エネルギー・経済用語集   黒木亮「エナジー」


アービトラージ(arbitrage)
 複数の商品の間に生じる価格の歪みを利用して値ザヤを稼ぐ裁定取引のこと。たとえば、債券の先物価格が理論価格から乖離した時にこれが可能になる。これに対して、市場や個別銘柄の上げか下げどちらの方向に動くかに賭けるトレーディング・スタイルを「ディレクショナル」と呼ぶ。一般に、前者は後者に比べて利益は薄いがリスクは低い。

アウト・オブ・ザ・マネー(out of the money)、イン・ザ・マネー(in the money)
 アウト・オブ・ザ・マネーとは、オプションが行使しても利益が出ない状態にあること。例えば、権利行使価格が1000円のコールオプションを持っていても、原資産の市場価格が1000円以下であればオプションの本質的価値はゼロで、アウト・オブ・ザ・マネーである。
 これに対して、イン・ザ・マネーはオプションが、行使すれば利益が出る状態にあること。

アディショナリティ(additionality)
 日本語では「追加性」と訳される。EBRD(欧州復興開発銀行)などの公的金融機関が融資をするための条件の一つで、その融資がなければ、ファイナンスが成り立たないことを意味する。逆にいえば、民間の投融資でファイナンスが可能な場合は、融資をしない。
 二酸化炭素排出権がらみのプロジェクトでも使われ、プロジェクトによって産み出される排出権があってはじめてプロジェクトが成立することを意味する。

アメリカン・オプション(American option)、ヨーロピアン・オプション(European option)
 アメリカン・オプションとは、オプションの満期日までならいつでも権利行使できるオプションのこと。
 これに対して、満期日にしか権利行使できないオプションをヨーロピアン・オプション(ヨーロピアン・タイプ)という。

アラビア石油
 秋田県出身の実業家、山下太郎(通称「満州太郎」「アラビア太郎」)が中東における石油・天然ガス開発のために1958年に設立した企業。サウジアラビアとクウェートにまたがるカフジ油田をはじめ、「日の丸油田」と呼ばれる日本の自主開発油田の権益を獲得し、石油の安定供給に貢献してきた。しかし同社は2000年にサウジアラビア、2003年にクウェートでの権益を失い、以後は中東を中心にアメリカ、メキシコなどでオペレーターを務める企業に技術者を派遣するなどして事業を継続している。2003年に富士石油と合併する際に設立した持株会社AOCホールディングス株式会社が東証一部に上場している。

アンダーライング・アセット(underlying asset)
 デリバティプ取引における原資産のこと。原油先物取引や原油オプション取引では、原油が原資産になる。

硫黄分
 原油の主要成分の一つ。石油業界では、硫黄分が1%以下の原油を「スウィート(sweet)、それより硫黄分が多い原油を「サワー(Sour)」と呼ぷ。

イラク原油
 イラクでは、バスラ・ライト(Basra Light)とキルクーク(Kirkuk)という二種類の原油が生産されている。バスラ・ライトは、南部の各油田の生産原油をブレンドした油種。中東の代表的油種であるサウジアラビアのアラビアン・ライト(Arabian Light)に似ているが、若干軽質で、日本にも輸入されている。キルクークは、北部油田の生産原油をブレンドした油種で、硫黄分が高く、重質。

イラン原油
 イラン原油にはイラニアン・ライト(Iranian Light)という中質油とイラニアン・ヘビー(Iranian Heavy)という重質油の二種類がある。前者は1.44%、後者は1.55%の硫黄分を含む「サワー」原油である。

インサイダー取引
 企業の業績に大きな影響を及ぼしかねない重要情報に容易に接近しうる者(取締役、役員、従業員、会計士、顧問弁護士等)が、そうした重要情報を知り、未公表の段階で、その企業の株式の売買などを行うこと。

ウルトラ・ヴァイラス(ultra vires)
 契約の当事者が、自己に与えられている権限を越える行為を行った場合、その行為が無効になるとする英米法の原理。日本語では「権限踰越」と訳される。1990年代前半に、クラインオート・ベンソンなどの金融機関が、英国の地方自治体とスワップ契約を結んだが、地方自治体にスワップを行なう権限が法律上与えられていなかったため、裁判でウルトラ・ヴァイラスであるとして契約は無効にされ、金融機関側は損害を蒙った。

エージェンシー・レンダー(agency lender)
 EBRD(欧州復興開発銀行)やUSEXIM(米国輸出入銀行)、JBIC(国際協カ銀行)、各国のECAのような公的金融機関のこと。

益出し
 一般的には、含み益が出ている資産を売却して、利益を計上すること。オプション取引においては、行使される可能性が高いオプションを売って、高額のオプション・プレミアム(オプション料)を受け取る危険な行為を指す。

エクイテイ(equity)
 一般に、株式や自己資本を意味するが、プロジェクト・ファイナンスにおいては、プロジェクトのスポンサー(オーナー)がプロジェクトのために提供する資金を意味する。借入金(デット)と並ぷ、プロジェクト実施のための主要な資金調達源で、エクイティの割合が多ければ多いほど、当該プロジェクトの財務は安定している。

エクエーター原則(equator principles)
 大規模なプロジェクト・ファイナンスを、自然環境や社会に与える影響を十分に考慮して実施するための枠組み。2002年後半からABNアムロ(蘭)、シティグループ(米)、バークレイズ(米)、WestLB(独)の4行が、世界銀行グループのIFC(国際金融公社)の助言を受けて作った。住民、動植物の生息環境、文化遺産・自然遺産などへの影響度の多寡によって、プロジェクトを3つのカテゴリーに分け、EIA(環境影響評価書)やEMP(環境管理計画)の作成や開示を義務付け、プロジェクトの全期間を通じて、EMPの遵守を中心とする環境対策を行なうことを定めている。

エクスポージャー(exposure)
 リスクにさらしている金額のこと。企業や金融機関が、融資やデリバティブなどの取引を行う場合、各取引がいくらのエクスポージャーになるのかを計量し、いくらまでエクスポージャー(リスク)を取ってよいかを決めておく。

エスクロウ・アカウント(escrow account)
 信託口座のこと。政情や経済状況が不安定な相手国との商取引において、売り手と買い手の間に信頼の置ける中立な第三者(民間銀行など)を介在させ、金銭の安全な受け渡しを確保するための口座。

エネルギー・デリバティブ(energy derivatives)
 原油・天然ガス・ガソリン・灯油(ケロシン)などのエネルギー商品を原資産としたデリバティブ取引(先物、オプション、スワップなど)。石油会社や電カ会社、航空会社などの実需家がヘッジ目的で取引したり、ヘッジファンドや金融機関などが投資や投機目的で取引する。

オイル・ショック(Oil shock)
 1970年代に二度生じた原油の供給不足と価格高騰に伴う経済的混乱のこと。第一次オイル・ショックは、1973年10月に勃発した第四次中東戦争を受けて、OPEC加盟国が原油価格を引き上げたことがきっかけとなった。日本では「狂乱物価」と呼ばれるほどインフレが進行し、1974年には戦後初めてGDPがマイナス成長を記録し、高度経済成長が終焉を迎えた。
 第二次オイル・ショックは、1978年のイラン革命により同国での石油生産が中断し、原油価格が高騰したことが引き金となった。

オイル・スキーム(oil scheme)
 原油代金前払い融資のこと。将来購入する原油代金を担保にして、産油国に融資する方式。

オイル・フォー・フード(Oil for food programme)
 国連が経済制裁下のイラクに対して特例的に認めた「石油・食糧交換計画」のこと。イラクからの石油輸出は、1990年8月に採択された国連安保理決議によって全面的に禁止されたが、経済制裁がイラク国民に余りに激しい疲弊をもたらしているという批判が高まったため、資金の使途を食糧、医薬品、その他の民生品などの購入代金に限定して、イラクからの石油輸出を認めた。

オプション・プレミアム(Option premium)
 オプションの買い手が売り手に支払うオプション購入代金のこと。オプション価格、オプション料とも呼ばれる。オプションが行使されなければ、売り手の利益になる。オプション・プレミアムの理論価格を計算する方法として、ブラック・ショールズ・モデルやCRRモデルなどがある。実際の市場価格は、市場参加者の思惑などによって理論価格と乖離することが多い。

オフテーク(off-take)
 製品を引取る(購入する)こと。引取り手(購入者)をオフテイカー(offtaker)と呼ぶ。

オペレーターシップ(operatorship)
 プロジェクトのオペレーション(操業)を行う者(会社)のこと。プロジェクトの顔であり、開発計画の策定や実行において、他のスポンサーよりも強い権限と責任を持ち、プロジェクトの成否はオペレーターのカ量に大きく依存する。

オリガルヒ(Oligarch)
 ロシアの新興財閥のこと。ソビエト連邦崩壊を受けて、1990年代に急速に進んだ資本主義化の過程で形成された寡頭資本家。しかし、プーチン大統領就任を境に国家資本主義が台頭すると、一転して勢力を失っていった。アエロフロートなどを買収したボリス・ベレゾフスキーやメディア王と呼ばれたウラジーミル・グシンスキーは国外に追放され、石油最大手ユコス会長のミハイル・ホドルコフスキーは逮捕・起訴され、シベリアの刑務所に送られた。

オンライン・ビディング(online bidding)
 パソコンで入札用のサイトにアクセスして、入札価格や数量を入れるオンラインによる入札方式のこと。

会計ビッグ・バン
 日本の会計制度を、国際会計基準に近づけるために行われた一連の大幅な変更のこと。主に、2000年3月期決算から導入された時価会計と連結会計を指す。
 時価会計は、不動産や有価証券などの資産を時価評価することで、これにより、従来は簿価(取得価格)で評価されていた資産の含み損益が発生する。
 連結会計は、従来は50%を超える持株比率の子会社のみを連結対象としていたのを改め、持株比率が低くても親会社の支配力や影響カが強ければ連結対象とするもの。

ガスプロム(Gazprom)
 天然ガス・石油の生産を手掛けるロシアの国営企業。エネルギー関連企業としてはエクソンモービルに次ぐ規模を誇る。天然ガスの生産・供給では世界最大で、ロシア全体の80%以上、全世界の20%以上を占める。

カフジ(Khafji)油田
 サウジアラビアとクウェートにまたがる地域に存在する巨大油田。日本企業(アラビア石油)が海外で開発した最初の海上油田で、1961年から操業を開始した。世界有数の埋蔵量を誇り、現在では日産30万バレル程度を産出している。アラビア石油は2000年2月にサウジ側、2003年1月にクウェート側での権益を失っている。

北樺太石油
 1920年代から40年代にかけて、ソビエト連邦のサハリンで操業していた日本の石油会社。もともとは大正8年(1919年)に久原鉱業、三菱鉱業、日本石油など5社が「北辰会」を設立し、海軍の支援を受けて、北樺太東海岸のボアタシンとノグリキで試掘に着手した。その後、オハで油田を発見し、1926年に日ソ間でコンセッション(利権)契約を締結。北辰会の権益を受け継ぐ形で北樺太石油(株)が設立され、オハ、エハビ、カタングリなどで原油の採掘を行なった。同社の原油生産量は1933年に日量3860バレルのピークに達し、一時は日本の原油調達の25%を担っていたが、1944年に権益が終了した。

カルパース(CalPERS:The Califomia Public Emp1oyees' Retirement System)
 米国カリフォルニア州の職員退職年金基金。世界最大規模の公的年金基金の一つで、加入者数は約150万人、2008年4月末時点の運用資産は約2500億ドル(約27兆5000億円)。積極的な運用戦略をとり、新興国の株式やヘッジファンド、商品(コモディティ)などへも投資している。また、投資先企業の経営に介入する「モノいう株主」としても知られており、その動向は全世界の市場関係者から注目されている。

カントリーリスク(country risk)
 投資や融資の対象となる国の政治・経済・社会環境の変化のために、個別の取引相手が持つ商業リスクとは無関係に、収益を損なう危険の度合い。具体的には、戦争、内乱、革命、対外債務の支払停止、外貨送金の停止、国有化、法律の改正、天災などにより、投下した資金や融資を回収できなくなる可能性のこと。

逆オイル・ショック
 OPECのシェア拡大路線がきっかけとなり、1980年代後半に起きた原油安。原油価格が1バレルあたり10ドル台で推移した。長引く原油価格の低迷で、産油国政府は財政が逼迫し油田投資に消極的になった。メジャーを中心とする大手石油会社も、巨額の資金と長い期間を要する開発投資を手控えるようになった。

キャッシュ・アンド・キャリー(cash and carry)
 現物を買うと同時に先物を売る裁定取引。保管費用や金利負担といった経費を含めて現物を期日まで所有するコストの方が先物価格より低ければ、確実に儲かる。

キャッシュ・バランス(cash balance)
 手持ち現金のこと。事業資金のうち、投資されておらずに、現金や預金として保有している残高を指す。キャッシュ・バランスが多すぎることは、資金が有効に活用されていないことを意味する。

キャッシュフロー(cash flow)
企業(またはプロジェクト)の毎年の税引き後利益から配当金と役員賞与を差し引いたものに、減価償却費を加えて算出したもの。すなわち企業活動(プロジェクト)により実際に生み出される現金の額。当該企業(プロジェクト)の財務の健全性や収益性を表わす指標の一つ。企業買収においては、企業価値(すなわち買収価格)算定のべ一スになる。

キャピタル・マーケット(capital market)
 株式や債券などの証券類を売買する資本市場のこと。

クラウン・ジュエル(Crown jewel)
 「王冠の宝石」という意味で、企業の中で最も価値ある事業部門または資産のこと。

クラス・アクション(Class action)
 米国の民事訴訟の一形態で、集団訴訟手続のこと。複数の原告が個々に訴訟手続をせずに、代表者が訴訟を提起し、消費者の権利を一括して行使する。法律事務所に対する報酬は、成功報酬だけというケースも珍しくない。

クラック・スプレッド(crack spread)
 原油と石油製品との価格差のこと。リファイナリー・マージンとも呼ばれる。石油元売会社は、原油を購入して自社の製油所に投入した場合、ナフサ、ケロシン、軽油、重油などがどれくらいの比率で得られ、それを販売すると利益はいくらになるかという分析を常に行い、それにもとづいて購入する油種を決めたり、価格ヘッジしたりする。その際、重要な指標となるのがクラック・スプレッドで、石油元売会社にとっては粗利益にあたる。似たような表現に、天然ガスと電カ料金の価格差を意味する「スパーク・スプレッド」、石炭と電カ料金の価格差を意味する「ダーク・スプレッド」、大豆と大豆油や大豆ミールの価格差を意味する「クラッシュ・スプレッド」などがある。

グランドファーザーリング(grandfathering)
 既存の契約を優先させること。将来、法令が改正された場合でも、新しい法令の影響が既存の契約には及ばないようにするために行われる。

グリーンピース(Greenpeace)
 環境保全・自然保護の分野で世界的に有名なNGO。オランダのアムステルダムに本部を置き、世界45ヶ国に支部を持つ。1000人程度のスタッフを擁し、会費を払って活動を支援する会員(サポーター)が300万人近くいるといわれている。核実験、石油・ガス開発、商業捕鯨、遺伝子組み換え農作物などに反対し、各国政府や企業を標的に抗議活動を行なっている。横断幕を掲げて建物によじのぼったり、開発地域に無断で侵入して作業を妨害するなど、ときには非合法的な活動も辞さず、「エコ・テロリスト」として批判を浴びることもある。

軽油
 乗用車・バス・トラックなどのディーゼル・エンジン用に使われる石油製品の一種。原油の常圧蒸留の過程で、LPガス(プロパンガス)、ガソリン、ナフサ、灯油の次に取り出される。

ケロシン(kerosene)
 灯油。日本では、ジェット燃料用に使われる灯油のことを家庭用の灯油と区別してケロシンと呼ぷ。シンガポールで取引されるスポット価格(Singapore Jet Kerosene)が市場価格の基準となっている。

コールオプション(Call option)、プットオプション(put option)
 オプションとは、ある商品(株式、債券、通貨、コモディティなど)を特定の日(または特定の期間中)に、あらかじめ定められた価格(行使価格)で売買することができる権利。相手から原資産を買うことができる権利をコールオプション(call option)と呼び、相手に原資産を売ることができる権利をプットオプション(put option)と呼ぷ。

国際協カ銀行(JBlC:Japan Bank for Intemational Cooperation)
 1999年に日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合されて発足した政府全額出資の金融機関。日本の輸出入および日本企業の海外での活動の促進、ならびに発展途上国に対する経済援助のための資金や保証を提供する。2008年10月の組織改編において、株式会社日本政策金融公庫に統合される予定。日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行が統合して誕生する公的金融機関。

国際石油開発株式会社(lNPEX)
 石油・天然ガスの採掘・生産を手掛ける日本の石油開発会社。通称「インペックス」。1966年にインドネシア北スマトラ沖での石油開発のために北スマトラ海洋石油資源開発として設立された。その後、インドネシア・東カリマンタン、オーストラリア、カスピ海などで採掘・生産活動に参加してきた。2001年9月に国際石油開発に社名変更し、2004年11月には東証一部に株式を上場したが、2006年3月に国際石油開発帝石ホールディングスの完全子会社となるため上場を廃止。設立当初より、石油資源開発(JAPEX)の子会社的な存在であり、現在でもJAPEXは大株主の一つである。

国際仲裁裁判所
 仲裁とは、紛争当事者同士の合意により仲裁人を定め、その判断に解決を委ねる手続。一般に、@裁判に比べて迅速である、A専門性の高い事案に対応できる、B欧米での裁判では陪審員の判断が予想しにくいが、仲裁裁判所は予想しやすい等の長所があるといわれる。主な国際仲裁裁判所として、ロンドン国際仲裁裁判所、国際商業会議所(本部・パリ)、ストックホルム商業会議所仲裁協会などがある。

コストオーバーラン(cost overrun)
 石油などの開発プロジェクトにおいて、実際の開発コストが、当初予定していた金額を上回ること。または、当初の閉発コストを上回った金額。

コモディティ(commodity)
 原油、天然ガス、金、プラチナ、鉛、パラジウム、大豆、トウモロコシ、コーヒー、食肉、牛乳、ゴムなど、世界的に幅広く取引されている商品の総称。現物の受け渡しを前提としたスポット市場と、差金決済で現物の受け渡しがない先物市場で取引される。原油・天然ガスなどのエネルギー関連商品の先物取引所としては、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)とロンドン国際石油取引所(IPE、現ICEフユーチャーズ)が有名。

コモディティ・デリバティブ(commodity derivatives)
 コモディティを原資産とした先物・オプション・スワップなどのデリバティブ取引。実需家がヘッジ目的で取引する場合と、金融機関や機関投資家が資産運用または投機目的で取引する場合がある。

コンタンゴ(Contango)
 商品市場における「順ザヤ」(先高)のこと。原油などの現物価格や期近(きぢか)の先物価格よりも、期先(きさき)の先物価格のほうが高い状態をいう。より遠い将来に受け渡される商品のほうが、現物やより近い将来に受け渡される商品よりも、購入資金の調達コストや倉庫保管料が余計にかかるため、本来は期先の価格のほうが高くなる。
 この逆の状態を「バックワーデーション(backwardation=逆ザヤ、先安)」と呼ぷ。

コンバウンド・オプション(compound option)
 オプションを原資産とするオプション(複合オプション)のこと。コールのコール、コールのプット、プットのコール、プットのプットという4種類の取引の売りと買いがある。

コンプライアンス(compliance)
 法令遵守手続。対象プロジェクトの内容や計画の進め方が、本国や当事国の法令に適合するかどうか、あるいは国際条約や国連決議などに抵触しないかどうかを精査する社内手続。

サイン・ボーナス(sign bonus)
 油田の開発プロジェクトなどにおいて、利権獲得時に地元政府に支払う礼金のこと。大型の油田の場合、数億ドルにも達することがある。

先物取引(futures)
 ある商品(株式、債券、通貨など)を将来の特定の日に、あらかじめ定められた価格で売買する契約。通常、取引所に、上場された銘柄の取引(取引所取引)を指す。一方、当事者同士が相対で取引する場合には、先渡契約(foward contract)と呼ぶ。

サクセス・フィー(success fee)
ファイナンシャル・アドバイザーや弁護士などに支払う成功報酬のこと。開発プロジェクトにおけるファイナンシャル・アドバイザーへの報酬は、リテイナー・フィー(月ぎめ報酬)とファイナンス完了時のサクセス・フィーの組み合わせが多い。プロジェクトが特定の段階まで達したときに一定額を払う「マイルストーン・フィー(milestone fee)」を入れることもある。

サハリンT(Sakhalin 1)
 ロシアのサハリン島で計画されている9つの石油・天然ガス開発プロジェクトのうちの一つで、北東部のオドプト、チャイウォ、アルクトン・ダギ鉱区の三つを開発の対象にする。プロジェクト・スポンサーは、エクソンモービル、ロスネフチ、サハリン石油ガス開発(伊藤忠商事、丸紅、石油資源開発が出資、賂称SODECO)、ONGC(インド)など。2005年10月にチャイウォ鉱区で原油生産を開始した。ロシア政府はPSA(生産物分与契約)の見直し、ガスプロムの参画などを目論んでおり、政治的な駆け引きが行われている。

サハリンU(Sakhalin 2)
 ロシアのサハリン島で計画されている9つの石油・天然ガス開発プロジェクトのうちの一つ。1986年に米国のエンジニアリング会社マクダーモットがソ連と2鉱区での開発交渉を始め、そこに三井物産が資機材の販売やファイナンスでの役割を狙って参入した。その後、1991年に米国の中堅石油会社マラソン・オイルがオペレーターとして参加し、その翌年にはロイヤル・ダッチ・シエルと三菱商事が加わった。1994年にPSA(生産物分与契約)が締結され、1996年に「商業化宣言」がなされ、第1フェーズであるピルトン・アストソスコエ鉱区の本格開発が始まった。1998年にはピルトン・アストフスコエ鉱区に洋上プラットフォーム「モリクパック」を設置し、約8億ドルを投じた第一フェーズがほぼ完成し、石油の生産も開始された。この間、マグダーモットとマラソン・オイルが撤退し、ロイヤル・ダッチ・シェルがオペレーターシップを獲得し、三井物産・三菱商事との三社体制になった。さらに2007年にはガスプロムが参加し、現在の株主構成はガスプロム50%プラス1株、シェル27.5%マイナス1株、三井物産12.5%、三菱商事10%。第2フェーズでは、総額約194億ドルを投じて、ピルトン・アストフスコエ鉱区にもう一つ石油生産プラットフォームを建設し、陸上まで原油を輸送するパイプラインを敷いて通年生産を目指す。また、ノグリキ沖合いのルンスコエ鉱区のガス田を開発し、LNGを生産する。

ジェット燃料
 航空機のジェット・エンジン用の燃料。低気圧でも蒸発しないこと、低温でも凍結しないこと、発熱量が高いこと、燃焼が安定していることなど、厳しい条件が課されている。ケロシンを原料とするものと、JET-B(ガソリンとケロシンの中間の性質を持つ)を原料とするものがある。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME:Chicago Mercantile Exchange)
 1874年に設立された商品取引所。農産物を中心とする商品先物取引では世界最大規模に成長し、その後、金利・通貨・株式指数などのデリバティブ取引にも進出した。2007年7月にシカゴ商品取引所(CBOT、Chicago Board of Trade)を買収した。

事業化宣言(declaration of development date)
 PSA(生産物分与契約)などに規定されているステップで、これを発すると工事に着工しなくてはならない。いわばプロジェクトの「ポイント・オブ・ノー・リターン」である。

資源エネルギー庁
 石油、電力、ガス、原子力の安定供給および省エネルギーの推進などを目的とする経済産業省の外局。1973年の第一次オイル・ショックをきっかけに、旧通商産業省の鉱山石炭局と公益事業局を統合する形で.設立された。

重油
 乗用車・バス・トラックなどのディーゼル・エンジン用に使われる石油製品の一種。原油の常圧蒸留の過程で、LPガス(プロパンガス)、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油の次に取り出される。発電所、大型ディーゼル、大型ボイラーなどで使用される。

ショート(Short)
 現物取引でカラ売りしたり、デリバティブ取引で売り持ちすること。過去に買ったものを売るのではなく、新規で「売り」のポジションをもち、それを買い戻すことによって利益を上げる手法。株式のカラ売りの場合は、証券会社などから借りてきた現物を市場で売却し、株価が下がったところで買い戻し、借りていた現物を返却する。

ショート・スクイーズ(Short Squeeze)
株式やコモディディ取引で使われる用語で、ショート(売り持ち)のポジションをもっている者が一斉に買い戻しに入ったり、別の者が買占めをしたりすることで、市場で品不足が起き、当該株式(商品)の価格が急激に上昇すること。「スクイーズ」は「絞める」という意味で、どんどん損失が膨らみ、カラ売り筋の首が絞められるような状態を表わしている。

シロヴィキ
 ロシアの政治家や官僚のうち、治安機関、軍、内務省などの武力省庁出身者のこと。シロヴィキの語源は、ロシア語でカや武力を意味する「シーラ」に由来する。旧ソ連国家保安委員会(KGB、現FSB)出身のプーチン大統領の誕生によって、ロシアの政治エリートに占めるシロヴィキの影響カが増大した。現大統領のメドヴェージェフは法務・経済畑出身のテクノクラートで、シロヴィキではない。

シンガポール取引所(SGX=Singapore Exchange Ltd.)
 株式、デリバティブ、コモディティなどを扱うシンガポールの金融取引所。取引は完全に電子化され、立会場はない。1999年にシンガポール証券取引所(SES: the Stock Exchange of Singapore)とシンガポール先物取引所(SIMEX:thc Singapore Intemational Monetary Exchange)が合併して誕生した。

シンジケート・ローン(syndicate loan)
 一つの銀行では負担しきれない巨額の融資を、複数の銀行が融資団(シンジケート)を作ることによって実現する協調融資のこと。通称「シ・ローン」。1960年代から発達した。

随伴ガス
 原油を産出する際に発生する天然ガスのこと。随伴ガスは油層に戻さないと、油井の圧力が低下して採掘量が減ってしまうため、通常は油層内に再圧入される。また、硫化水素などの有毒物質が含まれているため、大気中に漏れ出た随伴ガスは焼却処理される。油田に見られるオレンジ色の炎(フレア)は、随伴ガスを焼却処理したものである。

スタンドバイLC(standby letter of credit)
 銀行が発行する一種の保証書のこと。貿易、金融、商品取引においては、取引相手の信用リスクをヘッジするために、銀行に保証料を支払ってスタンドバイLCを発行してもらう。

ストライク・プライス(Strike price)
 オプション取引における行使価格のこと。ある商品(株式、債券、通貨など)を、将来のある日(または特定の期間中)に相手から買ったり、相手に売ったりできる予め定められた価格のこと。

ストラテジック・インベスター(Strategic investor)
 事業面でのメリットを追求するために、他の企業やプロジェクトに資金を提供する投資家(企業)のこと。純粋に資産運用を目的とした投資家(financial investor)と区別するための用語。

スポツト(spot)
 石油や天然ガスなどの商品を、その場限りの単発の売買契約で取引すること。天然ガスなどは20年前後の長期契約にもとづいて取引されているので、通常はスポットで取引されることは少ない。

スポンサー(sponsor)
 開発プロジェクトにおける出資者(株主)のこと。プロジェクト・スポンサーとも呼ばれる。

スワップ取引
 金融業においては、異なる通貨または金利による支払債務を持つ者同士が債務を交換し、それぞれ相手方の債務を支払う契約を意味する。1981年に米国の投資銀行ソロモン・ブラザーズが世界銀行にドル建て債券を発行させ、これをIBMのスイスフラン・ドイツマルク建て債務と交換させたのが始まり。エネルギー業界では、特定の原油や石油製品、商品指数を対象として、固定価格と変動価格の交換(スワップ)や、異なる油種や製品、商品指数の交換などが行われている。

世界銀行(World Bank)
 第二次世界大戦直後に締結されたブレトンウッズ協定によって、1945年にIMFと前後して創設された国連の金融機関。正式には世界銀行という名称の組織は存在せず、国際復興開発銀行(IBRD、the International Bank for Reconstruction and Development)と国際開発協会(IDA、Intemational Development Association)の両方を、一般に世界銀行と呼んでいる。IBRDは主に発展途上国の政府やインフラ開発プロジェクトに対して長期(15〜20年)の融資を行う。一方、IDAは最貧国に対する長期無利息の借款を提供している。これら二つの機関に姉妹機関である国際金融公社(IFC)や国際投資保証機構(MIGA)などを併せて世界銀行グループと呼ばれる。

石油公団(Japan National Oil Corporation)
 日本政府が、自主開発原油獲得を目指し、昭和42年(1967年)に設立した特殊法人。民間企業による石油の探鉱・開発を支援するため、費用の70%までを公団を通じ、政府が負担する仕組みであった。公団は民間の石油開発会社から持ち込まれる案件を審査し、投融資の可否を決めていたが、通産官僚の天下りを受け入れる企業の案件に対しては審査が甘く、多額の不良債権を作った。2002年の法改正により組織が解体され、その大部分は、2004年に設立された独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に引き継がれた。

石油資源開発(JAPEX:Japan Petroleum Exploration Co.,Ltd.)
 日本政府が石油資源開発株式会社法にもとづく特殊会社として1955年に設立した石油・天然ガスの開発会社。国内では北海道、秋田、山形、新潟、海外ではカナダ、インドネシア、中国、フィリピン、リビア等に権益を保有する。旧石油開発公団の設立に際し、1967年から1970年の間、同公団事業本部として編入された後、1970年4月に同公団から分離、商法に基づく民間会社として再出発し、2003年12月に株式公開し、東京証券取引所第一部に上場した。

石油メジヤー
 原油の採掘から精製、その後の石油製品の販売までを一貫して行っている石油会社のこと。かつては最大手7社をセブン・シスターズ(Seven Sisters)と呼んでいたが、買収合併を経て、エクソンモービル(米)、シェブロン・テキサコ(米)、コノコフィリップス(米)、BP(英)、ロイヤル・ダッチ・シェル(蘭)、トタール(仏)の6社体制となった。この6社をスーパーメジャー(Super Majors)と呼ぷこともある。近年、「資源ナショナリズム」を背景に産油国の国営石油・ガス会社の力が増大してきており、サウジアラムコ、ガスプロム(ロシア)、NIOC(イラン)、CNPC(中国石油天然ガス集団公司)、ペトロナス(マレーシア)、ペトロブラス(ブラジル)、PDVSA(ベネズエラ)の7社を「新セブン・シスターズ」と呼ぷことがある。

探鉱、開発
 探鉱とは、石油や天然ガスの存在の有無、範囲、および商業生産の可能性を調べる活動。開発とは、探鉱により確認された油田や天然ガス田に掘削装置やパイプライン等を据え付け、地上に取り出して処理できるようにする(すなわちそれら鉱物資源の商業生産を可能ならしめる)こと。

テイク・オア・ペイ(take or pay)
 石油や天然ガスなどの長期売買契約の一形態。買い手が、一定量の商品・サービスの引き取りを無条件で約束するもの。買い手が約束どおりの商品・サービスの引き渡しを受けない場合でも、定められた金額を支払う義務がある。市場リスクを完全に買い手に転嫁できるため、売り手に有利な契約形態で、LNGプロジェクトなどを成立させるために、こうした契約が結ばれる。

デフォルト(default)
 債務不履行のこと。債券の発行者や融資の借り手が、利息や金利の支払いを滞らせたり、元本の返済ができなくなること。

デューディリジェンス(due diligence)
 企業買収や株式の発行・売り出しの際に、買い手や幹事証券会社が、対象企業の資産や負債に関して行う詳細な企業監査。通常は、弁護士や会計士などのプロフェッショナルを雇い、ビジネス(事業)、アカウンティング(会計)、リーガル(法務)、ファイナンス(財務)などの分野ごとに行う。

デリバティブ(derivatives)
 通貨、債券、株式、商品などを原資産とする金融取引。日本語では「金融派生商品」と訳される。代表的なものに先物(一定の価格で将来売買を行なうことを約束する取引)、オプション(オプション料を対価に、将来一定の価格で売買を行なう権利を売買する取引)などがある。デリバティブを使用する目的は価格変動リスクのヘッジや少額の原資で多額の投機を行なうことなどである。


電力自由化
 発電事業や配電事業の自由化のこと。日本では、欧米に10年ほど遅れて2000年3月から電力自由化が始まった。既存の10電カ会社が地域独占していた電カ小売事業が、電圧2万ボルト・電カ2000キロワット以上を使用する大口需要家向けに限り、新規参入業者や他地域の電カ会社に開放された。その後も段階的に自由化が進み、2005年4月から50キロワット以上の需要家向け小売事業が開放されている。

投資銀行(investment bank)
 米国では1933年のグラス・スティーガル法により証券業務と銀行業務の兼営が禁止されたが、証券業務を行なう金融機関を投資銀行と呼ぷ。「銀行」という名が付いているが、業態としては証券会社である。主要な業務は株式、債券、M&A(企業買収)。顧客は大手事業会社、機関投資家、富裕個人客が中心。なおグラス・スティーガル法は1999年11月に実質的に廃止され、米国では投資銀行と商業銀行が合併するケースも出てきている。主な投資銀行に、ゴールドマン・サックス、メリル・リンチ、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースなどがある。

ドバイ原油
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国で産出される原油。一般に中東産油国から日本などアジア向けの原油の価格は「ドバイ原油及びオマーン原油の平均価格」のスポット価格の平均を基準に決められている。東京原油スポット市場ではドバイ原油の現物が取引され、東京工業品取引所ではドバイ原油先物が上場されている。

ドライ・ポリシー(dry policy)
 飲酒の禁止。大手石油会社などが採用しているHSE(health safety and environment)基準の一項目で、石油関連施設での飲酒を禁止するもの。

トレイン(train)
 LNG(液化天然ガス)の生産施設を指す言葉。LNGは、天然ガスから水銀、酸性ガス、水分、重質炭化水素などを除去・分離した後、窒素、メタン、エタンなどの混合気体を冷媒として加え、摂氏マイナス162度に冷却し、体積を600分の1に圧縮し、液化して作られる。超高圧と超低温の処理設備が必要で、工程数も多く、パイプが複雑に絡み合った長い生産施設は、1系列(トレイン)」と呼ばれる。

ドローダウン(drawdown)
 金融機関から融資を引き出し、自分(自社)の銀行口座に資金を入金してもらうこと。

内航船
 日本の領海内を航行する輸送船のこと。石油や石油製品は、外航船(外洋を航行する船)で日本国内の石油基地まで運ばれ、そこから内航船でユーザーのもとへ輸送される。ユーザーは、主に電カ会社と石油会社だが、二度のオイルショック以降、電カ会社が原子カ発電やLNG焚き発電を増やし、石油への依存度を下げたため、内航船の数は大きく減り、政府も交付金を与えて内航船業者の廃業を進めてきた。そのため、緊急時に内航船の数が不足するという弊害が出てきている。

ナフサ(naphtha)
 粗製ガソリンのこと。ナフタともいう。石油化学の最も重要な基本原料の一つ。原油を常圧で蒸留したときに、摂氏25度から170度の沸点範囲で得られる無色の揮発油。摂氏800度前後で加熱分解して、エチレン、プロビレン、ブタジエン、BTXなど石油化学製品の原料に精製する。硫黄の含有量が少ないので、電カ会社などが直接燃料として使用することもある。

ニック・リーソン(Nick Leeson)
 イギリスの名門マーチャント・バンク、ベアリング・ブラザーズに勤務していたイギリス人。同行シンガポール支店で、日経平均先物などの自己勘定取引を手掛け、1995年1月の阪神淡路大震災で日本の株式市場が暴落した際に多額の含み損を抱えた。最終的に8億6000万ポンド(約1380億円)という銀行の自己資本金を超過する莫大な損失を発生させ、同行は実質的に消減した。リーソンは事件発覚後、マレーシアヘ逃亡し、その後、ブルネイを経てドイツに潜伏中に逮捕された。シンガポールの刑務所で6年半の刑期を勤め上げ、現在はアイルランド在住。

ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX New York Mercantile Exchange)
 世界最大規模の商品先物取引所。原油、天然ガス、石炭、金、銀、プラチナ、コーヒー、綿花など幅広い商品(コモディティ)の先物を上場している。なかでも原油(WTI)先物の価格水準は世界の原油価格動向に大きな影響を与えている。

熟効率
 火力発電の過程(燃料を燃焼させた熱で水を蒸気に変え、蒸気タービンを回して発電する)で、燃焼した燃料が持っている熱エネルギーに対し、発生した電気エネルギーの割合のこと。通常40%程度。

ノン・コマーシャル(non commercial)
 非商業取引。原油などの商品を、実需ではなく投機目的で取引すること。米国商品先物取引委員会(CFTC)が発表するデータでは、先物取引の当事者をコマーシャル(商業取引)とノン・コマーシャノレ(非商業取引)に分けている。前者は石油会社や電力会社など現物を必要とする実需家、後者はヘッジファンドや金融機関など現物を必要としない投資家や投機筋。

ノン・リコース(non recourse)
 返済原資を、対象事業や資産、資産から生じる収益などに限定すること。「ノン・リコース」とは「遡及しない」という意味で、事業や資産の所有者(プロジェクト・スポンサー)にまで遡って返済を請求できないことを意味している。

バイバック(buyback)
 直訳は「買い戻し」。石油業界では、自国の石油開発を外国企業に委ねる場合の契約の一形態のこと。外国企業が費用の多くを負担して探鉱と開発を行うが、生産段階に入ったところで役割は終了し、その後は、地元企業がオペレーターとなって生産する原油を受け取り、探鉱・開発費用と一定の利益率(年率7〜20%程度)を回収する。回収期間は通常5〜7年で、20世紀前半に一般的だった利権(コンセッション)契約が期間数十年から百年、現在一般的な生産物分与契約(プロダクション・シェアリング、略称PSA)が期間25年程度であるのに比べて短く、また、石油価格が上昇しても外国企業側にメリットはない。

バクー(Baku)
 油田アゼルバイジャン共和国の首都バクーがあるカスピ海西岸沖に位置する大規模油田。世界的にみても最も歴史のある油田の一つで、1830年代からの100年間において世界の石油産出量の大半を占めていたという記録もある。

パブリック・コンサルテーション(public consultation)
 石油・ガス開発などの大規模プロジェクトにおいて、事業主体や融資をする金融機関が地域の住民やNGOなどから意見や要望を聞く公聴会。希望すれば誰でも参加できる。1980年代ころから環境問題が社会的関心を集めたことにともなって、大型プロジェクトでは必須のステップになった。

バレル(Barrel)
 体積を表わす単位で、原油や石油製品の計量に使われる。1バレル=42ガロン=158.987リットル。重さでは、1メトリック・トン=約7.33バレル。

ビューティー・バレード(beauty parade)
 ファイナンシャル・アドバイザー(金融機関)やリーガル・アドバイザー(法律事務所)を選定する際に、複数の応募者の中から最適な相手を選定するためのオーディション。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA=financial advisor)
 開発プロジェクトやM&Aの実務において、資金計画をはじめ財務面での助言を行う投資銀行などの金融機関。通常はスポンサー(出資者)がビューティー・パレードを行って選定する。

フェーズ(phase)
 段階のこと。大規模な開発プロジェクトでは、最終的な完成に至るまで、プロジェクトをいくつかのフェーズに分けて進めることが多い。

プライベートエクイティ(private equity)
 証券取引所に上場していない株式(未公開株)のこと。将来上場できるかどうか、あるいは、いつ上場できるかといった要素が不確実である反面、ひとたび上場されれば大きなリターンを得ることができる。「プライベートエクイティ・ファンド」は、こうした未公開株への投資に特化したファンド。

プラッツ・タイム(Platts' time)
 プラッツ(Platts)は、米国の大手出版社マグロウヒル傘下のエネルギー商品市況情報会社。アジアにおける原油や石油製品の多くは、同社の情報スクリーンを通して取引されており、シンガポール時間の午後4時まで市場参加者たちは、売りと買いの引き合い(イニシャル・ビッド)をどんどんスクリーンの中に入れる。午後4時になるとプラッツが引き合い全体のサマリーを出し、その後4時25分までは、イニシャル・ビッドの数量や受け渡し条件は変えられないが、価格は変えることができる。この間、市場参加者たちは、ヤフーメッセンジャーで価格の交渉を行い、売りと買いの価格差は徐々に縮まって行く。4時25分から4時半までの五分間で、取引を成約ないしは解消し、それをプラッツに報告する。このように午後4時から4時半の時間帯に取引が集中的に行なわれ、その30分間を「プラッツ・タイム」と呼ぷ。

ブリッジ・ローン(bridge loan)
 つなぎ融資のこと。企業やプロジェクトが一時的に資金不足が生じそうな場合に、短期的に金融機関などから融資を受けること。

ブレント原油(Brent Crude)
 主にイギリスの北海にあるブレント油田で主に産出される、硫黄分の少ない軽質油。北海原油ともいう。ロンドンのICEフューチャーズに上場されているブレント原油先物(Brent Crude futures)は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場されているWTI先物とともに、世界の原油価格動向に大きな影響を与えている。

プロジェクト・ファイナンス(project finance)
 プロジェクトの資産や将来の収益のみを返済原資とし、プロジェクトの出資者(プロジェクト・スポンサー)は、借入金の返済義務を負わない融資の形態。

プロスペクタス(prospectus)
 目論見書のこと。有価証券(株式や債券)を投資家に販売する際に作成・配布される資料で、証券の内容(諸条件)や発行者の事業内容・業績等を記載した文書。投資家が投資判断を下す目安となる。M&A(企業買収)の実務では、売却対象企業に関して作成される冊子もプロクペクタスと呼ばれる。

べ一スメタル(base metal)
 貴金属や非鉄金属のうち、古くから利用され、比較的埋蔵量の多い金属。鋼、アルミ、鉛、亜鉛、錫など。非鉄金属でも埋蔵量の少ないものは希少金属(レアメタル)と呼ばれる(クロム、コバルト、ニッケル、モリブデン、パラジウム、インジウム、タングステンなど)。

ヘッジ(hedge)
 価格変動リスクなどにともなう損失を相殺(予防)すること、あるいはその手段。例えば、6ヶ月後に必要になる商品の値上がりリスクをヘッジするために、6ヶ月後に期限を迎える先物やコールオプションを買っておくこと。

日本の航空会社は元売石油会社からジェット燃料を購入するが、価格はJCC(Japan Crude Cocktail)にリンク。

スワップ取引  20.75ドルx 10万バレル/月 x 3ヶ月
 航空会社  相手に3ヶ月間この固定価格で支払い、相手から実勢価格を受け取る。
         元売から実勢価格で購入

ヘッジファンド(hedge fund)
 私募形式で少数の機関投資家や富裕個人投資家から資金を集め、伝統的な投資対象(上場企業の株式や債券など)以外の資産(プライベートエクイティ、コモディティ、デリバティブなど)にも投資し、自由な投資スタイル(カラ売り、レバレッジなど)で運営される投資ファンドのこと。名称の「ヘッジ」が示すように、本来はリスクを極力ヘッジして、市況の良し悪しにかかわらず絶対的なリターンを目指すファンドを意味したが、現在では、高いレバレッジ(借入金で資産を膨らませ、自己資金に対する高率のリターンを狙うこと)やアクティビスト的行動でハイリターンを志向するファンド多い。

ペメックス(PEMEX:Petroleos Mexicanos)
 メキシコの国営石油会社。1930年に自国の石油産業を英米資本から取り返したメキシコでは、憲法27条(石油法)で、石油・天然ガスの上流事業はPEMEXが独占すると定めている。しかし、1994年に起きた「テキーラ・ショック」(ペソ暴落)で経済が疲弊し、石油産業への投資が十分にできない一方、電力部門を中心にガス需要が増大したため、「サービス契約(multiple-service contaract)」という法的に権益が移転しない形で、探鉱・開発への外資の参入が検討されるようになった。

ヘンリー・ハブ価格(Henry Hub)
 9本の天然ガス・パイプラインが合流する地点であるヘンリー・ハブ(米国ルイジアナ州)を受け渡し地とする天然ガスの先物価格。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場され、米国で取引される天然ガス価格の基準になっている。

簿価
 資産の帳簿上の価格。その資産を市場などで実際に売却した場合に得られる価格である「時価」と異なっている場合が少なくない。

簿外取引
 貸借対照表に計上されない取引のこと。オフバランス(シート)取引ともいう。具体的には、デリバティブ取引(先物、オプション、スワップなど)やリース、債務保証行為など。金融取引の高度化・複雑化に会計制度の整備が追いつかないこともあり、近年急速に増加しており、取引実態の適切・透明な情報開示を求める動きが強まっている。なお、すでにバランスシートに計上されている資産を、SPC(特別目的会社)に売却したり、証券化することにより、バランスシートから削除・減額することを「オフバランス化」という。

ボラティリティ(Volatility)
 市場価格の変動の程度を表す言葉で、「変動性向」とも訳される。金融業界では通常、過去の市場価格の標準偏差の大きさをボラティリティとみなす。例えば、株価の日々の終値が、過去何日間かの平均価格に比べてどれだけバラついていたかを調べ、バラつきが大きかった場合はボラティリティが高いと考える。ボラティリティが高いほどオプション・プレミアムは高くなる。

本質的価値
 オプションの評価損益。つまり、今そのオプションを権利行使したらいくらの利益が出るかという、オプションの行使価格と現在の市場価格との乖離を意味する。例えば、行使価格1000円のコールオプションがあり、現在の当該商品の市場価格が1200円だとすれば、すぐに権利行使して(1000円で買って)、市場で1200円で売れば、差し引き200円の利益が出るので、この場合の本質的価値は200円である。

マーク・トゥ・マーケット(mark to market)
 資産を取得価格ではなく、市場の実勢価格にもとづいて時価評価する会計処理方法。先物やオプションのように、決済日が訪れるまでは損益が確定しないポジションを保有する場合には、当該取引をマーク・トゥ・マーケット処理して、時価(含み損益)を財務諸表に反映させなくてはならない。

マージンコール(margin call)
 追加担保(追証)の差し入れ要求のこと。相場の変化で、差し入れてある担保では足りなくなったとき、取引相手(カウンターパート)から求められる。

マーチャント・バンク(merchant bank)
 米国の投資銀行に相当する英国の金融機関。18世紀に産業革命に伴う英国の貿易量拡大を背景に、貿易手形の引受け(支払保証)を初期の業務として発達した。双壁はベアリング・ブラザーズとNMロスチャイルドであった。第二次大戦後はユーロ債の引受け・販売業者として中心的な役割を担った。しかし、1984〜1988年にかけて行なわれた英国のビッグ・バン(金融規制の緩和)以降は、資本力で優る欧米金融機関に次々と買収され、現在では小規模のマーチャント・バンクが残っているだけである。

マイケル・ミルケン(Michael Milken)
 1980年代に、米国の準大手投資銀行ドレクセル・バーナムでジャンク・ボンド市場を開拓し、5億ドル以上の年収を得ていた伝説的金融マン。インサイダー取引で逮捕され、末期の前立腺癌にもかかったが、司法取引で10年の刑を2年に短縮し、徹底した菜食主義とヨガで癌を克服した。現在は、投資、M&Aアドバイス、健康関係の慈善事業にカを入れている。

マテリアル・チェンジ(material change)
 金融業界でよく使われる法律用語で、「重大な事実の変化」を意味する。これが発生すると、取引の中止や解消の事由となる。

モラトリアム(moratorium)
 政府が法令を出して債務の返済を一定期間だけ猶予させること。戦争、暴動、天災などの非常時、債権の回収困難が予想される場合、政府当局は法令により国内の債務者の一時的返済猶予に踏み切る。国際的には、1998年のロシアのように外貨枯渇・支払資金不足をきたした政府がみずからの債務のモラトリアムを宣言して、債務履行を停止する場合がしばしばある。

ライボー(LlBOR:London Interbank Offered Rate)
 ロンドン銀行間取引金利。国際金融取引の基準となる金利で、各通貨ごとに存在し、その通貨の資金事情に応じて変動する。国際的な融資契約やFRN(変動利付債)において、金利は、ライボーに何%上乗せしたものとして決められる場合が多い。貸し手の銀行から見ると、ライボーが仕入れ値で、上乗せ金利(スプレッド)分が利益となる。

リーガル・アドバイザー(legal advisor)
 法律顧問のこと。石油・ガス開発プロジェクトやプロジェクト・ファイナンスにおいては、法的なリスク負担を契約書に明記しておくことが重要になるので、法律面の助言を行うリーガル・アドバイザーの役割が非常に大きい。

リーガル・スタイビライゼーション(legal stabilization)
 直訳は「法的な安定化」で、プロジェクトを進める上で法律的な矛盾が生じないように、法改正(legal stabilization)などを行って、プロジェクトの法的環境を整備すること。ロシアのような法体系が複雑な国での開発プロジェクトでは、ある開発行為が、ある法令に照らし合わせれば合法だが、別の法令では違法になるという状況が生じることがあるので、リーガル・スタイビライゼーションが必要になる。

リスケジューリング(rescheduling)
 返済を繰り延べすること。予定通りの返済が困難になった場合に、貸し手の承諾を得て、返済金額の減額や返済期間の延長などを行う。通称「リスケ」。

リテイナー・フィー(retainer fee)
 ファイナンシャル・アドバイザーやリーガル・アドバイザーに支払う月ぎめの報酬。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(Rainforest Action Network、略称RAN)
 1985年にサンフランシスコで設立された森林保護を目指すNGO。「環境アクティビスト」として知られ、ボランティアを動員して攻撃的なキャンペーンを仕掛けることが多い。

レター・オブ・コンフォート(letter of comfort)
 念書のこと。政治的な理由や実務上の都合により正式な契約書を作成することができない場合などに、次善の策として作成される。

レンダー(lender)
 貸し手のこと。プロジェクト・ファイナンスなどに資金を融資する金融機関を指す。借り手はボロワー(borrower)という。

ロイヤルティ(loyalty)
 エネルギー開発などにおいて、原産国に対して支払う地下資源使用料のこと。多くの場合、プロジェクトのスポンサー(出資者)は、商品の売り上げの一定割合をロイヤルティとして支払う。

ローカル・コンテンツ(local contents)
 プロジェクト等における資機材・サービスの現地調達部分のこと。石油・ガス開発などの国際的なプロジェクトの場合、地元の経済振興や雇用確保のために、一定割合以上の資機材や建設工事の従業員の現地調達がプロジェクト・スポンサーに課されることが多い。

ローサル重質油
 低硫黄で重質の原油。硫黄元素は英語でサルファー(sulfur)といい、サルファーの含有率が低い(1ow)から「ロー(low)サル(sul)」と呼ばれる。反対に、硫黄の含有量が高いことを「ハイ(high)サル(sul)」と呼ぷ。意味としては「スウィート」、「サワー」と同じ。

ロスネフチ(Rosneft)
 ロシアの国営石油会社。ソビエト連邦時代のソ連石油工業省を母体に設立された。サハリン、シベリア、チェチェンを含む南ロシアで石油と天然ガスを生産している。同社は、2003年にユコス社長ミハイル・ホドルコフスキーが脱税容疑で逮捕・起訴された後、ロシアの石油の20%を産出していたユコスの主要な石油資産を傘下に収めた。現在では、世界トップ10に食い込むほどの巨大石油企業に成長している。

ロビイスト(lobbyist)
 政治家などの有カ者に働きかけて、自分たちに有利な政策の実現を目指す人物または団体。この言葉は、米国ワシントンにあるウィラード・インターコンチネンタノレ・ホテル(開業1850年)のロビーから発祥した。第18代大統領ユリシーズ・S・グラントが、仕事の後、同ホテルロビーで葉巻とブランデーを楽しむことが多かったため、彼に働きかけようとする人々がやってくるようになり、大統領はそうした人々を「ロビイスト」と呼んだ。

ロンドン国際石油取引所(lPE:lnternational Petroleum Exchange)
 NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)と並び、原油関連商品の取引所として有数の規模を誇る取引所。なかでもブレント原油先物(Brent Crude Futures)の価格水準は、世界の原油取引に大きな影響を与える重要指標となっている。2005年にICEに買収され、ICEフユーチャーズ(ICE Futures Europe)に統合された。

ABP
 オランダ公務員教職員年金基金であるStichting Pensioenfonds ABPの通称。世界最大級の公的年金基金の一つで、2008年4月末時点の加入者数は約260万人、運用資産は約2090億ユー口(約33兆円)。

AlPAC(the American lsrael Pub1ic Affairs Committee)
 アメリカ・イスラエル公共問題委員会のこと。通称「アイパック」。米国の政策を親イスラエル的なものにすることを目的とする米国のロビイスト団体。全米各地に10万人以上の会員を擁し、米国で最も影響カの強いロビイスト団体の一つといわれている。ワシントンの国会議事堂近くに本部を構え、100人以上の職員と1O万人以上の会員を有し、年間2000回以上国会議員に会い、100以上の親イスラエル法案を後押ししているといわれている。

API度
 米国石油協会(American Petroleum Institute、略称API)が定めた原油と石油製品の比重を示す単位。水の比重を10とし、数値が高いほど軽質。原油の場合、39度超が「超軽質」、34〜38度が「軽質」、29〜33度が「中質」、26〜28度が「重質」、26度未満が「超重質」で、軽いほどガソリンや灯油など高価な製品留分が多く、価格も高い。

A重油
 日本国内で農業用・漁業用として販売されている石油製品の一種。ディーゼル車の燃料として販売されている軽油とほとんど同じ成分だが、日本独自の税法により「重油」に分類される。軽油には1リットルあたり30円程度の軽油引取税がかかるが、用途を農業用・漁業用に限定し「A重油(一種)」として販売すると無税になる。より沸点が高く、重粘質のものに「B重油(二種)」「C重油(三種)」があり、発電所、大型ディーゼル、大型ボイラーなどで使用される。

Aローン、Bローン
 IFC(国際金融公社)やEBRD(欧州復興開発銀行)などの公的金融機関が、自己勘定で行う直接融資のこと。民間銀行との協調融資である「Bローン」と組み合わせて供与されることが多い。

Btu(British Thermal Unit)
 熱量の単位で、エネルギー・ビジネスにおいて天然ガスなどの取引量を表すのに用いられる。1Btuは約0.25キロカロリー。100万Btuは原油0.172バレル、電カ293,100kWhに相当する。

CAPEX(capital expenditure)、OPEX(operating expenses)
 CAPEXは設備投資のこと。機械や建物などの資本性資産(capital assets)を取得したり、改善するための費用を指す。これに対して、OPEXは販売・一般管理費のこと。事業を進めるうえで経常的に発生する人件費、光熱費、通信費、交通費など。

CEO(chief executive officer)
 最高経営責任者のこと。米国では会長が当該企業のナンバーワンであることが多く、通常会長がCEOを兼務している。CEOは取締役会を主宰すると共に、企業の方針決定、長期事業計画の策定などに責任を持つ、いわば企業のトップである。日本では社長がCEOの役割を担っているケースが多い。

CFO(chief financial officer)
 最高財務責任者(会社の財務部門の総責任者)のこと。一般に欧米企業では、CEO、COO(最高執行責任者)に次ぐ重要な役職。

CFTC(Commodity Futures Trading Commission)
 米国商品先物取引委員会(本部・ワシントンDC)のこと。原油、天然ガス、貴金属、穀物、家畜といった商品(コモディティ)の先物取引を監督する公的機関。毎週1回、全米で取引されている商品先物取引のデータを発表している。

CIF(cost,insurance, freight)、FOB(free on board)
 CIFは輸出入取引における商品の価格決定方式の一つで、目的地までの運賃と保険料を売買契約に含めるやり方。したがって、売主が輸送リスクを負担し、受入基地に届けるまでの責任を持つ。これに対して、FOBは「本船渡し」または「現地渡し」と訳され、目的地までの運賃と保険料を売買価格に含めない。したがって、売主の責任は荷積みまでで、輪送リスクは買主が負担する。
 LNGの取引においては、近年、船会社や商社に取られる中間マージンを嫌って、電力会社やガス会社が自前でLNG船を取得し、CIFからFOBに変える動きが出てきている。

CNOOC(China National Offshore Oil Corporation)
 中国海洋石油総公司のこと。中国三大石油会社(他の二つは中国石油天然気集団と中国石油化工)の一つ。中国湾岸だけでなく、インドネシア、オーストラリア、中央アジア、アフリカでの石油開発に積極的に取り組んでいる。2005年には米国の石油会社であるユノカル社の買収に名乗りを上げたが、米国議会の反対に遭い、断念した。

CNPC(China National Petroleum Corporation)
 中国石油天然気集団公司のこと。路称は「ペトロチャイナ」。原油と天然ガスの生産・供給、石油化学工業製品の生産・販売で、中国最大の規模を誇る国有企業で、中国三大石油会社の一つ。

CSRC(China Securities Regulatory Commission)
 中国の証券監督管理委員会のこと。中国企業の国内外での活動を監督し、中国の証券取引所の規制を司る国家機関。

DJAlGCl (Dow Jones A1G Commodity lndex)
 米ダウ・ジョーンズ社が発表している商品先物の総合指数。米国の取引所に上場されている商品(エネルギー、貴金属、穀物、家畜など)のうち19品目を対象とし、その時点での生産高と流動性を考慮して組み入れ比率を決定し、加重平均して指数を算出している。

DSR (debt service reserve account)
 支払準備資金口座のこと。プロジェクト・ファイナンスなどの実務において、不測の事態が発生した場合でも、借入金の元利金返済が滞らないように、あらかじめ一定の現金を積み立てておく銀行口座。

EBRD (European Bank for Reconstruction and Development)
 欧州復興開発銀行のこと。1991年に、旧ソ連・東欧地域の近代化と市場経済化を促進するための投融資機関として設立された。本部はロンドン。出資者は61の国と2つの国際機関(欧州委員会と欧州投資銀行)。東欧諸国がEUに加盟して、投融資の対象から外れてゆくにつれ、存在意義を問われつつある。同種の国際機関に、アジアを対象とするアジア開発銀行、米州を対象とする米州開発銀行、アフリカを対象とするアフリカ開発銀行などがある。

ECA (Export Credit Agency)
 各国の輸出信用機関のこと。自国企業の海外への輸出や投資を支援するため、貿易保険の供与、融資、民間銀行の融資への保険付与、投資への保険付与などを業務とする。主なECAに、USEXIM(米国輸出入銀行)、ECGD(英国輸出信用保証局)、Coface(仏貿易保険会社)、ユーラー・ヘルメス(独信用保険会社)、NEXI(日本貿易保険)、JBIC(国際協カ銀行)などがある。

ECGD (The Export Credits Guarantee Department)
 英国輸出信用保証局のこと。英国の公的機関で、英国製品・サービスの輸出および英国企業の海外投資を支援するために、保険の引受を行っている。

FlD (final investment decision)
 最終投資決定のこと。大規模な開発プロジェクトにおいて、スポンサー(出資者)が各社内において、投資を最終的に決定すること。FIDの後、開発宣言(または事業化宣言、declaration of development date)を行い、建設工事の着工ヘと進む。

FSB (Federal Security Service of the Russian Federation)
 ロシア連邦保安庁のこと。ソビエト連邦時代のソ連国家保安委員会(KGB)の一部を引き継ぎ、ロシア連邦の防諜、犯罪対策を行う治安機関。KGB出身のプーチン前大統領のもと、年々権限を拡大し、国境警備、通信傍受、金融犯罪捜査などの機能も担うようになり、過去のKGBの姿に近くなっている。

FTSE (Financial Times Stock Exchange)
 通称「フッツィー」。イギリスのファイナンシャル・タイムズ紙とロンドン証券取引所(LSE)による合弁会社で、LSEなどの上場企業を対象とした株価指数を発表している。なかでも、LSEの上位100銘柄(時価総額べ一ス)を対象とした「FTSE100種総合株価指数(FTSE100 Index)」は、欧州を代表する株価指数として知られている。

GSCl (Goldman Sachs Commodity lndex)
 米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックスが発表している商品指数。エネルギー、貴金属、穀物、家畜など24品目の商品先物価格を加重平均したもので、原油や天然ガスなどのエネルギー関連品目が占める割合が大きいのが特徴。

HSE (health, safety and environment)
 開発プロジェクトにおいて、周辺住民や従業員などの健康・安全・環境のリスク要因を管理・低減するための活動や基準を意味する言葉。

lCE (lntercontinental Exchange)
 世界最大規模の金融デリバティブの電子取引所(本部:米国アトランタ)。エネルギー、農産物、通貨、株価指数、排出権といった幅広い品目の先物・オプションなどを上場している。2005年にロンドン国際石油取引所(IPE)を買収し、ICEフューチャーズ(ICE Futures Europe)として傘下に収めた。

IFC (lntemational Finance Corporation)
 世界銀行グループの対民間投融資機関で、日本語名は「国際金融公社」。開発途上国の民間プロジェクトに対して、融資や投資を行なう。

lLSA (lran-Libya Sanctions Act)
 米国で1996年8月に発効したイラン・リビア制裁法のこと。イランまたはリビアに年間2000万ドル以上の投資を行ない、それが「石油資源開発に著しくかっ直接貢献した」と大統領が判断する者に対し、制裁を科すことができる。2001年8月に5年間、2006年8月に約1ヶ月延長され、その後、2006年9月にILSAを受け継ぐ内容の「イラン自由支援法案 (IFSA, Iran Freedom Support Act)」が成立した。

lMF (lnternational Monetary Fund)
 国際通貨基金。国際通貨・為替制度の安定化を目的に設立された国連の専門機関。本部はワシントンで、現在の加盟国数は185。第二次世界大戦直後に締結されたブレトンウッズ協定にもとづいて、1946年3月に世界銀行とともに創設され、1947年から業務を開始した。国際収支の赤字を出している加盟国に返済期間1年から10年の融資を行う。融資に際しては国際収支改善のための経済政策の遂行を義務づける。

IRR (internal rate of return)
 ある事業や資産へ投資しようとする金額と、その投資により将来得られるであろうキャッシュフローの現在価値が等しくなる利率(内部収益率)のこと。投資の採算性を判断する最も重要な指標である。

IUCN (lnternational Union for Conservation of Nature and Natural Resources)
 国際自然保護連合。1948年に設立された世界最大規模の自然保護NGO。本部はスイスのグラン。持続可能な社会を実現し、自然保護および生物多様性に関する国レベルの戦略を準備・実行するための支援を行っている。140の国と地域から200以上の政府機関、800以上の非政府機関が会員になり、世界62ヶ所のオフィスに1,100人以上の専門家を擁する。

LC (letter of credit)
 輸入信用状のこと。貿易相手の支払いを確実にするため、銀行が発行する支払い保証書。これにより、輸出業者は輸出代金の回収を確保して安心して商品の船積みを行い、輸入業者は、輸入代金を前払いする必要がなくなる。

LNG (liquified natural gas)
 液化天然ガス。気体である天然ガスをマイナス162度以下に冷却し、液体にしたもの。体積が気体の600分の1に縮小するので、効率的な輸送・貯蔵が可能になる。

NATO (North Atlantic Treaty Organization)
 米国を中心とした米国・欧州諸国の軍事同盟。共産主義の脅威に対処するために1949年に発足した。条約の内容は、@国連憲章にもとづく紛争の平和的解決、A加盟国の1ヶ国でも攻撃された時は全加盟国への攻撃とみなし、必要ならば武力行使を含む行動をとる、など全14条。現在の加盟国は26ヶ国。

NlOC (National lranian Oil Company)
 イラン国営石油会社。1951年のイラン革命の際に、アングロ・イラニアン・オイル・カンパニー(AIOC)の資産を受け継ぐ形で設立された国営企業。イラン国内におけるすべての原油生産・販売を管理している。

NORlNCO (The China North lndustries Corporation)
 中国北方工業総公司。中国最大の兵器製造・販売会社。人民解放軍を母体とする軍産複合体で、傘下に120以上の企業群と30万人を超える従業員を擁する。北朝鮮の長距離ミサイル開発に協カし、中東・アフリカ諸国に大型戦車、地対空ミサイル、ロケット砲弾、自動小銃などを輸出している。中国が海外で油田を獲得する時、中国の石油会社とNORINCOが一緒に出て行くケースが多い。

NYMEX (NewYork Mercantile Exchange)
 ニューヨーク・マーカンタイル取引所。原油をはじめとするエネルギー関連商品で世界最大規模を誇る先物取引所。同取引所に上場されているWTI原油先物は、国際的な原油の指標価格となっている。

ODA (Official Development Assistance)
 政府開発援助。先進国の政府や政府機関が、国際貢献の一環として、発展途上国に対して行う資金、サービス、物資などの提供。

OPEC (Organization of the Petroleum Exporting Countries)
 1960年に、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5ヶ国が設立した産油国の組織。本部はオーストリアのウィーン。現在は中東以外の国(アルジェリア、アンゴラ、インドネシア、エクアドル、ナイジェリア、ベネズエラ)を含む13ヶ国が加盟している。

OPlC (Overseas Private lnvestment Corporation)
 米国海外民間投資公社のこと。1971年に設立された米国の公的金融機関で、米国企業の海外投資を支援するために、保険の引受や融資を行っている。市場水準の保険料や金利を徴収し、独立採算制で運営されている。

OTC (over-the-counter transactions)
日本語では「相対取引」または「店頭取引」と訳される。株式やデリバティブなどの金融商品を、公的な取引所を通さずに、当事者同士で直接取引したり、証券会社などの仲介業者を通じて取引すること。

PlM (project information memorandum)
 金融機関から融資や出資を募る際に、プロジェクトを事前検討してもらうために配る冊子。プロジェクトの概要や資金繰りの予定などを記載する。

PSA (production sharing agreement)
 生産物分与契約。外国企業が参加する石油・天然ガス開発プロジェクトにおいて一般的な契約方法で、生産物の配分条件などを定める。例えば、地下資源の独占的な開発権を外国企業(スポンサー)に与え、生産物の売上げの一部をロイヤルティ(地下資源使用料)として政府が受け取り、それ以外の売上げは、投資額の回収度合いや IRR(内部収益率)に応じてスポンサーと政府の間で分配するといったもの。

RlM
 石油製品市場の情報サービスを提供しているリム情報開発株式会社(本社・東京都千代田区神田佐久間町)が発表している日本国内の石油製品価格の指標のこと。

SCOP (State Company for Oil Projects)
 イラク石油事業公社。石油関連施設の建設・機材調達・保守などを手掛けるイラクの国営企業。

SEC (US Securities and Exchange Commission)
 米国証券取引委員会のこと。1934年に証券取引所法にもとづいて設立され、米国の証券行政を広範に管轄している独立行政機関。強力な権限を持っていることで知られる。委員会は上院の承認により大統領が指名する5人の委員で構成され、ワシントンに置かれている。日本の類似機関として証券取引等監視委員会があるが、米国のSECと違って規則制定権がなく(金融庁が有する)、人員も少ない。

SOMO (State Oil Marketing Organization)
 イラク石油輸出公社。イラク原油の輸出を一手に扱っている国営企業。イラク原油は、SOMOが毎月1回発表するOSP(official selling price)という価格で輸出される。

SPC (special purpose company)
 保有資産の証券化のような特定の目的のために設立される事業体(特別目的会社)で、通常はぺ一パーカンパニー。当該事業や資産をバランスシートから外して企業本体の財務比率を向上させたり、資産の信用力で資金調達したり、あるいは金融機関が担保の確保を確実にするといった目的で設立・使用される。不正会計や天下りの温床になりやすいという面も指摘されている。SPE(special purpose entity)やSPV(special purpose vehicle)と呼ばれることもある。

SWlFT (Society for Worldwide lnterbank Financial Telecommunications)
 国際銀行間金融通信協会、または同協会が管理している銀行間送金・通信システムのこと。世界各国の銀行が加盟し、各銀行に固有のSWIFTコードが割り当てられ、各銀行間で電子的な送金が行われている。

S字カーブ
 伝統的なLNGの価格決定フォーミュラは、(例)「14.85(原油とガスの価格比率)
受渡し月のJCC(Japan Crude Cocktail=財務省の貿易統計における原油の月間平均輸入価格) + 80セント」といった具合に、基本的に原油価格と連動するものの、原油が一定水準以上に下落してもLNG価格は原油ほどは下がらず、逆に原油価格が一定水準以上に上昇しても原油ほどは上がらないように契約で定められている。こうした上昇・下落ともに緩やかな価格決定方式を「S字カーブ」と呼ぷ。

TEPIX (Tehran All-shares Price lndex)
 テヘラン証券取引所(TSE, Tehran Stock Exchange)に上場されている全株式の価格水準を表す株価指数。

USAエンゲージ(USA Engage)
 約680の企業や農業団体が加盟する米国のロビー団体。同じく自由貿易を推進するロビー団体である米国外国貿易会議(NFTC, The National Foreign Trade Council) の下部団体として設立された。米国の外交政策が企業活動に不利にならないようにするための活動を行なっている。

US EX-lM BANK (The Export-Import Bank of the United States)
 米国輸出入銀行。1934年に設立された米国の公的金融機関。米国製品の輸出および米国企業の海外での投資活動を支援するために輸出保険の引受や融資を行っている。

VAT (value added tax)
 消費税または付加価値税。エネルギー開発の実務では、プロジェクト遂行のために購入する資機材に対するVATが免除されるかどうかが、事業全体の収益性に大きく影響する。

VLCC (very large crude carrier)
 超大型原油タンカー。原油輸送用の大型タンカーのうち、載貨重量が20万〜30万トン程度のものを指す。さらに大型のタンカー(ULCC, Ultra Large Crude oil Carrier) もあるが、VLCCまでがマラッカ海峡を通過できるため、中東・日本間の原油輸送では主カを担っている。

WTI (West Texas Intermediate)
 米国テキサス州西部で産出される、硫黄分が少なくガソリンを多く取り出せる高品質な原油。産出量が1日100万バレル以下と少ないにもかかわらず、NYMEXに先物取引が上場され、世界最有力の原油価格指標となっている。