資料-7  海外進出                           目次へ

7 - 1   イラン石油化学 
       
事業主体   IJPC (イラン・ジャパン石油化学)
出資者   ICDC (イラン化学開発)    50%
NPC (イラン国営石油化学) 50%
立地         バンダルシャプール:Bandar Shahpur(現 バンダル・イマム・ホメイニ:Bandar Imam Khomeini)
     
   
    地図ソース NIPC Homepage  
    
     
事業内容                            
     随伴ガス、ナフサはイラン国営石油会社が供給(ラフィネートは返還)
 工業塩は自製 (サイトから10kmのところに塩田をつくり、天日製塩法で海水から製塩)
 電気は自家発電 255千kw
     当初案ではスチレンモノマー 100(バジャー技術)、キュメン 150(三井石油化学技術)があったが、
 計画見直しで中止、SBR用SMは購入
     
   
IJPC   Bandar Imam Petrochemical Co 現状
 
     
所要資金   当初案 1500億円(4億ドル:当時のレートは360円/$)
 資本金1億ドルとし、3億ドルを日本側で調達
設立時は2840億円にアップ
     
* ICDC (イラン化学開発)出資比率
   

:

1971
設立時

1973年

1976年

1979/10
   *

1980/8

三井物産

49%

45%

45%

60%

48.72%

東洋曹達

31%

30%

15%

15%

12.18%

三井東圧化学

15%

15%

22%

15%

12.18%

三井石油化学

 5%

5%

13%

5%

4.06%

日本合成ゴム

 5%

 5%

5%

4.06%

海外経済協力基金

14.38%

民間100社

4.42%

      *日本合成ゴムは別途イラン側の要請で伊藤忠と組んで合成ゴム計画を検討していた。
     *東洋曹達は途中でナショナルプロジェクト化を主張したが、三井物産は拒否し、東曹は出資比率減
      *1979/10 融資負担率として決定
   1980/8時点での基金と民間分を除く5社の出資比率はこれに合わせた。
      *1979/10 日本政府が閣議で政府出資(出資枠200億円)を決定
    1980年、二度にわたり海外経済協力基金から計54億円の出資、その後の分は中止
     
経緯:
  1968/11   イラン石油化学公社総裁が三井物産に、同国の油田廃ガス有効利用につき協力を要請 
 (ロレスタンの油田の採掘権を与えることの交換条件)
 当初の日本側計画はエチレン40万トン生産、うち30万トンを日本に持ち込み
  1970/10   日本、イラン双方で覚書を交換
  1971/2   フィージビリティ・スタディ開始
  1971/4   イラン側、石化プロジェクトをロレスタン石油鉱区入札の付帯条件に→落札
   
 
  ロレスタン石油鉱区
           
    1971/9 投資会社イラン石油叶ン立
      石油開発公団   75.0%        
      帝人    6.7%(石油開発公団の呼びかけに応じ獲得に乗り出す)
      北スマトラ石油    6.7%(探鉱開発技術の要件を満たすため帝人が提携)
      三井物産    5.0%(極東石油親会社:原油販売先の要件を満たすため帝人が参加を要請)
      三菱商事    1.6%(当初石油開発公団と合同調査するが「リターンが少ない」として断念)
      その他    5.0%
           
    1972/3 Iran-Japan Petroleum Co. 設立
  イラン国営石油会社/イラン石油/モービル
   *イラン側要請で日本の権益の1/3をモービルに譲渡

 *下の地図の Khoramabad 付近がロレスタン鉱区の場所

 9本の試掘が失敗
  →モービルが開発断念提案
 1977/12 鉱区返上 

       
  1971/10   合弁事業基本契約書調印
  1971/12   日本側がイラン化学開発(ICDC)を設立
  1973/4   イラン・ジャパン石油化学(IJPC)設立
       
  1973/10   中東戦争勃発、第一次石油ショック
  1974   石油ショックで建設費暴騰
 1974年初めの試算 2,900億円
 1974/10試算     7,400億円
  1975   ガス収集・輸送(1,400億円)をイラン側事業とし、残りを10%カットし総所要資金を5500億円と想定
 日本側3000億円、イラン側2500億円調達(うち資本金 各500億円) 
 保証は2250億円ずつ
 所要資金が増えれば同額になるまでイラン側増額
       *原料価格問題
  当初の取り決めは随伴ガス(井戸元)0.02US$/1,000SCF (日量 2億SCF前提)
  ガス処理とパイプラインがイラン側建設となり、価格決定が必要となったが、最後まで決まらず。
  1975  
建設方式(Japanese Way)確認(建設費節減)
 生産品目ごとに工場の建設監督をメーカー4社が分担、     
 工場ごとに選ばれたコントラクターと密接に連絡
   
 
担当メーカー プラント コントラクター
三井東圧 オレフィン、芳香族 TEC
LPG 千代田化工
PP TEC
用役設備 TEC
東洋曹達 クロルアルカリ 日立造船
電解槽 三井造船
EDC,VCM 日立造船
LDPE 三井造船
三井石油化学 HDPE 三井造船
OX/PX 千代田化工
日本合成ゴム ブタジェン 千代田化工
SBR TEC
三井東圧/
三井石油化学
共通設備 千代田化工
   
  1976   日本側に資本撤退論
 東洋曹達は途中でナショナルプロジェクト化を主張したが、三井物産は拒否し、東曹は出資比率減 
  1978/12   建設工事が85%完成
     
 
写真 「IJPCプロジェクト史 −日本・イラン石油化学合弁事業の記録ー」から
       
  1979/1   イラン革命勃発
  1979/3   日本人総引き揚げ、建設工事を休止
      ICDC、政府に支援要請
  1979/10   日本政府が閣議で政府出資(出資枠200億円)を決定
  第二次オイルショックで政府は産油国イランとの友好関係を勘案し、ナショナルプロジェクト化
  1980/3 海外経済協力基金 第1回分出資払込 28億円
  1979/11   IJPC取締役会で工事再開決定
      テヘランで米大使館人質事件
  1980/3   総事業費を7300億円に増額決定
  1980/4    米国がイランと断交
  1980/7   建設関係者がイランに再入国
  1980/8   海外経済協力基金 第2回出資払込 26億円、
民間100社 17億円出資
  化学会社出資
   電気化学、ダイセル(以上 各8,100千円)
   水島エチレン、信越化学、東亞合成、協和発酵、鐘淵化学、新大協和石油化学、
   三菱油化、住友化学(以上 各5,400千円)
   
  出資額と出資比率(これが最終となった)
 
  出資額 出資比率 5社比率

三井物産

183億円

48.72%

60%

海外経済協力基金

54億円

14.38%

東洋曹達

46億円

12.18%

15%

三井東圧

46億円

12.18%

15%

三井石油化学

15億円

4.06%

5%

日本合成ゴム

15億円

4.06%

5%

民間100社

17億円

4.42%

合計

376億円

100.00%

100%

       
  1980/9   イラン・イラク戦争勃発、工事現場が被爆
 
海外経済協力基金 第3回出資払込 見送り
  1980/11   日本側関係者再び引き揚げ、工事が中断
  1981/4   輸銀が金利棚上げ要請を拒否
ICDC取締役会で送金中止決定
  1981/4 日本側送金停止時の資金状況(億円)  その後の金利多額
 

:

:

 革命前

         革命後

予算  

実行  

追加予算

    最終予算

実行  

実行合計

予算   日本側
リスク
イラン側
リスク

資本金

日本側

500

500

500

1,000

1,000

:

222

722

イラン側

500

500

500

1,000

:

1,000

278

778

借入金

円借款

288

288

0

288

:

288

0

288

Direct Loan

600

589

0

600

:

600

0

589

延払い

362

362

0

362

:

362

0

362

ICDC Loan

1,250

1,250

800

2,050

1,650

400

0

1,250

(日本側計)

(2,500)

(2,489)

(800)

(3,300)

:

:

( 0)

(2,489)

Iraninan Loan

2,000

2,000

0

2,000

1,000

1,000

0

2,000

借入金計

4,500

4,489

800

5,300

:

:

0

4,489

合計

5,500

5,489

1,800

7,300

3,650

3,650

500

5,989

     
  *
  貸手 借手 利率 返済
円借款 輸銀 イラン大蔵省 4% 5年据置 15年30回均等返済
ダイレクトローン 輸銀市銀協調団 NPC 7.75% 5年据置  6年12回均等返済
ICDCローン 輸銀市銀協調団
→ICDC
IJPC 8.349% 5年据置  6年12回均等返済
       
  1981/7   日本側代表団 イラン訪問
 日本側:戦争で前提が崩壊、契約を再検討すべき、今後の資金はNPC負担で、と申し入れ。
 イラン側:契約は有効、工事継続
  1981/11   東京会談 日本側、これ以上の資金負担できないと通告
  1981/12   日本政府、「事業休止」と認定、IJPCへ保険暫定支払い(1割分・120億円)
      その後も交渉が行われたが、イラン側は建設再開を希望、日本側は非現実性を指摘。
1982/2 テヘラン会談
1982/5 テヘラン会談
1982/9 テヘラン会談 戦争終結後の再開のための再開準備作業実施で合意
1983/5 東京会談   メモランダム(補完協定への端緒)
1983/6 テヘラン会談 
  1983/7    テヘラン会談で補完協定
 今後はイラン側のみ増資(NPCがマジョリティ株主)  →1985/4 イラン国会、補完協定否決
 工事再開に同意
  1983/10   日本政府、イランに外務審議官派遣 IJPC再開も論議
      IJPC事業再開予備調査のため日本側技術者派遣
  1984/2    イラクによるサイト攻撃再開(第7−8次被爆)
 
イラク、「工事を行えば攻撃する」と警告

1984/9 第9−10次被爆 全員待避

  1985/4    イラン国会、補完協定否決
  1987/8   ICDC、イラン・ジャパン石油化学事業からの撤退を表明
  1988/8    イラン・イラク戦争休戦協定成立
  1989/3   両国が精算を前提に交渉を開始することに合意
  1989/10   三井物産と国営イラン石油化学会社が合弁事業解消で清算金1300億円で最終合意

精算手続き
1)ICDCがエスクロー勘定口座へ1,300億円を払い込む
2)IJPC債務のうち
 @NPCは下記を肩代わり負担する
   日本の金融機関からの借入金
   第三者への債務
   三井物産の延払債務
   イラニアンローン(NPC債権の放棄)
 AICDCはIJPCへの債権を放棄
3)ICDCはIJPC株式をNPCへ譲渡

  1990/2   IJPC清算完了

  海外投資保険
   付保 1,662億円(投資337+融資1,250+融資金利息367=1,954億円に対して)
   請求  930億円
   決定  777億円

       
  1991/9    ICDC臨時株主総会で解散決議
  帳簿上の損失 3,283億円(保険金777億円入金後)
  資本金       376億円
  債務超過    2,907億円

  親会社5社    出資金放棄+ICDCへの貸付金債権放棄
  親会社5社以外 出資金放棄

 
  1991/12   清算承認、清算決了登記
  参考資料 「IJPCプロジェクト史 −日本・イラン石油化学合弁事業の記録ー」
       
        1990 NPC (イラン国営石油化学)が設備の再建に着手
    社名を IJPCから 
Bandar Imam Petrochemical Company に変更
            当初はイラン唯一の石化コンプレックス(隣接のRaziはアンモニア、尿素、硫酸等)
       

各プラント、1994年頃からスタート
以下のプラントが追加された。
  1995年 PVC(HULS技術)スタート
  2000年 PX (IFP技術)スタート
  2004年 MTBE スタート

現状 現状配置図  
 
http://www.nipc.net/affiliated/english/bandar.html

       
        ほかに、イランでは三菱化成が塩ビ用可塑剤の生産をしていた。

 会社名:イラン・ニッポン石油化学 IRNIP
 立地  :現在のBandar Imam
 出資者:NPC (イラン国営石油化学) 50%
      日商岩井 26.1%
      三菱化成 23.9%
 設立  :1973
 事業  :塩ビ用可塑剤生産 
 備考  :1977/3 操業開始
      1978/10 ストで操業停止
      1979/1 イラン革命
      1979/8 日本側、持株をNPCに譲渡

 現状 Farabi Petrochemical
       DOP           40 千トン 
       Phthalic Anhydride  5.5千トン

なお、IJPCに隣接するRazi Petrochemical は、当時はShahpur Petrochemical で、
NPCと米国Allied Chemical の50/50JV

         
7 - 2   イランの石油化学現状
       
現在のイランはBandar Imam地区のBandar Imam Petrochemical、Raziに隣接して建設されたPetrochemical Economic Zoneと
Pars地区 のPars Economic Zoneの2つのを中心に、各地で石油化学事業を拡大している。
最近は西部国境沿いにエチレンパイプラインを敷設し、各地に誘導品プラントを建設している。
   
 
現在のBandar Imam Petrochemical
     増設は2005年完成
     青字はガス分離工程での製品
 
Poducts   千トン

Ethane 

394
→569

Propane

1,040
1,088

Butane

908

Pentane Plus

768

Ethylene

311
411

Propylene

99

Benzene

230

Mixed Xylenes

140

Para Xylene

180

HDPE

60
150

LDPE

100

PP

50

SBR

40

PVC

175

Caustic Soda

250

EDC

440

VCM

180

MTBE   

500

 
場所 社名 内容
Bandar Imam Petrochemical(旧IJPC) 右記
Razi Petrochemical (旧 Shahpur Petrochemical Ammonia/Urea
Farabi Petrochemical (旧IRNIP) 塩ビ用可塑剤
Petrochemical
Economic
Zone
Amir Kabir Petrochemical (Olefin 6)
Simorgh Petrochemical Basell 55%) LDPE
Marun Petrochemical
 SABICとの50/50JV案(難航)
(Olefin 7)
Lale Petrochemical (Sabic 30%) LDPE
Arvand Petrochemical (Olefin 8)
Khuzestan Petrochemical エポキシ
Buali Sina Petrochemical (3rd Aromatics)
Fanavaran Petrochemical (3rd Methanol)
Fanavaran Petrochemical 酢酸
Shahid Tondgooyan Petrochemical PTA,PET
Karoon Petrochemical
 Chematur of Sweden 30% ,
  Hansa Chimie of Germany 30%)
イソシアネート
Zayand-e-Rood Petrochemical
 (Canadian Bearing  30%
VAM
Ghadir Petrochemical PVC
PIDMCO 電解〜PVC
NPC/ Shell Shell 50%) naphtha, gas oil, LDF, base oil
Pars
Economic
Zone
Pars Petrochemical エタン〜SM、PS
Arya Sasol Polymer
 (Sasol Polymers of South Africa 50%)
(Olefin 9)
Jam Petrochemical (Olefin 10)
Kavian Petrochemical Co. (Olefin 11)
未定 (Olefin 12)
Borzuyeh Petrochemical (4th Aromotics)
Zagros Petrochemical (4th Methanol)
Zagros Petrochemical DME           
PIDMCO Ammonia/Urea 
NPC/ Sasol Polymers
 (Sasol Polymers 50%)
naphtha, gas oil, LDF, base oil
Mehr Petrochemical (伊藤忠) HDPE
Abadan Abadan Petrochemical PVCほか
Abadan /Shiraz Pazargad Chemical 電解
Arak Arak Petrochemical フル+Ethoxylates
Esfahan Esfahan Petrochemical BTX
Gachsaran PIDMCO NGL
Hamadan Hegmataneh Petrochemical PVC
Ilam PIDMCO Ilam Olefin
Kermanshah Bisotoon Petrochemical LAB
Kermanshah Petrochemical Ammonia/Urea
Kharg Island Kharg Petrochemical Propane/Butane/Pentane
PIDMCO Ethlene/EG
PIDMCO Methanol /Ammonia
BojnourdKhorasan Khorasan Petrochemical Ammonia/UreaMelamine
Orumieh Orumieh Petrochemical Company melamine /ammonum sulphate
Shiraz Shiraz Petrochemical Ammonia/UreaMethanol 
Tabriz Tabriz Petrochemical フル
(以下、エチレンパイプライン沿線)
Western
Azarbaijan
Azarbaijan Petrochemical LLDPE/HDPEButene-1
Sanandaj,
Kurdestan
Kordestan Petrochemical   LDPE
Kermanshah Kermanshah Polymer Company HDPE
Khoramabad,
Lorestan
Lorestan Petrochemical LLDPE/HDPEButene-1
Kohgiloyeh-va
-Boyerahmad
Gachsaran Petrochemical EG/EO
Andimeshk Andimeshk Petrochemical Co HDPE
Dehdasht Dehdasht Petrochemical Co. HDPE
Hamedan Hamedan Petrochemical Co.   VAMEVA
Boroojen Charmahal-va-Bakhtiari Petrochemical Co.       lldPE/hdPE
Miyandoab Miyandoab Petrochemical Co.       PVC、苛性ソーダ
         
7 - 3   韓国の石油化学計画支援
         
         1972 蔚山に初の石化コンビナート スタート
       大韓石油(韓国開発銀行 50%/Gulf Oil 50% エチレン 10万トン)

   誘導品に、以下の会社が韓国側に技術供与・出資をしている。

会社 相手先 製品 当初 現状
丸紅、チッソエンジニアリング 大韓油化 HDPE、PP   下記
JSR、三井物産 韓国合成ゴム SBR    
旭化成 東西石油化学 ANM スケーリーオイル50%/韓一合繊50% 旭化成100%
三井石油化学 三星石油化学 PTA Samsung 50%/Amoco35%/三井15%  三井離脱
日本石油化学 コーロン油化 石油樹脂 韓国ポリエステル55%/日石化学35% コーロン21.3V/新日石化学21.3%

1970/6 丸紅、チッソエンジニアリング 大韓油化に資本参加(HDPE、PP)

      その後、1991年にエチレン 25万トン建設 →経営悪化
      1993年法定管理(会社更生法)申請 →丸紅撤退 

  創業者一族   25% 42%
  政府(財務部)    17% 29%
  チッソエンジニアリング    8% 14%
  丸紅   41.59%  0%

 韓国政府、並行して麗水に石化コンビナート建設を決定、日本に協力要請
  三井グループ、三菱グループが計画(三菱はその後撤退)
 
 
三井グループの韓国石化計画

  1973/11   三井石油化学、三井東圧化学、三井物産の3社、第一化学を設立
  1974/6   日本石油化学、第一化学に資本参加
  1976/3   第一化学、韓国側投資会社の麗水石油化学と湖南石油化学を設立
     
       
  計画概要    
   エチレン    35万トン (湖南エチレン)
   HDPE   7万トン                          
   PP   8万トン
   EO/EG   各8万トン
   ブタジェン*    
     *最終的にブタジェンは中止となり、日石化学は出資比率を減らす

 他に韓国政府/ダウの50/50JVでLDPE,EDC、VCM企業化
 後、ダウが持分を韓国火薬に譲渡、政府持分も合わせ、韓洋化学(現在のハンファ)に
 

             
  日本側は当初は韓国での石化コンプレックスの建設、操業に貢献したが、軌道に乗るに従い、
単なる出資者の地位にとどまるようになった。
       
  2002/12   第一化学、湖南石油化学持株売却完了
  2003/6   第一化学(三井化学 60.13%、三井物産 32.17%、新日本石油化学 7.7%) 解散
       
湖南石油化学 出資関係推移

 

        湖南石油化学 現状   
         
       

韓国の現代石油化学は現代グループの負債増大の結果、2001年にグループから分離され、銀行を中心とした債権団の管理下に
置かれ、債権団が韓国内外の多数の相手と売却交渉を行ってきた。
2003年、最終的にLG化学・ロッテ連合が買収。
2004年、現代石化の第一系列をLGが、第二系列をロッテが分割取得し、それぞれ、LG大山石化、ロッテ大山石化とした。

         
7 - 4   サウディ石化計画           SABIC History
          これと並行して三菱ガス化学を中心とするメタノール計画が実施された。(7-72参照
         
        経緯
  1970       サウジの石油化学事業具体化のため、石油鉱物資源公団(ペトロミン)総裁が三菱商事・油化に対し協力の希望表明
  1973       三菱とペトロミン間で、FSに関する覚書を交換
  1974       三菱首脳(商事、油化、三菱石油、鹿島石油、千代田化工)のミッションがサウジ訪問
 ハリド皇太子(後の国王)等に対し、工業化計画への貢献につき積極的意向を表明
  1975       ルーマスのFS報告書で巨額の赤字発生の結論
  1976 / 5   三菱案
 エチレン 30万トン、EG 15万トン、LLDPE 7万トン、EDC 36万トン、苛性ソーダ(50%) 54.9万トン
  1977 / 4   サウジの企画大臣が来日、通産大臣に対し、三菱グループの対応の遅れにつき苦言。
    / 6   通産大臣が、三菱に対しプロジェクト推進を要請。政府は、ナショナルプロジェクトとして支援する旨言明。
  1978 / 1   園田外務大臣訪サ。石油化学プロジェクトに対する日本政府の協力を確認。
  1979 / 1   三菱商事・三菱油化・三菱化成ほか51社の共同出資により、調査会社「サウディ石油化学開発梶F資本金5億円」を設立。
  1980 / 2   共同調査のための予備契約
 能力 エチレン 45万トン、LLDPE 25万トン、HDPE 8万トン、EG 15万トン
 能力の75%は日本が引取義務
  1980 / 10   事業規模を、エチレン年産 25万トン、EG 15万トン、LLDPE 13万トンと決定
    / 12   SPDC、SABlC、ダウケミカルの三者間で、エチレン、EG両プラント共同所有・共同生産につき合意。
(SABICとダウはエチレン50万トンとEGのJVペトロケミヤの交渉を進めていたが、エチレンの相当量をダウが輸出することとなっており、付加価値を高めたいSABICは輸出を認めたくない背景があった。)
エチレン #  50万トン 共有 ペトロケミヤが操業 SHARQが46%、23万トンを引取り
MEG* シェル法  30万トン 共有 SHARQが操業 ペトロケミヤが50%、15万トンを引取り
LLDPE ユニポール法  13万トン 専有    
 # 当初はダウ法を想定、ダウ離脱でC.F.ブローン法(原料エタン)
 * 他にジエチレングリコール 3万トン、トリエチレングリコール1,500トンあり、同様の扱い。
  1981 / 5   投資会社「サウディ石油化学(SPDC)」へ移行
    / 5   政府、政府関係機関から所要の支援を行うことを了解。
 日本側出資480億円のうち 45%を海外経済協力基金が出資することを了承。
    / 5   合弁契約書調印。
イースタン・ペトロケミカル・カンパニー(SHARQ)設立合意。本社アル・ジュベイル、授権資本金14億リアル。

  後に改定したが、当初の契約ではSPDCは能力の75%の引取義務があった。
   (義務だけで権利はなく、SABIC側の通告で減らされた)

    / 5   ダウケミカルとSABICの合弁会社アラビアン・ペトロケミカル・カンパニー(ペトロケミヤ)設立合意。
    / 11   SHARQ、ペトロケミヤとエチレンおよびEGプラントに係る共同所有・共同生産契約締結
    / 11   SPDC、ペトロミンとインセンティブ原油供給契約を締結
           
  1982 / 12   ダウケミカル、SABICとの合弁会社(ペトロケミヤ)から撤退。(ペトロケミヤはSABIC 100% 会社に)

ダウはその後クウエートに進出している。
1995年にクウエートのPetrochemical Industries Co.(PIC)等とEquate Petrochemical (エチレン 80万トン)を設立、
Equate IIのKuwait Olefins Company (エチレン 850千トン)にも参加した
またダウはPICと、海外でのEGの製造販売と、海外でのPET樹脂の製造販売・PTAの製造の2つの50/50JVを設立

  1985       5月 ペトロケミヤ、エチレン年産50万トンプラントの運転開始。
          SHARQ、7月PEプラント運転開始。8月EGプラント運転開始。
          11月EG第一船、波方ターミナル入港。12月LLDPEの日本市場引取り開始。
            当初はLDPEは日本のLDPEメーカー11社が国内外で販売、
  EGは日本で不足しており、メーカー4社が均等に引き取った。
  後、海外はSPDC専売とした。
  1989 / 2   SABIC、ペトロケミヤ第2エチレンプラント建設方針を決定
  1991 / 12   SHARQ、第二期計画を決定

 1991年の実能力
  エチレン 79万トン(SHARQ分 36万トン)
  MEG   36万トン( 同     18万トン)
  LLDPE 19.6万トン

 第二期計画
  エチレン 50万トン(SHARQ 38%) *
  MEG  42.5万トン(SHARQ 50%)
  LLDPE 20万トン

  *原料はエタン不足でNGLとなり、ケロッグのミリセカンド法採用
   プロピレン27.3万トン併産するため(SHARQでは不要)
   SHARQのエチレン引取枠は(エチレン+プロピレンx0.83)x38%

  1993       8月 第2EGプラント完工  12月 第2 PEプラント完工。
         
  1994年の実能力
    エチレン@ 公称   50+増設15万トン   実能力 79万トン SHARQ分 46%
         A 公称   50+増設20万トン   実能力 80万トン SHARQ分 (エチレン+プロピレンx0.83)x38%
    MEG 公称   30x2 万トン   実能力 90万トン SHARQ分 50%
    LLDPE 公称   13x2 万トン   実能力 45万トン
               
  1996 / 9   SHARQ、第3エチレン、第3 EG、PEデボトルネッキング各プロジェクト(第三期計画)合意

 第三期計画
  エチレン 80万トン(SHARQ 37%) S&W法
  MEG   45万トン(SHARQ 50%)
  LLDPE 30万トン

  2000       6月 第3 EGプラント完工、7月 PEデボトルネッキング完工  10月 ペトロケミヤ第3エチレンプラント完工
           
 
         
7 - 5 インセンティブ・オイル

第二次石油危機後の石油が売手市場で価格は上昇しつつあり、しかもサウジアラビアの原油がほかよりも相対的に割安であった
時に、サウジアラビア政府は経済開発のための大型プロジェクト実施に当たって先進国からの参加を促進するために、
参加外国企業に対し投資額に応じて、Petrominより原油又は製品を供給することにした。
これにより供給された原油又は製品をインセンティブ・オイルという。
(15年間、一定量を供給するというのがインセンティブで、公示価格での供給のため価格面でのインセンティブはない)

その具体的条件は次のとおり。
(1)契約の対象:SABICとの間で合弁事業契約を結んでいる企業。(対象プロジェクトは石油化学で 7)
(2)出資に対する原油又は製品価格量:石油化学プロジェクトは 500b/d/百万ドル
(3)期間:15年
(4)引取方法:供給開始初年度は (2)の引取数量の20%、次年度以降各20%増量して、5年目以降100%引取りとなる。

1984/2 SPDC取締役会、原油の市場価格下落によりインセンティブ原油引取りが困難になったため、引き取りの一部中止を決意。
ペトロミン、ノンペナルティでの引取量削減を了承
1986年契約終了

         
7 - 6   現状 

SPDC出資比率(2004/12/31)

 国際協力銀行 45.00% (元 海外経済協力基金)
 三菱化学     7.79% (三菱油化 4.37%+三菱化成 3.42%)
 三菱商事     6.73% →21%
             2005/5 少数株主から保有株式を買い取り、出資比率を21%に引き上げ
 
 その他  山陽石油化学、新日本石油化学、住友化学、日本触媒、三井化学、
       新日本石油、出光興産、鹿島石油、昭和シェル石油、富士石油、西部石油、
       東京三菱銀行、東京海上日動火災保険、三菱信託銀行、みずほコーポレート銀行、
       三菱重工業、大成建設、
       東京電力、関西電力、中部電力、大阪瓦斯、東京瓦斯、東北電力、九州電力、中国電力、
       四国電力、北海道電力、北陸電力、
       三菱倉庫、日本トランスシティ
       新日本製鐵、JFEスチール、神戸製鋼所、住友金属工業、日新製鋼、トヨタ自動車、日産自動車、 

能力     

    能力      SHARQ 持分 うち日本側権利

PETROKEMYA

エチレン 

2,440千トン

1,155千トン

SHARQ

EG

1,350千トン

 675千トン

270千トン

LLDPE

 750千トン

 750千トン

300千トン

         
      SABIC関連の石化計画の現状(計画を含む)

        Al-Jubail 地区
       
         
         
         
7 - 7   シャルク 新規計画

2004/6/15 SPDCは拡張計画の大筋を発表した。

  原料   Saudi Aramcoから供給されるエタンとプロパン
  立地   現シャルク社敷地内(サウディアラビア東部州アルジュベイル市)
  生産能力拡張   エチレンプラントの新設: 年産120万トン(エチレン)
エチレングリコールプラントの新設: 年産70万トン(MEG)
ポリエチレンプラント(2 系列)の新設: 年産80万トン(LLDPE 40万d/年、HDPE 40 万d/年)
  工事完成   2008年第1四半期
  所要資金   およそ23 億米ドル、Sharqの自己資金と借入金で調達
 
SHARQ 社の製品別生産能力(単位:1,000T/Y)
  現設備生産能力 SHARQ 生産能力
(SHARQ 持分)
第3次拡張計画 完成後の合計
(SHARQ 持分)

エチレン

2,440
(at PK)

1,155
(*)

1,200

2,355

EG

1,350
(at SHARQ)

675

700

1,375

LLDPE

750

750

400

1,150

HDPE

0

0

400

400

  
:PETROKEMYA(PK)との共同生産                  
(*) 既存エチレンプラント(3基)のSHARQ 持分、比率はプラント毎に異なる。
         
7 - 7 2  メタノール計画(AR-RAZISaudi Methanol 
       
1974 伊藤忠がペトロミン、First Arabian (サウジ)、Grace (米) と共同で燃料用メタノール事業を検討

    → 燃料用ガス輸出禁止で化学用メタノール事業に転換、海外立地を検討していた三菱ガス化学が参加

 FS結果がよかったため、ナショナル・プロジェクトとして推進することに決定
 (SABICが50%参加を主張したため、Grace は離脱)

1977/11 日本・サウジアラビアメタノール梶iJSMC) 設立
1979/11 合弁契約
  80/2  
AR-RAZISaudi Methanol 設立
        JSMC 
50%
        SABIC 50%

  80/2  JSMC増資(出資比率確定)

 

出資比率

1期   
引取り
 千トン

2期
引取り
 千トン

三菱ガス化学

 47%

120

115-155

海外経済協力基金

30%

三井東圧

5%

50

50

住友化学

5%

50

30-50

協和ガス化学

5%

50

30-50

日本化成

1%

10

30

新日鐵化学

1%

10

10

東邦理化

1%

10

10

伊藤忠商事

5%

100%

300

315

  81/1 インセンティブオイルの販売に関して委託契約を締結
        相手先:三菱石油、日本鉱業、昭和石油

  83/2 完成(第一期 60万トン)

  92/1 第二期完成 (63万トン)
  97/6 第三期完成(85万トン)
  99/4 第四期完成(85万トン)

  2008予定 第五期(170万トン) 2005年発注

  製品販売
   第一期 30万トンは日本で販売、20万トンは東南アジアで販売
   第二期 31.5万トンは日本で引取り、残りを双方で半分ずつ販売(日本側は東アジア、東南アジア、サウジ側はその他全域)
   第三期 25%はサウジのMTBE用、残りは日本側、サウジ側均等販売
   第四期 Ibn Zahar と SADAF のMTBE向けが中心

         

   続く