大田弘子 経済財政諮問会議の戦い
はじめに
第1章 経済財政諮問会議の登場
様変わりした政策形成の現場
改革実現のチャンス到来か/明確になったメッセージ/政策形成の現場が変わつた/
霞ケ関内部の調整方法を変えた/成果重視型の会議運営/首相のリーダーシップの発揮
経済財政諮問会議とは
官邸主導をめざした橋本行革/経済財政諮問会議の設置をめぐる攻防/経済財政諮問会議の開催風景/
経済財政諮問会議の事務局体制/内閣官房と内閣府の綱引き
本書のねらい
挑戦の連続だった5年間の記録/本書の構成
第2章 バブル崩壊後の負の遺産からの脱却
遅すぎた政策転換
大型の景気対策と財政収支の悪化/「改革なくして成長なし」への転換
「集中調整期間」の取組み
日本経済の再生シナリオと"痛み"/世界同時不況のリスクのなかで/"ナロー・パス"を行く
民需主導の景気回復の実現
息の長い景気回復局面に/デフレ克服に向けて/人口滅少社会への突入
第3章 “骨太方針”がつくってきた歩み
諮問会議の中核となる骨太方針
なぜ"骨太"方針か/骨太方針ができるまでの流れ/むずかしさを増す与党との調整
骨太第一弾(骨太2001)
全面にあふれる改革メッセージ/医療サービス効率化プログラムの提言
骨太方針2002
本格的に登場した税制改革/「三位一体改革」という言葉のはじまり/経済活性化のためのさまざまな施策
骨太方針2003
"遅々として進む"規制改革/数値目標がもたらすハードルの高さ
骨太方針2004
集中調整期間から重点強化期間へ/諮問会議における郵政民営化の議論
骨太方針2005
「分かれ道」のこの2年/小さくて効率的な政府のための取組み
わかりやすい骨太方針のために
わかりやすくするための工夫/政策であるがゆえのわかりにくさ
第4章 予算改革をめぐる戦い
アンブレラとイニシアティブ
骨太後も続く予算編成プロセスの改革/意欲的な閣僚たちの議論
骨太方針よりむずかしかった『改革と展望』の策定
計画かビジョンか/プライマリー収支黒字化の目標設定/中期的な予算管理の重要性
『予算の全体像』をめぐる財務省との綱引き
骨太方針と概算要求基準をつなぐ『予算の全体像』/財務省との綱引き
予算のメリハリをいかにつけるか
予算の重点化への試行錯誤/じっくり育てたい「政策群」
予算制度改革は政府の改草でもある
成果主義型の予算をめざして/予算制度改革の第一歩としてのモデル事業/予算制度改革なくして財政再建なし
第5章 諮問会議による政策形成ブロセスの変化
"見える"ようになった政策形成プロセス
プロセス変革が重要な意味をもった小泉改革/オープンになった政府部内の意見対立/
閉鎖的な政策決定システムの崩れ
小泉改革は、数値目標改革
スピード感が出てきた政策形成/工程のない政策は政策ではない/数値目標は数字合わせではない/
浸透させたいPDCAサイクル
第6章 政策の現場からT 〜負担の限度を重視すべき社会保障制度改革〜
年金制度改革をめぐる攻防
給付重視か、負担重視か/前哨戦
骨太2003まで/「検討の場」の設置/
坂口試案と衆議院選挙の各党マニフェスト/最終保険料率をめぐる本格的な対立/
与党に移った議論の舞台/議論を振り返って
医療費の伸び率抑制をめぐる攻防
一体的に改革すべき社会保障制度/経済規模に連動した指標の必要性/厚生労働省とのかみあわない議論/
高齢化修正GDPの提示/骨太方針でかろうじて生き残った伸び率管理指標/『医療制度改革大綱』での決着/
議論を振り返って
第7章 政策の現場からU 〜法人税率引き下げをめぐる攻防〜
「活力」重視の税制改革に向けて
経済成長のための税制改革/税制改革をめぐる三つの対立軸
諮問会議と政府税調の綱引き
スタート当初から縄張り争い/役割分担をめぐる緊張関係
改革還元型の減税をめぐって
税は税、歳出は歳出/突如短くなった民間議員ぺーパー/『内閣総理大臣指示』と骨太2002/
多年度税収中立型が優勢に
法人税率引き下げか、政策減税か
“志"のある税制改革とは/「実効税率の引き下げ」が意味するところ/1兆円を超える規模の滅税を首相が指示/
『税制改革の全体像』とりまとめ
2003年度税制改正の決着
自民党税調に移った議論の舞台/減税規模をめぐって/2003年度税制改正の決着/議論を振り返って/
諮問会議における税制改革の議論の継続を
第8章 政策の現場からV 〜波乱の三位一体改革〜
三位一体改革のむずかしさ
地方「自治」になっていない/三位一体改革のむずかしさ
設定された改革のゴール
三位一体改革のはじまり/どこが改革のたたき台をつくるのか/数値目標の提示に向けて/
混乱の地方分権改革推進会議/三位一体改革の本的スタート
三位一体改革の大騒動
焦点となった義務教育負担金/補助金1兆円削減の大騒動/税源移譲3兆円の大騒動/
地方提案を受けての「全体像」策定/2005年の攻防と三位一体改革の決着
真の地方分権に向けて残された課題
不十分だった地方交付税の改革/議論を振り返って
第9章 政策の現場からW 〜「小さな政府」をめぐって〜
潜在的国民負担率をめぐる攻防
政府の規模をあらわす指標/その目途を50%程度としつつ……/将来の負担減より現在の歳出確保
歳出・歳入一体改革のはじまり
プライマリー収支黒字化への道筋/歳出削減と増税の組合せ/骨太2006に向けて
「小さな政府」はなぜ必要か
「小さな政府」の2つの合意/欠如する世代間公平への視点
第10章 “民間人”が政策に関与する意味
民間議員ぺ-パーの作成現場
民間議員室の風景と特命チーム/民間議員ぺーパーの作成/8分の4の重み
議論の牽引役をつとめた民間議員
民間人が土俵を設定するということ/民間議員への風圧
民間から役所に入ることの意味
任期付任用の試み/民間登用が生きる体制づくり/公務員採用の開かれたシステムを
第11章 諮問会講のこれから
改草を進める「仕掛け」としての諮問会議
仕掛けを構成する3つの要素
諮問会議が実現できなかった課題
予算編成とマクロ経済の整合性/遅れているわが国の対外経済戦略/FTAの飛躍的推進に向けて
官邸主導のあるべき姿に向けて
内閣と与党のねじれ/事前承認のプロセス/本来の官邸王導のもとでの諮問会議/まだ続く諮問会議の戦い