http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/keijiban/keijiban_master.html
2005年3月16日
原告代理人 弁護士 中下裕子
〒105-0004東京都港区新橋4−25−6
ヤスヰビル2・6階
コスモス法律事務所
プレス・リリース
本件名誉毀損裁判について
1.本件訴訟の概要
(1)当事者
原告:松井三郎・京都大学地球環境学大学院教授、文部科学省特定領域研究班(平成13〜15年度)「内分泌攪乱化学物質の環境リスク」代表
被告:中西準子・独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター所長、前横浜国立大学教授
(2)請求内容
@ 慰謝料および弁護士費用として金330万円の支払い
A 「中西準子のホームページ」への謝罪文の掲載
B 日本内分泌攪乱化学物質学会発行のニュースレター「Endocrine
Disrupter NEWS LETTER」に
謝罪広告の掲載
(3)名誉毀損行為の内容
(@)環境省主催の「第7回内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」(平成16年12月15日〜17日、名古屋市で開催)の第6セッション「リスクコミュニケーション」に、中西氏は座長として、松井氏はパネリストの1人として参加した。
(A)その後、中西氏は、自らのHPに「雑感286−2004.12.24『環境省のシンポジウムを終わって―リスクコミュニケーションにおける研究者の役割と責任』」と題する記事を掲載し、その中で、松井氏が、
@ 「環境ホルモン問題は終わった、次はナノ粒子問題だ」というような発言をした
A 新聞記事のスライドを見せたが、原論文も読まずに記事をそのまま紹介した
旨の記述をした。
しかしながら、松井氏は、自身の環境ホルモン研究結果から、ナノ粒子の有害性に言及し、新聞記事のスライドを紹介したのであって、中西氏の上記の記述は事実に反するとともに、松井氏の名誉を著しく毀損するものである。
(B)松井氏が抗議したため、中西氏は2005年1月20日にこの記事を削除した。しかし、松井氏に対する名誉回復措置は何ら講じられていない。よって、前記(2)の内容を求めて、本件提訴に及んだ次第である。
2.提訴に至った理由
本件は、決して、松井氏が個人的な名誉回復だけを求めて提訴したものではない。松井氏が提訴に踏み切ったのは、次のような理由からである。
(1)批判そのものが悪いというのではない。むしろ、科学の発展は、建設的批判抜きにはあり得ないといっても過言ではない。しかし、いやしくも「科学者」である以上、他者を批判するときは、少なくとも他者の意見をよく聞き、事実に基づいて、合理的根拠を示して行うべきは当然である。本件のように、碌に他者の発言も聞かず、事実も確認せず、一方的に他者の名誉を毀損するような決めつけを行うことは、「科学者」の名に値しない行為である。ましてや、中西氏は単なる一科学者ではない。科学者を指導育成し、国の科学技術のあり方を決定するという重責を担っている。前記シンポジウムでも、「リスクコミュニケーション」問題の座長を務めていたのである。本件行為は、そのような立場にある者の言動として、看過できないものである。
(2)さらに、中西氏は、「環境ホルモン問題は終わった」と考えておられるようであるが、これは大変な間違いである。松井氏らの研究成果からも、環境ホルモン問題は、複雑ではあるが、人の健康や生態系にとって、決して看過できない重大な問題であることが明らかになっている。したがって、今後も、ますます精力的に研究を進め、有効な対策を講じることが求められている。中西氏のように、国の科学技術のあり方を決定する立場の人が、そのような誤った認識を持ち、その結果、国が政策決定を誤ることになれば、国民の健康や生態系に取り返しのつかない事態も招来しかねない。特に、次世代の子どもたちの発達や健康への悪影響が懸念される。近年、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害やアトピー、喘息などのアレルギー児が増加しているが、その原因のひとつに環境中の化学物質の影響が懸念されているのである。松井氏は、研究者として、国民の一人として、中西氏のこのような誤りを断じて見過ごすことはできないものと考え、貴重な研究時間を割いて、敢えて本件提訴に踏み切ったのである。
中西準子ホームページ 名誉毀損事件
2005/3/22
2005年3月17日の毎日新聞と読売新聞の記事で、私は京都大学地球環境学大学院教授松井三郎さんが、16日中西を名誉毀損で訴えたことを知った。まだ、訴状は受け取っていないので、本当の意味で真実かどうかは分からないが、二紙に載っているので本当なのでしょう。
この新聞記事によると、環境ホルモンに関する、環境省主催シンポジウムのことに触れた私の雑感に関係したものである。
シンポジウムは、2004年12月17日だった。それについての雑感を書いて公開したのが2004年12月24日(環境省のシンポジウムを終わって−リスクコミュニケーションにおける研究者の役割と責任−)。
松井さんから抗議があったのが2005年1月17日、翌日12月24日のページを削除、1月20日、雑感で「謝罪」を出した。その頁は今でも見ることができるが、そこで、もう一度よく検討し、年度内にはっきりさせますと書いた。
その準備をしている過程で確かめたいことがあり、3月13日松井さんにmailを送った。お約束は年度内ですが、と前置きし、資料を見せてほしいとお願いした。そのお返事が、3月15日にあり、名誉毀損で提訴する準備中ですとあった。
こういう経緯の中で、しかもこのような内容で名誉毀損での提訴は全く信じられないし、双方の意見交換で十分だった筈だと思っている。訴状を見ていないので、何が中心かは分からないが、提訴された以上は、これを受けて立ち、むしろ、環境ホルモン問題をじっくりと考える機会としたい。もちろん、自分に非があれば謝罪し、損害を与えているのであれば、損害賠償するのは当然である。
もう、20年近くも前になるか、愛知県境川流域下水道の裁判で、私は流域下水道反対の住民側に立って証言をし、松井さんは、流域下水道賛成で、愛知県(旧建設省がバック)側証人で出廷していた。また、対決ですかね?
1月20日の雑感で、さらに詳しくは年度内に私の考えを出しますと約束していた。このことについては、来週中(年度内)にこの雑感で公開したいと考えています。
2005/3/31
先週も書きましたが、私は松井三郎さんから名誉毀損で訴えられたらしい。まだ、訴状は受け取っていない。不思議な気持ちだ。周りはいろいろ言うが、本人には何の連絡もない。訴状というのは、こんなに遅いものか。
2004.12.24の雑感で書いたことについて、きちんと調べ年度内に説明し、必要があれば謝罪するとしてきた。そして、2005年3月13日、松井さんに「あと1週間程度でお返事申しあげることができると思います」とmailを出したところ、15日に「提訴準備中」というお返事があり、ひどくびっくりした次第。そして、提訴は16日だったらしい。横浜で記者会見を行ったという噂がある。
以下のような報道があったと知人が教えてくれた。
◆HPにシンポの発言と違う内容
京大教授が座長提訴 [3/17 毎日新聞]
◆女性研究者を京大教授が提訴 [3/17 東京新聞・横浜版]
◆京大教授 同分野研究者を提訴 [3/17 神奈川新聞]
◆HPに事実違う記事 慰謝料など求め提訴 京都大学大学院教授[3/17 読売新聞]
この問題について、自分なりの考えを書くつもりでいましたが、このような事態になりましたので、訴訟の経過を踏まえて逐次報告することに致します。
2005/4/12
4月3日(日)訴状を受け取った。原告は、京都大学地球環境学大学院地球環境学堂教授 松井三郎さん。原告の弁護士には、環境ホルモン国民会議とか、ダイオキシン国民会議とかの幹部メンバーとして名前を見かける方が多く並んでいた。
提訴されるというニュースに取り囲まれた時は、狐に鼻をつままれたような感じだったが、だんだん相手の姿が見えてきた。ああ、こういうものだったかというような感じで、背景がつかめてきた。じっくりと時間をかけて、丁寧に考えながら、静かに取り組んでいきたい。
2005/4/19
既に、お伝えした通り、私は、京都大学地球環境学大学院地球環境学堂教授 松井三郎さんに、私がHPで書いた記事に関し、名誉毀損として訴えられた。現在、横浜地裁で審理中。
一体、松井さんはシンポジウム(環境省主催「第7回 内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」、2004年12月15〜17日)で、何を語り、私がそれに対して、HPでどう書いたのかという質問をしばしば受ける。
審理中なので、それについて今、書くことはやめておきたい。ただ、松井さんの話の中で使われたスライドが、環境省のホームページに掲載されているので、それを見て頂ければ大凡のことは分かる。
http://www.env.go.jp/chemi/end/2004/sympo7_mats.html
この頁の下の方に、以下のような部分がある。セッション6 リスクコミュニケーション、そこに松井さんの名前があり、PDFファイルが三つある。それが講演で使われたスライドである。私が、雑感で問題にしたのは、三つ目のPDFファイルの二枚目にあるスライド、ナノに関する京都新聞の記事のことである。