改正建築基準法
2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件、耐震偽装)を受けて、2006年に成立した改正建築基準法が今年6月20日に施行された。この日以降建築確認申請は滞ったままの異常な状態が続いている。
構造計算書偽装問題が起きた主な原因は、 1.一部の建築設計士とマンション販売会社の職業倫理の欠如、 2.国交省が改竄可能な構造計算プログラムを認定したこと、 3.確認申請のチェック体制の制度上の不備、などである。 |
2007/7の減少は主として改正建築基準法の施行(6月20日)という制度変更に伴う手続上の要因によるもの
建築基準法の改正では構造計算書の二重チェックに加え、申請書類に不備があった場合、審査段階での修正を認めず、再申請させるなど手続きを厳しくした。
自治体や民間の検査機関から建築確認を受けないと着工できないため、着工件数の急減につながっている。
これまで1カ月で建築確認がおりていたが、法改正後は『完了まで3カ月みてください』と自治体に言われるようになったという。
その1) 構造計算適合性判定制度の導入
一つ目は、「構造計算適合性判定制度」の導入です。
この制度の導入により、一定の高さ以上等の建築物(高さ20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物など)については、第三者機関による構造審査(ピアチェック)が義務付けられることになりました。
まずは時間的な問題。「構造計算適合性判定制度」の導入に伴い、建築確認の審査期間が「21日間」から「35日間」に延長されました。
しかも、詳細な構造審査を要する場合には、審査期間が延長されます。(なんと、最大で70日間!!)
次に費用的な問題。ピアチェックにかかる手数料はまだ具体化していないようですが、ちなみに知り合いの設計士から聞いたところによると、20万から30万程度はかかるとのことでした。
(その2) 確認申請に関する補正慣行の廃止
二つ目は、確認申請に関する補正慣行の廃止です。
従来、設計図書に関係法令に適合しない箇所や、不適合な箇所がある場合には、建築主事等が申請者にその旨を連絡し、補正させた上で確認するという慣行がありました。
しかし、今回の法改正に伴って、誤記や記載漏れなどを除き、図書に差替や訂正がある場合には補正が認められず、再申請をしなくてはならなくなりました。
もし補正が認められず、再申請になってしまうと、再度申請を出し直す時間と申請料が別途発生してしまいます。施主にとっては、文字通り「余計な出費」です。
(その3)着工後の計画変更
最後は、着工後の計画変更に関する取り扱いです。
現場が始まってからの変更は、軽微な変更を除き、原則として計画変更申請が必要となります。
したがって、従来補正で対応していた部分も、このような変更が生じた場合は、一旦工事をとめて申請を行わなくてはなりません。さらに、構造的な変更があれば、再度ピアチェックが必要になるかもしれません。
そうなると、申請手数料が別途かかるほか、作業工程に大幅な遅れが出てしまいます。
最悪の場合、入居募集シーズンに間に合わなくなってしまうかも知れません。
これでは、大きな機会損失につながってしまいます。
そうならないためにも、着工後に変更が生じないよう、企画の段階でくれぐれも慎重に計画を立てておくことをお勧めしますよ。
2007/10/9 日本経済新聞夕刊
マンションや一戸建てなど新設住宅の着工に急ブレーキがかかり、建設資材の需要が大幅減少している。耐震偽装の再発防止を目的とする6月の改正建築基準法施行に伴う審査遅れなどが響いた。需要減で木材は卸値が急落、鉄筋用鋼材(棒鋼)は一部メーカーが減産を検討し始めた。影響は年内いっぱいは続く見通しで、国土交通省も対策に乗り出した。
主要な建設資材の8月の出荷量は前年同月比4―8%減少した。棒鋼は改正建築基準法施行前の5月は7%増だったが、8月は約4%減と大きく落ち込んだ。
棒鋼 約4%減
柱や梁に使う木材(製材品) 約5%減
セメント 約6%減
生コンクリート 約8%減
「ゼネコン(総合建設会社)の建築確認申請が遅れ、着工後すぐに使う基礎工事向けの注文がない」(関東の商社)。「9月の出荷は前年比1割減。今月以降さらに落ち込みそう」という。
2007/10/9 毎日新聞夕刊
建築業の資金繰り支援 国交省 法厳格化で着工減り
耐震データ偽造問題を受けた建築基準法の厳格化に伴う混乱で、新設住宅着工戸数が急減したことから、国土交通省は9日、対策を発表した。政府系金融機関が建築関連の中小企業に対する貸し出しの返済条件を緩和するなど資金繰りを支援する。また、法改正に関する情報を周知徹底させるよう総務省と連名で都道府県知事に要請した。
着工戸数の急減に伴い、工務店や建築資材店、建築士などが受注減に見舞われ経営難に陥る恐れがあることから予防措置として実施する。資金繰り支援では、中小企業金融公庫と国民生活金融公庫、商工組合中央金庫などが制度融資の「セーフティーネット貨し付け」を実施。中小企業金融公庫の場合、融資限度枠を.通常の2倍の4億8000万円に広げ、元金の返済据え置き期間を通常の1年以内から2年以内に延長する。担保不足でも金利を上乗せして融資を行う。都道府県を通じた関運情報の周知では、市町村などの自治体が、法改正に過剰に反応して必要以上に厳格な対応をすることのないよう、呼びかけた。