2010/5/27 毎日新聞夕刊

ハンガリーが新法 国外在住でも国籍
 1割が該当 隣国スロバキア反発

ハンガリー国会は26日、周辺国のハンガリー系往民が、国外で暮らしながらハンガリー国籍を取得できるようにする法案を可決した。第一次大戦(1914〜18年)での敗戦に伴い、「他国」に少数派として取り残された人々に連帯感を示すのが狙い。一方、人口の約1割をハンガリー系住民が占める隣国スロバキアはハンガリーから政治的介入を招く恐れがあるとして猛反発している。
 200万人以上と言われる在外ハンガリー系住民への国籍付与は、4月のハンガリー総選挙で圧勝した中道右派政党「フィデス・ハンガリー市民同盟」の公約だった。圧倒的多数で可決された改正国籍法によると、祖先が第一次大戦以前のハンガリー領の出身で、本人もハンガリー語を語せる、など一定の要件を満たせぱ、ハンガリー国外で暮らしたまま国籍を取得できる。ただ、同国の外交筋によると、「選挙権は与えられないなど実質的な権利は限られている」という。
 ハンガリーの決定に対し、スロバキアは「自国民保護」などを理由に政治的介入を招く恐れがあるとし、対抗措置として同日、国会で二重国籍を禁じる法案を可決した。スロバキアもハンガリーと同様、これまで二重国籍を認めてきたが、国籍法改正により、結婚や出生などの場合を除き、自国民が自発的に外国籍を取得した場合にはスロバキア国籍をはく奪することになった。ハンガリー国籍の取得を妨げるのが狙いだ。
 中東欧のハンガリー系住民は
ルーマニアの約140万人を筆頭に、スロバキアで約50万人、セルビアで約30万人が暮らしている。スロバキアでは人口比が大きいことに加え、6月12日に総選挙を控えていることも、この問題がとりわけ重大視される要因となった。現地外交筋によると、最大与党の中道左派「スメル」や、連立与党で民族主義的な「国民党」が「ハンガリーへの対抗姿勢を前面に押し出すことで国民感情に訴えている」という。
 中東欧には、ナチス・ドイツがドイツ系住民の保護を理由に当時の隣国チェコスロパキアに侵攻、第二次大戦に発展した歴史がある。こうした経験が、今回のハンガリーの措置に対する周辺国の警戒感につながっている。

 

オスマン帝国が再度ハンガリーに侵入、ハンガリー三分割される
  西部…ハプスブルク家 
  中央部…トルコの属州 
  トランシルヴァニア…スルタンの宗主権を認める半独立のトランシルヴァニア侯国
 
 
トリアノン条約(1920):ハンガリーは領土の68%、人口の59%を失い、致命的打撃を受ける。
トランシルヴァニアのルーマニアへの割譲 の損失は特に重大。
 
 
 
第二次世界大戦以後、ハンガリーは領土的志向を完全に放棄した。
しかし、ルーマニアにおける少数民族抑圧政策は西側の激しい非難をあびるほどの人権侵害をともなった。

 

東欧革命1989 
 ソ連帝国の崩壊

 ハンガリーとルーマニアは歴史的な仇敵だった。両国の主たる論争は、山々が連なる風光明媚な森林地帯トラソシルバニア地方をめぐるものだ。トランシルバニアは、第一次大戦が終結し、トリアノン条約によりルーマニアに割譲されるまで何世紀もの間、ハンガリーの一部だった。敗北したハンガリーはこの領土喪失を恨み、ハンガリーには同地方に対する当然の権利があると信じる民族主義者のさまざまな小グループが残った。ハンガリー語を話す約150万人の人びとは、文化的にはブダペストの方を向いており、ルーマニアでも存在感のあるマイノリティを形成した。チャウシェスクは15年間にわたり、ハンガリー系を虐待してきた。トランシルバニアの学校でのハンガリー語教育を禁止。ハンガリー改革派教会を弾圧した。トランシルバニアの町々にあったハンガリー文化センタiと、同地方の主要都市クルジュにあった領事館を閉鎖した。チャウシェスクの構想は、究極的にはルーマニア国内で識別できるコミュニティとしてのハンガリー系住民を根絶することにあった。
 ハンガリー国民の三分の一はトランシルバニアに親類がいる。チャウシェスクは彼らのつながりを切断しようとした。ルーマニア国民はハンガリー訪問を許されなかったし、チャウシェスクはハンガリー国民がトランシルバニア側に越境するのを阻止しようとした。1980年代、ルーマニアの国情が悪化しても、ハンガリー国民はトランシルバニアにいる親類・友人たちの苦境を緩和するため、食料小包を送ることが許されなかった。チャウシェスクは、ブダペスト発の改革構想などどれもこれも破壌的だと考えていた。