毎日新聞 2008年5月14日 東京夕刊

ビスフェノールA:プラスチックの原料、胎児に影響 国立衛生研、ラットで確認

 ◇基準以下でも

 プラスチック製品の原料になる化学物質ビスフェノールAが、現行の安全基準以下でも胎児や新生児に影響を与えることを国立医薬品食品衛生研究所(衛生研)などがラットで確認した。厚生労働省は、内閣府の食品安全委員会に評価を諮問する検討に入った。【下桐実雅子】

 実験では、母ラット5群に、妊娠6日目から出産後20日まで、ビスフェノールAを毎日投与。与えない群も含め、胎盤や母乳を通じた影響をみるため、生まれた子の発情期など性周期を約20匹ずつ長期間観察した。

 大人に相当する生後7カ月になって比べると人の1日摂取許容量の体重1キロ当たり0・05ミリグラム、それ以下の0・005ミリグラムと、同40ミリグラム以上の高い量を与えた3群の計5群の子ラットに発情期が続くなど乱れが起きた。

 ビスフェノールAについて環境省は04年、魚類で内分泌かく乱作用が推察されるとしたが、人への影響は認められないとしている。

 衛生研の菅野純・毒性部長は「性周期の異常は、ビスフェノールAが中枢神経に影響を与えたためと考えられる。大人は影響を打ち消すが、発達段階にある胎児や子供には微量でも中枢神経や免疫系などに影響が残り、後になって異常が表れる可能性がある」と分析している。

 ビスフェノールAについて米政府は4月、「胎児や子供の神経系や行動に影響を与えたり、女子の早熟を引き起こす恐れがある」とする報告書をまとめた。カナダ政府もビスフェノールAを含むプラスチック製哺乳(ほにゅう)瓶の輸入、販売、広告を禁止する方針を示している。

 

 ■ことば

 ◇ビスフェノールA

 ポリカーボネート樹脂の原料。丈夫で軽いため、パソコン、携帯電話などさまざまな用途に使われている。環境ホルモン問題で、微量が熱湯で溶け出す哺乳瓶や食器は代替品に切り替わったが、輸入品など一部では使われている。

 


 

2008.04.16 AP

米政府機関、プラスチック原料物質の安全性に疑問符

化学物質の危険性などを調査する「米国家毒性プログラム(NPT)」は15日、哺乳瓶などのプラスチック製品に使われる化学物質のビスフェノールAが、ホルモン異常に関係している可能性があるとする報告書草案を公表した。

この研究は疾病対策センター(CDC)、食品医薬品局(FDA)、国立衛生研究所といった米政府機関の専門家チームが実施。ネズミを使った実験で、少量のビスフェノールAを投与または摂取させた場合、前がん腫瘍、尿路疾患、発達異常が認められたとしている。

この結果を受け、ビスフェノールAの発達上の危険については「限定的な証拠」しかないとしながらも、人間に影響を与える可能性は「否定できない」と指摘した。

ビスフェノールAをめぐっては、FDAが昨年11月、「現時点で利用を禁止・制限する理由はない」と表明。しかし消費者の間では不安が高まり、ガラス製品に切り替える動きも出ている。CDCによると、米国人の90%以上は、水のボトルや缶の内側からにじみ出る微量のビスフェノールを摂取している。

メーカーでつくる業界団体の米化学工業協会は今回の報告書について、「ビスフェノールAが人間の生殖や発達に及ぼす悪影響について、深刻あるいは高度な懸念はないことが確認された」との見方を示した。

一方、環境保護団体などは、FDAがビスフェノールAの毒性を認めざるを得なり、メーカーに安全基準を設けさせることにつながればとの期待を表明している。

---

2008年4月16日  読売新聞

ビスフェノールA「子供に悪影響」…米政府報告書案公表

 【ワシントン=増満浩志】米政府は15日、プラスチック製の食器などから溶け出す化学物質ビスフェノールA(BPA)について、「現在の摂取量が、胎児や子供に対し、神経系や行動、乳腺への影響、女子の早熟を引き起こす懸念がある」とする報告書案を公表した。

 また、カナダの新聞「グローブ・アンド・メール」紙は同日、カナダの保健当局がBPAを有害物質に指定する方針だと報じた。

 BPAは女性ホルモンに似ており、日本では1990年代にいわゆる「環境ホルモン」の代表物質として問題化したが、最近は「日常の濃度では健康影響が明確でない」とされている。北米で今後、「有害」との評価が定着すれば、日本にも波紋が広がりそうだ。

 報告書案の「懸念」は、発達期の動物を低濃度のBPAにさらした実験に基づいた。

2008/5/14 Reuters

FDA defends safety of baby bottle chemical

The U.S. Food and Drug Administration said on Wednesday said it sees no reason to tell consumers to stop using products such as baby bottles made with a controversial chemical found in many plastic items.

Norris Alderson, the FDA's associate commissioner for science, said although the regulatory agency is reviewing safety concerns about the chemical bisphenol A, or BPA, "a large body of available evidence" shows that products such as liquid or food containers made with it are safe.

In testimony before a Senate subcommittee, Alderson also defended the FDA's reliance on two industry-funded studies in determining that products containing BPA are safe.

Many studies have found a variety of health problems in laboratory animals exposed to BPA.

Some senators faulted the FDA and the Consumer Product Safety Commission for failing to protect U.S. consumers from BPA as well as phthalates, a class of chemicals used to improve flexibility in plastics.

The Senate in March passed legislation that would impose a nationwide ban on phthalates in children's toys and products.

"The FDA could hardly be doing less," Democratic Sen. John Kerry of Massachusetts told Alderson.

Sen. Charles Schumer, a New York Democrat, said the FDA was "looking the other way" on safety concerns about BPA. "Parents always err on the side of caution when it comes to their kids' health. We think that the law should do the same," he added.

Schumer, Kerry and other Democratic senators in April introduced a bill to ban BPA in children's products. It also would direct the Centers for Disease Control and Prevention to study health effects of BPA in children and adults.

Consumer groups and other critics have accused the FDA of failing to act on safety concerns regarding BPA and other issues, bowing instead to industry positions.

ANIMAL STUDIES

Alderson said he heads an FDA task force that is reviewing safety concerns concerning BPA. He said although this review is ongoing, the FDA has no reason to recommend that consumers stop using products made with BPA. He also noted that similar products made without BPA are available.

Alderson said the FDA is looking at a draft report issued in April by the National Toxicology Program, part of the U.S. government's National Institutes of Health, that expressed some concern that BPA had the potential to cause neural and behavioral problems in fetuses, infants and children.

Relying on animal studies, the National Toxicology Program said there was evidence suggesting links between BPA exposure and early puberty and prostate and breast cancer in people, becoming the first federal agency to embrace such concerns.

The federal agencies that regulate the use of BPA have joined with the chemical industry in defending its safety. If the FDA review finds that products made with BPA are unsafe, it would take action to protect the public, Alderson said.

Some retailers, including Wal-Mart and Toys R Us, are planning to stop selling certain items made with BPA.

BPA is used to make polycarbonate plastic, a clear shatter-resistant material in products ranging from baby and water bottles to sports safety equipment and medical devices.

It also is used to make durable epoxy resins used as the coating in most food and beverage cans and in dental fillings.

People can consume BPA when it leaches out of plastic into liquid such as baby formula, water or food inside a container.

 


2008年04月19日 asahi

ビスフェノールA含む哺乳瓶、カナダが販売など禁止へ

 

 【ワシントン=勝田敏彦】カナダのクレメント保健相は18日、樹脂原料のビスフェノールAを含むポリカーボネート樹脂で作られたプラスチック製哺乳(ほにゅう)瓶について、輸入、販売、広告を禁止する方針を明らかにした。日本では、環境省の作用・影響評価で、ビスフェノールAについて「人体影響は明らかには認められなかった」としている。

 カナダ政府は、ビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌攪乱(かくらん)化学物質)としての作用を示すかどうか確認するため、哺乳瓶のほか食器、CDなどに使われるポリカーボネート樹脂と、ビスフェノールAを含むエポキシ樹脂(塗装や電気製品などに使われる)といったプラスチックについて、評価を行った。

 その結果、大人が普通の日常生活を送っている限り、健康影響はないとの結論を得た。しかし、保健相は「成長過程にある新生児や乳幼児にこの結論は当てはまらない。安全性を優先する」として、禁止の方針を示した。

 ビスフェノールAについては、米国では、厚生省などの専門家グループが14日に「人体の成長に影響する可能性は無視できない」との報告書案を公表。小売り大手の米ウォルマート・ストアーズも「来年前半までにビスフェノールAを含む哺乳瓶の販売をやめる」としている。