2011年11月14日 Chemnet Tokyo
東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故
東ソーは14日早朝、南陽事業所(山口県周南市)構内にある第二塩ビモノマー(VCM)プラントで13日午後3時24分ごろ火災事故が起きたたと発生経緯、被害状況などを報道各社あてに電子メールで発表した。
同日午前9時から東京・港区の本社で正式記者会見を行う。
発表によると、13日午後7時現在で判明している事故内容は以下の通り。
火災事故があったのは、11月13日15時24分ごろで、南陽事業所第二塩ビモノマー製造設備で爆発・火災が発生した。(19時現在消火活動中)
爆発時に塩化水素ガスが放出されたと考えられるが、19時現在、同プラント周辺の検知濃度は低く、恕限量(8時間の軽作業をしても健康に影響を与えない最大限)の10分の1以下、同事業所と近隣境界付近では同ガスを感知していない。
事故後、同社従業員1人が行方不明となっている。
物的被害は確認中。
念のため、塩化水素ガスの拡散に備え、周南市、下松市の住民には、部屋の窓を閉めて屋内に待機するよう呼びかけている。
製品供給への影響については現在確認中である。
なお、同社はわが国最大のVCMメーカーで、2010年12月末現在の生産能力は四日市(三重県)と南陽両工場を合わせて年産145万4000トン(経産省化学課踏査)と、国内全生産能力(351万1500トン)の4割以上を占める。
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東ソーは14日朝、南陽事業所で事故発生以来連絡が取れなくなっていた同社塩ビ製造部塩ビモノマー課第2係長・中村雅典氏の死亡を確認したと発表した。
中村氏は52歳。VCMプラントの実質的な運転管理責任者で、事故のあった13日は日曜日でもあり非番だった。だが、EDCプラントの停止を知り現場に駆け付けたらしい。
同工場ではVCMプラントは通常5人シフト(単位)で運転しているが、中村氏はこのシフトにも入っていなかった。
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東ソーの宇田川憲一社長は14日朝の記者会見で、南陽事業所の事故について「人命につながる大きな事故を起こしてしまい大変申し訳ない。周辺住民や地元関係者にもご迷惑をおかけした。今後は保安対策について、組織面・ハード面・教育面など、あらゆる面から見直しを行い、再発防止に全力をあげたい」と謝罪した。今後の塩ビ業界への影響については「やはり大きいと思う」と表情を曇らせた。
江守新八郎常務(経営企画・広報室担当)、鯉江泰行常務(機能商品・環境保安担当)、重村伸顕生産技術部長の3氏が同席。
事故は13日午後3時24分ごろ、同事業所構内の第2塩ビモノマー装置(年産能力55万トン)で発生した。2度の爆発のあと火災が起こり、翌14日朝10時現在、まだ鎮火していない。「無理な消火活動はかえって危険なため現場では状況を見守っている」状態という。
事故原因はまだ分かっていない。同工場では13日の朝、EDCプラント不具合が生じ点検中だった。EDCからVCMを生成する工程(ストラクチャー)に異常が生じ運転が自動停止した。だが、事故のあった第2VCM設備からは100メートル以上も離れており、両設備間にどのような関係があったのか、あるいは別の原因によるものかなどの詳細は現場に立ち入れないため不明だ。
同所によると、13日朝、プラントに不具合が見つかり、稼働を停止。中村さんら10人が午前6時ごろから、不具合箇所から約100メートルの場所で、可燃性の塩ビモノマーなどを貯蔵タンクに一時抜き出す移液作業をしていたという。プラント内の圧力が上がり、塩ビモノマーが外部に出て、何らかの原因で着火し爆発したとみられる。
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塩ビモノマーを精製する工程に直径10メートルの空洞ができており、ここで爆発が起きたとみている。
東ソーは作業中に塩ビモノマーの圧力が上昇し、ガス状の塩ビモノマーが漏れ、静電気など何らかの原因で引火、爆発したのではないかとみている。
東ソーは、わが国最大のVCMメーカーで、南陽に3プラントと四日市に工場を持つ。
生産能力は南陽が1号機 25万トン、2号機 55万トン、3号機
40万トンの計120万トン、四日市には25万4000トンあり、合わせて年産145万4000トンとなる。このうち現在、南陽の3プラントが操業停止中である。
塩ビ樹脂は、子会社の大洋塩ビが四日市、千葉、大阪の3工場に合計55万8000トン設備を持ち稼動中。
四日市は同工場内のVCMプラントからパイプで引き取っているが、千葉と大阪は南陽工場からタンカーで運んでいる。また、南陽地区では徳山積水(年産11万3000トン)にVCMをパイプ供給している。
東ソーは、残りの100万トン近いVCMを中国をはじめ東南アジア各国に輸出する世界有数の輸出メーカーで、独自の“ビニル・イソシアネートチェーン”事業を展開中だ。
国内では塩ビ樹脂の震災復興需要がこれから本格化する。アジア市場の需要は依然として旺盛だ。こうした矢先だけに南陽のVCM設備停止が長期化すれば、内外塩ビ市場への影響は必至といえそうだ。
なお、東ソー南陽事業所内は、同社の主力工場の一つ。VCMのほか電解設備、か性ソーダ、ポリエチレン、クロロプレンゴム、エチレンアミン、ゼオライト、ジルコニアなどの生産設備が並ぶが、現在のところ稼働設備は発電所、電解、アミン類など東側に寄った一部プラントに限られているという。