白内障の点眼薬 問題
2003年6月24日 読売新聞
「白内障 日本独自の点眼薬治療 科学的根拠なし 予防薬も推奨できず 厚労省指針」
失明の原因となる白内障について、厚生労働省研究班が初の診療指針をまとめた。手術を主要な治療に位置づける一方、広く使われている目薬や飲み薬には「効果に関する十分な科学的根拠がない」と指摘した。白内障の薬物治療は米国など先進諸国では行なわれておらず、日本の「薬漬け医療」の見直しが迫られそうだ。27日から京都で開かれる日本白内障学会で報告される。
白内障は、濁った水晶体を除去して人工の眼内レンズを入れる手術が根本的な治療法で、日本では年間約80万件実施され、95%の人で視力が0.5以上に回復している。一方、白内障の進行を抑える目的で目薬(成分名ピレノキシン、グルタチオン)や飲み薬(チオプロニン、パロチン)も多用されている。
研究班はこれらの薬について、過去の臨床試験データを検討したところ、症例数が少なすぎたり、評価方法に客観性が欠けていたり、信頼度の高い試験は殆ど無く、有効性は十分証明されていないことがわかった。これらは日本独自の薬で、欧米の診療指針には薬物治療の項目がない。
ピレノキシン(商品名カタリンなど)の目薬は40年以上前に認可され、広く使われている薬で、薬局で買うこともできる。指針は現場への影響を”配慮”し、「投薬を考慮してもよいが、十分な科学的な根拠がないため、充分なインフォームドコンセント(患者への説明と同意)を得た上で使用することが望ましい」としている。また、白内障予防薬として使われることのあるビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン
については大規模試験で効果が認められておらず、投与は推奨できない」とした。
多くの医療機関では患者は数週間ごとに通院、投薬を受けている。研究班の茨木信博・日本医大千葉北総病院教授は「効果の不明な薬が、定期的に通院させるための手段として使われている実態が問題だ。白内障診療のあり方を考え直す必要がある」と話している。
注 : 白内障 目のレンズ部分にあたる水晶体が白く濁り、視力が低下する病気。 糖尿病が原因の場合や先天的なものもあるが、多くは加齢による老人性白内障で、六十歳代では六割から八割に症状がみられる。一度濁った水晶体は元に戻らないため、根本的な治療は手術しかない。
朝日新聞 2003/6/24
白内障の目薬、「科学的根拠無し」 厚労省研究班
白内障の治療法について、進行を抑える目的で使われている目薬や飲み薬は「有効性に関する十分な科学的根拠がない」とする初の診療指針を、厚生労働省の研究班がまとめた。人工レンズの移植手術を唯一の治療法と位置づけている。27日から京都市で始まる日本白内障学会で発表する。
白内障は、目の中でレンズの役目をしている水晶体が濁り、視力が低下する病気。老化と関係が深く、80歳以上のほとんどに症状が見られる。
治療法は濁った水晶体を取り出して、人工レンズを入れる手術が一般的だ。日本では、症状の進行予防として目薬(成分名ピレノキシン、グルタチオン)や飲み薬(同チオプロニン、パロチン)なども使われてきた。
これらの薬は20年以上前に認可され、当時は有効性があると判断された。欧米では薬による治療はほとんどない。
研究班は目薬などを使った白内障治療の発表文献など1000件以上を調べた。信頼できる発表データがなく、現在の基準に照らすと有効性を裏付ける証拠はないと判断した。
研究班の北原健二・東京慈恵会医科大教授(眼科)は「全国の患者の約8割は薬物治療を受けていると推測されるが、効果のあるなしについてはっきりした根拠はない。医師は十分な説明をし、患者に判断してもらうのが望ましい」と話す。
浜崎眼科(横浜市)ホームページ
http://plaza28.mbn.or.jp/~ideal/cat/cat.htm
平成15年6月24日読売新聞に白内障 科学的根拠無し 日本独特の点眼薬治療 との見出し付きで、白内障予防薬を評価した記事が掲載されました。 同薬を白内障患者さんに処方している私の立場からして、明確にお答えすべき事であるのは間違いない。
この薬について困惑しておられる患者さん方に向けて、当院なりにQ&A形式で解説をしてみました。
Q 白内障の予防薬は本当に効くのですか?
A 下記のような機序で効きます。(下図は参天製薬のカリー点眼液の説明書より抜粋し改変)
眼のレンズはキノン体の周りに水溶性の水晶体蛋白が集まって変性を起こすために混濁すると考えられています。 ピレノキシンはこれを阻止する事で、レンズの白濁を防ぎます。
Q どうして「科学的な根拠がない」とまで酷評されたの?
A-1 おそらく、古い薬だからです。
カリー(ピレノキシン)等は約40年前に厚生省から認可された古い薬品ですので、昨今の科学的な厳しい基準と比べると、やさしい審査基準で認可された薬なので、そういった表現になったのだと思われます。しかし、約20年前に厚生省の再評価があり、その際にも再度認可されています。
無効な薬品ではない事は既に証明済みと解釈できます。
A-2 また、効果の判定が難しい薬だからでしょう。
白内障は何十年もかけて、進行する病気なので、その進行を阻止したかどうかを評価するためには何十年もかけて検査しなくてはならないし、何十年もの間には、多くの他の因子(紫外線・栄養・その他の生活習慣など)が影響するため、薬の効果なのか他の因子の影響なのか判断が困難だと考えられます。
茨木先生も、効果がないことを証明した訳ではないと思われます。
その証拠に、大阪版の読売新聞に「効果無し」と発表した後で、訂正文を出して「科学的根拠なし」と修正しています。
本当に効果がない事を証明したのならば、訂正文など出さなかったはずです。
Q 誰が何の目的でこの記事を書いたの?
A 北総病院の茨木教授が、学会を活性化させるために、この記事を書かせた可能性が高い。
詳しい事は判っていませんが、白内障学会では、新しい話題に事欠く昨今です。
上記 読売新聞の本文にも、白内障学会で6月28日に茨木先生の発表がある事を載せており、その学会の広報ための記事である事が明らかです。
彼の目論見通り、28日の彼の講演は超満員だったそうです。
また、今回の新聞発表は、茨木教授の単なる売名行為と酷評する見方も出ています。
Q だったら茨木先生を巡って裁判や新聞報道が
もっとありそうなもんですが。
A そうですね、報道機関に薬の評価を下げる記事を書かせたのですから。
製薬会社は損害賠償を請求できるかも知れません。
しかし、訴訟や騒動にはならないと思われます。
というのは、この薬品は古いため、薬価が落ちるところまで落ちており(1個=60円)、製薬会社(千寿製薬・参天製薬)にすれば、高い訴訟費用をかけて、この薬の名誉を守っても、損をするだけなのです。
だから、その後は誰も騒がないのです。
薬害などのもっと重大な問題が発覚した後なら、もっとテレビや新聞が書きたてるものですが、騒ぎが大きくならないのは、こんな理由でしょう。
Q 白内障予防薬のメーカーも
科学的な根拠を証明すればいいのに。
A 確かにその通りなのですが・・。
メーカーにしてみると、先ほども出ましたが白内障予防薬はほとんど利益のない薬です。
その効果を証明するのに、また一から莫大な研究費を費やす訳にはいかないのが本音だと思われます。
つまり、メーカーが白内障予防薬について科学的な根拠を証明してくれる日は来ないのではないかと思われます。メーカーは患者あてに案内文を発表するに止まっています。