、当該発生元において発生する特定溶融メタル等を売却する地方公共団体への営業活動の実績等を勘案して、話合いにより購入予定者を決定する | |
イ | (ア) | 購入予定者以外の者は、当該特定溶融メタル等を売却する地方公共団体に対する営業活動を自粛し、指名又は見積りの引き合いを受けないようにすること等により、購入予定者が購入できるように協力する |
(イ) | 購入予定者以外の者が、当該特定溶融メタル等を売却するために実施される一般競争入札、指名競争入札又は見積り合わせに参加する場合には、購入すべき価格は、購入予定者が定め、購入予定者以外の者は、購入予定者がその定めた価格で購入できるように協力する | |
旨の合意の下に、日鉱環境と東京商事(平成16年4月1日以降にあってはエコシステムジャパン)又はDOWAホールディングスとの連絡調整においては三菱マテリアル及びマテリアルエコリファインが仲介して、購入予定者を決定し、購入予定者が購入できるようにすることにより、公共の利益に反して、地方公共団体が競争入札又は随意契約の方法により売却する溶融メタル等の購入分野における競争を実質的に制限していた。 | ||
(注2) | 東京商事及びDOWAホールディングスにあっては平成16年3月31日までの間、エコシステムジャパンにあっては平成16年4月1日以降の行為である。 | |
(注3) | 溶融メタル等が取り出される溶融炉が設置されている廃棄物処理施設をいう。 | |
3 排除措置命令の概要 | ||
(1) | 三菱マテリアル、マテリアルエコリファイン及び日鉱環境の3社(以下「3社」という。)は、前記2の行為を取りやめている旨を確認すること及び今後、共同して、特定溶融メタル等について、購入予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に購入活動を行う旨を、それぞれ、取締役会において決議しなければならない。 | |
(2) | 3社は、それぞれ、前記(1)に基づいて採った措置を、自社を除く2社及び特定溶融メタル等を売却する地方公共団体に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。 | |
(3) | 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定溶融メタル等について、購入予定者を決定してはならない。 | |
(4) | 3社は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。 | |
ア | 特定溶融メタル等の購入に係る競争入札又は随意契約に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の見直し | |
イ | 前記アの見直しの結果を踏まえた特定溶融メタル等の購入に係る競争入札又は随意契約に関する独占禁止法の遵守についての、特定溶融メタル等の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査 | |
4 課徴金納付命令の概要
三菱マテリアル及びマテリアルエコリファインは、平成21年1月19日までに、三菱マテリアルについては513万円、マテリアルエコリファインについては211万円(総額724万円)を支払わなければならない。
別 表
事業者名 | 排除措置 命令 |
課徴金 納付命令 |
課徴金額 (万円) |
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1 | 三菱マテリアル | ○ | ○ | 513 | |
2 | マテリアルエコリファイン | ○ | ○ | 211 | 三菱マテリアル子会社 |
3 | 日鉱環境 | ○ | − | − | 日鉱金属子会社 |
4 | エコシステムジャパン | − | − | − | DOWA子会社 旧称テクノクリーン |
5 | 東京商事 | − | − | − | DOWA子会社 2004/4にテクノクリーン対し、同事業を譲渡、その後解散 |
6 | DOWAホールディングス | − | − | − | 2006/10、同和鑛業から改称。 DOWAエコシステム、DOWAメタルマインが事業継承 (それまでは同和が東京商事に本件で指示) |
合計 | 3社 | 2社 | 724 |
自社又は自社の子会社等が溶融メタル等を製錬する施設を有する者は,おおむね三菱マテリアル,マテリアルエコリファイン,日鉱環境,エコシステムジャパン及び東京商事に限られていた。
談合情報を外部から受けた三菱マテリアルが2007年7月に各社に通告し、談合は取り止められた。
違反期間内に行なわれた入札など175件(売却額計575百万円)のうち、162件で談合があったと認定、うち126件で(同404百万円)で実際に受注していた。
4,5,6の3社は談合への関与を認定されたが、違反を自主的に申告するなどしたため処分を免れた。
購入カルテルの課徴金について
購入カルテルについては,独占禁止法第7条の2第1項において,購入額を算定の基礎として課徴金の納付を命じることとされている。
なお,当該規定は平成17年改正により導入された。
過去の購入カルテル事件(1977年の課徴金制度導入以降)
審決 1992/6/9
四国食肉流通協議会に対する件
会員の肉豚の購入価格の取決めの際に用いる豚枝肉の建値を決定していた。
(課徴金は課されていない。)
審決 1983/3/11
旭硝子鰍ルか3 名に対する件
輸入ソーダ灰の輸入数量,引取比率及び輸入経路を決定していた。
(課徴金は課されていない。)