朝日新聞 2003年09月01日(月)          経緯

京セラ側の4億5千万ドルの支払い確定 米巡回区控訴裁

 京セラは1日、パソコン向けハードディスクドライブの供給契約を巡る米国の会社との損害賠償訴訟で、米第9巡回区控訴裁判所から、94年に国際商業会議所の仲裁裁判所などが出した判決を承認する判決が下った、と発表した。京セラ側の事実上の敗訴で、同社の試算によると、4億7600万ドル(約555億円)の賠償額になる見込み。同社は判決を不服とし、米連邦最高裁判所への上訴を検討している。

 損害賠償を請求していたのは、米ラパイン・テクノロジー・コーポレーション(LTC)。同社と京セラは84年、ラパイン側がハードディスクの開発・販売を担当し、京セラが製造する契約を締結した。京セラによると、業績が悪化したラパインとの間で、同社からの支払いと、同社への製品供給を巡り紛争になった。87年、ラパイン側が国際商業会議所の仲裁裁判所に仲裁を申し立て、同裁判所が94年9月、2億5700万ドルの支払いを命じた。その後も、京セラは米連邦地方裁判所に控訴するなどし、裁判が続いていた。

 京セラは、LTCの持ち株会社の3分の1を保有し、残りの3分の2をベンチャーキャピタルの米プルデンシャル・ベーチェ・トレード・コーポレーション(PBTC)が保有している。争いは京セラと、PBTC、LTCの2社との間で起きていた。


京セラ アニュアルレポート 2003年版

14.契約債務及び偶発債務:

 当社または子会社が関与している、またはその保有資産が対象となっている係争中または判決や和解により解決した訴訟で重要性の高いもの(事業活動に付随する通常の係争案件を除く)は次のとおりです。

 1994年9月1日、国際商業会議所は、LaPine Technology Corporation (LTC )の再建に関する当社による契約違反の主張に係る当社とLTC 及びPrudential- Bache Trade Corporation (PBTC )(現商号Prudential- Bache Trade Services,Inc.)その他当事者との間の仲裁について判断を下しました。
仲裁判断は、当社がLTC 及びPBTC に対し損害賠償金約30,326 百万円(257百万米ドル)(利息、仲裁費用及び弁護士費用を含む)を支払うことを命じました。当社は、仲裁判断について広範囲の司法審査を受けることを定めた当事者間の特約条項に従って、米国カリフォルニア州北地区連邦地方裁判所に対し、この仲裁判断の破棄及び修正を求める申し立てを行いました。
 LTC 及びPBTC は仲裁判断の確認を求める申し立てを行いました。1995年12月11日、地方裁判所は、仲裁判断の
司法審査に関する当事者間の合意は無効であると判断し、仲裁判断の内容を審査せずにLTC 及びPBTC による申し立てを認容しました。1996年1月9日、当社は第九巡回区控訴裁判所に対し本件を控訴しました。1997年12月9日、第九巡回区控訴裁判所は、地方裁判所による仲裁判断の確認を覆し、仲裁判断の広範囲の司法審査を定めた当事者間の仲裁契約の規定は有効であると判断しました。同裁判所は、当事者間で合意された基準により仲裁判断を審査するため本件を地方裁判所に差し戻しました。
 2000年4月4日、地方裁判所は第一段階の仲裁判断について国際商業会議所の判断を確認する命令を下しました。2000年10月2 日、地方裁判所は損害賠償に関する第二段階の仲裁判断について最初の判断を下しました。裁判所は、1987年の第2 四半期のLTCの収益性に関する重要な事実認定を除き、仲裁人の事実認定と法的判断のすべてを認容しました。裁判所は、LTC が1987年の第2 四半期に営業利益を得たという事実認定についてはその裏付けとなる十分な証拠がないと判断しました。その後、2001年3月6日に、地方裁判所は、当該裁判所の2000年10月2日付の1つの事実認定を除き、第二段階の仲裁判断を確認する決定を下しました。裁判所の2001年3月6日付の決定は、損害賠償に関する
仲裁人の判断の確認を含んでいます。2001年4月3日に、当社は、仲裁判断を確認した地方裁判所の決定に対し控訴しました。
 2001年5月17日、地方裁判所は、判決を修正し、当社がLTC及びPBTC に対して約50,472 百万円(427,728 千米ドル)の総額に加えて判決前及び判決後の利息を賠償するよう命じました。同年5月25日、当社は本判決について控訴しました。
 2001年6月21日、地方裁判所は、LTC 及びPBTC への弁護士費用及び実費の支払いを命じる決定を下しました。2001年7月5日、当社はこの決定について不服を申し立てました。2001年8月29日、当社は不服申立書を第九巡回区控訴裁判所に提出しました。
 2001年12月5日、当社は答弁書を提出しました。2002年5月13日、第九巡回区控訴裁判所において口頭弁論が行われました。2002年7月23日、
第九巡回区控訴裁判所は、地方裁判所の判決及び判断の全部を承認する旨の判決を下しました。その結果、当該判決により当社が支払う損害賠償金は、判決前及び判決後の利息を加えた約53,454 百万円(453 百万米ドル)となりました。2002年8月6日、当社は、この判決を下した裁判官による当該控訴の再審理及び第九巡回区控訴裁判所の裁判官11 名全員によって構成される大法廷における再審理を求める申立書を提出しました。2002年10月1日、第九巡回区控訴裁判所は、LTC 及びPBTC に対して、当社の申立書に対する答弁書を提出することを命じる命令を下しました。2002年10月11日、LTC 及びPBTC は当該控訴の再審理に反対する旨の答弁書を提出しました。2002年10月30日、第九巡回区控訴裁判所は、当社がLTC 及びPBTC によって提出された答弁書に対する回答書を提出することを許可する命令を下しました。
 2002年12月17日、第九巡回区控訴裁判所は、大法廷における再審理を求める当社の申し立てを認め、7月23日付の判決を撤回する命令を下しました。当社の申し立てに関する口頭弁論は、2003年3月25日に行われる予定でした。2003年3月21日、第九巡回区控訴裁判所の大法廷は、
連邦仲裁法に定められた基準と異なる審理の基準を適用することを定める私人間の契約が連邦裁判所に対して拘束力を有するか否かという問題について裁判所が当事者からの補足申立書を検討することができるようにするために、当社の申し立てに関する口頭弁論を中止する命令を下しました。2003年4月29日、当事者は、第九巡回区控訴裁判所の大法廷により提起された問題に関する補足申立書を提出しました。控訴裁判大法廷での口頭弁論の日程はまだ決定されていません。
 当社が現在の不利な判決を最終的にいずれの点においても覆すこ
ができなかった場合には、当社は約55,696百万円(472百万ドル)以上の損害賠償金(訴訟費用及び利息を含む)を支払わなければならない可能性があります。
 当社はLTC の100 %の株式を保有している
LaPine Holding Company の発行済み株式の3 分の1 を保有しています。従って、当社が損害賠償金(訴訟費用及び利息を含む)を支払った後のLTCの純資産の3 分の1 については当社に返還することが見込まれます。当社は、当該持分を考慮した上で、当訴訟に不利な判決が下される可能性に備え、2003年3月31日現在、41,862百万円(354,763千米ドル)を未払訴訟費用に計上しています。当該金額を超過する不足額があれば、将来において費用として計上されます。当社は、この未払訴訟費用に関して、発生する可能性のある追加費用は来期の経営成績及び財政状態に重大な影響を与えることはないと考えています。
 当該訴訟に関連して、1995年に当社は、仲裁判断の担保として、信用状を銀行から購入しました。さらに銀行信用状の発行手数料を軽減する為に、2003年3月末時点で当社は、56,368百万円(477,695 千米ドル)を引出制限条件付預金として差入れています。