2007.10.05 CNN      2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞

イグ・ノーベル賞、「牛の糞からバニラ」で邦人女性が受賞

ボストン──「笑えるとしか言いようがなく、しかも記憶に残り、人々を考えさせる業績」に贈られる年恒例のイグ・ノーベル賞の第17回授賞式が4日夜、米ハーバード大学サンダース・シアターで催され、牛の糞(ふん)からバニラ香料成分を抽出した日本の山本麻由さん(26)が化学賞を受賞した。

国立国際医療センター研究所に所属する山本さんが受賞した研究内容は「牛糞からバニラの芳香成分vanillinの抽出」。牛の糞ときいて、会場からはどよめきが起こった。壇上では、牛の糞から抽出した香料を使った「バニラ」アイスクリームが歴代のノーベル賞受賞者に配られ、教授らは意を決して口にしていた。

 山本さんは国立国際医療センター研究所の研究員だった04年に今回受賞した抽出方法を開発した。牛糞1グラムに水4ミリリットルを加え200度で60分間加熱すると、1グラムあたり約50マイクログラム(マイクロは100万分の1)のバニリンが抽出できた。

 バニリンは樹木などの木質成分「リグニン」から生成するため、馬や山羊などの草食動物の排泄物も利用可能だという。抽出コストはバニラ豆を原材料にする方法に比べ「およそ半分」 (山本さん)。シャンプーやロウソクの芳香添加物などの応用が考えられる。

山本さんは、宮崎大学農学部を卒業後、牛のふんを簡単に廃棄する方法について研究を進め、2005年、牛のふんを高温高圧にすることで化学的にバニリンを抽出することに成功した。山本さんは「ふんのリサイクルとか、環境のことを考えていただけるきっかけになればいいなと思ったので、正直うれしかったです」と語った。

Yamamoto said she first learned of her award by email and thought it was a joke but decided to go to the ceremony because "I want everyone to know about my research."

今年の授賞式のテーマは「チキン」。このテーマは、授賞者選考には関係ないものの、式典途中に演じられるミニ・オペラや、過去の受賞者のスピーチ、授賞トロフィーなどのモチーフとなった。

式典中の注意事項として、鶏の投げ込みが禁止されたほか、授賞式の風物詩となっている紙ヒコーキについては、「航空関連テロ」対策が強化されている昨今の情勢を踏まえ、飛ばすことが原則禁止となった。

毎年、壇上の紙ヒコーキを掃除するロイ・グラウバー教授は、今年もすげ笠をかぶってほうきを手にした姿で登場。ノーベル賞受賞者として壇上で待機した。

今年の受賞一覧は以下の通り。

○化学賞:「牛糞からバニラの芳香成分vanillinの抽出」 牛の糞からバニラ香料成分の抽出に成功した、国立国際医療センター 研究所の医療生態学研究部の山本麻由氏に授与。壇上では、この抽出した香料を使ったアイスクリームが歴代のノーベル賞受賞者に配られた。

Chemistry - Mayu Yamamoto, from Japan, for developing a method to extract vanilla fragrance and flavouring from cow dung.

○医学賞:「剣飲みとその副作用について」の研究で、英国グロスターシャー州の放射線医師ブライアン・ウィットコーム氏と、米国人協力者のダン・メイヤー氏に授与。世界的に有名な剣飲みのパーフォーマー、メイヤー氏が研究に協力し、3カ月間で約2000本の剣を飲んで、その際の生体反応について調査した。授賞式では、壇上でメイヤー氏が剣飲みの実演を行い、盛大な拍手を受けた。

Medicine - Brain Witcombe, of Gloucestershire Royal NHS Foundation Trust, UK, and Dan Meyer for their probing work on the health consequences of swallowing a sword.

○物理学賞:「シーツの皺(しわ)のつき方について」研究した米ハーバード大学のラクシミナラヤナン・マハデバン氏と南米チリのエンリケ・セルダ氏に授与。

Physics - A US-Chile team who ironed out the problem of how sheets become wrinkled.

○生物学賞:「寝床で一緒に眠り、ムズムズ感を引き起こすダニ、昆虫、クモ、シダ類、菌類の全統計調査」を実施したオランダのヨハンナ・ファン・ブロンズウィック博士に授与。

Biology - Dr Johanna van Bronswijk of the Netherlands for carrying out a creepy crawly census of all of the mites, insects, spiders, ferns and fungi that share our beds.

○言語学賞:「ラットは日本語の逆さ言葉とオランダ語の逆さ言葉を聞き分けられない」ことを示したバルセロナ大学の研究チームに授与。

Linguistics - A University of Barcelona team for showing that rats are unable to tell the difference between a person speaking Japanese backwards and somebody speaking Dutch backwards.

○文学賞:「アルファベット順に並び替える際に、英語の定冠詞『the』によって引き起こされる混乱」について研究した、オーストラリア・ブルーマウンテンズのグレンダ・ブラウ氏に授与。

Literature - Glenda Browne of Blue Mountains, Australia, for her study of the word "the", and how it can flummox those trying to put things into alphabetical order.

○平和賞:「同性愛爆弾 "gay bomb" 」を開発した米空軍ライト研究所に授与。この化学兵器は、敵の兵士間に広く、同性愛の感情の芽生えさせるという。

Peace - The US Air Force Wright Laboratory for instigating research and development on a chemical weapon that would provoke widespread homosexual behaviour among enemy troops.

○栄養学賞:「底がないスープ皿で自動的に給仕される場合における、人間の食欲の限界について」を研究した、コーネル大学のブライアン・ワンシンク氏に授与。

Nutrition - Brian Wansink of Cornell University for investigating the limits of human appetite by feeding volunteers a self-refilling, "bottomless" bowl of soup.

○経済学賞:「銀行強盗を捕らえるネットの開発」で特許を取得した、台湾のクオ・チェン・シェ氏に授与。しかし、シェ氏の行方は数年前から分かっておらず、司会者は同氏についての情報提供を呼び掛けた。

Economics - Kuo Cheng Hsieh of Taiwan for patenting a device that can catch bank robbers by dropping a net over them.

○航空学賞:「バイアグラに時差ぼけ解消の効果」があることを発見した、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるキルメス国立大学の研究者、パトリシア・アゴスティーノ氏とサンティアゴ・プラノ氏に授与。両氏は今年、男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」が時差ぼけの解消に有効だとする研究結果を発表し、話題となった。

Aviation - A National University of Quilmes, Argentina, team for discovering that impotency drugs can help hamsters to recover from jet lag.